『ランズエンド 闇の孤島』(原題:Blood)
監督:ニック・マーフィ
出演:ポール・ベタニー,スティーヴン・グレアム,マーク・ストロング,
ブライアン・コックス,ナオミ・バトリック,ベン・クロンプトン他
もういっちょ、未公開の「TSUTATA独占レンタル作品」を。
『アメリカン・ビューティー』(1999)のサム・メンデス監督が製作総指揮に当たり、
ジェニファー・コネリーの旦那、ポール・ベタニーをはじめとして、
『裏切りのサーカス』(2011)でも共演したスティーヴン・グレアムとマーク・ストロング、
マーロン・ブランドとどこかかぶってしまう狸親父のブライアン・コックスなどなど、
地味ながら芸達者なイギリス人俳優を揃えています。
引き潮のときだけ現れる島を表した邦題が付いていますが、
原題は決して断ち切ることのできない血の絆を示す“Blood”。
どんより曇った寂しい光景からスタート、もろ私好み。
イギリス、ランカシャーの海に近い町に暮らす兄弟、ジョーとクリシーは同じ署の刑事。
父親のレイも元刑事で、認知症の傾向が見られる今、
自分はまだ現役であると疑わず、たまに署を訪れる。
同僚にとってもそれはすでに日常の一部で、みんなで上手くレイに取りなすと、
独身のクリシーがレイを連れ帰り、日々の面倒を見ている。
ある日、12歳の少女アンジェラの惨殺死体が発見される。
容疑者として挙がったのは、前科者のジェイソン。
アンジェラに性的いたずらを受けた様子はないものの、
かつて猥褻罪で逮捕されているジェイソンが犯人に違いないとジョーは考える。
ジェイソンは出所後に教会で奉仕に務めている。
心を入れ替えたのではと言う奴もいるが、ジョーにはそうとは思えない。
母親と暮らすジェイソンの自宅を捜索すると、
窓から撮影したとおぼしきアンジェラの何枚もの写真と、
事件当日アンジェラが身につけていたバングルが。
ジョーとクリシーは直ちにジェイソンを連行。
しかし、これだけでは犯人だと断定する証拠にはならない。
自白を得ようとするもジェイソンは否認。結局釈放されてしまう。
昔、同様の事件で証拠の決め手を欠き、容疑者を釈放したところ、
すぐにまた犠牲者が出たことを忘れられないジョーは、ジェイソンを野放しにできない。
惚けたレイがつねづね武勇伝として語っている、
引き潮の島へ容疑者を連れていけば簡単に自白するという話を実行しようと、
クリシーとともにジェイソンを車で拉致する。
にやついていたジェイソンも、レイの話どおり怯えだして自白。
さらにジェイソンが口走った言葉が、
アンジェラの恥骨近くにあったタトゥー、“4 REAL”(=for real(本当に)の意)だったことから、
ジョーの怒りは沸点に達し、シャベルで殴り殺してしまう。
絶対にバレてはならない。ジョーとクリシーは死体を埋めると、証拠隠滅を図る。
ところがその後、同僚のロバートが真犯人を逮捕。
ジェイソンの母親が息子の行方不明を訴えたことから、クリシーは落ち着かない。
ジョーはなんとか隠し通そうと画策するのだが……。
未公開で、そんなに観る人もおらんやろっちゅうことで、
いつもどおりほぼネタバレしてしまいましたが、シ、シブイです。
特にロバート役のマーク・ストロング、かっこいいハゲ!
キレ気味のジョーに嫌みを言われてもサラリ、仲間やその父親のことを思いやります。
けれども捜査に対する信念は決して曲げることがありません。
思い込みで殺人を犯してしまったジョーに、
ロバートがボソッとつぶやく「怒りと情熱はたまに混同される」の言葉が印象的。
ジェイソンの母親が息子のことを信じてやれなかったことを悔いる姿や、
ジョーの娘ミリアムがいったい何があったのか涙ながらに問うシーン。
血縁関係にある者と、妻や恋人などいわば他人が持つ感情とは異なり、
原題の“Blood”の意味が強く浮かび上がります。
「ヘマをしたら凹め。凹まなくなったら終わりだ」、正気だったころからのレイの言葉。
凹んでいる間はまだ希望があるのか。
甘くないラストですが、だから、いい。
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