MENU
ChatGPT-Image01
ChatGPT-Image02
ChatGPT-Image03
ChatGPT-Image04
ChatGPT-Image05
previous arrow
next arrow

『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』

『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』(原題:Sound of Metal)
監督:ダリウス・マーダー
出演:リズ・アーメッド,オリヴィア・クック,ポール・レイシー,ローレン・リドロフ,
   マチュー・アマルリック,マイケル・トウ,チェルシー・リー,ビル・ソープ他
 
これも前述の『The Guilty/ギルティ』と同じくシネ・リーブル梅田で公開中。
しかしAmazonプライムビデオで配信中なのですよね。
タダで観賞できるとなれば、ついついそっちを選んでしまう。
 
第93回アカデミー賞で作品賞など6部門にノミネートされ、編集賞と音響賞を受賞しました。
受賞は逃しましたが、リズ・アーメッドが主演男優賞、ポール・レイシーが助演男優賞にノミネート。
また、主人公の恋人役でオリヴィア・クック、その父親役をマチュー・アマルリックが演じています。
 
ドラマーのルーベンは、恋人のルーとバンドを組んで活動中だったが、
ある日、自分の耳が聞こえにくくなっていることに気づく。
病院で診察を受けたところ、ルーベンの耳は数割程度しか聞こえていないらしく、
手術するしか聴力を取り戻す方法はないという。
しかし手術には多額(日本円にして何百万円)もの費用が必要で、とてもそんな金は工面できない。
 
ボーカルのルーが合図さえくれれば演奏は続けられるはず。
そう訴えて、だましだまし続けようとするルーベン。
それは無理だと考えたルーは、聴覚障害者の自助グループにルーベンを連れて行く。
 
グループをまとめているのは初老の男性ジョー。
彼によれば、ルーは一緒に入所することはできず、電話等で連絡を取るのも禁止。
ルーベンと同じ聴覚障害者だけで共同生活を送るのだ。
そんな生活は受容できそうにもなく、頑なに拒もうとするルーベンに、
ルーは応援していると言って立ち去ってしまうのだが……。
 
批評家に絶賛されているとのことだったせいか、期待が大きすぎました。
あるいは、なぜか序盤、日本語字幕が声と大いにずれていたせいで集中できなかったのかも。
あまりにずれるので、吹替版に切り替えたのですが、やっぱり嫌。
字幕版に戻して再生し直したら、ずれなくなりました。これってよくあること?
 
期待ほどではなかったけれど、良作だったことは確かです。
昨日まで何の問題もなく聞こえていたのに、ある朝突然聞こえなくなる。
シャワーの水の音、不味すぎるスムージーを作るときのジューサーの音、
何もかも聞こえなくなったときの衝撃。
 
「難聴はハンデではないし、治療すべきものでもない」。
ジョーからそう言われてもハンデとしか捉えられないルーベンは、金を作って手術をする。
この手術で驚いたのは、聴力を復活させるものではないのですね。
聞こえているように脳に錯覚を起こさせているだけで、聞く機能は失ったまま。
手術後は聞こえるようになったとはいえ、雑音が入り乱れる。
その状態に慣れるしかないなんて。
 
聞こえないことを不幸にしか感じられなかったルーベン。
静寂こそが幸せなのかもしれないと思い始めるラストが秀逸です。
 
これもやっぱり劇場で観るべき1本だろうなぁ。

—–

『THE GUILTY/ギルティ』

『THE GUILTY/ギルティ』 (原題:The Guilty)
監督:アントワーン・フークア
出演:ジェイク・ギレンホール,クリスティナ・ヴィダル,イーライ・ゴリー他         
声の出演:イーサン・ホーク,ライリー・キーオ,ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ,
     デヴィッド・カスタニェーダ,ポール・ダノ,ピーター・サースガード他
 
オリジナルはデンマークの『THE GUILTY/ギルティ』(2018)。
めちゃめちゃ面白くて衝撃を受けたのを覚えています。
それがハリウッドリメイクされているというではないですか。
シネ・リーブル梅田で期間限定で上映されていますが、
契約したのになかなか観る時間をつくれないNetflix、今こそ出番。
 
それを聞いただけで期待大。
 
ダイヤルナンバー911、緊急通報センターにオペレーターとして勤務するジョー。
ロサンゼルスで発生した山火事のためにあちこちてんやわんや。
訳あって明日は自らが法廷に立たねばならないジョーは、
勤務中もそのことで頭がいっぱいになり、落ち着かない。
 
あと15分もすればその日の勤務が終了するというときに鳴った電話。
ジョーが取ると、ただならぬ状況にありそうな女性の声が聞こえる。
 
エミリーと名乗るその女性の話を繋ぎ合わせると、彼女は車の中にいて、
運転者である夫ヘンリーに拉致されているらしい。
現在車は高速道路を走行中、夫婦の子どもたちは家に置き去りにされている様子。
ナイフを携えるヘンリーにエミリーは怯えているのか、「監禁は嫌だ」と呟く。
 
一大事だと考えたジョーは、すぐに交通警察に電話。
該当する車を見つけて止めるように依頼する。
一方で、子どもたちの身にも危険を感じ、警官に見に行くように頼むのだが……。
 
じゅうぶんに面白かったですが、オリジナルのほうがよりインパクトがありました。
オリジナルでは主人公が法廷に立つ理由や家庭の事情がより丁寧だった気が。
まぁ、詳しく描けばいいというものでもないと思うので、
サスペンスとしての見せ場は損なわれていませんし、じゅうぶん驚く。
 
しかしオリジナルを観ているとオチがわかっているから、素直にハラハラはできません(笑)。
おいっ、だからさぁ、などと初見とは違う感覚でイライラできて面白い。
 
声の出演者も実は豪華なんです。
ジョーと旧知の警察官にはイーサン・ホーク。声だけの出演は珍しいでしょ。
ヘンリーの声を担当するのはピーター・サースガード
交通警察の一員をポール・ダノが担当していたりします。
 
オリジナルもこのリメイクも、電話の声だけ登場の女の子、凄い役者です。
リメイクの女の子アビーの声はクリスティアナ・モントーヤ。
いつか声だけでない彼女の演技も見ることができますように。
 
ラストシーンはどうかなぁ、これもオリジナルのほうが好きですが、
とにかく面白い作品なので、各国でリメイクしてもよさそう。
まったく、人間の思い込みとは恐ろしい。観て。

—–

『ミッドナイト・トラベラー』

『ミッドナイト・トラベラー』(原題:Midnight Traveler)
監督:ハッサン・ファジリ
 
第七藝術劇場にて、ドキュメンタリー3本ハシゴの〆。
 
アメリカ/カタール/カナダ/イギリス作品です。
 
アフガニスタンの映画監督ハッサン・ファジリは、タリバンから死刑を宣告されます。
彼が撮ったドキュメンタリー作品がタリバンの不興を買ったから。
親しかった友人は政府への不満からタリバンに入れ込み、
しかしハッサンの身が危険だということを知らせてきてくれました。
その友人が殺害されたことを知り、ハッサンは家族4人で出国することを決意します。
 
まず向かったのはタジキスタン。
そこで庇護申請の書類を提出しますが、却下されてしまう。
一旦アフガニスタンに戻ることを余儀なくされ、
その後、安全な場所を求めて一家の過酷な旅が始まります。
本作はその5,600キロに渡る旅を3台のスマホで撮影したもの。
 
食べるものがなくて果実を盗もうとしたら追いかけられたなんてのは笑えます。
でも、ぼったくりの密航業者に娘の誘拐を示唆されるのはもちろん笑えない。
難民キャンプに収容され、買い物に出かけたら、「移民は出て行け」と石をぶつけられる。
収容施設もさまざまで、不衛生なところも多い。
なんだかわからない虫に刺されて、娘の顔も体もぼこぼこになったり。
マイケル・ジャクソンの曲で楽しげに踊る娘の顔をずっと見ていられたらいいのに。
 
金を払えば密入国という手段もある。
けれど、不法に入国すれば、いつまでも追い出される心配がつきまとう。
時間がかかってもいいから合法的に入国したいという妻。
 
夫妻ともに映像に関わる仕事をしているからなのか、
悲惨な中にあっても景色も表情も豊かでとても美しい。
それだけに、彼らが安心して暮らせる日が来てほしい。
いまだに安住の地が見つからないまま。
コロナでより過酷な日々になっているかもしれません。

—–

『パンケーキを毒見する』

『パンケーキを毒見する』
監督:内山雄人
ナレーション:古舘寛治
 
第七藝術劇場にて、ドキュメンタリー3本ハシゴの2本目。
 
結構話題になっているので、ご存じの方は多いかもしれません。
これもよく客が入っています。
 
企画・製作を務めたのは、河村光庸。
『ヤクザと家族 The Family』(2020)などのプロデューサーですね。
このたび彼が手がけたのは、内閣総理大臣・菅義偉の素顔に迫るというもの。
 
本作を製作するに当たり、菅さんのグループに所属する議員や秘書、
懇意のマスコミ関係者、菅さん御用達のホテルからスイーツ店に至るまで、
ありとあらゆる方面の人たちから取材をお断りされたそうです。
 
そんななかでインタビューに応じたのは、石破茂、江田憲司、村上誠一郎。
元通産・経産の官僚で、“報道ステーション”での発言のせいで降板させられた古賀茂明。
元文部・文科の官僚で、森友問題を追及する前川喜平などなど。
 
こうして政治的な映画を観るとき、偏った見方にならぬよう、
中立でいようと思うがゆえというのは言い訳ですが、私はいつまで経っても政治バカのまま。
学生団体“ivote”の存在も初めて知りました。
彼ら言う、「若者が選挙に行かない理由」や「多数派に投票してしまう理由」は腑に落ちる。
ニュースに興味を持てず、「パンケーキ」という言葉が出てきたらそれに惹かれる。
そうなのかもしれません。政治バカのままでいたらあかんなぁ。
 
国会答弁ってこんなにも面白いものなのですね。
一日中観ていられるものなのかも。
 
『ベイビーわるきゅーれ』に「警察より政治家のほうがよっぽど怖い」、
みたいな台詞があったのを思い出します。うーむ、深い。
 
そうそう、『バケモン』のナレーションにケチをつけました。
古舘寛治のこのナレーションは絶品です。

—–

『ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。』

『ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。』
監督:島田陽磨
 
前夜に『死にたくなったら電話して』を読んだら十三に行きたくなり、
第七藝術劇場にて、ドキュメンタリーを3本ハシゴの1本目。
 
熊本県で訪問介護の仕事に就いている林恵子さん。
成人した子どもたちが出て行った後、恵子さんは認知症の姉を引き取って暮らしています。
 
彼女にはもう一人の姉、愛子さんがいました。
恵子さんより20歳上の愛子さんは、母親の亡き後、弟妹の面倒をひとりで見ていました。
なかでも愛子さんによく懐いていたのが恵子さんでした。
 
しかし在日朝鮮人の男性から見初められて結婚した愛子さんは、
1960(昭和35)年、政府が後押しする「北朝鮮への帰国事業」に乗り、
日本人妻として北朝鮮へと渡ってしまいます。
3年経てば帰ってくると言っていたのに、そのまま半世紀以上が経ちました。
 
北朝鮮から来る愛子さんの手紙に書かれていたのは、金や衣服の無心。
手紙のみならず電話がかかってくることもあり、
ほとほと嫌になった恵子さんは、愛子さんからの連絡を無視するようになります。
 
けれど、歳を取って初めてわかる我が姉の気持ち。
大好きだった姉にこのまま会わずにいてよいものだろうか。
一方の愛子さんも90歳を前に、弟妹の、特に恵子さんが元気かどうかを知りたくて、
再び連絡を取れるものなら取りたいと思いはじめます。
 
姉妹の58年ぶりの再会。
両親の墓参りをしたいという愛子さんの願いは叶わず、恵子さんが北朝鮮へ。
さまざまな規制のもと、やっと会えたふたり。孫同士も会うことができました。
 
愛子さんの孫が歌う曲にはどれもこれも「将軍様」やら「党」やらの歌詞があり、
なにやらとても複雑な気持ち。
国交が正常化されたら行き来できると愛子さんは言うけれど、そんな日は来ない。
 
コロナ禍の前に姉妹が会えたことは本当によかった。
今は手紙を送ることすら許されていないそうです。
愛子さんの無事を祈る。

—–