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2021年10月に読んだ本まとめ

2021年10月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:6529ページ
ナイス数:1789ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly

■護られなかった者たちへ (宝島社文庫)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】本日封切りです。観に行くと言ったら、複数の人から「震災の映画ですね」と言われました。原作を読んだ者としては、震災の映画というよりは生活保護の映画だと説明したくなる。利根、けいさん、カンちゃんが住んでいた場所も原作からイメージしていた雰囲気とはずいぶん異なります。瑛太も緒形直人もこれまであまり悪人を演じることはなかったと思うから、このキャスティングは奇抜。映画では犯人はバレバレ。何もかも震災のせいでこうなったと言いすぎの感があるような。桑田佳祐の主題歌はとてもいい。
読了日:10月01日 著者:中山七里
https://bookmeter.com/books/18106934

■うちの社食がマズくて困ってます 総務部推進課 霧島梓の挑戦 (富士見L文庫)
働き方改革推進課へ飛ばされた主人公。何も教えてくれない同僚に好きにすればと言われて開き直り、健康診断受診の促進に始まり、イベントの発案、そしてマズすぎる社食の立て直しまで。現場の人を置き去りにせず、業者の人たちとしっかり話し合って納得できるものにしようとする姿が◯。ウチの職場のカレーフェアは「カレーライス、カレーうどん、カレースパゲッティ」で目が点になったことがあります(笑)。料理長の機嫌の良いときの日替わり定食はステーキランチ、悪いときはラーメンライスだったけど、後者は男性陣に大好評だったのを思い出す。
読了日:10月02日 著者:黒崎 蒼
https://bookmeter.com/books/16028059

■満月珈琲店の星詠み (文春文庫)
占星術にはまるで興味がないけれど、凹んでいる人の前に突如として現れる満月珈琲店は実に居心地がよさそう。前向きになって、気持ちが晴れる珈琲店。占星術には興味なしと言いながら、読み終わる頃にはどの天体がどのハウスに入っているのか気になって仕方がない。しかし身長2メートルの二足歩行の猫は怖いからやめて(笑)。バッティングセンターで見て衝撃を受けたキティちゃん投手を思い出してしまうんです。せめてその半分くらいの背丈でお願いします。巻頭の挿画が素敵すぎる。どれもこれも食べたいけれど、私はできればアルコールがいいな。
読了日:10月06日 著者:望月 麻衣
https://bookmeter.com/books/14637967

■黙過 (徳間文庫)
いやいやいや、たまげました。60頁前後の短編4つと160頁ほどの中編1つ。久坂部羊っぽいと思いながら読み始めた短編4つは、完全に独立した読み物でした。病院から突然消えた危篤患者。重病人のふりをする元官僚。子豚が忽然と消えた養豚場。科研費の不正受給に関わっていたと見られる研究者の自殺。それが中編に入ろうというとき、前の4つを必ず先に読むように言われる。えーっ、これが全部ひとつにまとまるのか。正直なところ、その4つはさして心に響くものではなかったのですが、最後にこうなるとは。お見事としか言いようがありません。
読了日:10月08日 著者:下村敦史
https://bookmeter.com/books/16445749

■稲荷書店きつね堂 ヨモギたちの明日 (ハルキ文庫 あ 26-13)
あら、最終巻ですか。こう言っちゃなんですが、冊数稼ぎにピッタシ、約200頁の読みやすいシリーズでした。もちろんそれだけではなくて、和む。帯に「さようならヨモギ」とあれば、彼が元の狛狐に戻るのだと思いきや、皆の想いが届く。しかし彼はこの先ずっと少年のままなのかしらん。読者の「学校はどうなっとるんだ」の謎は消えそうにありません。人間の姿でいられることになったとはいえ、尻尾はあるし、うっかり隠すのを忘れないようにね。いっそ狛狐の化身であることを明かしてしまえばいいかも。彼ならきっと誰からも受け容れられるでしょ。
読了日:10月10日 著者:蒼月 海里
https://bookmeter.com/books/18366314

■自由研究には向かない殺人 (創元推理文庫 M シ 17-1)
『女には向かない職業』を知っている人ならこの邦題に食いつきませんか。私も釣られた一人です。いくら自由研究だからって、解決済みとされる殺人事件を取り上げ、自殺した容疑者の無実を証明するだなんて。主人公の高校生ピップと容疑者の弟ラヴィ、共に良い子で賢すぎる。真相を解明することだけに走らず、解明することによって友人やその家族がどうなるか考えているところがいい。日本で翻案映画化しても面白いかもしれません。浜辺美波とかどうですか。それだと“屍人荘”になっちゃうか。でも剣崎さんよりはピップのほうが普通だと思う(笑)。
読了日:10月13日 著者:ホリー・ジャクソン
https://bookmeter.com/books/18277935

■年表で読む近代日本の身装文化
『日本人のすがたと暮らし 明治・大正・昭和前期の身装』『新聞小説の挿絵で見る近代日本の身装文化』の姉妹編に当たる、いわば完結編。これら3冊は〈近代日本の身装電子年表〉〈身装画像データベース「近代日本の身装文化」〉として国立民族学博物館のウェブサイトから公開中。「身体と装い」に関する事象をまとめた年表なので、読破するという本ではないけれど、拾い読みするだけでも面白い。『鬼滅の刃』の舞台である大正時代の装いを知るつもりで覗いてみるのもいいかも。とはいうものの17,600円、とても手が出ない。まずは図書館で。
読了日:10月14日 著者:大丸弘,高橋晴子
https://bookmeter.com/books/18719259

■デッドマン (角川文庫)
6つの死体からそれぞれ頭と胴体と四肢が持ち去られていたら、私のような凡人は、継ぎ接ぎだらけの人間を想像してそのおぞましさに涙目になってしまう。乙一の『暗黒童話』を読んだときと同じです。でもあっちは一体ではなかったから、こっちのほうがグロさはまだマシかもなどと思いながら。真相は継ぎ接ぎじゃなくてホッとしましたが、物語のどの部分よりもロボトミー手術の恐ろしさが頭にこびりついて離れません。そのような手術がおこなわれていたとおぼしき精神病院跡地を舞台にした映画『セッション9』(2001)を思い出して震えています。
読了日:10月15日 著者:河合 莞爾
https://bookmeter.com/books/8208920

■セイレーンの懺悔 (小学館文庫)
法曹、医療、音楽、映画、どんな分野の話でも書いてみせて、時にめちゃめちゃ面白く、そこまで行かずともまぁ面白い七里センセ。マスコミをテーマにした本作も勢いよく最後まで読ませてはくれますが、宮藤刑事を除く登場人物がちょい苦手。どんな時事ネタを盛り込もうが説教臭くならない七里センセが好きなのに、最後の熱弁は原田マハかと思いました(笑)。しかしシリーズ化されるならば、彼女が記者として成長していく過程を間近で見られるような楽しみもあるかもしれない。たぶんそのうち「ええ記者になったねぇ」と偉そうに言う私がいる(笑)。
読了日:10月16日 著者:中山 七里
https://bookmeter.com/books/16195870

■本と鍵の季節 (集英社文庫)
図書委員の男子高校生2人が主人公で、日常の謎を解くと来れば、爽やかな青春ミステリーを想像するじゃないですか。第1話で憧れの先輩から相談を持ちかけられてニヤニヤしていたら、夢は打ち砕かれます。えっ、そんな暗黒の設定なの!? 小市民シリーズを愛した人は必ずや気に入るでしょう。図書委員ならではの謎解きでありつつも能書きはほぼなくて、かつ、図書室に無縁の人にもわかりやすい説明。第4話の「ない本」では映画『FUNNY BUNNY』の「絶対に借りられない本」を思い出しました。時折苦く、悲しい。だから米澤穂信が好き。
読了日:10月19日 著者:米澤 穂信
https://bookmeter.com/books/18101443

■はぶらし (幻冬舎文庫)
友人とも言いがたい友人から連絡が来てしばらく泊めてくれなんて言われたら、即断るべきだと思う。断りきれずに承諾したとしても、歯ブラシを貸してと頼まれて買い置きを貸し、翌日新品を買ってきた友人が昨日使ったほうを返してきたら、そりゃもう即刻追い出すべきでしょう。感覚がズレている。そんなふうに始まるから、ものすごいイヤミスに違いないと思っていました。事実、終盤まで、盗癖もあって自己中な友人にしか見えません。だから、最後は呆然としてしまう。後悔のない人間関係について考える。結局、自己満足にしか過ぎないのですけれど。
読了日:10月20日 著者:近藤 史恵
https://bookmeter.com/books/8319732

■52ヘルツのクジラたち (単行本)
凄惨な主人公の人生。育児放棄に遭ったうえに介護要員にさせられ、ようやく親から離れた後にまだまだ不幸が訪れる。いったいどうやって生きていけばいいというのか。いちばん心に染みたのは、「私のことが好きですか」と尋ねた相手が、「あなたのしあわせを祈るくらいには」と答えるくだり。一緒に泣くのは割と簡単。だけどその人の幸せを心底喜べる相手って、実はそんなにいない。ちょうど直前に近藤史恵の『はぶらし』を読んだから、"人にやさしくするのは、ドラマほど簡単じゃない"。でも、簡単じゃないからこそ、こうだったらいいなと思う。
読了日:10月21日 著者:町田 そのこ
https://bookmeter.com/books/15533416

■豹変 (角川文庫)
先日観た『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』をそのまんま思い出してしまうような設定です。『死霊館』では、悪魔に取り憑かれた少年を祓ったら、その場に居合わせた青年に悪魔が乗り移り、青年が殺人を犯します。本作同様に、悪魔憑きだということを関係者に納得してもらわなきゃならない。目を丸くする刑事の姿なども可笑しくて、怖いけど見入ってしまうホラーでした。しかも実在の心霊研究家の体験談に基づいているのですから。あら、本の感想のはずが、ほとんど映画の話になっちゃった。富野さんは心霊研究家のアシスタントも務められそうです。
読了日:10月22日 著者:今野 敏
https://bookmeter.com/books/13117573

■店長がバカすぎて (ハルキ文庫 は 15-1)
学生の頃に小さな書店でバイトしていた身としては、グイッと興味を惹かれます。店長、社長、同僚、客、そして自分にもイライラした日を思い出す。しかし、覆面作家の正体が序盤でバレバレすぎませんか。まさか私ごときの推理が当たったまんまで終わることはあるまいなと思ったのに、そうですか。別にそれが話の肝というわけじゃないからいいけれど、正体について延々と取り沙汰される場面はちょっと白けちゃいました。気づけよ(笑)。そこを差し引いてもじゅうぶんに面白かったことは間違いありません。バカバカ言ってるほうがバカ。人は自分の鏡。
読了日:10月24日 著者:早見 和真
https://bookmeter.com/books/18229943

■身分帳 (講談社文庫)
劇場鑑賞した後すぐ読もうと思って購入したのに、気がつけば8カ月経過。フィクション仕立てのノンフィクション。原作では44歳とのことだから、役所広司では歳を食いすぎだけど、彼のイメージでしか頭に入ってきません。周囲は本当にこんなにいい人ばかりだったのだろうかと確かに思わなくもない。でもこの純朴さを知れば、彼を気にかけたくなったでしょう。弁護士役の橋爪功、ケースワーカー役の北村有起哉、スーパーの店主役の六角精児の温かさを思い出すと共にキムラ緑子の台詞が蘇る。「シャバは我慢の連続だってさ。でも、空は広いってよ」。
読了日:10月27日 著者:佐木 隆三
https://bookmeter.com/books/15957560

■EVIL 東京駅おもてうら交番・堀北恵平 (角川ホラー文庫)
こんなところでto be continuedとは。藤堂比奈子シリーズなら上下巻となりそうな展開。そろそろ大詰めということなのでしょうか。昭和前半と現代を行ったり来たり、突飛なはずなのに違和感なく、物語に毎度没頭させられます。なぜだか最近狐憑きや悪魔憑きの話に縁があり、これもそうだからビビる。おぞましいプロローグに始まり、憑かれた人を切り刻めば祓えると信じている様子を想像すると怖すぎます。ケッペーが初心を忘れることはきっとない。死んじゃう伝説は吹き飛ばして、立派なおまわりさんになって。次、早くお願いします。
読了日:10月29日 著者:内藤 了
https://bookmeter.com/books/18480722

■そして、バトンは渡された (文春文庫)
瀬尾まいこの本は、温かいエンディングを迎えるものと、最後にどん底に突き落とされるものと、二通りあるように思います。どちらも切なさを伴いつつ。本作は映画版の予告編を観たとき、どん底とは言わないまでも、隠されていた秘密のようなどんでん返しがあるのかと思っていました。温かいまま終わってくれてよかった。ごはんと音楽、どっちも大事だけど、食べなきゃ死ぬから、音楽よりごはんだと私も思った。でも、どんな人にも届くのは音楽。瀬尾さんの作品ではいつも食べ物と音楽が絶妙のスパイス。ちなみに私は朝からカツ丼食べられます(笑)。
読了日:10月31日 著者:瀬尾 まいこ
https://bookmeter.com/books/16239752

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『最後の決闘裁判』

『最後の決闘裁判』(原題:The Last Duel)
監督:リドリー・スコット
出演:マット・デイモン,アダム・ドライヴァー,ジョディ・カマー,ベン・アフレック,
   ハリエット・ウォルター,ナサニエル・パーカー,マイケル・マケルハットン他
 
153分の大長編ゆえ、仕事帰りに観に行くのを躊躇していましたが、
リドリー・スコット監督作品をスルーするわけにはいかないと、
阪神のペナントレース最終戦の前日、意を決してイオンシネマ茨木へ。
 
週初めに遅くなるのはつらいはずが、めちゃめちゃ面白かった。
観に行ってよかったと心底思いました。
 
14世紀、中世のフランスで実際におこなわれた決闘裁判を映画化。
原作となっているのはエリック・ジェイガーのノンフィクション、
『決闘裁判 世界を変えた法廷スキャンダル』です。
 
1380年代、百年戦争中のフランス。
かつては親友同士だったノルマンディーの騎士ジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)と
従騎士のジャック・ル・グリ(アダム・ドライヴァー)だが、
ジャックが地主の伯爵ピエール(ベン・アフレック)から厚遇されたのをきっかけに、
ジャンはジャックへの敵対意識をあらわにしている。
 
あるとき、ジャンの妻マルグリット(ジョディ・カマー)が、ジャックに強姦されたと訴える。
ジャンは無実を主張するジャックを法廷へと引きずり出し、
シャルル6世(アレックス・ロウザー)のもと、決闘裁判にかけることになるのだが……。
 
ご覧になる予定の方はこの先を読まないでください。
予告編で知り得た程度の知識で観に行くほうが絶対に面白いです。
 
予告編を観ると、最愛の妻を元親友に陵辱された夫が正義をかけて決闘に臨む、
そんな印象だったから、当然ジャンを応援したくなります。
 
3章から成る本作の第1章を観たときも同じ感想でした。
第1章は「ジャン・ド・カルージュの真実の物語」。
優しく逞しいが愚直すぎて損をしているジャンのことをマルグリットは深く愛している。
ジャックに強姦された事実をどうしても隠してはおけず、
夫婦そろって声をあげて闘うことを誓う、そんな感じ。
 
ところが第2章の「ジャック・ル・グリの真実の物語」を観ると、その印象が変わる。
伯爵ピエールから目をかけられているジャックは、ジャンのことをかばおうとする。
しかし、暴走気味のジャンのことを止められない。
ある日、友人の結婚式で久しぶりに会ったジャンとジャックは和解するが、
そこで紹介されたマルグリットにジャックは一目惚れ。
マルグリットも合意の上での出来事であって、強姦ではない。
姦淫があったことを明かせば裁判で不利だから、無実の主張を貫き通そうとしています。
 
ここまで観たかぎりのふたりのイメージは、どちらかといえばジャックのほうが良い。
でくのぼうのようなジャンとは違って、ジャックは女にモテモテ。
知的でもあり、マルグリットもジャックへの恋心を隠せない。
 
なのに。
 
第3章は「マルグリットの真実の物語」。そしてこれが真実。
まぁ、なんというのか、男ってどれだけ幸せな思考回路なんだと思わずにはいられません。
第1章、第2章を見れば、ジャンもジャックも自分はとっても良い男で、
だからマルグリットは自分にぞっこん、自分も彼女のことを大切にしていると言いたげ。
それがマルグリットの立場から見れば、何もかもがちがう。
 
決闘裁判なんてものがまかり通っていた時代が不気味です。
不妊に苦しんでいたマルグリットが強姦を告発後に妊娠したせいで、
「強姦では妊娠しないと科学的に証明されている。
ほかに男がいたのを隠すために強姦されたことにしたのでは」とか、はぁ?
 
そもそも被害者は彼女なのに、彼女自身が訴えることはできない。
夫が訴えて、夫と相手の男が殺し合って、もしも夫が負ければ彼女は火あぶりの刑って、
どんな世界やねんと思うけれど、こんなことが当たり前だったのですね。
嫁姑問題もいつの時代もあるもののようだし、いろいろと衝撃的です。
 
決闘のシーンでは男ふたりとも死んでしまえ!と思いました。(^^;
さて、結末や如何に。そこはご覧ください。
 
見応え大ありの1本でした。

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『ビルド・ア・ガール』

『ビルド・ア・ガール』(原題:How to Build a Girl)
監督:コーキー・ギェドロイツ
出演:ビーニー・フェルドスタイン,パディ・コンシダイン,サラ・ソルマーニ,
   アルフィー・アレン,フランク・ディレイン,ローリー・キナストン,エマ・トンプソン他
 
日曜日、広島vs阪神のデーゲームが始まる前に梅田で2本観ようと考えました。
ふだんなら休日の朝は20分あれば自宅から梅田まで行けるのに、
新御堂筋の南行車線で神崎川橋梁の工事中。
土日の8時から20時まで1車線規制になっていて、なんと1時間半もかかってしまった。
1本目に予定していた作品は当然観られず(予約はしていなかったのでラッキー)、
11時から梅田スカイビル地下の滝見小路でお昼ごはんを食べ、
12時からシネ・リーブル梅田にて本作だけ観て帰ることに。
梅田まで出ておきながら1本しか観ないなんてもったいないけれど、
阪神の試合を見届けないわけにもいかないのです。
 
ロンドン・タイムズ紙のコラムニスト、キャトリン・モランの半自伝的小説を映画化。
実際に音楽雑誌で歴代最年少ロック批評家として活躍した経歴を持つ人です。
1本だけでも大満足、すごく好きな作品となりました。
 
デブで冴えない女子高生ジョアンナ。
教師から類い稀な文才があると認められているが、発揮する場はなくて悶々。
人気ラジオ番組で自作の詩を披露するチャンスを得るが、緊張しすぎて大失敗。
誰も見ていないことを祈っても無理、学校中の笑いものに。
 
ある日、兄のクリッシーが、大手音楽情報誌“D&ME”でライターを募集していると教えてくれる。
批評する曲としてジョアンナが選んだのはミュージカル『アニー』の主題歌“トゥモロー”。
面接の連絡があり、嬉々としてロンドンのD&ME社を訪れるが、
“トゥモロー”で応募してくるなんてどんな奴だとからかわれただけだった。
落ち込んだものの、文章自体は面白かったと言われたことからやる気復活。
ロックバンドの取材に自分を試しに使ってほしいと主張する。
 
初めて聴いたロックにジョアンナの世界が変わる。
彼女の批評は斬新で面白いと評判になり、瞬く間に有名人に。
そんなとき、シンガーソングライターのジョン・カイトのインタビューに臨み、
ジョアンナは恋に落ちてしまうのだが……。
 
ジョアンナの父親はいつまで経っても音楽への夢をあきらめきれず、
収入もないのに子どもばかりつくって、母親は産後鬱。
16歳のジョアンナは、双子の乳児を抱えて暗い面持ちの母親にもう甘えることはできません。
D&ME社で物書きを始めてそれが当たると、ジョアンナはとても高慢ちきになり、
家賃を払っているのはこの私、家族の中でいちばん偉いのよと言わんばかり。
どんなときもジョアンナの味方だった兄のクリッシーに対してもそんなだからたまったもんじゃない。
 
本当はいいと思っているバンドのことも、こきおろしたほうがウケるから辛口批評する。
そうするとさらに人気が出て、友だちのいなかった彼女に人が群がってきます。
 
16歳はまだ子ども。自分が実は大人から見下されて利用されただけだとわかるとき。
自分のことを心から愛し、大切に思ってくれているのは誰なのか。
結構イライラさせられたけれど、気づいた後の彼女の行動は最高です。
 
ジョン・カイトのモデルとなっているシンガーはいないんですかね。
どこまで実話に即しているのか知りませんが、この人が実在しているといいなぁ。
子どもを騙したりしない。でも子ども扱いしているわけじゃない。そんな人。
 
最後にチラリとだけ登場するエマ・トンプソン。やっぱり大好き。
さしづめ日本でいうところの余貴美子みたいな存在に思えます。
 
ちなみに字幕では“Build a Girl”は「自分作り」。
どうやって自分を作りますか。

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『ロン 僕のポンコツ・ボット』

『ロン 僕のポンコツ・ボット』(原題:Ron’s Gone Wrong)
監督:サラ・スミス,ジャン=フィリップ・ヴァイン
声の出演:関智一,小薬英斗他
 
TOHOシネマズ伊丹にて4本ハシゴの4本目。
 
エド・ヘルムズが声を担当する字幕版を観たかったけれど、
シアタス心斎橋まで行かないと観られないようだから、涙をのんで吹替版で手を打つことに。
 
イギリスのCGアニメーションスタジオ“ロックスミス・アニメーション”初の劇場長編アニメーション。
なのにアメリカ作品のようで、製作やら配給はいろいろとややこしい。
唯一の配給会社はディズニーの子会社である20世紀スタジオ。
「ディズニーが21世紀フォックスの買収を通じて20世紀を買収、
2020年12月4日、社名を20世紀スタジオに変更した」とウィキにあります。絶対ややこしいでしょ(笑)。
 
本作の舞台は子ども1人にロボット1台という時代です。
 
少年バーニーは父親と祖母の3人暮らし。
同じ学校に通う児童は全員、ロボット型デバイス“Bボット”を所有しているが、バーニーは持っていない。
Bボットはスマホよりハイテクで、所有者の何もかもを把握しており、友だち探しまでしてくれる。
それを持たないバーニーには友だちがひとりもいない。
 
バーニーの誕生日、プレゼントを喜ばない様子を見た父親と祖母は、
ようやく彼の望みがBボットであることを知って大慌て。
すぐに買いに走るが、あいにく店はすでに閉店。
あきらめきれずに駆けずり回ったところ、倉庫への搬入口を発見。
傷ありで返品となるはずだった不良品を買い取ることに成功する。
 
Bボットを受け取ったバーニーは、それにロンと名付けて大喜びするが、
デフォルトでインストールされているはずのものが何も入っていないせいでどうしようもない。
バカなロンに嫌気がさしたバーニーは返品しようとするのだが……。
 
面白かったけど、もやもやするのはなぜなのでしょうか。
結局、ロボットより生身の人間だよということにはならないのです。
何もかもインストールされた賢いロボットよりは、
時に言うことをきかない人間味のあるロボットね、ということ。
 
誰かと友だちになるときまでロボットに頼らなくちゃ駄目ですか。
そりゃSNSを始めたら、知らなかった友だちの一面までわかったり、
そんな趣味もあったのかと驚いたりして楽しいことはいっぱいあります。
でも、実際にしゃべるより前にまずはロボットに頼るって、
何か不思議というのか不気味な感じです。
 
友だちはいないと思っていたら幼なじみが手を差し伸べて、
いやいや、友だちだよと言ってくれる。
そんな良いシーンもあるけれど、現代の映画だなぁという気がして仕方ありません。
本作そのまんまの光景を見る日も実際に訪れそうに思います。

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『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』

『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』(原題:Snake Eyes: G.I. Joe Origins)
監督:ロベルト・シュヴェンケ
出演:ヘンリー・ゴールディング,アンドリュー・コージ,サマラ・ウィーヴィング,
   イコ・ウワイス,ピーター・メンサー,平岳大,安部春香,石田えり他
声の出演:木村昴,小林親弘,白石涼子,野津山幸広,井上和彦,子安武人他
 
TOHOシネマズ伊丹にて4本ハシゴの3本目。
 
どう考えてもわざわざ観なくていい作品のような気がするのですが、
ほかに観たいものもなかったのでポイントで鑑賞
ちなみにこの日観た4本はすべてポイントを使って観ました。
フリーパスポートのあった時代なら、間違いなくフリーパス鑑賞の対象だったでしょう。
 
“G.I.ジョー”シリーズと言われても知らんし、と思っていたけれど、
私、観てるやん、『G.I.ジョー バック2リベンジ』(2013)。(^^;
ドウェイン・ジョンソンイ・ビョンホンが出ていたのに、まったく覚えてないってどーゆーこと!?
 
覚えていないから全然シリーズものという気がしませんが、
“スネークアイズ”というのはこのシリーズの謎に包まれた忍者なのだそうです。
前作までスネークアイズ役はレイ・パークでした。
彼をそのまま起用せずにヘンリー・ゴールディングをキャスティングしたのは、
スネークアイズのもう少し若かりし頃の話だからなのでしょうかね。
 
吹替版の上映しかないのがとても不満ですが、まぁ、タダだし。
 
少年期に目の前で父親を殺され、復讐だけを胸に成長したスネークアイズ。
亡くなった父親のことを調べてみると、父親の名前は偽名。
少年自身の名前も偽名で、自分が生まれた日すらわからなかったから、
父親が殺されるきっかけとなったサイコロの目(=1のゾロ目)にちなんで
自分の名をスネークアイズとした。
 
格闘技で金を稼いでいたスネークアイズは、鷹村ケンタという男から声をかけられる。
鷹村は、スネークアイズの父親を探し出してやる代わりに、
日本の秘密忍者組織“嵐影”に潜入してほしいと取引を持ちかける。
どうしても復讐を果たしたくてその取引を承諾したスネークアイズは、
嵐影で忍者として認められるよう、修行に臨むのだが……。
 
全体的に陳腐ではあります。
オール日本人キャストだった『ONODA 一万夜を越えて』とは異なり、
彼が日本人だと言われても……みたいな人もいるし、
現代の東京の街を写しておきながら、忍者屋敷はいつの時代やねんという城下町に。
海外作品にありがちな、とんでもニッポン(笑)。
 
異彩を放っているのは忍者組織の頭(かしら)役、石田えり
こういう作品の中では彼女の日本語まで変に聞こえてくる。
カッコイイおばあちゃんと言えなくもないけれど。
 
ツッコミどころは満載で、そういう意味では面白かったのも確かです。
どんだけ裏切るねん、スネークアイズ(笑)。退屈はしませんでした。
忍者って、国際的に永遠の憧れの対象なのですかね。

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