『サンタ・サングレ 聖なる血』(原題:Santa Sangre)
監督:アレハンドロ・ホドロフスキー
出演:アクセル・ホドロフスキー,ブランカ・グエッラ,サブリナ・デニスン他
「メキシコが好き」と言ったまま、
『シカゴ』(2002)やら『ハリポタ』やらにうつつを抜かしてしまいました。
これは、チリ生まれの監督がメキシコを舞台に製作したイタリア映画。
1989年の作品です。
少年フェニックスの父はサーカス団の団長。
ある晩、父が団員の女性と浮気。
その現場を目撃したフェニックスの母は、父のイチモツに硫酸をかける。
激怒した父は母の両腕を切り落とし、みずからも喉を掻き切って自殺。
その様子を一部始終見ていたフェニックスはトラウマを抱え、
口もきけなくなり、精神病院に収容される。
数年後、精神病院の彼のもとへ母がやってくる。
母は彼を連れだす。
両腕をなくしたの母の腕となるフェニックス。
自分の意志とは関係なく、母の思いのままに事が運ばれていくようになる。
父の浮気相手をはじめとして、
フェニックスに近づく女性に激しい憎悪の念を抱く母。
母はフェニックスの手と腕を使い、女性たちを次々と殺してゆく。
フェニックスと母のまさに二人羽織。
全編暗くておどろおどろしく、これはホラー、
なおかつ私の苦手なスプラッタ・ムービーに分類されるでしょう。
でもなぜか大丈夫でした。
ここから思いっきりネタばれですが、
これは暗くて怖いだけの映画じゃない、と私は思う。
よき理解者を得たフェニックスが、最後は母を殺してしまいます。
壮絶な殺戮の繰り広げられた屋敷をあとにした彼が
大勢の警官に取り囲まれ、「武器を捨てて手を挙げろ!」と言われます。
おとなしく、静かに手を挙げる彼。
そして「自分の手だ!」と叫びます。
自分の意志で母を殺し、自分の意志で手を挙げる。
切なさと、喜びと、自信と、
その「自分の手だ!」のひと言に、いろんな思いを感じました。
10年以上前に観たにもかかわらず、これまた忘れられない作品です。
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