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『コーポ・ア・コーポ』

『コーポ・ア・コーポ』
監督:仁同正明
出演:馬場ふみか,東出昌大,倉悠貴,笹野高史,前田旺志郎,北村優衣,藤原しおり,片岡礼子,
   大谷麻衣,山本浩司,白川和子,岩松了,芦那すみれ,中村更紗,広山詞葉,マッコイ斉藤他
 
TOHOシネマズ西宮にて、2本ハシゴの2本目。
 
原作は岩浪れんじの同名漫画。
芥川賞受賞作家西村賢太がファンだったらしく、第1巻の刊行時に帯文を寄せたとのこと。
西村さん、まだ50代前半だったのに、昨年お亡くなりになっちゃいましたねぇ。
 
イオンシネマ茨木で何度も予告編を目にして面白そうだと思っていました。
茨木で観られたら体力的にも楽だったのに、仕事帰りの時間には上映なし。
致し方なく西宮まで行ったというわけです。
仁同正明監督の作品を観るのは私は初めて。さて、どうでしょう。
 
大阪の昭和レトロを醸し出している安アパート“コーポ・ア・コーポ”。
冒頭直後、住人のひとり・山口が自室で首を吊って自殺するシーン。
取り立てて慌てるでもなく、山口が残していった数々の電化製品を物色するのは以下の面々。
 
実家を飛び出して、家族の誰にも居所を知らせないままのフリーター・辰巳ユリ(馬場ふみか)。
どんなときもスーツ姿でビシッと決めて女を騙す貢がせ男・中条紘(東出昌大)。
女にモテるがすぐにキレる日雇い労働者・石田鉄平(倉悠貴)。
自分のタバコと誰かのタバコをすぐに交換したがるおばちゃん・恵美子(藤原しおり)。
大家が家賃の取り立てに来るとそれをみんなに知らせて回るおっちゃん・宮地友三(笹野高史)。
 
先日観た『正欲』のような、登場人物ひとりずつを取り上げてゆく章仕立て。
 
みんなワケありで、これでいいと思いながら暮らしているわけではありません。
かといってなんとかしなくちゃという焦燥感は見えず、ゆるくてイイ。
 
タバコを交換したがるおばちゃんだけは私には本作に必要だったとは思えず、
おそらく原作ではインパクトの強い立ち位置なのではないでしょうかね。
映画になったら浮きまくりで、彼女が出てくるたびに少々シラけてしまうはめに。
この役を演じる藤原しおりって、どこかで見たことがあると思ったらブルゾンちえみだったのですね。
 
ユリの居所を見つけて会いに来る弟役に前田旺志郎。母親役には片岡礼子
この母親が序盤でユリのことを罵倒するのですが、終盤のシーンがめちゃくちゃよかった。
なんとなく母親に会いたくなって母親が勤めるスナックに向かったユリ。
客の見送りに出てきた母親はやっぱり冷ややかだけど、
仕事が終わるまで向こうの朝5時まで開いている喫茶店で待っていろとユリに言う。
ところがその喫茶店が臨時休業していて、それに気づいたときの母親の慌てぶり。
慌ててユリを探し回る姿に、声をかけないまま、でもニヤリと笑って立ち去るユリ。
今年観た映画の中でトップ10入りするぐらい好きなシーンでした。
 
アパートの一室でひそかにいかがわしい商売をする友三。
そこで働くこれも曰く付きの「踊り子さん」役、大谷麻衣もとても素敵でした。
 
何がよかったとか、よくわからない。でも好きでした。
だけどこれ、ロケ地は大阪じゃないみたい。こんなに大阪のふりしといて、いったいどこ!?

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『ロイ・ハーグローヴ 人生最期の音楽の旅』

『ロイ・ハーグローヴ 人生最期の音楽の旅』(原題:Hargrove)
監督:エリアン・アンリ
 
TOHOシネマズ西宮で2本ハシゴの1本目。
仕事帰りに萎えそうな気持ちを盛り立ててヨレヨレしながら西宮まで行くのだから、
本命の2本目の前に観るのも家の近所では上映していない作品を。
で、本作にしました。
 
1969年10月、テキサス州に生まれたロイ・ハーグローヴは、10代の頃に才能を開花させ、
瞬く間に時代の寵児となった伝説のトランペット奏者なのだそうです。
私は音楽なら基本的に何でも好きですが、自分がピアノを習っていたこともあり、
どの楽器がいちばん好きかと聞かれたらピアノと答えます。
いちばん興味があるのもピアノで、管楽器にはわりと疎く、
トランペット奏者としてすぐに思い浮かぶのはマイルス・デイヴィスぐらい。
だから、こんなにも有名な人を今まで知らずに来ました。ごめんなさい。
 
絶対的な耳を持つ彼は才能を発揮し、ジャズ界で巨匠と呼ばれるほぼすべてのミュージシャンと共演。
しかし生来悪かったとおぼしき腎臓に30代のときに耐えがたい痛みをおぼえ、
透析を受けながらツアーに臨むも、49歳で亡くなってしまったとのこと。
 
本作はまさか最期になるとは思わなかったツアーの模様を含め、
ロイと昔なじみの女性映画監督エリアン・アンリが取材して撮り上げたドキュメンタリーです。
 
デビューしてすぐに彼のマネージャーとなったラリー・クロージアは善人か悪人か。
インタビューに答えるミュージシャンの面々は、「ロイのことを嫌いで彼から離れた人はいない」、
要はマネージャーがアカンと言います。
 
実際、本作を撮るさいにも、ツアーの模様をフィルムに収めることを希望した監督をラリーは拒絶。
それに関してロイとラリーが言い争う姿はラリーの了承のもと撮影されていますが、
結局ラリーは最後まで映画にすることを拒否、今もそうらしい。
 
ロイの死後、2軒あったはずの家はなくなり、貯金はできない性分だったとはいえ、
少なくとも数十万ドルあったといわれる金も消え失せている。
いったいどこに行ったのか考えれば、やっぱりマネージャー!?と思わざるを得なくて。
 
そんな黒い話も交えつつ、でもロイの奏でる音を存分に楽しめる作品です。
映画の中では彼が作った曲を使えないから、他者が作った曲と即興で演奏された曲ばかりだけれど。
余計なことを考えずに観たい。
でも「お金の管理はちゃんとしておかないと」、監督のそんな声も聞こえてきます。

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『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』
監督:古賀豪
声の出演:関俊彦,木内秀信,種崎敦美,小林由美子,白鳥哲,飛田展男,中井和哉,沢海陽子,山路和弘,
     皆口裕子,釘宮理恵,石田彰,古川登志夫,沢城みゆき,庄司宇芽香,松風雅也,野沢雅子他
 
封切り日にイオンシネマ茨木のレイトショーにて。
21時過ぎからの回だというのに、結構な客入り。“ゲゲゲの鬼太郎”人気の証か。
 
“ゲゲゲの鬼太郎”の作者で漫画家の水木しげるは、2015(平成27)年に93歳で他界。
今年が生誕100周年に当たる年ということで、それを記念して制作されたのが本作。
のちに目玉おやじとなる鬼太郎の父親(本作ではゲゲ郎と呼ばれる)を主人公として、
水木との出会いからゲゲゲの鬼太郎がこの世に生まれるまでの物語です。
アニメのわりにグロいシーンが多く、PG12指定となっています。
 
1956(昭和31)年。帝国血液銀行に勤める水木は、野望にあふれる社員。
あるとき、彼が担当する龍賀製薬の当主・龍賀時貞が亡くなったとの報せが届く。
龍賀といえば、日本の財界を牛耳る一族。
龍賀製薬では秘密の薬が開発されているという噂があり、その秘密を解き明かせば出世確実。
お悔やみを言いに行く役目を自分が果たしたいと、帝国血液銀行社長たちに名乗り出る水木。
 
龍賀一族が暮らす哭倉村へと到着した水木は、時貞の遺言状が開封される場に同席。
てっきり時貞の次男・孝三が龍賀製薬を継ぐものと思われていたのに、
明らかにアタマが弱い長男・時麿に何もかも遺すという内容だった。
しかも時麿に何かがあったときには、時貞の三女・長田庚子の息子・時弥に引き継がれるという。
孝三にとっては晴天の霹靂。どうにも納得できない思いが募る。
 
ところが翌朝、時麿が何者かに殺される。
容疑者として引っ捕らえられたのはよそ者で名乗ろうともしない。
即刻首を刎ねられそうになったところを、それはアンマリだと水木が留める。
そのせいで水木は投獄された謎の男を監視する役目を仰せつかってしまう。
 
謎の男のことを“ゲゲ郎”と呼びはじめた水木は、彼が幽霊族であり、
いなくなった妻を探して哭倉村へやってきたことを知るのだが……。
 
遺言がらみだから、なかなかにドロドロしています。
横溝正史なんかの雰囲気も漂っていて、目が離せません。
 
龍賀一族が幽霊族を拉致していた理由がとてもおそろしく、おぞましい。
自分にとって損か得かしか考えていないと思われた水木が、
途中からはゲゲ郎の良き相棒となり、決して彼を見捨てない。カッコイイ。
 
ゲゲゲの鬼太郎が本当にこんなふうに誕生したのかは私は知らなくて、
なんだかちょっと読みあさってみたい気持ちに駆られています。
きっと今後も読み継がれる漫画に違いない。
 
ひとつだけ、まったく関係ないとも言える話を。
本作を観る数日前に“水曜日のダウンタウン”の「名探偵津田」を観ていたせいで、
次々と殺される龍賀一族の人たちが、あの村人たちとかぶって困りました(笑)。

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34回目の『トップガン マーヴェリック』

もう何回目だか忘れかけていました。
そうでした、32回目と33回目の『トップガン マーヴェリック』は109シネマズ箕面のScreenXで観たのですよね。
 
4カ月ぶりの鑑賞は、なんばパークスシネマのライブ音響上映
 
ここまで繰り返し観ているのは、やっぱりのことがあったからです。
劇場公開されたのは去年の5月27日でした。
その週に弟の体調が急変。公開日前日だった26日、病室で弟に会いました。
まともに話すことができた最後の日と言ってもいいと思います。
翌日の公開初日に1回目を観て、まるでこれを観ているかぎり弟は大丈夫と思うかのように、
翌日には2回目を観る。公開の1週間後に弟は逝ってしまったのですけれど。
 
そのときのことを思い出すから、こうして久しぶりに観るとなんだかグッと来ます。
マッハ10を見せてやるとマーヴェリックが飛行するシーンの空。美しい。
相変わらず笑うところは同じで、やっぱり好きだなぁ、
マーヴェリックが森の中でルースターを突き飛ばし、「何を考えているんだ」と言うのに対して、
「考えるなと言っただろ」とルースターがキレるシーン。
 
連日観ていた頃はうたた寝してしまうこともあったけど、今回は寝ませんでした。
この上映は腹の底にズシンと響く。
2月にまたライブ上映があるみたい。必ずまた観る。

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『正欲』

『正欲』
監督:岸善幸
出演:稲垣吾郎,新垣結衣,磯村勇斗,佐藤寛太,東野絢香,山田真歩,
   宇野祥平,渡辺大知,徳永えり,岩瀬亮,坂東希,山本浩司他
 
イオンシネマ茨木にて。
 
原作は朝井リョウの同名ベストセラー小説ですが、これも未読だなぁ。
面白かったというのか、とても興味深かったので、早速文庫本を注文しました。
 
どこからあらすじを書けばいいのか。
登場人物それぞれの視点からの章仕立てになっています。
 
まず最初に登場するのはサラリーマンの佐々木佳道(磯村勇斗)。
会社の食堂の給水器前、コップから溢れる水をぼんやりと見つめる彼の姿が印象的。
世の中には情報が多すぎる。
そしてその情報はすべて、明日も生きたいと思う人のための者。
死んでしまいたいと思っている人のための情報はない。
 
佳道と同様に考えていると思われるのが家具店に勤める桐生夏月(新垣結衣)で、
このふたりは「水」に対して「普通の人」とは異なる感情を抱いています。
水を見つめること、水に触れることで興奮をおぼえる。
人間に対しては性的欲望を抱けないのに、水にはそういった欲望を持つ。
 
大学生の神戸八重子(東野絢香)は男性恐怖症で、男性と話すことはできず、
男性に少しでも触れられようものなら過呼吸を起こしてしまいます。
そんな彼女が同じ大学に通う諸橋大也(佐藤寛太)とだけは普通にしゃべれる。
けれど、大也のほうは八重子にまるで興味がないらしく、とてもつれない。
実は大也も佳道や夏月と同じく水こそがその対象。
 
寺井啓喜(稲垣吾郎)は検察庁に勤務する検事
不登校になった一人息子の気持ちをまったく理解できません。
息子を賢明にかばう妻(山田真歩)の気持ちもわからず、
フリースクールの指導者と共に動画撮影を始めた妻と息子に嫌悪感を募らせています。
 
こんな登場人物たちの人生が少しずつ交錯。
新垣結衣の表情が今まで見たこともないほど暗くて、こんな演技もできるんだと驚愕。
そうだったからこそ、彼女と中学時代に同級生だった佳道が再会した後に、
自分たちのことをカムフラージュするために結婚することを選び、
明るい笑顔が見られるようになるのは嬉しいこと。
「わかりあえる人と一緒に暮らしています」、その言葉がどれだけ光に溢れていることか。
 
水に興奮するなんて、あり得ないと断言する検事。
自分がどんな人間かをひた隠しにし、誰にもばれないように生きてきたその生き様を
「あり得ない」と決めつけるなんて、してはいけないこと。
そういう人もいるのだということを理解しようとする検事の補佐役、宇野祥平は、
台詞は多くなくても、まなざしに戸惑いと優しさが感じられます。
 
自分と違う指向、嗜好、思考の人を駄目だと決めつけることがないように。
「いなくならないから」、最後の言葉に救われる。

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