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『白い暴動』

『白い暴動』(原題:White Riot)
監督:ルビカ・シャー
 
先月の緊急事態宣言発令直前、最後に寄った劇場がシネ・リーブル梅田でした。
まもなく休業になるかもしれないという噂があったので、
火曜日に『ナイチンゲール』を同劇場で観て、
水曜日にやはり同劇場で本作を鑑賞するスケジュールを立てていたら、
水曜日から休業になってしまい、涙を飲みました。
 
公開は延期になるのか中止になるのか。
いずれDVD化されるのを待つしかないと思っていましたが、
このたび、複数の動画配信サービスでレンタル配信スタート。
あらたにどこかのサービスに登録するのも面倒だから、
安直に(?)Amazonプライムビデオにて、1,100円払って鑑賞。
 
結果、1,100円なら格安。
劇場鑑賞の定価1,800円払っても観るべき作品だと私は思います。
 
ご存じでしたか、“ロック・アゲインスト・レイシズム(RAR)”を。
1970年代のイギリスで巻き起こった反差別運動です。
 
こういう人種差別をテーマにした作品を観るといつも思うこと。
1970年代って、ついこの間やん。あ、違います?ずっと前?(^^;
ついこの間までこんな差別が大っぴらにおこなわれていたのだ思うと唖然。
国として恥ずかしくはないのか。
 
当時、イギリスでは経済破綻状態。
その不満を晴らすための標的にされたのが移民でした。
第二次世界大戦後に増えた移民に国を乗っ取られてしまう、
そんな思想を持つ議会のリーダーに洗脳されたがのごとく、
白人至上主義を掲げる国民が移民を追放しようとします。
 
驚いたのは、デヴィッド・ボウイエリック・クラプトン、ロッド・スチュワートら、
名だたるミュージシャンがこれを支持すると表明したということ。
特にエリック・クラプトンはブルースを奏でて人気を博していましたから、
黒人音楽の搾取だと非難されたそうです。
また、ロッド・スチュワートは自分がすでにアメリカで暮らしていたにもかかわらず、
俺たちのイギリスを守ろう、移民を追い出せと発言したそうな。
私はロッド・スチュワートの“Have I Told You Lately”が大好きで、
自分のお葬式のときにかけてほしいと思っていたのに、考えを改めなければ。
 
さて、ここで立ち上がったのがまだ若き芸術家レッド・ソーンダズ。
映像を観ると今は立派なオッサンですが(笑)。
イギリス国民戦線(極右政党)のスローガンだった「英国を白く保とう」を
自らのステージで叫んで国民戦線への投票を呼びかけたクラプトンに憤り、
レッドは音楽誌に反対記事を投稿、自費出版の雑誌も発行します。
そして、RARを創設すると、人種差別に抵抗する運動を展開。
 
ファシズムを称賛するミュージシャンがいる一方で、
RARの運動に賛同するミュージシャンが現れました。
黒人のレゲエバンド“スティール・パルス”は、
白人がレゲエをすることについてどう思うかと問われ、
嫌だなんて思わない、音楽に人種は関係ない、一緒にやろうぜと。
また、“トム・ロビンソン・バンド”は、ファンの多くが国民戦線派。
トム・ロビンソンは音楽がしたいだけなのにと戸惑いつつも、
ファシズムの思想は間違っているとRARに賛同します。
 
もっとも大きな影響を与えたのは、絶大な人気を誇っていたパンクバンド“ザ・クラッシュ”。
彼らのシングルデビュー曲こそが“白い暴動”で、
国民戦線は何を勘違いしたのか、当初自分たちを表した曲のように考えていたようですが、真逆。
 
クラッシュが賛同したことにより、
スキンヘッドの若者たちもRARの運動に目を向けはじめました。
こうして、わずか数人によって始められた差別に抵抗する運動が、
音楽と結びついて、ついには10万人のデモとフェスになります。
 
凄かった。
お金を払ってでも観てください。

—–

『だってしょうがないじゃない』

『だってしょうがないじゃない』
監督:坪田義史
 
“仮設の映画館”『グリーン・ライ エコの嘘』を観て、次に選んだのがこれ。
本作もまた、第七藝術劇場で予告編を観たときに気になっていました。
“仮設の映画館”の上映作品はドキュメンタリーが多く、
この劇場休業期間中はドキュメンタリーを観る機会が増えそうです。
 
坪田義史監督の再従兄弟(はとこ)・まことさんは61歳。
広汎性発達障害を持ち、障害者年金を受給しながら独居しています。
ずっと母親とふたりで暮らしていましたが、
その母親がまことさんを遺して他界、以来7年間この生活。
 
母親の妹に当たる叔母さんがまことさんの後見人。
叔母さんは母親と行き来があったにもかかわらず、
母親の存命時にまことさんの状態を聞いたことはありませんでした。
亡くなって初めてまことさんの障害のことを知り、
役所に書類を提出するなど、まことさんがひとりで暮らせる環境を整えました。
彼の生活を支援する相談員が定期的にやってきたり、
傾聴ボランティアの女性がまことさんの話を聴きに訪ねたりもします。
 
坪田監督は既婚で子どももいますが、体調不良で精神科を受診したところ、
自身が注意欠如多動性障害(ADHD)と診断されました。
奥さんに話してもなんだかよくわかってくれない。
そんなこともあって、3年間に渡ってまことさんの日常に密着、
発達障害についてありのままをフィルムに収めたという作品です。
 
私の幼少期には、発達障害などという言葉はありませんでした。
極端に落ち着きないやっちゃなぁという子が同学年を見渡せば1人や2人、
いや、もしかするともっといたかもしれません。
今になって思えば、「普通」とはいえない落ち着きのなさは、
発達障害というべきものだったのだろうと思います。
 
まことさんは軽度の知的障害を伴う自閉症
基本的に自分でこなせて、家事もすれば、衣服の着脱や入浴も問題なし。
ある程度の場所まで公共交通機関を使って行くこともできるし、
人との対話も一見スムーズ。しかし、さまざまなところにこだわりがある。
本作を見れば、いままで知らなかった発達障害のことが少しは理解できた気がします。
 
まことさんは常にいろいろ考えている。
手に持っていたビニール袋を空に飛ばしてしまったとき、
隣家から「ゴミを撒き散らしている」という苦情が。
「やってはいけないことだとわかっているんだけれど、
ふわふわと飛んで行くのがいいなと思った」。
その気持ちを抑えるためにはどうすればいいか。
「ゴミを飛ばしてはいけないとここに書いて」と監督に頼み、
玄関の扉にそれを貼り付けるんですねぇ。
 
コンビニで買ったエロ本(パンツと太ももが写っている写真集でたいしたことはない(笑))を
叔母さんの目につかないところにと思って、戸棚に隠したらバレてしまった。
案の定、叔母さんから怒られて意気消沈。
それを監督と監督の父親に話したら、「男として健康なことだよ」と言われてホッ。
でも、だからって女子高生に触ったりすれば犯罪だということもわかっています。
 
自分が叔母さんに面倒をみてもらっていること、わがままを言っていること、
何かあれば叔母さんや監督に迷惑がかかることもわかっている。
あちこちで人に対して見せる気遣いに、
この人が安心して生きていける世の中になれば願わずにはいられません。
 
バリアフリーの字幕を見たとき、
まことさんのつっかえる言葉がそのまま字幕になっていて、
ここまで字幕にしなくてもいいのにと思いました。
でも、それこそが私の差別意識なのではないかとハタと気づく。
だって、まことさんのしゃべることを字幕にしているのだから、
つっかえたところはつっかえたままを字幕にするのが当然。
なのに、その字幕に嫌悪感を抱いた私こそ、どうかしている。
 
監督のまなざしが優しく温かい。説教臭さも皆無。
再従兄弟だと思っていたら実は従兄弟違いだったという監督の言葉に、
「違いが違うだけで、いとこには変わりない。
どっちでもいいでしょ」というまことさん。そのとおりです(笑)。
 
コロナ禍でまことさんはどうしているでしょうか。それがとても気にかかる。

—–

『グリーン・ライ エコの嘘』

『グリーン・ライ エコの嘘』(原題:Die Grune Luge)
監督:ヴェルナー・ブーテ
 
第七藝術劇場で上映されたら観に行くつもりでしたが、
緊急事態宣言発令下、休業で見送りに。
このたび“仮設の映画館”で上映が開始されました。
 
“仮設の映画館”はとても面白い試みです。
コロナ騒動のせいで上映が延期になってしまった作品を含め、
今のところ11本の作品をオンラインで公開予定。
興行収入を劇場と配給会社と製作者に分配するとのこと。
普通のネット配信とはちと異なり、観る劇場を選ぶところから始まります。
視聴者が選んだ劇場に興行収入が分配されるという仕組み。
 
何本か観たい作品があり、どれにしようか迷って、まずは本作を選択。
もともとナナゲイで観るつもりだったからナナゲイを選ぶ。
ナナゲイの会員だから、劇場で観ればもっと安くで観られるねんけどなぁ、
定価の1,800円は高いなぁ、でもここは高いとか安いとか言うてる場合やない。
ナナゲイもほかの劇場もなくなったら私は困るねん。1,800円払います。
 
“仮設の映画館”ではちゃんと上映開始のベルも鳴り、
上映に先立っての注意事項のアナウンスも流れるのです。なんかワクワク。
 
オーストリアのドキュメンタリー作品。
ヴェルナー・ブーテ監督のことは知りませんでしたが、
なんとも愛嬌のあるおじさま。
小難しい会話に持って行ったりしないので、非常にわかりやすい。
 
そんな監督がエコ商品のサステナビリティ(=持続可能性)について問います。
「環境に優しい」を謳い文句に販売されるサステナブル(持続可能な)エコ商品。
監督に同行するのは、グリーンウォッシングの専門家カトリン・ハートマン。
ふたりで調査するために地球一周の旅へ。
 
私は、ふだん買い物に行くのにエコバッグすら持参しないような人間です。
エコ意識が低すぎると自分で思っていますが、
本作の中で、エコ意識の高低を競うこと自体おかしいとの話も。
グリーンウォッシングという言葉も知りませんでした。
「環境に配慮しているように装う企業の嘘」のことだそうで。
 
ふたりがまず向かったのは、パーム油の世界最大の産地インドネシア。
「サステナブルなパーム油」と謳われた商品が多いけれど、
カトリン曰く「サステナブルなパーム油などない」そうです。
本作を観た後にウィキペディアでパーム油を調べると、
しきりと「持続可能なパーム油」の文言があって、ちゃんちゃら可笑しい。
 
木は伐採され、人為的な火災が起き、森林は死に絶える。
一定の企業と、その企業と癒着する人が儲けるために造られる農園。
仕事の場を与えてやっていると上から目線んで企業は言うけれど、
その国の人たちはそれで豊かになったと言えますか。到底そうは思えない。
 
また、アメリカでは海で無理な掘削を続けた企業が事故を起こし、原油が流出。
地元の漁師が原油の回収に協力を申し出たにもかかわらず、企業は拒否。
化学薬品をばらまいて原油を海底に沈め、安全だと宣言。
安全なわけなどありません。今もその海のエビには原油がまとわりついている。
 
「緑色」になんと惑わされることか。緑とは自然な色だという思い込み。
そのイメージを利用している企業の多いこと。
上記の原油を流出させた企業のロゴマークも緑の太陽。
 
「環境と人権保護が企業のリップサービスであってはならない」。
自分がなつかせたものには責任があるんだよというエンドロールの詩が重い。
 
大地の恵みをそのまま受け入れて生きることを選んだ夫婦の話、
それこそが本当のサステナビリティだと思うのでした。

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『サイボーグ009』

『サイボーグ009』
監督:芹川有吾
声の出演:太田博之,畠山京子,石橋良,ジュディ・オング,大竹宏,増岡弘,
     藤村有弘,曽我町子,内海賢二,八奈見乗児,川久保潔,はせ・さんじ他
 
こんなのもAmazonプライムビデオで観ることに。
 
ご存じ、石ノ森章太郎の同名漫画のアニメ化。
「ご存じ」と書いてはみたけれど、私は知らないんです。
私の生まれる前の1964年から連載が始まって、
今も売れつづけ、累計発行部数が1000万部に達しているって凄いなぁ。
 
本作は1966年に制作された劇場版第1弾。誕生編ということか。
なんだかこういう絵を見ると安心します。
しゃべり口調も硬いところが逆に新鮮。
 
並外れた身体能力を持つカーレーサー・島村ジョーは、レース中にクラッシュ。
駆けつけた救急車によって搬送されるが、それは偽の救急車。
実は事故自体が陰謀によるものだった。
彼に目をつけた闇の組織“ブラックゴースト”は、瀕死のジョーを拉致すると、
サイボーグ化手術を施し、サイボーグ009を誕生させる。
 
目覚めると、石に埋もれても銃で撃たれても傷ひとつ負わない体になったジョー。
困惑するジョーはほかのサイボーグと引き合わせられる。
彼らはそれぞれ違う国籍を持ち、社会からドロップアウトした者ばかり。
世界征服を企むブラックゴーストのために行動することを課せられていたが、
そのサイボーグたちが突然、彼らの手術を担当したギルモア博士を人質に取って逃亡。
009も「愛と自由のために戦う」という彼らについて行く。
 
人質だと思っていたギルモア博士こそがこの計画の立案者で、
当初はブラックゴーストの指示で手術をおこなっていたが、
とんでもない過ちだと気づいて、組織を離れることを決意したのだ。
サイボーグたちは一丸となり、ブラックゴーストと戦う。
 
絶対負けないとわかっているから(笑)、安心して観ていられます。
ブラックゴーストが次々と繰り出す凶悪ロボットたちに勇敢に立ち向かい、
各々の能力を駆使して戦う姿は、子どもだったら興奮しただろうなぁ。
いろんな国のサイボーグというのもグローバルで楽しいじゃないですか。
 
劇場がすべて休業にならなければこんなのを観ることもなかったでしょう。
ほかのもいろいろ観てみるかな。

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『大好きだから』

『大好きだから』(英題:Because I Love You)
監督:チュ・ジホン
出演:チャ・テヒョン,キム・ユジョン,ソ・ヒョンジン,
   イム・ジュファン,キム・ユネ,ソン・ドンイル他
 
シネマート心斎橋でたまに見かけていた“のむコレ”という催し物。
“未体験ゾーンの映画たち”みたいなやつなんやろか、
たぶん、観たら酒を飲みたくなる作品を集めたやつなんやと勝手に決めつけ、
なんとなく観に行く機会がないまま今日に至る。
 
劇場公開時の情報を調べていて“のむコレ”でかかっていたことを知る。
で、“のむコレ”って結局何なん?と思ったら、「のむらコレクション」の略なのか!
で、で、「のむら」って何?誰?と思ってさらに調べると、
シネマート新宿およびシネマート心斎橋の番組編成担当・野村武寛氏が、
アジアの話題作をいち早く集めましたという催しなんですと。へ〜っ。
 
本作は“のむコレ 2017”で上映された2017年の韓国作品。
 
恋人にプロポーズすると決めた日に交通事故に遭った男。
目覚めてびっくり、男だったはずの自分が女子高生の姿になっている。
しかも、男だった記憶以外は名前も家も仕事も思い出せない。
 
とりあえずいま自分が姿を借りている女子高生は優等生で、
優等生なのに妊娠しているらしい。
自分の身にも彼女の身にも何が起きているのかさっぱりわからないから、
見た目=女子高生、その実=男はあきらかに挙動不審。
その様子を面白がって近づいてきたのが、女子高生の友人らしいスカリー。
 
スカリーに事情を説明すると、最初はもちろん信じてくれなかったが、
やがて男のことを「幽霊さん」と呼んで事情の解明に手を貸すように。
男がいったいどこの誰で、なぜこのようなことが起きているのか。
調査するうちに男はイヒョンという名前で音楽関係者、
恋人はヒョンギョンという女性であることがわかるのだが……。
 
イヒョン役のチャ・テヒョンの出演作には当たりが多い。
笑わされて、大泣きさせられて。
特に『ハロー!?ゴースト』(2010)なんてボロ泣きですよ。オススメ。
それに比べると本作はちょっと弱くはあるのですが、やっぱり泣く。
 
イヒョンが幽体離脱して女子高生になるだけかと思ったら、
そのあといろんな人の体を転々とするのです。
離婚寸前のオッサン刑事になったり、認知症のばあちゃんになったり、
女っ気のまるでない高校の教師になったり。
いずれも恋愛に問題を抱えていて、イヒョンが図らずもキューピッドになる。
どれもいい話で、中でも認知症のばあちゃんの話は泣かずにはいられません。
 
イヒョンが編曲してヒョンギョンが歌う『愛しているから』という曲は
ユ・ジェハという実在の歌手の曲で、エンドロールに「ユ・ジェハに捧ぐ」の文字。
シンガーソングライターの彼は、1987年にアルバム『愛しているから』を発表、
その3カ月後に交通事故で亡くなったとのこと。
ヒョンギョンの歌声が素晴らしく、この曲を聴くとまた泣いてしまいます。
 
しばしコロナのことを忘れて泣きたい人、どうぞ。

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