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2018年7月に読んだ本まとめ

2018年7月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:5049ページ
ナイス数:1109ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly

■犬神の杜 よろず建物因縁帳 (講談社タイガ)
地震後は軽めで明るい話にしか手が伸びずにいましたが、これは別。今度は犬神に祟られた山のトンネル工事に呼ばれた春菜。前作と前々作ほど切なさがないのが残念なうえに、怖さも控えめですが、犬神筋の哀しさにホロリ。なぜか読者に不人気な春菜ちゃんだけど、私は好きだなぁ。彼女が新規顧客とのやりとりに心を砕く姿には、大人になったのも感じられて嬉しくなる。「すっかり嫌われたかと思ったよ」って、ええかげんにせえよ、パグ男め。登場人物のキャラが皆きわ立っていて、ときどき笑ってしまう、私にとっては元気をもらえる珍しいホラーです。
読了日:07月01日 著者:内藤 了
https://bookmeter.com/books/12907269

■([み]1-2)黄金の丘で君と転げまわりたいのだ (ポプラ文庫)
いったい誰が、ワインの入門書を読んで「電車の中で読むと危険レベル」ぐらい笑うことを予想できるでしょう。比較的明るいお酒の私がワインを飲みながら読んだから、若干笑い上戸になっていたけれど、酔っぱらっていなくともゲラゲラ笑っていたはず。ワインを学ぶのは著者を含む酒好き5名。テイスティングだというのにガバガバ飲んで毎度へべれけ。ワインそのものよりも、造り手の顔が好みかどうかで盛り上がる。それでもきちんと成長。私、たまにマグカップでワインを飲むことがありましたが、これからは必ずグラスで飲みます。酔っぱらい、万歳!
読了日:07月03日 著者:三浦 しをん,岡元 麻理恵
https://bookmeter.com/books/9857380

■アンダー・ユア・ベッド (角川ホラー文庫)
今の表紙はこれではなくて、映像化されるさいなどに付けられる二重表紙とかでもなくて、壇蜜なのです。このタイトルで壇蜜で、ストーカーの話となると、エロ系なのか。そうじゃない。片想い相手のベッドの下に潜り込むような変態ストーカー男に感情移入してしまうのはなぜでしょう。それは彼が妄想を募らせたりしないから。彼女に幸せでいてほしい、ただそれだけ。ストーカー男を応援することになったうえに涙腺まで刺激されて苦笑。だけどちょっぴりほろ苦く、甘酸っぱい、情熱に満ちた恋と喜び。もう少しだけ望みを抱いてもいいかもよ、三井クン。
読了日:07月05日 著者:大石 圭
https://bookmeter.com/books/553759

■「最前線の映画」を読む (インターナショナル新書)
挙げられている映画20本のうち、18本は公開当時に劇場で観ています。と、自慢したいところだけれど、本書を手に取るのはそれ以上の人ばかりかも。残りの1本はDVDで観て、もう1本はこの先も観ないつもりだったホラー。しかし本書を読んだら、そういう解釈があるのかと気になり、観たい気持ちが沸々と。こんな解説書を読むと、知らずに観るよりもいろんな知識を持ったうえで観るほうがより楽しいよなぁと思う半面、何も知らなくても楽しめたらええやんと開き直ったりも。いずれにせよ、「上から」なところ皆無の町山さんの解説、大好きです。
読了日:07月07日 著者:町山 智浩
https://bookmeter.com/books/12570536

■雪冤 (角川文庫)
殺人犯として死刑判決を受けた息子。冤罪を晴らそうと奔走する父親と、被害者遺族、弁護士のもとへ、刑事上の時効15年を迎える直前、真犯人を名乗る者から電話。舞台が京都で、なじみのある地名ばかりということもあり、面白く読みはじめたのですが、なんぼ関西人でも初対面の人にこんな口利かんよという言葉遣いにまずひっかかり、中盤は盛り上がりを見せるも、どんでん返しのどんでん返しにドン引き。こうまでして他人の罪をかぶる人ばかりなのには無理があるような。いちばん酔えるのは正義だとしても、それって自己満足にはならないのかなぁ。
読了日:07月10日 著者:大門 剛明
https://bookmeter.com/books/3073025

■本所おけら長屋 (PHP文芸文庫)
地震で本棚が崩壊した実家を片付けに行った折に見つけ、貰ってきたうちの1冊。単細胞な住人の集まる長屋の話はまんま落語。どんな問題も他人事で終わらせず、時に干渉しすぎるから、話がへんてこな方向へ。「万松は禍の元」とはよく言ったもの。ひとつかふたつ、イライラさせられた話もあります。だって、アンタら、鉄斎さんのこと疑いすぎやろ、それだけ世話になっておきながら(笑)。しかし最終話ではそのイライラも飛んでいきました。楽しい。単巻だと思って読み始めたのに、げげっ、10巻もあるんだわ。続編も実家にあるのか確認しなくちゃ。
読了日:07月12日 著者:畠山 健二
https://bookmeter.com/books/6858887

■避雷針の夏 (光文社文庫)
私なんかは映画館に行ける立地の町でなければ住めないと思うのですが、それでも田舎暮らしにはある種の憧れがあります。町全体が家族のようで温かい。田舎とはそういうものだし、そうであってほしいと思っている。そんな思いが見事にぶった斬られるのが、坂東眞砂子の『くちぬい』や本作。よそものがいじめ抜かれる町に越してくるはめになった家庭の娘たちは何を企てているのか。これを読んで田舎暮らしなんてまっぴらごめんと思った後は、乃南アサ原作の映画『しゃぼん玉』(2016)を観て、やっぱり田舎もいいなぁと感じることをお勧めします。
読了日:07月15日 著者:櫛木 理宇
https://bookmeter.com/books/12100028

■夏と花火と私の死体 (集英社文庫)
怖っ。親友に殺された「私」の死体の処理に右往左往する連中の様子を「死体となった私」目線で語るという、なんともシュールな光景。冷ややかなオチが怖すぎて笑いました。皆がおっしゃることですが、これを16歳のときに書いたなんて、乙一すごすぎる。この「なんだか歪な感じ」が進化して『暗黒童話』なんぞが生まれたのだと思うと、作家ってやっぱり変態だわと感心してしまうのでした。ちなみに、現在公開中の『虹色デイズ』で吉川愛ちゃん演じる杏奈が最初に電車内で読んでいるのはこの本かと。高校生は、高校生が書いた本作を読んで何を思う?
読了日:07月16日 著者:乙一
https://bookmeter.com/books/580047

■カトク 過重労働撲滅特別対策班 (文春文庫)
私の勝手な思い込みで決め付けですけれど、労基署へ駆け込む人は二通り、「過酷な状況で悩み抜いて相談しようと駆け込んだ人」と、「気に入らない待遇をチクってやると駆け込んだ人」がいるのではないかと。気にかけなければならないのは、駆け込むこともできずにたったひとりでいる人。労基署のことも、本作に登場するブラック企業の社員同様、お役所だと決め付けていました。でも、お役所仕事に徹する人もいれば、どっちがブラックだと思うほど働いて、声を上げられずにもがいている人を救おうとしている人もいる。死ぬほどがんばってはいけない。
読了日:07月18日 著者:新庄 耕
https://bookmeter.com/books/12881762

■ホテル・ピーベリー (双葉文庫)
中盤まではミステリー色がなく、主人公のいわゆる自分探しの旅 in ハワイのよう。しかしその後、宿泊客のひとりが死亡、続いてもうひとり。私には想像できなかったトリックで、その点では鮮やかです。ただ、好感の持てる登場人物がほぼ見当たらず、共感はしづらい。主人公だって、ロリコンのうえに熟女(とまでは行かないけれど)まで、何でも来いの兄ちゃんだから、ちょっとキモさを感じてしまうのでした。最後まで飽きずには読みましたけれど、ハワイといえばイメージする燦々とした話ではないのでした。確かに、長すぎる休みはよろしくない。
読了日:07月20日 著者:近藤 史恵
https://bookmeter.com/books/8733708

■拝み屋怪談 禁忌を書く (角川ホラー文庫)
ホラーが苦手とか言っておきながら、もはやそれは嘘やろと突っ込まれそうなぐらい、映画にも本にも手を出している最近。ずっと気になっていた郷内さんの本にも勢いで突入。ホラー苦手でも耐え得る怖さと言いたいところだけど、しらふで読む度胸がなくて、ほろ酔いで読みました。ゆえに、怖そうな話は酔っぱらうに努め、想像力を駆使せずに。じゃないとやっぱり怖いのよ、笑い声とかボーッと浮かぶ顔が。ひーっ(笑)。こんな怪談の中に登場する映画が『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)。このギャップはちょっと私のツボでした。
読了日:07月21日 著者:郷内 心瞳
https://bookmeter.com/books/11063152

■路 (文春文庫)
台湾に行ったこともないくせして、私が台湾に寄せる気持ちはとてつもなく大きい。日本で震災等が起きればほぼいつも真っ先に、そして最大級の支援を惜しまないのが台湾。そんな台湾の人たちの想いを日本人はたぶんわかっちゃいない。本作で描かれる台湾高速鉄道についても、日本が新幹線の車両技術を輸出した初めての事例であるにもかかわらず、日本人はあまり知らない。残りの人生のほうが少なくなったら、もう一度会いたい人のことを想う。本作を読むと、よりその想いが強くなります。人生は楽しいものなんだってことを思い出させてくれる人たち。
読了日:07月24日 著者:吉田 修一
https://bookmeter.com/books/9681899

■キッチン・ブルー (新潮文庫)
「幸せごはん小説」とあるけれど、そんなに幸せな話じゃありません。タイトルどおりブルー、ちょっぴり憂鬱な、食べることにまつわる話6つ。会食障害なるものがあるとは知らなくてビックリ、味覚障害でも食感で美味しいと感じられるのだと知ってビックリ、キャバクラで酒の売り上げを伸ばすために採られる荒技にビックリ。しかし本書でいちばんビックリしたのは、新潮文庫なのに、KADOKAWAから出版される同著者の最新作が帯で堂々と紹介されていること。出版社の一致団結を見た気がして嬉しくなりました。どこのでもいいから本を読むのだ!
読了日:07月27日 著者:遠藤 彩見
https://bookmeter.com/books/12922573

■拳に聞け! (双葉文庫)
芸人の話もボクシングの話も今やアリアリで、ちっとも珍しくはありません。まず『火花』『笑う招き猫』を思い出し、便利屋に『まほろ駅前多田便利軒』、そして当然『ボックス!』を思い出す。下町の雰囲気には『泣いたらアカンで通天閣』、時に『戸村飯店 青春100連発』まで連想。だけど寄せ集め感ゼロ。ちょっとそこいらにはおらんぐらい素直な少年の夢に大人が乗っかりまくり、みんなが再び夢を追いかける。読み終えたときには彼らと一緒に3年間を過ごした気持ちに。読み手を置いてけぼりにしない熱さがありました。私の「どストライク」。
読了日:07月30日 著者:塩田 武士
https://bookmeter.com/books/12928886

■娼年 (集英社文庫)
映画版を観たとき、ハシゴした『のみとり侍』は、絡みのシーンを想定していなかった客もいたようで、照れてうつむく客も。この『娼年』の客は、当然それを想定している客のみで、ギャップが可笑しかった。そんな状況が思い出深く、読書中は全て映画版のキャストに頭の中で変換されてしまいました。女もセックスも退屈と断言していた主人公だけど、どんな相手も見下したりしていないことを感じられる言葉の使い方。相手を必ず肯定的に見るところに好感。松坂桃李が適役だったのかどうかわからないけれど、好きなお尻かどうかで決めるしかない(笑)。
読了日:07月31日 著者:石田 衣良
https://bookmeter.com/books/571487
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『未来のミライ』

『未来のミライ』
監督:細田守
声の出演:上白石萌歌,黒木華,星野源,麻生久美子,
     吉原光夫,宮崎美子,役所広司,福山雅治他

食べ過ぎ飲み過ぎでへろへろ気味だった土曜日の翌朝も、
いつもとさして変わらない時間に目が覚めてしまいます。
これって、生き急いでいるのか死に急いでいるのか。
睡眠も体力を要するから、若いときのように寝続けることができないんだろうなぁ。

朝8時過ぎには家を出てTOHOシネマズ伊丹で2本ハシゴ、その1本目。

何度観ても熱くなる『サマーウォーズ』(2009)の細田守監督ということで、
期待は否が応でも強くなる。
しかし、その後の作品は『おおかみこどもの雨と雪』(2012)が私は駄目。
『バケモノの子』(2015)は結構好きでしたが、「結構好き」止まり。
『サマーウォーズ』の壁が高すぎて、本作も、「う~ん、まぁまぁ」程度かなぁ。

くんちゃんは4歳の男の子。
お父さんとお母さんの愛情を今まで独占してきたが、妹が生まれる。
妹の名前は「未来」と書いて「ミライ」。

お兄ちゃんなんだから妹に優しく、仲良くしてあげて。
お母さんはそう言うけれど、ミライちゃんが来てからというもの、
お父さんもお母さんもミライちゃんにかかりっきりで、
くんちゃんのことなど二の次どころか、まるで目に入っていない様子。

だだをこねて庭に飛び出したくんちゃん。
するとそこに突然セーラー服の少女が出現し、怒った顔で「お兄ちゃん!」と言う。
彼女はなんと、未来からやってきたミライちゃん。
そしてくんちゃんの家のペット犬、ゆっこまでが男の人の姿で目の前に現れて……。

悪くはないです。酷評の向きもありますが、私は別に嫌いじゃありません。
でも、『おおかみこどもの雨と雪』のときにも思ったように、
どの年齢層をターゲットにしてつくられたものなのかがよくわからない。

子ども向けにしてはタイムスリップのシーンを難しく感じます。
子どもにどういうことが起きているのか説明するのは大人にも難しそう。

産休・育休を取得したのちに仕事に復帰するお母さんたちや、
イクメンのお父さんたちへの応援歌に思えなくもない。
結局のところ、誰も彼もをターゲットにしたから、
誰に向けても中途半端になってしまった印象があります。

それと、細田監督作品には、気になる言葉遣いというのか、
私の嫌いな言いまわしがいくつか。
『おおかみこどもの雨と雪』ではクドイほどの「~してあげる」
本作ではくんちゃんが連発する「好きくない」。
こういうのを耳にすると、日本語にも気を遣っているらしき“ドラえもん”は凄いなぁと。

いちばんおもしろかったのは、くんちゃんの住む家。
お父さんは建築家という設定で、玄関開けたら階段、
階段をまっすぐ上がると突き当たりから右手に伸びる生活空間。
その下に庭が広がり、さらにその下にくんちゃんの遊び部屋。
おばあちゃんが「それにしても住みにくい家だねぇ。
建築家と結婚するとこんな家で暮らすことになるのかねぇ」とぼやくのが可笑しい。
確かにものすごく暮らしにくく、子どもには危険だと思いましたが、おもしろい家です。

ひとりっ子だったボクに弟妹ができて寂しくてという設定なら、
『ボス・ベイビー』のほうがだいぶん楽しめた気が。
映像よりも山下達郎のテーマ曲のほうを後々も思い出してしまう作品。
あとは、星野源麻生久美子の声って、すぐにわかるんだなぁと改めて思ったぐらいで。
上白石萌歌が担当するくんちゃんの声にはどうも違和感があり、
違和感がありそうなのにピッタリな“クレしん”の凄さも感じてしまうのです。
兄妹なら、くんちゃんとミライちゃんより、しんちゃんとひまちゃん。

『サマーウォーズ』を超える細田監督作品、早く出てこい!

それにしても車の後部に荷物積み込み過ぎではないかい?
あれじゃ後ろがまったく見えんって。
—–

『北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイ』

『北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイ』(原題:Liberation Day)
監督:モルテン・トローヴィク,ウギス・オルテ

ナナゲイで3本ハシゴのラストは、またしても北朝鮮の話ですが、
前述の『ワンダーランド北朝鮮』はドイツ/北朝鮮作品、
本作はノルウェー/ラトビア作品です。

2015年8月15日、北朝鮮の祖国解放70周年記念日。
北朝鮮から招待された「初」で「唯一」の海外ミュージシャンは、
スロベニア(旧ユーゴスラビア)のロックバンド“ライバッハ”。

北朝鮮が初めて欧米のロックバンドを招待するということで、
世界中のマスコミが沸き上がったとか。
本作の冒頭でも面白可笑しくニュースを読み上げるキャスターが。

おそらく「初めて呼ばれたオレたち」ということで監督もメンバーも大興奮。
意気揚々と、ちょっぴり(かなり)自慢げなところも見て取れるのですが、
なにせ北朝鮮ですから、勝手なことは何も許されない。
宣伝用写真も選曲もパフォーマンスも背景映像も、すべてチェックされます。
かつ、現地スタッフは照明やマイクなどの舞台装置について知識のない人ばかりで、
ライバッハ側のスタッフは唖然呆然愕然。

それだけ検閲するならなんでこんな過激なバンドを呼んだのか。
ナチスを思わせる見た目に、パフォーマンスだって過激。検閲を通るわけがない。

私が辛かったのは、彼らの音楽そのもの。
日頃好んで聴かない音楽でも、映画を通じて好きになったジャンルが結構あります。
ヘヴィメタをよく聴くきっかけになったのはこれだし、
今でもそんなには聴かないけれど、ヒップホップも悪くないと思ったのも映画の影響。
でも私、ライバッハは無理。
『アイアン・スカイ』(2012)の音楽を担当したのが彼らでしたが、
あれは映画の内容と合っていたから良しとして。
ネオナチ風の見た目についていけないうえに、ボーカルの声が男女とも好きじゃない。
途中で耳をふさぎたくなりました。

『北朝鮮をロックした日』という邦題に、
観客がノリノリで超盛り上がるという話なのかと思ったら、全然。
ごく少数、リズムに合わせて肩を揺らしている人がいるぐらいで、
大半は不思議なものでも見る表情。私のように耳をふさいでいる人もいます。

北朝鮮に呼ばれた初の欧米ロックバンドといっても、
ウリである挑発的パフォーマンスをいっさい見せることができず、
結局、与しやすいバンドと思われて呼ばれたのではと思ったりも。
ロックの殿堂入りを果たしているようなバンド、
たとえばU2とかキッスとかELOとか、
メタリカだったりガンズ・アンド・ローゼズだったりは
呼ばれないというのか呼べないわけで。

聴衆に受け入れられるようにと、北朝鮮の大ヒット曲『行こう白頭山へ』や、
国民的民謡『アリラン』を歌おうとする姿も、迎合しているように思えて、う~ん。
こういうバンドだからこそ、好き勝手やっているところが見たい。
こんなふうに扱われるために行ったわけじゃないでしょうに。
それが北朝鮮という国だから、仕方ないといえば仕方がないか。

それにしても向こうで歌われる曲は、老若男女だれが聴く曲であろうとも、
すべて「元帥様」に捧げる曲。なんなんだ、この歌詞は!
—–

『ワンダーランド北朝鮮』

『ワンダーランド北朝鮮』(英題:My Brothers and Sisters in the North)
監督:チョ・ソンヒョン

飲み会前に、第七藝術劇場で3本ハシゴの2本目。
『ザ・ビッグハウス』の次は、ドイツ/北朝鮮作品の本作。
もちろん、こんなのを上映しているのは大阪ではナナゲイだけ。

いつまで経っても謎の国、北朝鮮。私はやっぱり怖いです。
『プルガサリ 伝説の大怪獣』(1985)を観たときには、
国家の最高権力者がゴジラファンだというだけで
日本から人を呼び放題、カネ使い放題でこんな映画を撮っちゃうのか、
そんなアホなと笑ったりもしていたものです。
しかし、『将軍様、あなたのために映画を撮ります』(2016)を観たときには
どう表せばいいのかわからない恐怖を感じました。
気に入ったものを撮るためであれば拉致も平気でやっちゃう国。

北朝鮮の人々の日常を撮りたいと考えた本作のチョ・スンヒュン監督は韓国人。
韓国人が北朝鮮へ入国するのは大変なことだから、本作を撮るために韓国籍を放棄。
ドイツのパスポートでなんとか北朝鮮へ入国したそうです。

とはいうものの、北朝鮮ですもの、自由に撮らせてくれるはずがありません。
厳しい監視下、さまざまな制約を受けつつカメラを回したのですから、
これが丸ごと北朝鮮の普通の人々の暮らしぶりかと聞かれたら、
他国の人に見せてもよいと「将軍様」が考える限界ぐらいとしか言えないでしょう。

スンヒョン監督は、いろんな職業に就く「普通の人々」に取材。
誰も仕事への不満など口にせず、品行方正。
本作の公式サイトのトップ画面やチラシに笑顔で映っているのは、縫製工場で働く少女。
服をつくる人になりたいと言うけれど、デザイナーという言葉は知りません。
自由にデザインすることなどこの国ではあり得ないから知らないのか。
縫製工場でしっかり技術を身につけて、立派な女性になるのが夢。
立派な女性って何なのか。いつの時代の女子教育だと驚いてしまいます。

この縫製工場ではノルマがあり、それをクリアできたかどうか、
さらには人を助けるなど善いことができたかどうかが成績に加算されるそう。
だからって、成績の良い人と悪い人でさほど給料に差はないと少女は言います。
給料が貰えるほか、配給券が貰えることを満面の笑みを浮かべて語る様子を見ると、
その国の人が幸せかどうかなんて、よその国の人は決められないと思ったりもする。

キム・ギドク監督の『The NET 網に囚われた男』(2016)を観たときにも思ったこと。
何を以て不幸と考えるのか。彼ら自身が幸せだと思っているなら口出しすべきじゃないのか。

本作を観ても、彼らの本心はわかりません。
映像で語っていることがそのまま本心で、不満なんてかけらもないのですか。
—–

『ザ・ビッグハウス』

『ザ・ビッグハウス』(原題:The Big House)
監督:想田和弘,マーク・ノーネス,テリー・サリス,ヴェサル・ストークリー,
   ショーン・ムーア,サリカ・チャギ,V・プラサド,ブリッティ・ボニン,
   アレックス・ブレナー,ケイティ・デウィット,ディラン・ハンクック,
   ダニエル・カーン,レイチェル・カー,オードリー・マイヤーズ,
   ハンナ・ノエル,ジェイコブ・リッチ,ケヴィン・トッコ

先週土曜日。夜は30年以上前にバイトしていた単車屋さんの人たちと宴会予定。
それまで映画を3本ぐらい観る時間がありそう。
とにもかくにも暑いから、できるだけ駅から近い劇場へ行きたくて。
土日の映画ハシゴスケジュールを練ったら、この日のTOHOシネマズは無し。
シネ・リーブルまで歩く元気はないけれど、ナナゲイまでなら歩けそう。
というわけで、十三の第七藝術劇場へ。

想田和弘監督は、いくつかの劇映画を撮っているものの、
ジャーナリストとしても活躍する、基本、ドキュメンタリー映画の人。
自身の撮るドキュメンタリー映画を「観察映画」と称しています。
台本を作らず、予断と先入観を排除して対象を観察する。
観察で発見したことを映画にする、それが想田監督のやり方。

想田監督が16人の映像作家とともに観察映画の舞台として今回選んだのは、
全米最大のアメリカンフットボール・スタジアム“ミシガン・スタジアム”。
甲子園の倍以上、10万人を超える収容人数で、通称“ザ・ビッグハウス”。
観客動員数が10万人を切ったことは数十年間ないそうです。

幕開けは、著名なスカイダイバーがスタジアムに降り立つ姿。
これでグッと心を持って行かれます。
そして、試合当日のスタッフミーティング、厨房、報道関係者ブース、
マーチングバンドチアリーダー、観客、警察犬の様子に至るまで、
スタジアムの内外さまざまな場所、さまざまな人びとを撮影。

冒頭でスタジアムに関する説明テロップが流れるほかは、ナレーションも何もなし。
どう考えても普通は寝るでしょ、私。
ちょっとうとっとした数秒間を除けば目がランラン。
ダフ屋(定価で売っていると言っていましたがホンマか!?)や
太鼓を叩いて施しを乞う貧困者、新興宗教の演説者など、
余計な説明を省いた映像に興味を引かれっぱなしでした。

撮影されたのが2016年の秋で、
ちょうどドナルド・ トランプヒラリー・クリントンの大統領選挙戦の真っ只中。
本作は「アメリカ社会の縮図だ」などとも言われていますけれど、
私にはそんなことまでわかりません。
ただ、ひとつのスタジアムとその周囲にはいろんな人がいるということが
淡々とした映像を通じてしみじみジワジワ伝わってきます。
あ、それを縮図というのか。(^^;
面白かった。
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