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『だれもが愛しいチャンピオン』

『だれもが愛しいチャンピオン』(原題:Campeones)
監督:ハビエル・フェセル
出演:ハビエル・グティエレス,アテネア・マタ,フアン・マルガージョ,
   ヘスス・ビダル,ホセ・デ・ルナ他
 
シネマート心斎橋で4本ハシゴした翌日は、シネ・リーブル梅田で4本ハシゴ。
確実に命削って映画鑑賞しているような気がします。
これがあっての年間300本達成なのですけれど。
 
知的障害のある人々で結成されたスポーツチームが感動を呼ぶ。
泣けるのは約束されたようなもので、
ちょっと涙の安売りをしすぎではないかとうっすら嫌悪感。
だからパスしようかと思いつつ観に行ったのですけれど。
良かったんだなぁ、これが。
本国スペインで大ヒットを飛ばした作品なのだそうです。
 
背は低くとも有能なサブコーチとしてプロ・バスケットボールチームに勤めていたマルコ。
ところが、旧知のコーチのやり方にどうにも納得できず、
試合中に暴言暴力を働いたところがTV中継までされて、クビになってしまう。
簡易裁判で言い渡された判決は、服役の代わりの社会奉仕活動
知的障害者が集うバスケットボールチームのコーチをすることに。
 
刑務所に入るよりはマシだと行ってみてビックリ。
意思の疎通すら危うく、バスケをするなど到底無理。
しかし、近々開催される試合に出場することが彼らの夢で……。
 
話自体には何の新鮮味もありません。
知的障害者に偏見しか持っていなかったマルコが、
彼らと接するうちに考え方を変えてゆく。
教えているはずが、教えられていたという王道の物語です。
 
でも、オーディションで選ばれたという、実際に知的障害を持つキャストが素晴らしい。
知的障害があるから理解できない、していないということが偏見そのもの。
彼らはわかろうと努めているし、わざわざ努めずともわかっていることもある。
 
妻と別居中のマルコが、彼らのおかげで復縁。
40歳を過ぎている妻は出産を熱望しているけれど、
マルコは年齢ゆえにダウン症等の障害が出る可能性を心配しています。
妻とのその会話を聞いてしまったチームの一員のひとりにマルコが取り繕おうとしたとき、
「いいんだ。僕たちも僕たちのような子どもは生まれてほしくない。
でも父親はあなたのような人がいい」。泣いてしまった。
 
試合に出るからには勝ちたい、それは当たり前の気持ちでしょうけれど、
真剣に戦い、楽しみ、お互いを尊重しあって称えること。それがいちばん。

—–

『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』

『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』(原題:Hevi Reissue)
監督:ユッカ・ヴィドゥグレン,ユーソ・ラーティオ
出演:ヨハンネス・ホロパイネン,ミンカ・クーストネン,ヴィッレ・ティーホネン,
   マックス・オヴァスカ,アンティ・ヘイッキネン,サムリ・ヤスキーオ,ルーン・タムティ他
 
シネマート心斎橋で4本ハシゴのラスト。
 
ずいぶん前に「俺たち、ほにゃらら」という邦題が目白押しでした。
どれもB級確実。これももちろんB級です。でも愛すべき作品。
オンライン予約した時点では10席ほど埋まっているだけでしたが、
入場してびっくり、ほぼ満席。
この手の作品って、客層が面白いんですよ。
このタイトルですから当たり前なんでしょうが、みんなメタルファン。ですよね?
 
フィンランド/ノルウェー作品。
ちなみにフィンランドはメタル大国なのだそうです。
 
フィンランド北部、ロン毛は「ホモ」とからかわれるような片田舎。
ロン毛のままでいることだけは譲れない25歳のトゥロ。
老人介護施設で働きながら、旧友とヘヴィメタバンドを組んで練習に励んでいる。
トゥロはボーカルを務め、ギターはロットヴォネン、ベースはパシ、ドラムはユンキ。
結成して12年になるというのに、まだ一度もステージに立ったことがない。
 
ある日の練習中、フランクと名乗る中年男性がやってくる。
てっきりトナカイの肉を買いに来たのだと思ったら、
ノルウェーで開催される巨大メタルフェスのプロデューサー。
そうと知ったユンキが咄嗟にデモテープを渡すと、
フランクも彼らの演奏を気に入ってくれた様子。
 
連絡係となったトゥロは、フランクの確約も取れないうちに、
想いを寄せる花屋の店員ミーアにフェス出場が決まったと言ってしまう。
小さい町のこと、ミーアが誰彼となく触れ回り、トゥロたちは町の英雄に。
現状を知るのはトゥロだけだから、メンバーたちも大盛り上がり。
フェスに出場する前に町の店のライブに出演することになるのだが……。
 
こんな話がA級作品になるはずもなく、しょうもなと思いながら観ていました。
なのに時折ふきだしてしまうぐらい可笑しい。
 
この日の客はたぶんほぼ全員ヘヴィメタファン。だからヘヴィメタネタできっちり笑う。
例えば、カバー曲ばかり演奏している彼らが「まずはオリジナル曲を作らんと」と言うところ。
ギターのロットヴォネンがオリジナルだよと自慢気にリフを奏でると、
なんでも知っているパシが「それパンテラのいついつのなんとかいう曲」と即座に突っ込む。
事故で呆気なく昇天してしまったユンキの葬儀の席では、
パシが素晴らしい詩を謳って一同感動してシーンと静まり返るわけですが、
パシの詩だとばかり思っていたら、「1980年、ロニー・ジェイムス・ディオ」とか。
客席大爆笑。メタルファンでもないのについていっている私、エライかも(笑)。
 
ゲロネタだけは勘弁してほしかったけれど、
ゲロがゲロっぽくなくて、真っ白キレイだったからまぁええか。
 
エンドロールが回り終わったとき、拍手も起きていました。
本作を観て思ったのは、「ロレス関係の映画とヘヴィメタ関係の映画は劇場で観るに限る」。
観客の一体感が凄くて、めちゃめちゃ楽しいです。

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『スピード・スクワッド ひき逃げ専門捜査班』

『スピード・スクワッド ひき逃げ専門捜査班』(英題:Hit-and-Run Squad)
監督:ハン・ジュニ
出演:コン・ヒョジン,リュ・ジュンヨル,チョ・ジョンソク,ヨム・ジョンア,
   チョン・ヘジン,ソン・ソック,キー(SHINee),イ・ソンミン他
 
たいてい、全部アタリという幸せな年末になります。
去年の4本ハシゴも、1本目の『アイリッシュマン』当たり、
2本目の『2人のローマ教皇』も当たり、そして3本目の本作も大当たり。
めっちゃ面白かった。
 
F1レーサーで大物実業家チョン・ジェチョルが
警察署長に賄賂を贈ったらしいという疑惑があり、
それについて調べていたエリート女性警官ウン・シヨン。
しかし捜査は実らなかったばかりか、交通課に左遷されてしまう。
 
とんでもないところに飛ばされたものだと凹むシヨンだったが、
その人事は先輩警官ユン・ジヒョンの思惑あってのこと。
シヨンの異動先は未解決のひき逃げ事件を扱うひき逃げ専門捜査班で、
ジヒョンによればジェチョルを捕まえるチャンスがあるらしい。
 
ひき逃げ専門捜査班のオフィスは地下の窓もない部屋。
シヨンが出勤すると、そこにいるのは身重の妊婦課長ウ・ソニョンただ一人。
窓際に追いやられたお荷物部署としか思えなかったが、
ソニョンが「我が課のエース」と呼ぶソ・ミンジェと行動を共にしてみると、
並外れた洞察力を持っているうえに、車にもやたら詳しい様子。
 
そんななか、数カ月前に起きたひき逃げ事件の犯人について、
ジェチョルである可能性が浮上、色めき立つシヨンだったが……。
 
登場人物の個性が際立っていて、とても良いのです。
特にリュ・ジュンヨル演じるミンジェは、元暴走族のリーダー。
モサッとしている風なのに、腕をまくれば刺青だらけ、
喧嘩をすれば一網打尽、車のハンドル握ればかっ飛ばす。
そうとは見えないだけに、やるときゃやる姿がカッケー。
ミンジェが暴走族をやめて警官になった経緯がまた泣かせる。
 
チョ・ジョンソク演じるジョチェルは憎らしいことこのうえない。
お目目パッチリ、可愛いかしらんけど私の苦手なタイプで(笑)、
余計に憎たらしさを増しているという。
 
続編ありそうな感じです。
次作がこれより面白くなるとは思えないけれど、観に行っちゃうかも。
ほんと、めっちゃ面白かったんですから。

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『2人のローマ教皇』

『2人のローマ教皇』(原題:The Two Popes)
監督:フェルナンド・メイレレス
出演:アンソニー・ホプキンス,ジョナサン・プライス,フアン・ミヌヒン他
 
シネマート心斎橋にて4本ハシゴの2本目。
1本目に観た『アイリッシュマン』は、209分の長尺に眠くなるはずが眠くならず、
だけど2本目の本作はなんとなく眠くなりそうなタイトルじゃないですか。
監督がフェルナンド・メイレレスだと気づかなければパスしたかもしれません。
だって好きなんですよ、スペイン語とかポルトガル語圏の映画が。
これも『アイリッシュマン』と同じくNetflix独占配信作品
 
2012年にホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿(=現教皇)と教皇ベネディクト16世(=現名誉教皇)の間で
実際に交わされたという対話を再現しています。
眠くなるどころかめちゃめちゃ良くて、対話だけでこんな佳作がつくれるものなのかと驚きました。
 
オープニングからにっこりしてしまう。
ネットがイマイチわからん教皇が航空券を自分で予約するために航空会社に電話。
名前を聞かれて答えたら、「教皇と同じ? 冗談やめてよね」と切られてしまう(笑)。
そんなシーンからスタートします。
 
アルゼンチン・ブエノスアイレスの枢機卿ベルゴリオは、いわば革新的。
聖職者による児童虐待が露見したとき、聖職者の担当をただ異動させただけのカトリック教会を非難。
また、同性愛を認めない教会にも反対の姿勢を見せ、同性愛者も躊躇なく受け入れている。
 
第264代ローマ教皇のヨハネ・パウロ2世が亡くなり、
第265代を選出するための“コンクラーヴェ”がおこなわれたさい、
ベルゴリオも革新的な意見を持つ枢機卿たちの票をいくらかは集めたが、
票集めに余念がなかったベネディクト16世が満々のやる気を見せて教皇に。
 
変わろうとしない教会に嫌気が差し、枢機卿を辞職することを考えるベルゴリオは、
ベネディクト16世に辞職願を提出しようと手紙を書くが、一向に返事が来ない。
仕方なくバチカン市国まで出向こうとしたまさにそのとき、
先方から話がしたいので来るようにとの連絡が入る。
辞職願を手に、ベルゴリオはベネディクト16世に会いに行くのだが……。
 
ベルゴリオにジョナサン・プライス。ベネディクト16世にアンソニー・ホプキンス
ほぼこのふたりの会話劇なのですが、これが圧巻で。
 
生き方も考え方もまるで違う両人。
ベルゴリオが口ずさむのはアバの“ダンシング・クイーン”で、ビートルズにも詳しい。
一方のベネディクト16世はピアノが得意でCDまで出している。
そのCDをアビーロードスタジオで録音したにもかかわらず、ビートルズわからんと言う。
誰にでも気さくに声をかけ、庭師ともすぐ仲良くなるベルゴリオに対し、
ベネディクト16世は他人をよせつけない雰囲気があります。
普通の格好をしてピザまで買いに行くベルゴリオに笑いました。
 
相容れることはないと思われたふたりなのに、話をするうちに様相が変化する。
ベネディクト16世が実は退任するつもりだとベルゴリオに打ち明けるくだりは
観ているこちらも唖然。マジかよオッサンと言いたくなりました(笑)。
ローマ教皇って、死ぬまで在位、死んだら退位というのが普通らしく。
過去に自ら退位を宣言した例はあるそうですが、12世紀の話なのだそうです。
 
我が国の天皇が存命中に退位ということになったのも、
ローマ教皇のこんな例があったからなのかと思わずにはいられません。
 
涙を流すなら嬉しい涙を。
こんな人が現ローマ教皇であることを嬉しく思う。
と思っていたのに、年始のニュースを見て焦りました。
信者の女性の手を教皇がぺしぺしと叩いたとか。
だけど「痛いやんか」と言いたくなるぐらい強い力で
女性が教皇を引っ張っている姿も写っていたようで、
それでも手を叩いたのはあかんことやったと詫びる教皇に人々は同情的とのこと。
ちょっと安心しました。

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『アイリッシュマン』

『アイリッシュマン』(原題:The Irishman)
監督:マーティン・スコセッシ
出演:ロバート・デ・ニーロ,アル・パチーノ,ジョー・ペシ,レイ・ロマノ,
   ボビー・カナヴェイル,スティーヴン・グレアム,ハーヴェイ・カイテル他
 
冬休み初日。前夜は六甲で結構飲みました。
この日の晩は北新地で食事の予定。
朝から晩ごはんの時間までに頑張ればシネマート心斎橋で4本観ることが可能。
無謀な気もするけれど、前日にオンライン予約してしまえば、
這ってでも起きて心斎橋へ行けるんじゃないだろうか。で、予約。
 
懸念どおり、起きるのがツライのなんのって。
でも予約したのに観に行かないなんてもったいないことはできません。
Netflix独占配信で、話題性も評判も高い本作を鑑賞。
209分の大長編、休憩なしのノンストップ。
睡魔にも尿意にも襲われなかったのが凄い。
 
原作はチャールズ・ブラントが2004年に発表したノンフィクション。
第二次世界大戦後アメリカの裏社会の盛衰が描かれています。
原作のタイトルは“I Heard You Paint Houses”、洒落てません?
直訳すると「おまえは家にペンキを塗るそうだな」なわけですが、
「ペンキを塗る」って、つまりは血で家を染めるということなのですよね。
 
「ペンキ塗り」と称されるのは実在の殺し屋。
ロバート・デ・ニーロ演じる殺し屋がその生涯を振り返る形で物語は進行します。
 
1950年代のフィラデルフィア
アイルランド系アメリカ人のフランク・シーランは全米トラック運転手組合の一員で、
イタリア系マフィアに商品を横流ししたために窃盗罪で起訴される。
しかし、客の名前を頑として吐かなかったことが組合とマフィアに評価され、
組合の弁護士ビル・ブファリーノが彼の無罪をもぎとり、
ある地域のマフィアのボスである従兄ラッセル・ブファリーノに紹介。
ラッセルはフランクを気に入り、今度は組合長のジミー・ホッファと引き合わされる。
 
ジミーの信頼も得たフランクは、家族ぐるみで付き合うように。
一方でマフィアからの殺しの依頼を受けると即座に片付ける。
 
1960年、ジョン・F・ケネディが大統領に。
その弟ロバート・ケネディは、兄から任命を受けて司法長官の座に就くと、
かねてから嫌っていたジミーを詐欺罪で追求。
ジミーが刑務所に入っている間に組合の様相は変わり、
組合内で対立していたトニー・プロとジミーの関係は修復不可能となる。
ジミーはリチャード・ニクソンによって釈放されたものの、組合活動は禁止され……。
 
監督マーティン・スコセッシ、ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノの共演。
ここにジョー・ペシとハーヴェイ・カイテルも加わって、重厚な雰囲気がたまらん。
インダストリアル・ライト&マジックという会社の特殊効果により、
フランクの若い頃も老いてからもデ・ニーロがひとりで演じきっています。
そのせいもあるのか、フランクの人生を見せられている間に
同時に50年にわたるデ・ニーロの俳優人生をも見せられているようで感慨が押し寄せる。
 
エンディング曲はインストゥルメンタルなのに、
ハーモニカとギターの音色を聴いているだけで泣きそうに。
マフィアに雇われた殺し屋は、命じられればどんな相手でも殺さなければならない。
人間的に惹かれていたジミーを殺さなければならなくなったときのフランクの表情。
正面からは撃てなかったでしょう。
 
這って劇場へ行った甲斐がありました。すごく良かった。

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