『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』(原題:Mr. Jones)
監督:アグニェシュカ・ホランド
出演:ジェームズ・ノートン,ヴァネッサ・カービー,ピーター・サースガード,
ジョゼフ・マウル,ケネス・クラナム,クシシュトフ・ピチェンスキ他
終業後に梅田まで出るのがどうにも面倒になっていますが、
気持ちを奮い立たせてシネ・リーブル梅田へ。
どうせ梅田まで行くならば2本観ないともったいない。
2本ハシゴの1本目に観たのは、ポーランド/イギリス/ウクライナ作品。
レオナルド・ディカプリオ主演の『太陽と月に背いて』(1995)を撮った、
ワルシャワ出身のアグニェシュカ・ホランド監督による。
重たい作品でしたがまぁまぁ見応えがありました。これも実話に基づく。
1933年。まだ20代の英国人記者ガレス・ジョーンズは、
ツテを頼ったとはいえヒトラーにインタビューした経験を持つ有名人。
彼が次にインタビューしたいと考えているのはスターリン。
世界恐慌が吹き荒れるなか、なぜソ連だけが繁栄しているのか。
それを直接聴きたいと思っているが、
アポを取ろうとしても先方からまったく返答がない。
モスクワにいる友人記者ポール・クレブと電話で話したところ、
ポールはスターリンの資金源を突き止めたらしい。
しかしポールが何か言おうとした瞬間に電話は切れてしまう。
モスクワに向かったガレスは、ポールが強盗に遭って殺されたと聞くが、
背中から銃弾を4発撃ち込まれていたらしく、強盗の仕業とは思えない。
当局の厳しい監視の目をかいくぐって調べてみると、
ポールがウクライナへ向かおうとしていたことがわかる。
そこにこそスターリンの資金源があると見たポールは、
真実を求めてウクライナに乗り込むのだが……。
ガレス・ジョーンズがどんな人だったのかを検索しましたが、
ゴルフで有名な別人がいるようで、こっちのガレスについてはよくわかりません。
とにかく本作によれば、ガレスは28歳ぐらいのときにウクライナへ潜り込み、
ソ連繁栄の影でウクライナの人為的飢饉が生じていることを暴きます。
英国に帰ってそれを告発するけれど、誰も信じない。
ニューヨーク・タイムズ紙のピューリッツァー賞受賞記者が
「そんな事実はない、ガレスは嘘つきだ」と言ったから、皆そちらを信じる。
ガレスは別の大手メディアに自分の話を売り込むことに成功し、
やっと信じてもらえるようになるわけですが、30歳で何者かに殺されてしまう。
なんというのか、怖いです、ソ連。
そもそもガレスがモスクワ入りしたときに、当局が決めたホテルにしか宿泊できず、
しかも本人は1週間分の宿泊予約をしたはずなのに、
「2日しか泊まれません。ほかのホテルにも泊まれません」と言われるんですよ。
3日目にはあなたの姿は消えますということだったのかしらん。
こういう作品を観るたびに、日本に生まれてよかったと思うのでした。
日本だってなんだかんだあるのかもしれんけど、こんなことはなかったやろと。
見せかけの繁栄のために飢餓に苦しめられたウクライナの人々。
見ているのが辛かった。
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