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2023年3月に読んだ本まとめ

2023年3月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:3349ページ
ナイス数:604ナイス
■ノワール・レヴナント (角川文庫)
今年は絶対ひと月に10冊読むぞと決めていたのに、本作に手を出したせいで既にアウト。薄い本なら優に3冊分はある760頁超。2月にして早くも目標を達成できなかったのは残念だけど、3冊分以上の楽しさがありました。見えないものが見える、聞こえないものが聞こえる、読めないものが読める、何でも壊せるという能力を持つ高校生4人が引き合わされて陰謀に挑む。どの場面にもドキドキさせられ、それぞれの面白いキャラにも惹かれます。あのクズ野郎を壊してやってほしかったけれど、そうしなかったのもたぶん良いところ。こんな青春、好きだ。
読了日:03月01日 著者:浅倉 秋成
■大河への道(河出文庫)
映画版は公開時に劇場で鑑賞済みです。1冊のボリュームとしてはすぐ読了できる程度に薄め。だけどいくら薄めといえども、これを丸ごと1時間半かけてしゃべる落語家がいるとは信じがたい。オリジナルである立川志の輔の落語をめちゃめちゃ聴きたくなります。映画版と大きく異なる点は、脚本家がベテランではなくてわりと若いということ。映画版の橋爪功には笑わされました。それから、映画版は原作以上に問題が勃発。しかし200頁付近の、上様の前に地図が広がるシーンは、映画版未見の人にはぜひご覧いただきたい。ジワッと来て涙目になります。
読了日:03月04日 著者:立川志の輔
■旅のオチが見つからない インド&南アジア混沌ドロ沼!一人旅 (メディアファクトリーのコミックエッセイ)
昨年から「追いRRR」中でとりあえず10回劇場に足を運んだ私としては、インドがメインのこの旅の話を見逃すわけにはいきません。残念ながら『RRR』の舞台となっている辺りは出てこないけれど、めっちゃ面白かった第1弾に続き、食べ物の描写は特に秀逸。『RRR』の中でアクタルが食事していたシーンなども思い出されて嬉しくなります。売り切れた料理の代わりの対応には怒る気も失せるどころか爆笑。それが当たり前のインドって、いいなぁ。インドへの興味は強くなったけど、だからって私に著者のような旅ができるかと言われたら絶対ムリ!
読了日:03月07日 著者:低橋
■復讐の協奏曲 (講談社文庫)
御子柴弁護士事務所のスーパー事務員の正体が明らかになります。凄いリーダビリティ。あっというまの370頁。生まれついてのサイコパスはこの世にいると思うし、そういう人たちの矯正だとか更生だとかはできないと思っています。だけどこのシリーズを読んでいるときだけは、できるかもしれないと思う。自らが起こした殺人事件について反省の弁を語ることは一切なく、許しを請うこともない。ただ淡々とすべきことをするだけ。そんな彼の姿に胸が詰まりそうになったことが何度か。倫子ちゃんは確実に将来の中山七里作品の主人公になり得る。来い!
読了日:03月08日 著者:中山 七里
■闇に堕ちる君をすくう僕の嘘 (双葉文庫 さ 47-02)
ここ数カ月間に読んだ本のタイトルに「嘘」と付くものが目立ちます。『嘘つきは殺人鬼のはじまり』とか『誠実な嘘』とか。嘘の話はどれもたいてい嫌な感じに終わる。それらに比べると本作は救いがあったけれど、終盤まで先がまったく見えず、主人公の太輝と巫香の関係を見守ることになりました。巫香の身に何が起きたのかを知ったときにはあまりに唐突な気がして、ここでこの嘘はどうなんだろうとちょい疑問。予想しなかった展開に、『3年B組金八先生』の中学生カップルを思い出したりなんかもして(全然違うけど)。売れそうなタイトルですよね。
読了日:03月13日 著者:斎藤 千輪
■カケラ (集英社文庫)
私にとって湊かなえ辻村深月は「好きではないけれど必ず読んでしまう作家」の二大巨頭です。しかしこのところ、後者は好きになりつつあって、それというのも「切なさ」を感じられるようになったから。切ない作家が好きなんです。前者はやっぱり切なくない。なのに面白くて止まらない。自殺した少女について、美人カリスマ美容外科医が聞き取りをおこなう。関係者らのモノローグ形式で構成されています。「いじりというのは、いじられた側に得がないとそう呼んではいけない、得がなければそれはいじめ」という、「いじり」の定義が印象に残ります。
読了日:03月20日 著者:湊 かなえ
■シンクロニシティ 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)
大人買いしたシリーズ。第1弾の後すぐに読みたかったところをこらえて7カ月。何もこんなに辛抱しなくてもよかったのに(笑)。プロローグは三津田信三×内藤了のようで期待が膨らむ。赤堀女史が登場すると一気に明るくなるけれど、期待に違わず。昆虫はわりと苦手な私ですが、なぜか昔からトンボを捕るのだけは得意で、今でも素手で捕まえられます。しかしトンボに性モザイクなんてあることも知らなかったし、昆虫業界がどういうことになっているのかもわかって、あらゆる点で興味を引かれました。刑事と女史のロマンスはないままでお願いします。
読了日:03月27日 著者:川瀬 七緒
■禍事 警視庁異能処理班ミカヅチ (講談社タイガ)
前巻までの怪異に比べるとおとなしめというのか、起きる怪異そのものよりも、幽霊上司・折原の過去だったり主人公・怜の生い立ちだったりが紹介される巻になっています。とはいうものの、冒頭で怜が出くわす怪異は勘弁してほしいぐらい凄絶ですけれど。折原警視正の家族と怜が会うシーン、その話を警視正が聴くシーンには涙がこぼれそう。怜がこのチームに居場所を見つけたことが改めて嬉しくなります。ミカヅチ班とその周辺の誰もが魅力的。私はオカルトは信じ(たく)ない派ですが、それでも面白半分に足を踏み入れてはいけない場所はきっとある。
読了日:03月28日 著者:内藤 了
■羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかったフィギュアの世界 (集英社新書)
失礼ながら著者のことを存じ上げず、映画『エゴイスト』を観た後で彼のことを知りました。羽生結弦くんの単なるミーハーファンである私は、もっとおちゃらけた羽生くん談義を想像していましたが、どっこいとても真面目に彼のことを考察していらっしゃいます。フィギュアを「いっぱい回った」とか「高く飛んだ」とかそんな視点でしか観ていなかったので、こうして羽生くんのみならず、ほかの選手についても細かく説明してもらえるのは面白くありがたい。丁寧な語り口調も嬉しくなります。著者がすでにお亡くなりになっていることが残念でなりません。
読了日:03月30日 著者:高山 真
■手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ) (小学館文庫)
今日で3月も終わりで、10冊読了を達成するために何か薄い本と思ったら、もうこれを読むしかないじゃないですか。近頃こんな読み方ばかりしていてごめんなさい、穂村さん。彼に憑依した少女の短歌って、いったい何なんですか。そういう妄想の設定なのかしらと思いましたが、読了後の今もこれがホンモノとは思いづらくて、やはり妄想なのか、というよりも妄想であってほしいと思わなくもない(笑)。あとがきにある或るお方の言葉、「正直、あれには引きました」。申し訳ありません、私も同感でございます。才能のかけらもない私には詠めないけど。
読了日:03月31日 著者:穂村 弘

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『長ぐつをはいたネコと9つの命』〈吹替版〉

『長ぐつをはいたネコと9つの命』(原題:Puss in Boots: The Last Wish)
監督:ジョエル・クロフォード
声の出演:山本耕史,土屋アンナ,魏涼子,小関裕太,木村昴,
     津田健次郎,成河,中川翔子,楠見尚己他
 
イオンシネマ茨木にて。
 
“シュレック”シリーズに登場する人気キャラクター、長ぐつをはいたネコ=プス。
彼を主人公にした『長ぐつをはいたネコ』(2011)が大ヒットしてから早10年以上。
なぜに今ごろ続編を製作することになったのか知りませんが、
9つあった命が残り1つになるまではこれぐらい時間がかかるかしら(笑)。
 
前作のときも字幕版がすごく観たかったのに近場では上映なし。
新たに加わったオリヴィア・コールマンフローレンス・ピューの声で観たかったなぁ。
 
いくつもの冒険でその名を轟かせてきた伝説のネコ、プス。
さんざん無茶をしてきたものだから、9つあった命が気づけばあと1つに。
さすがに怖じ気づいたプスは、冒険はもう止めて家ネコになることに。
 
ところがそんな折、どんな願いも叶うという「願い星」の存在を知る。
失った命を取り戻すため、その星を求めてプスは再び冒険の旅へと出発するのだが……。
 
怖いものなしと思われていた英雄プスが、怯えるところが可笑しく可愛い。
誇りだった賞金首の看板を下ろし、トレードマークの帽子もマントも長ぐつも脱ぎ捨てたのに、
8つの命を取り戻せると聞くとじっとしていられなくなります。
 
“シュレック”が流行ったのはずいぶん前のことだから、
今そのときのネコと言われてもそれほどは盛り上がれません。
だけど、セラピードッグを夢見るワンコやクマの親子、こえぇオオカミなど楽しさ満点。
 
嗚呼、字幕版が観たい。上映が打ち切られなければなんばまで観に行きます。

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『The Son/息子』

『The Son/息子』(原題:The Son)
監督:フロリアン・ゼレール
出演:ヒュー・ジャックマン,ローラ・ダーン,ヴァネッサ・カービー,
   ゼン・マクグラス,ヒュー・クァーシー,アンソニー・ホプキンス他
 
動物園前の動楽亭へ落語を聴きに行く前に1本だけ。
大阪ステーションシティシネマにて。
 
劇作家でもあるフロリアン・ゼレール監督が、自身の戯曲を映画化。
『ファーザー』(2020)の監督ということで、とても重くキツイ。
 
高層ビルの上階にオフィスを持つ敏腕弁護士のピーターは、妻ケイトと離婚。
再婚したベスとの間に息子テオが生まれたばかり。
政界進出も夢ではなくなり、充実した日々を送っている。
 
そんなある日、突然ケイトが訪ねてくる。
何度も連絡を取ろうとしたのに電話に出ようともしないピーターに
緊急の用事でどうしても会いたくて押しかけてきたらしい。
 
ケイトによれば、ピーターとケイトの17歳になる息子ニコラスの様子がおかしい。
高校生の彼は、ここのところ登校するふりをしてどこかで時間を潰していた模様。
ご丁寧に学校には親のふりをしてメールまで送っていたせいで、ケイトは気づかなかった。
 
ピーターがニコラスと話してみると、ニコラスは「パパと暮らしたい」と言う。
なんとかベスに納得してもらい、しばらくの間、ニコラスを引き取ることに。
 
転校したニコラスはピーターに笑顔を見せ、順調な新生活を匂わせる。
ひと安心するピーターとケイトだったが……。
 
ニコラスには自傷癖があり、精神的に問題を抱えていることはわかりますが、
具体的に「急性うつ病」という病名が出てくるのは最後の最後。
 
相当キツイです。
学校に行かない、ベスに心ない言葉を投げかける、家の物がなくなったりも。
親が息子を心配するのは当然だけど、私のような他人から見れば可愛くないガキ。
親の離婚で傷つけられたとしても、その態度はどうよと思う。
 
でも本人は何がつらいのか自分でもわからない。
父親から「どう生きたいのか。パパがおまえぐらいの頃は」とかなんとか詰め寄られる。
ヒュー・ジャックマン演じるピーターは、アンソニー・ホプキンス演じる自らの父親を恨み、
あんな父親だけにはならないでおこうと思っているけれど、
気づけば自分は息子にとって父親そっくりの父親になっているのです。
 
うつ病を患った息子は入院を拒否して、家に連れ帰ってほしいと両親に懇願する。
医師から「このまま帰宅すればまた自殺を図るかもしれませんよ」と言われても、
息子の望みを叶えたい、息子が「治った」という言葉を信じたいと両親が思った結果、どうなるか。
 
ハッピーエンドが待つほど甘くはない。
つらいつらい物語。

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『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』

『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』(原題:Moonage Daydream)
監督:ブレット・モーゲン
 
109シネマズ箕面にて、仕事帰りに2本ハシゴの2本目。
前述の『ロストケア』の次に観たドイツ/アメリカ作品。
 
タイトルどおり、デヴィッド・ボウイを撮り収めた作品です。
デヴィッド・ボウイ財団初の公式認定ドキュメンタリーなのだとか。
そんな財団があることすら知りませんでしたが、
そら、ま、あるか。デヴィッド・ボウイなんだから。
 
財団が保有するアーカイブ映像から厳選し、この1本にまとめ上げたのはブレット・モーゲン監督。
 
音楽家を対象にしたドキュメンタリーって、音楽目当てで観に行ったら、
思ったほど音楽は流れなくてガッカリしてしまうことがかなりの確率であります。
でも本作はその数にして40。音楽が流れっぱなしと言ってもよいほど。
それはそれで嬉しかったのですけれど、すみません、やっぱりちょっと寝てしまったよ(笑)。
 
しかし、どこに行こうがかまわないのにわざわざベルリンを選んだ理由とか、
彼の思惑通り、こんな大スターが歩いていてもまるで気にしない街の景色が面白かったり、
コンサートの様子も頻繁に映し出されたりして、寝ている場合じゃない。
 
鑑賞中ずっと『LIFE!』(2013)を思い出していました。
デヴィッド・ボウイの曲“スペイス・オディティ”が使われていたからでしょうね。
それがまた気持ちよくて。
 
寝ていた部分を確認するために再鑑賞するのはやめておきます。
また寝てしまうと困るから。(^^;

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『ロストケア』

『ロストケア』
監督:前田哲
出演:松山ケンイチ,長澤まさみ,鈴鹿央士,坂井真紀,戸田菜穂,峯村リエ,加藤菜津,
   やす(ずん),岩谷健司,井上肇,綾戸智恵,梶原善,藤田弓子,柄本明他
 
109シネマズ箕面にて、仕事帰りに2本ハシゴの1本目。
この日が封切り日でした。
 
原作は葉真中顕の同名ベストセラー小説。
買うタイミングを逸したまま今まで来て、積読の山の中にもありません。
今さらだけど、読もうかなと思ってはいます。
 
『月はどっちに出ている』(1993)や『Shall we ダンス?』(1996)の助監督を経て、
いまやすっかりメジャー監督になった前田哲
しかし本作を観て気づいたのですが、私は同監督のシリアスなテーマの作品よりも、
『極道めし』(2011)や『老後の資金がありません!』(2020)のような作品のほうが好きみたい。
刑務所の中の食事や財産の話もシリアスといえばシリアスか。
 
訪問介護センターに勤める斯波宗典(松山ケンイチ)は、
介護家族からも同僚たちからも信頼と尊敬を集めている献身的な介護士
 
センターの所長・団元晴(井上肇)の遺体がある家庭で見つかる。
それは斯波たちが訪問介護に訪れていた家庭で、
団は夜中に物盗り目的で侵入し、誤って階段から転落死したと推測されたが、
階下で眠っていた老人も息を引き取っており、こちらは自然死と判断される。
 
団の事件を担当することになった検事の大友秀美(長澤まさみ)は、
アシスタントの椎名幸太(鈴鹿央士)と共に調べるうち、
事件当夜に現場付近を斯波が通っていたことを突き止める。
 
老人の様子が心配で見に行っただけだという斯波だったが、
さらに調べてみると、このセンターで看ている老人だけ死亡率が異様に高いこと、
また、老人の死亡が斯波の仕事休みの日に集中していることに気づき……。
 
戸田菜穂坂井真紀演じる女性たちは、夫の仕事を手伝っていたり、シングルマザーだったりして、
それだけでもじゅうぶん大変なのに、認知症の親の面倒もみなければなりません。
肉体的にも精神的にも追い込まれ、いっぱいいっぱいどころかそれ以上。
介護に関わる近親者が対象者を殺めることも多いのだという事実に驚愕してしまうけれど、
そりゃ「死んでくれたら楽なのに」と思っても不思議はない。
 
斯波は父親(柄本明)をずっと介護していましたが、仕事をしながらでは介護できなくなる。
仕事を辞めて看はじめても、父親の認知症の進行はもちろん止められない。
そのうち金が底を突き、まともに3食の食事すら摂れなくなります。
意を決して生活保護の受給申請に行くと、「お父様は働けなくてもアナタは働けるでしょ。
アナタが頑張って」とすげなく追い返される。
 
「僕はもう何を頑張ればいいのかわからなくなりました」。
斯波役の松山ケンイチのこのときの表情には胸を押しつぶされそうになります。
 
正義を振りかざして斯波を断罪しようとする大友。
社会的ステータスも高く、安定した収入がある彼女のことを斯波は揶揄します。
それに猛反発する大友は、実は父を孤独死させ、母(藤田弓子)も施設で認知症を発症。
人のことを責めながら、自分の罪悪感を払拭しようとしているわけで。
 
同監督の『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(2018)とか本作とか、
重すぎるテーマのときに、どうも役者に頑張ってしゃべらせすぎる印象があります。
長澤まさみは言うまでもなく良い役者ですが、これほど声高に台詞を叫ばれるとちょっと興ざめ。
ここが泣きどころで感動のしどころですよと押しつけられているように思えて。
 
ということで、全面的に良い作品だったとは私には感じられないのですが、
『グッド・ナース』(2022)の看護師のようなシリアルキラーとは明らかに違い、
斯波の言葉には耳を傾けたくなります。そしてこの国の福祉事情が変わると思いたい。

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