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『北のカナリアたち』

『北のカナリアたち』
監督:阪本順治
出演:吉永小百合,柴田恭兵,仲村トオル,森山未來,満島ひかり,
   勝地涼,宮崎あおい,小池栄子,松田龍平,里見浩太朗他

言わずもがなのロードショー中。
高倉健の『あなたへ』といい、吉永小百合の本作といい、
爺ちゃん婆ちゃんを劇場に向かわせる力はやはり凄く、
しかして上映中にトイレに行く人の率も高くなるのでした。(^^;

湊かなえの短編3つから成る小説『往復書簡』のうち、
2つめに収録されている『二十年後の宿題』が原案。
「原作」ではなく「原案」ですから、中身はかなり異なっています。
ちなみに「原案」がどんなだったかと言いますと……。

小学校教師を38年間務めていた女性が、元教え子の男性に手紙を書きます。
それは、20年前に自分の教え子だった(手紙の相手とは関係のない)6人が、
今どうしているか、元気でいるかどうかを調べてほしいというもの。
北海道の分校でもなければ、先生が不倫していたわけでもない、
教え子の1人が成人して殺人を犯した事実もなく、歌もうたいません。
淡々と進む小説にドラマティックな要素を盛り込んだのが映画版。

北海道の離島へ、病を患う夫とともに降り立った小学校教師の川島はる。
島の小さな分校には、生徒がたった6人。
これまでやる気のある教師に恵まれてこなかった彼らは、
ときに厳しくも優しいはる先生にぞっこん。
はるは彼らの歌の才能を見抜くと、合唱の指導も始める。
子どもたちとはるの歌声が島に響きわたり、笑顔の絶えない毎日。

しかしある日、子どもたちの間で喧嘩が起こる。
それが理由で合唱の練習時間もぎすぎすした空気が流れるように。
気分転換になればと、はるは海辺でバーベキューを計画。
いくぶん病状が安定しているらしい夫も参加する。

ところが、結花という女子が足を滑らせて海に転落。
救出のためにすぐに飛び込ぶはるの夫。
結花は助かったものの、夫は潮に流されて帰らぬ人となる。

この事故をきっかけにはるは教師を辞めて島を去り、20年が経過。
定年退職して旅行でもと考えていたはるのもとを刑事が訪ねてくる。
6人のうちのひとり、信人が殺人罪で追われていると知らされ、
はるはあのときの教え子たちに会おうと北へ向かうのだが……。

「原案」のほうのオチは「は?」と拍子抜けするものでしたが、
映画のほうはこれまた何を主題にしたかったのか不明です。
良くも悪くも「吉永小百合」の映画なのでしょう。
20年の歳月を髪型の変化だけで表すのはキツイですが、やはり美しい。

吉永小百合を前にすると、誰もがそちらに合わせに行かざるを得ないようで、
67歳の彼女に対し、夫役の柴田恭兵は61歳。これはまぁ見た目にもOK。
と思っていたら、仲村トオルとのキスシーン。オイッ!
47歳の仲村トオルと同年代という設定でキスまでさせちゃうのは無理がありません?
抱き合う程度でやめておけばいいものを、これは悪いものを見てしまった感が。(^^;

それにしても爺ちゃん婆ちゃんは共感能力が高いと感激しました。
ちびっこが梯子から足を踏み外しそうになるシーンでは、
みんなが「あっ!」と声に出して息を呑み、泣かせるシーンでは誰しもが鼻ずるずる。
今週末公開の『悪の教典』の主人公は、共感能力が欠落した教師ですから、
この爺ちゃん婆ちゃんの能力を分けて差し上げたいぐらい。

私は泣けんで~、クサっ!と苦笑いしつつも、最後はウルリ。
いいなぁ、やっぱり、同級生って。

「明日世界がなくなるとしても、あなたはリンゴの木を植える」。
何があっても生きろ、映画版のテーマはこれってことでいいでしょか。
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