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『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』

『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』(原題:Buena Vista Social Club: Adios)
監督:ルーシー・ウォーカー

ちょうど映画1本分ぐらいの時間がひょこっとできました。
妙な動きをする台風到来の日で、あと数時間でJRが止まることも知らずに劇場へ。
どっちみち晩ごはんをとるお店まで行けば、帰りは車です。
もちろん私はお酒を飲みますから、運転するのは下戸のダンナ。(^o^)
大阪ステーションシティシネマにて。

名ギタリストとして世界に名を馳せるライ・クーダーがキューバに旅行、
そのときに現地の年老いたミュージシャンたちとセッションをしました。
ミュージシャンたちの大半は、かつて実在した会員制音楽クラブ、
“ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ”の会員だったので、
制作したアルバムのタイトルにそのまま採用。1997年のことでした。

これに興味を引かれたのが、ライ・クーダーの友人であるヴィム・ヴェンダース監督。
ドキュメンタリー作品『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(1999)を撮ったら大ヒット。
一躍有名になった老ミュージシャンたちはワールドツアーを組むまでに。
音楽の聖地カーネギーホールでの演奏も果たしました。

あれから20年近くが経ち、そもそも高齢だったミュージシャンたちのうち、
ひとり、またひとりと他界。
女性ボーカルで今も健在のオマーラ・ポルトゥオンドは
“ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ”として最後のワールドツアーを決意。
かつての映像を交えながら、メンバーの音楽と共にあった人生、
そしてキューバ音楽の歴史をたどる作品です。

貧困を極め、人種差別がはびこる国で、彼らが奏でつづけてきた音楽。
急にもてはやされるようになり、喜ぶと同時に戸惑いも見えます。
楽しげに踊る聴衆の姿を見て、「私たちの何がわかっているの?」という疑問をメンバーは持ったりも。

本作を観ると、音楽の楽しさを感じると同時に、切なさで苦しくなります。
亡くなる数週間前、数日前まで音楽を奏で続けた人たち。
最後の音は土の中で。最期まで音楽と一緒。
—–

『BLEACH』

『BLEACH』
監督:佐藤信介
出演:福士蒼汰,杉咲花,吉沢亮,真野恵里菜,小柳友,田辺誠一,
   早乙女太一,MIYAVI,長澤まさみ,江口洋介他

TOHOシネマズ伊丹で2本ハシゴの2本目。『未来のミライ』の次に。

『週刊少年ジャンプ』に2001(平成13)年から2016(平成28)年に渡って連載されていた、
久保帯人の同名人気漫画を佐藤信介監督が実写映画化。

高校生の黒崎一護(福士蒼汰)は、幼少時に母親(長澤まさみ)を亡くし、
父親(江口洋介)、妹で双子の遊子(平澤宏々路)と夏梨(安藤美優)の四人暮らし。
幽霊が見えるという特技があるが、そのことは本人以外知らない。

ある晩、黒崎家が“虚(ホロウ)”と呼ばれる悪霊に襲われるが、
悪霊の姿は一護にしか見えない。
ひとり悪戦苦闘する一護を助けに現れたのは、朽木ルキア(杉咲花)という死神
しかしルキアも虚によって激しいダメージを喰らってしまう。
これでは全滅かというとき、ルキアは自分の力を一護に貸し与え、なんとか虚を退治。

一護に貸し与えたのはルキアの力の半分だけのはずだった。
ところが力のほとんどを一護に吸い取られたらしく、
このままではルキアは死神の世界に戻ることができない。
一護から力を返してもらうには、一護の霊圧を上げることが必要。

ルキアは一護に死神代行を言い渡し、虚と戦って霊圧を上げるように迫る。
一護と行動を共にするために、一護のクラスメイトになりすますのだが……。

最近こんな役が多い福士くん。
どちらかといえば普通の若者を演じているときの福士くんのほうが好きなので、
これもハードル下げて観に行ったら、意外に楽しかった。

『猫は抱くもの』ではちょっとキモかった吉沢くん
いわくありげなクラスメイト役で良かったし、
『娼年』で嫉妬に駆られて嫌な奴に成り下がる青年役だった小柳友も、
友だちのことをあれこれ詮索せずに信じるめっちゃイイ奴。
つい先日、サッカー選手の柴崎岳と結婚した真野恵里菜は一護に恋する役だから、
当然ルキアに嫉妬メラメラなのかと思ったら、これまたいい子で。
父親役の江口洋介、若い頃よりずっと好きだなぁ。

ストーリーにも無理がないから、原作を知らなくても素直に楽しめます。

エンドロールで控えめに出る「死神代行篇」の文字。
これが当たれば続編もつくっちゃおうという魂胆でしょうか。
いいですよ、どうせ私は乗せられちゃうから。
—–

2018年7月に読んだ本まとめ

2018年7月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:5049ページ
ナイス数:1109ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly

■犬神の杜 よろず建物因縁帳 (講談社タイガ)
地震後は軽めで明るい話にしか手が伸びずにいましたが、これは別。今度は犬神に祟られた山のトンネル工事に呼ばれた春菜。前作と前々作ほど切なさがないのが残念なうえに、怖さも控えめですが、犬神筋の哀しさにホロリ。なぜか読者に不人気な春菜ちゃんだけど、私は好きだなぁ。彼女が新規顧客とのやりとりに心を砕く姿には、大人になったのも感じられて嬉しくなる。「すっかり嫌われたかと思ったよ」って、ええかげんにせえよ、パグ男め。登場人物のキャラが皆きわ立っていて、ときどき笑ってしまう、私にとっては元気をもらえる珍しいホラーです。
読了日:07月01日 著者:内藤 了
https://bookmeter.com/books/12907269

■([み]1-2)黄金の丘で君と転げまわりたいのだ (ポプラ文庫)
いったい誰が、ワインの入門書を読んで「電車の中で読むと危険レベル」ぐらい笑うことを予想できるでしょう。比較的明るいお酒の私がワインを飲みながら読んだから、若干笑い上戸になっていたけれど、酔っぱらっていなくともゲラゲラ笑っていたはず。ワインを学ぶのは著者を含む酒好き5名。テイスティングだというのにガバガバ飲んで毎度へべれけ。ワインそのものよりも、造り手の顔が好みかどうかで盛り上がる。それでもきちんと成長。私、たまにマグカップでワインを飲むことがありましたが、これからは必ずグラスで飲みます。酔っぱらい、万歳!
読了日:07月03日 著者:三浦 しをん,岡元 麻理恵
https://bookmeter.com/books/9857380

■アンダー・ユア・ベッド (角川ホラー文庫)
今の表紙はこれではなくて、映像化されるさいなどに付けられる二重表紙とかでもなくて、壇蜜なのです。このタイトルで壇蜜で、ストーカーの話となると、エロ系なのか。そうじゃない。片想い相手のベッドの下に潜り込むような変態ストーカー男に感情移入してしまうのはなぜでしょう。それは彼が妄想を募らせたりしないから。彼女に幸せでいてほしい、ただそれだけ。ストーカー男を応援することになったうえに涙腺まで刺激されて苦笑。だけどちょっぴりほろ苦く、甘酸っぱい、情熱に満ちた恋と喜び。もう少しだけ望みを抱いてもいいかもよ、三井クン。
読了日:07月05日 著者:大石 圭
https://bookmeter.com/books/553759

■「最前線の映画」を読む (インターナショナル新書)
挙げられている映画20本のうち、18本は公開当時に劇場で観ています。と、自慢したいところだけれど、本書を手に取るのはそれ以上の人ばかりかも。残りの1本はDVDで観て、もう1本はこの先も観ないつもりだったホラー。しかし本書を読んだら、そういう解釈があるのかと気になり、観たい気持ちが沸々と。こんな解説書を読むと、知らずに観るよりもいろんな知識を持ったうえで観るほうがより楽しいよなぁと思う半面、何も知らなくても楽しめたらええやんと開き直ったりも。いずれにせよ、「上から」なところ皆無の町山さんの解説、大好きです。
読了日:07月07日 著者:町山 智浩
https://bookmeter.com/books/12570536

■雪冤 (角川文庫)
殺人犯として死刑判決を受けた息子。冤罪を晴らそうと奔走する父親と、被害者遺族、弁護士のもとへ、刑事上の時効15年を迎える直前、真犯人を名乗る者から電話。舞台が京都で、なじみのある地名ばかりということもあり、面白く読みはじめたのですが、なんぼ関西人でも初対面の人にこんな口利かんよという言葉遣いにまずひっかかり、中盤は盛り上がりを見せるも、どんでん返しのどんでん返しにドン引き。こうまでして他人の罪をかぶる人ばかりなのには無理があるような。いちばん酔えるのは正義だとしても、それって自己満足にはならないのかなぁ。
読了日:07月10日 著者:大門 剛明
https://bookmeter.com/books/3073025

■本所おけら長屋 (PHP文芸文庫)
地震で本棚が崩壊した実家を片付けに行った折に見つけ、貰ってきたうちの1冊。単細胞な住人の集まる長屋の話はまんま落語。どんな問題も他人事で終わらせず、時に干渉しすぎるから、話がへんてこな方向へ。「万松は禍の元」とはよく言ったもの。ひとつかふたつ、イライラさせられた話もあります。だって、アンタら、鉄斎さんのこと疑いすぎやろ、それだけ世話になっておきながら(笑)。しかし最終話ではそのイライラも飛んでいきました。楽しい。単巻だと思って読み始めたのに、げげっ、10巻もあるんだわ。続編も実家にあるのか確認しなくちゃ。
読了日:07月12日 著者:畠山 健二
https://bookmeter.com/books/6858887

■避雷針の夏 (光文社文庫)
私なんかは映画館に行ける立地の町でなければ住めないと思うのですが、それでも田舎暮らしにはある種の憧れがあります。町全体が家族のようで温かい。田舎とはそういうものだし、そうであってほしいと思っている。そんな思いが見事にぶった斬られるのが、坂東眞砂子の『くちぬい』や本作。よそものがいじめ抜かれる町に越してくるはめになった家庭の娘たちは何を企てているのか。これを読んで田舎暮らしなんてまっぴらごめんと思った後は、乃南アサ原作の映画『しゃぼん玉』(2016)を観て、やっぱり田舎もいいなぁと感じることをお勧めします。
読了日:07月15日 著者:櫛木 理宇
https://bookmeter.com/books/12100028

■夏と花火と私の死体 (集英社文庫)
怖っ。親友に殺された「私」の死体の処理に右往左往する連中の様子を「死体となった私」目線で語るという、なんともシュールな光景。冷ややかなオチが怖すぎて笑いました。皆がおっしゃることですが、これを16歳のときに書いたなんて、乙一すごすぎる。この「なんだか歪な感じ」が進化して『暗黒童話』なんぞが生まれたのだと思うと、作家ってやっぱり変態だわと感心してしまうのでした。ちなみに、現在公開中の『虹色デイズ』で吉川愛ちゃん演じる杏奈が最初に電車内で読んでいるのはこの本かと。高校生は、高校生が書いた本作を読んで何を思う?
読了日:07月16日 著者:乙一
https://bookmeter.com/books/580047

■カトク 過重労働撲滅特別対策班 (文春文庫)
私の勝手な思い込みで決め付けですけれど、労基署へ駆け込む人は二通り、「過酷な状況で悩み抜いて相談しようと駆け込んだ人」と、「気に入らない待遇をチクってやると駆け込んだ人」がいるのではないかと。気にかけなければならないのは、駆け込むこともできずにたったひとりでいる人。労基署のことも、本作に登場するブラック企業の社員同様、お役所だと決め付けていました。でも、お役所仕事に徹する人もいれば、どっちがブラックだと思うほど働いて、声を上げられずにもがいている人を救おうとしている人もいる。死ぬほどがんばってはいけない。
読了日:07月18日 著者:新庄 耕
https://bookmeter.com/books/12881762

■ホテル・ピーベリー (双葉文庫)
中盤まではミステリー色がなく、主人公のいわゆる自分探しの旅 in ハワイのよう。しかしその後、宿泊客のひとりが死亡、続いてもうひとり。私には想像できなかったトリックで、その点では鮮やかです。ただ、好感の持てる登場人物がほぼ見当たらず、共感はしづらい。主人公だって、ロリコンのうえに熟女(とまでは行かないけれど)まで、何でも来いの兄ちゃんだから、ちょっとキモさを感じてしまうのでした。最後まで飽きずには読みましたけれど、ハワイといえばイメージする燦々とした話ではないのでした。確かに、長すぎる休みはよろしくない。
読了日:07月20日 著者:近藤 史恵
https://bookmeter.com/books/8733708

■拝み屋怪談 禁忌を書く (角川ホラー文庫)
ホラーが苦手とか言っておきながら、もはやそれは嘘やろと突っ込まれそうなぐらい、映画にも本にも手を出している最近。ずっと気になっていた郷内さんの本にも勢いで突入。ホラー苦手でも耐え得る怖さと言いたいところだけど、しらふで読む度胸がなくて、ほろ酔いで読みました。ゆえに、怖そうな話は酔っぱらうに努め、想像力を駆使せずに。じゃないとやっぱり怖いのよ、笑い声とかボーッと浮かぶ顔が。ひーっ(笑)。こんな怪談の中に登場する映画が『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)。このギャップはちょっと私のツボでした。
読了日:07月21日 著者:郷内 心瞳
https://bookmeter.com/books/11063152

■路 (文春文庫)
台湾に行ったこともないくせして、私が台湾に寄せる気持ちはとてつもなく大きい。日本で震災等が起きればほぼいつも真っ先に、そして最大級の支援を惜しまないのが台湾。そんな台湾の人たちの想いを日本人はたぶんわかっちゃいない。本作で描かれる台湾高速鉄道についても、日本が新幹線の車両技術を輸出した初めての事例であるにもかかわらず、日本人はあまり知らない。残りの人生のほうが少なくなったら、もう一度会いたい人のことを想う。本作を読むと、よりその想いが強くなります。人生は楽しいものなんだってことを思い出させてくれる人たち。
読了日:07月24日 著者:吉田 修一
https://bookmeter.com/books/9681899

■キッチン・ブルー (新潮文庫)
「幸せごはん小説」とあるけれど、そんなに幸せな話じゃありません。タイトルどおりブルー、ちょっぴり憂鬱な、食べることにまつわる話6つ。会食障害なるものがあるとは知らなくてビックリ、味覚障害でも食感で美味しいと感じられるのだと知ってビックリ、キャバクラで酒の売り上げを伸ばすために採られる荒技にビックリ。しかし本書でいちばんビックリしたのは、新潮文庫なのに、KADOKAWAから出版される同著者の最新作が帯で堂々と紹介されていること。出版社の一致団結を見た気がして嬉しくなりました。どこのでもいいから本を読むのだ!
読了日:07月27日 著者:遠藤 彩見
https://bookmeter.com/books/12922573

■拳に聞け! (双葉文庫)
芸人の話もボクシングの話も今やアリアリで、ちっとも珍しくはありません。まず『火花』『笑う招き猫』を思い出し、便利屋に『まほろ駅前多田便利軒』、そして当然『ボックス!』を思い出す。下町の雰囲気には『泣いたらアカンで通天閣』、時に『戸村飯店 青春100連発』まで連想。だけど寄せ集め感ゼロ。ちょっとそこいらにはおらんぐらい素直な少年の夢に大人が乗っかりまくり、みんなが再び夢を追いかける。読み終えたときには彼らと一緒に3年間を過ごした気持ちに。読み手を置いてけぼりにしない熱さがありました。私の「どストライク」。
読了日:07月30日 著者:塩田 武士
https://bookmeter.com/books/12928886

■娼年 (集英社文庫)
映画版を観たとき、ハシゴした『のみとり侍』は、絡みのシーンを想定していなかった客もいたようで、照れてうつむく客も。この『娼年』の客は、当然それを想定している客のみで、ギャップが可笑しかった。そんな状況が思い出深く、読書中は全て映画版のキャストに頭の中で変換されてしまいました。女もセックスも退屈と断言していた主人公だけど、どんな相手も見下したりしていないことを感じられる言葉の使い方。相手を必ず肯定的に見るところに好感。松坂桃李が適役だったのかどうかわからないけれど、好きなお尻かどうかで決めるしかない(笑)。
読了日:07月31日 著者:石田 衣良
https://bookmeter.com/books/571487
—–

『未来のミライ』

『未来のミライ』
監督:細田守
声の出演:上白石萌歌,黒木華,星野源,麻生久美子,
     吉原光夫,宮崎美子,役所広司,福山雅治他

食べ過ぎ飲み過ぎでへろへろ気味だった土曜日の翌朝も、
いつもとさして変わらない時間に目が覚めてしまいます。
これって、生き急いでいるのか死に急いでいるのか。
睡眠も体力を要するから、若いときのように寝続けることができないんだろうなぁ。

朝8時過ぎには家を出てTOHOシネマズ伊丹で2本ハシゴ、その1本目。

何度観ても熱くなる『サマーウォーズ』(2009)の細田守監督ということで、
期待は否が応でも強くなる。
しかし、その後の作品は『おおかみこどもの雨と雪』(2012)が私は駄目。
『バケモノの子』(2015)は結構好きでしたが、「結構好き」止まり。
『サマーウォーズ』の壁が高すぎて、本作も、「う~ん、まぁまぁ」程度かなぁ。

くんちゃんは4歳の男の子。
お父さんとお母さんの愛情を今まで独占してきたが、妹が生まれる。
妹の名前は「未来」と書いて「ミライ」。

お兄ちゃんなんだから妹に優しく、仲良くしてあげて。
お母さんはそう言うけれど、ミライちゃんが来てからというもの、
お父さんもお母さんもミライちゃんにかかりっきりで、
くんちゃんのことなど二の次どころか、まるで目に入っていない様子。

だだをこねて庭に飛び出したくんちゃん。
するとそこに突然セーラー服の少女が出現し、怒った顔で「お兄ちゃん!」と言う。
彼女はなんと、未来からやってきたミライちゃん。
そしてくんちゃんの家のペット犬、ゆっこまでが男の人の姿で目の前に現れて……。

悪くはないです。酷評の向きもありますが、私は別に嫌いじゃありません。
でも、『おおかみこどもの雨と雪』のときにも思ったように、
どの年齢層をターゲットにしてつくられたものなのかがよくわからない。

子ども向けにしてはタイムスリップのシーンを難しく感じます。
子どもにどういうことが起きているのか説明するのは大人にも難しそう。

産休・育休を取得したのちに仕事に復帰するお母さんたちや、
イクメンのお父さんたちへの応援歌に思えなくもない。
結局のところ、誰も彼もをターゲットにしたから、
誰に向けても中途半端になってしまった印象があります。

それと、細田監督作品には、気になる言葉遣いというのか、
私の嫌いな言いまわしがいくつか。
『おおかみこどもの雨と雪』ではクドイほどの「~してあげる」
本作ではくんちゃんが連発する「好きくない」。
こういうのを耳にすると、日本語にも気を遣っているらしき“ドラえもん”は凄いなぁと。

いちばんおもしろかったのは、くんちゃんの住む家。
お父さんは建築家という設定で、玄関開けたら階段、
階段をまっすぐ上がると突き当たりから右手に伸びる生活空間。
その下に庭が広がり、さらにその下にくんちゃんの遊び部屋。
おばあちゃんが「それにしても住みにくい家だねぇ。
建築家と結婚するとこんな家で暮らすことになるのかねぇ」とぼやくのが可笑しい。
確かにものすごく暮らしにくく、子どもには危険だと思いましたが、おもしろい家です。

ひとりっ子だったボクに弟妹ができて寂しくてという設定なら、
『ボス・ベイビー』のほうがだいぶん楽しめた気が。
映像よりも山下達郎のテーマ曲のほうを後々も思い出してしまう作品。
あとは、星野源麻生久美子の声って、すぐにわかるんだなぁと改めて思ったぐらいで。
上白石萌歌が担当するくんちゃんの声にはどうも違和感があり、
違和感がありそうなのにピッタリな“クレしん”の凄さも感じてしまうのです。
兄妹なら、くんちゃんとミライちゃんより、しんちゃんとひまちゃん。

『サマーウォーズ』を超える細田監督作品、早く出てこい!

それにしても車の後部に荷物積み込み過ぎではないかい?
あれじゃ後ろがまったく見えんって。
—–

『北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイ』

『北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイ』(原題:Liberation Day)
監督:モルテン・トローヴィク,ウギス・オルテ

ナナゲイで3本ハシゴのラストは、またしても北朝鮮の話ですが、
前述の『ワンダーランド北朝鮮』はドイツ/北朝鮮作品、
本作はノルウェー/ラトビア作品です。

2015年8月15日、北朝鮮の祖国解放70周年記念日。
北朝鮮から招待された「初」で「唯一」の海外ミュージシャンは、
スロベニア(旧ユーゴスラビア)のロックバンド“ライバッハ”。

北朝鮮が初めて欧米のロックバンドを招待するということで、
世界中のマスコミが沸き上がったとか。
本作の冒頭でも面白可笑しくニュースを読み上げるキャスターが。

おそらく「初めて呼ばれたオレたち」ということで監督もメンバーも大興奮。
意気揚々と、ちょっぴり(かなり)自慢げなところも見て取れるのですが、
なにせ北朝鮮ですから、勝手なことは何も許されない。
宣伝用写真も選曲もパフォーマンスも背景映像も、すべてチェックされます。
かつ、現地スタッフは照明やマイクなどの舞台装置について知識のない人ばかりで、
ライバッハ側のスタッフは唖然呆然愕然。

それだけ検閲するならなんでこんな過激なバンドを呼んだのか。
ナチスを思わせる見た目に、パフォーマンスだって過激。検閲を通るわけがない。

私が辛かったのは、彼らの音楽そのもの。
日頃好んで聴かない音楽でも、映画を通じて好きになったジャンルが結構あります。
ヘヴィメタをよく聴くきっかけになったのはこれだし、
今でもそんなには聴かないけれど、ヒップホップも悪くないと思ったのも映画の影響。
でも私、ライバッハは無理。
『アイアン・スカイ』(2012)の音楽を担当したのが彼らでしたが、
あれは映画の内容と合っていたから良しとして。
ネオナチ風の見た目についていけないうえに、ボーカルの声が男女とも好きじゃない。
途中で耳をふさぎたくなりました。

『北朝鮮をロックした日』という邦題に、
観客がノリノリで超盛り上がるという話なのかと思ったら、全然。
ごく少数、リズムに合わせて肩を揺らしている人がいるぐらいで、
大半は不思議なものでも見る表情。私のように耳をふさいでいる人もいます。

北朝鮮に呼ばれた初の欧米ロックバンドといっても、
ウリである挑発的パフォーマンスをいっさい見せることができず、
結局、与しやすいバンドと思われて呼ばれたのではと思ったりも。
ロックの殿堂入りを果たしているようなバンド、
たとえばU2とかキッスとかELOとか、
メタリカだったりガンズ・アンド・ローゼズだったりは
呼ばれないというのか呼べないわけで。

聴衆に受け入れられるようにと、北朝鮮の大ヒット曲『行こう白頭山へ』や、
国民的民謡『アリラン』を歌おうとする姿も、迎合しているように思えて、う~ん。
こういうバンドだからこそ、好き勝手やっているところが見たい。
こんなふうに扱われるために行ったわけじゃないでしょうに。
それが北朝鮮という国だから、仕方ないといえば仕方がないか。

それにしても向こうで歌われる曲は、老若男女だれが聴く曲であろうとも、
すべて「元帥様」に捧げる曲。なんなんだ、この歌詞は!
—–