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『太陽の家』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の14本目@伊丹)

『太陽の家』
監督:権野元
出演:長渕剛,飯島直子,山口まゆ,潤浩,瑛太,広末涼子,
   松浦慎一郎,蛯沢康仁,柄本明,上田晋也,利重剛,小林且弥他
 
中学から高校時代にかけて、長渕剛が好きでした。
ラジオっ子だった私は、オールナイトニッポンで彼を知り、
デビューアルバムから5枚目のアルバムまでは買いました。
しかしもともとアマノジャクな私は、彼が売れっ子になるとともに聴かなくなり、
この5枚目辺りはほぼ惰性で買っていた気がします。
やがて肉体改造を始めた彼が、見た目も歌も歌い方も変わってしまってからは
まったく聴かなくなりました。
 
5枚目のアルバムはほぼ惰性で買ったと言っているわりに、
長渕剛の曲で何がいちばん好きかと聞かれたら、
たぶん、5枚目のアルバムに収録されている“愛してるのに”か、
買うのをやめた6枚目のアルバムの1曲目、“Don’t Cry My Love”と答えます。
このころの剛が、このころの歌い方で歌っているのが好きなので、
今の歌い方で歌われても駄目。好きじゃない。
 
そんなわけで、俳優としての彼にもまったく興味がないから、
彼主演の映画もドラマも観たことがありません。
本作もフリーパスを所持していなければ観に行ったかどうか怪しい。
監督は“相棒”シリーズ等のTVドラマを多数手がける権野元。
 
人情に厚い大工の棟梁・川崎信吾(長渕剛)は女好きが玉に瑕。
妻・美沙希(飯島直子)と年頃の娘・柑奈(山口まゆ)の3人暮らし。
ある日、保険外交員・池田芽衣(広末涼子)と出会い、
彼女が小学生の息子・龍生(潤浩)を育てるシングルマザーであることを知る。
放っておけなくなった信吾は龍生の面倒をみるように。
内気な龍生も信吾に懐いて心を開きはじめる。
 
しかし、体の不調を感じた芽衣が病院に行った結果、数週間の入院が必要に。
芽衣から相談を受けた信吾は、彼女が出張すると偽って、
その間、川崎家で龍生を預かることにするのだが……。
 
私が好きだった頃の剛は影も形もありませんからね。
どんな演技をするのかなと思っていたら、ふーん、あ、そう(笑)。
 
だいたいテレビ的ですよね。テレビ的というのが正しいかどうかわからんが、
建築現場を通りかかった向かいのハイツに住む美女が、
現場の棟梁をいきなり「家でコーヒーどうですか」なんて誘います?
簡単に家に上げて、カレーまで食べさせて、頼みがあるんですって何よと思ったら、
今月の保険のノルマが苦しいから保険に入ってくださいって。
初対面ですよ、初対面。あり得ん。
 
このシーン要るか!?と苦笑いしたのは、
上半身脱いだ剛が黙々と体を鍛えるシーン。何の関係がありまっか。
『悪の教典』(2012)の伊藤英明を思い出しましたね。
あっちはすっぽんぽんやったから、下穿いてるだけマシか。
 
私は昔々の剛に思い入れがあるため、この彼はやっぱり「違う」のですけれど、
マッチョになってからの長渕ファンにとっては良い作品なのでは。
私もなんだかんだ言うて、瑛太(川崎家で息子同然に育てられた弟子)に泣かされましたし、
観てあかん作品ではないと思います。
 
こうして書いていたら久々に昔の曲が聴きたくなり、YouTubeで検索しましたけれど、
なかなかないんだなぁ、昔の歌い方の剛の映像が。
1980年代後半はすでにマッチョな剛なんだもの。もっと前の素直な歌い方のが聴きたいねん!

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『リチャード・ジュエル』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の13本目@西宮)

『リチャード・ジュエル』
監督:クリント・イーストウッド
出演:ポール・ウォルター・ハウザー,サム・ロックウェル,キャシー・ベイツ,
   ジョン・ハム,オリヴィア・ワイルド,ニナ・アリアンダ他
 
前述の『ジョジョ・ラビット』とハシゴ。
 
1996年、オリンピック開催中のアトランタ
警備員のリチャード・ジュエルは高齢の母親ボビと2人暮らし。
 
ある日、イベント会場でたむろする若者たちを追い払った折、
ベンチの下に不審なリュックが置かれているのを発見。
どうせ何でもないに決まっているというイベントスタッフや同僚たちに対し、
マニュアルどおりに対処すべしとリチャードは通報。
中身はいたずらではなく本物の爆発物だとわかり、
リチャードら警備員や警察官はただちに客を避難させる。
 
死者を2人は出したものの、爆破テロが大惨事となることは免れて、
マスコミはこぞって彼を英雄として報道。
テレビをつければ息子のニュースで、ボビも大喜び。
 
ところがFBIがリチャードに疑いの目を向けはじめる。
地元メディアのジャーナリスト、キャシー・スクラッグスはいち早くそれを察知。
容疑者リチャード・ジュエルとしてスクープ報道したために、
英雄から一転、リチャードは全国民から激しいバッシングを受けるようになる。
 
マスコミに家を取り囲まれ、外に出られない状態が続くなか、
リチャードを支えるのはボビと弁護士ワトソン・ブライアントだけで……。
 
図らずもハシゴした2本共に出演していたサム・ロックウェル
なんかもう、好きだ〜。
だらしない兄ちゃん役も似合うし、今回はこんな弁護士役。
 
冤罪がこうしてつくられるのだと思うと憤りを感じます。
ちょうどこれを観た翌日にDVDで『BOX 袴田事件 いのちとは』(2010)を観ました。
リチャードは袴田巌さんのように長時間の取り調べを受けたり
拷問を受けたりということはなかったけれども、
一旦警察から目をつけられたら何が何でも犯人にされてしまう、その姿が重なります。
 
過去にちょっとした問題はあって(そんなの誰でもあると思うけど)、
犯人に仕立て上げやすい人間。悲しいけれどそういう人はいる。
リチャードが早世してしまったことは残念ですが、
早いうちに疑いが晴れてちゃんと職も得て、そして真犯人が捕まったことは救い。
 
キャシー・ベイツ演じる母親が息子を抱きしめて「守れなくてごめん」と謝るシーンは、
世の中のお母さんたちにとっては胸が締めつけられる思いでは。
 
クリント・イーストウッドのシワシワの裸体はもう見たくないので(笑)、
こんなふうに今後も監督に徹してくれることを望みます。

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2020年1月に読んだ本まとめ

2020年1月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:3867ページ
ナイス数:944ナイス
 
■たとえば、君という裏切り (祥伝社文庫)
感想書きますよ、書きますけれど、これは何にも知らずに読むほうが絶対面白いですよね。作家買いをしたものだから、内容についてはちぃとも知らず、連作短編だと思い込んで読み始めました。第2章に入り、なんじゃこりゃ、別立ての話か、それにしてもしまらん、どうせぇっちゅうねんなどと悪態をつきかけ、第3章で「おみそれしました」。複数の人物の「それ」が変わっているのはちょっとずるいかなとも思うのですが、毎度のことながらこの人には鮮やかに騙される。そしてとても嫌な話。性別が謎だと今日まで思っていましたが、猥談はいかにも男性。
読了日:01月02日 著者:佐藤青南
 
■MASK 東京駅おもてうら交番・堀北恵平 (角川ホラー文庫)
まったく、人間の思い込みってどんだけ偏見に満ちているんだか。「恵平」って確かに読めん。でも「平」と付いたら男の名前だと思い込んでいたものだから、「えーっ、女なの!?」とたまげました。“藤堂比奈子”シリーズを読了して厚田班ロスがようやく癒えたというのにまた手を出してしまった、別のシリーズに。恵平と書いて「けっぺい」、じんぞう先輩とのコンビが楽しい。事件は相変わらずグロいけれど、ナミヤ雑貨店を思わせるようなファンタジーでもあります。男前で超絶綺麗なドラァグクイーン、ダミさんのファンになりました。今後も楽しみ。
読了日:01月04日 著者:内藤 了
 
■デトロイト美術館の奇跡 (新潮文庫)
正直に言います。単に薄さに惹かれて買いました。この著者は私にとってビミョーなんです。いつも序盤はめちゃくちゃいいと思って読んでいるのですが、終盤は熱すぎてちょっと引いてしまう。だから世間の人気ほどにはのめり込めずにいました。でも本作は熱すぎない。もしかすると、いつものマハさんが好きな人なら物足りなく感じるぐらいかも。言い得て妙の「なんと気難しい、一生懸命な顔」の《マダム・スザンヌ》。彼女を見つめていたい、ただそれだけの人たちの想いが叶う。アートの素養がなくたって彼女は受け入れてくれるはず。美術館に行こう。
読了日:01月07日 著者:原田 マハ
 
■翼がなくても (双葉文庫)
思っていた以上に「アスリート」の物語。ミステリーの部分よりも、義肢で走る陸上選手の話の占める割合が大きい。ヒロインのことをあまり好きになれず、かつ、私の苦手な「無駄に金を使った海外ロケ」みたいなイメージがあって(海外ロケがあったわけじゃないけれど)、中山作品の中ではイマイチな読後感。でも、ここで御子柴弁護士に会えるなんて嬉しいじゃないですか。“御子柴弁護士”シリーズファンがニヤリとすることは間違いなし。なんだかんだでひと晩で読み切るまで寝られなかったのですから、東野圭吾と並んで私が読まされてしまう作家。
読了日:01月09日 著者:中山 七里
 
■十七歳だった! (集英社文庫)
お兄さん。かつてあなたは確かに妹さんよりも売れっ子でした。それがいつのまにやら追い抜かれ、今や「マハの兄」といわれる状況に。このあいだ妹さんの著作を読んだ私はふとお兄さんのことを思い出し、急に昔の作品を読み返したくなって本屋へ。「原田」の書棚にたどり着いて呆然。マハ2段ぶち抜き、宗典わずかにこの1冊。大麻で捕まったのがあかんかったのでしょうか。いや、その前からすでにマハの時代になっていましたよね。妹さんのあんな小説の合間に、ふとお兄さんのバカ話が読みたくなるのです。比べたりしないから、戻ってきてください。
読了日:01月10日 著者:原田 宗典
 
■小説 シライサン (角川文庫)
今年も映画館で300本観ることを目標にしていると言っても、日本のホラーは苦手だから、これは絶対ムリなやつと決めつけてまったくスルーしていました。ところが書店で平積みされているのを見かけ、「えっ、原作乙一なの?」と思わず購入。1件目の眼球破裂でやめたくなりつつ最後まで。ホラーを読んだときって不思議ですね。たいして怖くないやんと余裕をかましていたはずが、必ず怖い夢を見る。あの世に連れて行かれかける夢を見ました(泣)。映画がヒットしたら、シライという苗字の子、いじめられるやろと思ったけれど、シライサン、それか!
読了日:01月12日 著者:乙 一
 
■戦場のコックたち (創元推理文庫)
日常の謎系といっても舞台は戦場。すでに日常ではありません。第二次世界大戦中、志願して戦線へと降り立った青年ティム。腹が減っては戦ができぬ。料理上手の祖母に育てられて腕におぼえのある彼は、コック兵に挙手します。丁寧に綴られた物語で、読書にスピード感を求めるような人には不向きかも。しかしハマる人であれば、ティムと共に過ごすうちに、かけがえのない友を得たような気持ちになれます。戦地から無事に帰ったところで悲しみを分かち合える人は家族の中にはいないとしても、帰る場所はそこ、出発点もそこ。おばあちゃん、ありがとう。
読了日:01月15日 著者:深緑 野分
 
■夢をかなえるゾウ3 文庫版
そこいらの自己啓発本とかビジネス本よりよっぽど心に響いてためになると思いませんか。それにしたって私はなぜこんな本を読んで涙ぐんでいるのか(笑)。ガネーシャ凄すぎる。古田新太でしか想像できませんけれど。書きとめておきたい言葉いっぱい。やってみようと思えることもいろいろ。それに加えて、クレオパトラがモテたわけとか、松下幸之助が真の商売人たる所以とか、歴史上のあらゆるジャンルの人物について豆知識が増えることでしょう。こてこての大阪弁に嫌悪感のない人であればオススメしたい。何しろルビまで大阪弁だったりしますから。
読了日:01月17日 著者:水野敬也
 
■近いはずの人 (講談社文庫)
文節=一文みたいな感じで淡々としているからササッと読めるかと思ったら、意外に時間がかかりました。この時間のかかり方は、ひょっとすると主人公が気持ちを整理する時間を私が共に過ごしたくなっていたからなのかもしれません。妻を事故で亡くし、しかもその事故というのがどうやら不倫相手と落ち合う温泉に向かう途中に起きたものだったのですから。劇的に面白いわけでもないので、人に薦めることはありませんが、私は嫌いじゃない。大事な誰かを亡くしたとき、こうして人は心を取り戻して行くんだなぁ。ぽっかり空いた穴が少しずつふさがる。
読了日:01月23日 著者:小野寺 史宜
 
■メデューサの首 微生物研究室特任教授 坂口信 (幻冬舎文庫)
ジジむさい(笑)。内藤さんの著作はこれまでシリーズものしか読んだことがなくて、想像しただけでときめくイケメン曳き師とか、高ビーだけど可愛げのある女子とか、思わずギュッと抱きしめたくなる女性刑事や警官ばかりを見てきたから、定年退職後の特任教授の爺やとなるとなんか調子が狂う。グロさは相変わらずで、変異して自分の手を噛みちぎるネズミなんてやっぱりホラーなんですが。爺やが倒れたら困るから、応援したくなるという点では同じかな。私の苦手な「ジジイの妄想」に走ったら嫌だなと思っていましたが、美人捜査官相手でも節度ある。
読了日:01月26日 著者:内藤 了
 
■バベル九朔 (角川文庫)
お酒飲みながら読んだらあかんやつ(笑)。酔っぱらうと話についていけなくなります。雑居ビルの各階テナントの話か~、大好きだった三羽省吾の『路地裏ビルジング』と同じ設定だな~と思っていました。カラス女の登場辺りで酒をあおったのがあかんかった。次第に哲学的になってきて、バベルがぐるぐる回れば私の頭もぐるぐる回る。絶望と失望がバベルの源、幸せよりも不幸のほうが他人にパワーを与えられるものだとしたら、ちょっと寂しいような、でもわかるような。自分の夢がすでに叶っている世界と夢に向かってもがく世界、どちらに居たいかな。
読了日:01月30日 著者:万城目 学
 
■ルビンの壺が割れた
その作家の専門分野でもなかろうに、どれだけ丹念に調べて書き上げたんだろうと驚嘆する小説がたくさんあります。本作はそういう意味ではまるで驚きがありません。調べなければわからない知識としては、数行の熱帯魚に関することと売春に関することぐらい。懐かしい相手にメッセージを送るところから始まり、双方の年齢、関係、過去の出来事を読者は知る。誰にでも書けそう、でも書けない。それにしたって表紙を埋め尽くすコメントは言い過ぎじゃないでしょか。だって1時間ほどで読めてしまうんだから、寝られないなんてことは決してない。(^^;
読了日:01月31日 著者:宿野 かほる

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『ジョジョ・ラビット』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の12本目@西宮)

『ジョジョ・ラビット』
監督:タイカ・ワイティティ
出演:ローマン・グリフィン・デイヴィス,トーマシン・マッケンジー,タイカ・ワイティティ,
   レベル・ウィルソン,スカーレット・ヨハンソン、サム・ロックウェル他
 
封切りだった金曜日、仕事帰りにTOHOシネマズ西宮で2本ハシゴ。
 
ニュージーランド出身の奇才の呼び声高いタイカ・ワイティティ監督。
『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』(2014)を劇場で観なかったことが悔やまれる。
監督本人がアドルフ・ヒトラー役で出演するこの異色作は、ドイツ/アメリカ作品。
ものすごく心に残る1本となりました。
 
10歳の少年ジョジョには想像上の友だち、アドルフ・ヒトラーがいる。
アドルフを崇拝するジョジョは、ヒトラーユーゲント(ナチス青少年団)のキャンプに参加。
立派な隊員になることを夢見ていたが、野ウサギを殺してみろという命令に従えず、
皆から臆病者呼ばわりされてしまう。
そこで妄想アドルフから激励されて発奮したせいで大怪我をするはめに。
 
ジョジョの顔に傷跡が残り、美貌の母親ロージーは激怒。
ヒトラーユーゲントを統率していたクレンツェンドルフ大尉に
ジョジョに何か仕事を与えるようにと詰め寄り、
以降、ジョジョは郵便配達やビラ貼りなど宣伝部の仕事を手伝う。
 
ところがある日のこと、ロージーの不在時に屋根裏から物音がする。
調べに行ってみると、そこにはユダヤ人の少女エルサがいた。
彼女はジョジョの亡くなった姉と同じ年頃で、
ずいぶん前からロージーに匿われているらしく……。
 
自分が忌み嫌うユダヤ人がそこにいる。
もしも通報すれば、母親と自分も殺されてしまうかもしれない。
エルサの存在を知ったことすら母親に打ち明けられず、
自分とエルサだけの秘密にして言葉を交わす日が続きます。
 
父親の出征中、姉を失ったジョジョがヒトラーに憧れ、
それについて母親は非難しない。
話して諭すわけではなく、ただジョジョの好きなようにさせている一方で、
子どもは踊って歌って楽しむべきだとも言う。
ジョジョ自身が洗脳を解いていく過程に目を見張ります。
 
恋がどんなものだかわからなかった少年。
お腹のなかで蝶々が舞うような気持ちを感じ、それが初恋だと知り、
嫉妬して、自己嫌悪に陥り、決断をする。
 
ジョジョ役のローマン・グリフィン・デイヴィスがたまらない可愛らしさ。
スカーレット・ヨハンソンの母性にも唸らずにはいられません。
クレンツェンドルフ大尉役のサム・ロックウェルにも泣かされました。

素晴らしい作品。

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『パラサイト 半地下の家族』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の11本目@西宮)

『パラサイト 半地下の家族』(英題:Parasite)
監督:ポン・ジュノ
出演:ソン・ガンホ,イ・ソンギュン,チョ・ヨジョン,チェ・ウシク,パク・ソダム,
   イ・ジョンウン,チョン・ジソ,チョン・ヒョンジュン,チャン・ヘジン他
 
上映開始時点で21時半を回っていましたから、なかなかにしんどい。
最後まで体がもつかなぁと心配でしたが、これも大丈夫でした。
 
ソン・ガンホ大好きなので絶対観るつもりではありましたが、
「『パラサイト』、観ました?」とどれだけの人に聞かれたことか。
ふだんそんなに映画を観ているとは思えない人からよく聞かれ、
注目度の高い作品であることがよくわかります。噂に違わず凄かった。
貧困問題を描けば容赦ないケン・ローチ監督ですが、ポン・ジュノ監督も容赦ない。
 
半地下のアパートに暮らす極貧家族
失業中の父親キム・ギテクとその妻チュンスク、大学受験に毎年失敗している長男ギウ、
美大合格を目指すもこれまた上手く行かない長女ギジョン。
ピザ屋の箱を組み立てる内職に家族総出で取りかかり、糊口を凌ぐ毎日。
 
そんなある日、ギウの友人ミニョクから家庭教師の代役を頼まれる。
エリート大学生のミニョクは若手実業家パク・ドンイクの娘ダヘの家庭教師をしており、
自分が留学する間、ギウに家庭教師を頼みたいと言うのだ。
ソウル大学の在籍証明を偽造し、パク家を訪ねてびっくり。
とんでもない豪邸で、そこにはパクの美人だが天然の妻ヨンギョとダヘ、
まだ幼く落ち着きのない息子ダソンが暮らしていた。
 
早々にヨンギョの信頼を得たギウは、ヨンギョがダソンの行動を心配するのを見て、
ギジョンをダソンの美術の家庭教師として送り込むことを思いつく。
もちろん自分とギジョンが兄妹であることは隠して。
 
こうして見事にパク家へ乗り込んだギウとギジョンは、
今度はもともとの運転手が解雇されるように画策し、ギテクを新しい運転手に。
さらにはパク家の前住人の時代から家を切り盛りしてきた家政婦を貶めると、
チュンスクがちゃっかりとその後釜におさまるのだが……。
 
半地下での生活を一家がさほど悲観していた様子はありません。
貧しくても皆したたかに楽しく、そんな状況に見えました。
貧乏を誰もぼやいて怒ったりしない。
でも心の奥底に巣食っていた劣等感。貧乏人の「におい」を言われたときの気持ち。
 
あるお店のオーナーがこう言っていたのを聞いたことがあります。
「人間、ずっと地下にいるとおかしくなります。窓のない地下は」。
 
好きでそこにいるならともかく、そうではないのに半地下あるいは地下の生活を送っていると、
その状況について考えることを頭と体が拒否しはじめるのではないかと思う。
考えるとおかしくなるから。
 
半地下でもじゅうぶん悲惨だったのに、半地下にはまだ地下という下がある。
そこから上へと出られる日は来るのでしょうかね。

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