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『ファヒム パリが見た奇跡』

『ファヒム パリが見た奇跡』(原題:Fahim)
監督:ピエール=フランソワ・マルタン=ラヴァル
出演:イザベル・ナンティ,ジェラール・ドパルデュー,アサド・アーメッド,ミザヌル・ラハマン他
 
テアトル梅田にて、前述の『剣の舞 我が心の旋律』とハシゴしたフランス作品。
不法滞在の移民の少年がフランスのチェス大会で優勝したという実話に基づく。
 
バングラデシュに暮らす8歳の少年ファヒムは、類い稀なチェスの才能を持つ。
チェス大会で勝利を重ね、新聞にも取り上げられるような有名人。
そのせいで、情勢不安定なバングラデシュにあっては誘拐されるかもしれない。
 
このままでは息子の身に危険が及ぶと考えた両親は、
まず父親ヌラがファヒムを連れてフランスに向かい、
無事に住む場所と職を確保してから家族を呼ぶことに。
不安を抱きながらもなんとかフランスに入国したヌラとファヒム。
 
手持ちの金で3日間は安宿に宿泊したものの、
仕事が見つかるはずもなく、路上で夜を明かしていたところ、
赤十字の難民センターのスタッフに声をかけられる。
難民認定を受けるまでとの条件で、センターに身を寄せる親子。
早速フランスでも有数のチェスのトップコーチ、シルヴァンに会いに行くのだが……。
 
チェスの才能を携えてパリへ行って、そこでいじめられるのかと思ったら、
意地悪なことを言うのは大人だけ。
同じチェスクラブの少年少女たちの温かいことと言ったら。しかもオモロイ。
チェスを習うくらいだから、家庭的にはまぁ裕福なのかなと思うけれど、
どこの国のなに人なのかよくわからない子もいて事情はさまざま。
 
子どもたちはベンガル語しかできないファヒムともすぐに仲良くなり、
言葉をあれこれ教えるところがめちゃくちゃ可笑しい。
「出て行ってくれ」、これをフランス語で言うてみ、と言われたファヒムは、
「うざいから失せろ」なんて言い回しもすぐに披露してみせます。
「ショボい」とか「ムカつく」とか「キョドる」とか、
意味がわからない言葉については即座に尋ねるファヒム。
説明を受けたファヒムが使ってみせると「今の使い方カンペキ」と褒めるのもイイ。
 
差別しない親を持つ子どもは差別しない。
いきなりファヒムを連れ帰って「今日泊めるよ」と言われて戸惑っても
ちゃんと歓待するんですよねぇ。
親の言うことすることを子どもはやっぱり見て育つのだと思います。
 
肝心のチェスの試合もようわからんままに非常に面白く見ました。
ファヒムはフランス大会で優勝したのち、世界大会でも優勝したとのこと。
いいお話です。

—–

『剣の舞 我が心の旋律』

『剣の舞 我が心の旋律』(英題:Sabre Dance)
監督:ユスプ・ラジコフ
出演:アンバルツム・カバニャン,アレクサンドル・クズネツォフ,アレクサンドル・イリン,
   イヴァン・リジコフ,ヴェロニカ・クズネツォーヴァ,インナ・ステパーノヴァ他
       
世間のお盆最終日だった日曜日、がら空きの新御(しんみ)を走って梅田へ。
テアトル梅田にて、ロシア/アルメニア作品を鑑賞。
 
『剣の舞』を知らない人はいないですよね、きっと。
もしそのタイトルを知らない人がいたとしても、曲を聴けば知っているはず。
小学生の頃、運動会でかかっていたような気がします。
 
その『剣の舞』を作曲したのはアルメニア人のアラム・ハチャトゥリアン。
旧ソ連、ロシア帝国の支配下にあったグルジア(現ジョージア)
1903年、アルメニア人家庭に生まれました。
本作は『剣の舞』が誕生するに至った秘話を描いています。
 
キーロフ記念レニングラード国立オペラバレエ劇場は戦禍を逃れて地方に疎開中。
団員たちはバレエ『ガイーヌ』の初演を控えて猛稽古中だが、
公演まであと2週間しかないというのに、振付家アニシモワが何度も振付を変更。
それに合わせて曲も変更を求められ、作曲家ハチャトゥリアンはイライラ。
さらにはそこへ文化省の役人プシュコフがやってきて、好き勝手言い始め……。
 
このプシュコフがもの凄く嫌な奴なんです。
地獄へ堕ちろ〜と念じたくなるぐらい(笑)。
どうやらかつてはハチャトゥリアンと同じく作曲家を目指していて、自分はその夢叶わず、
ハチャトゥリアンだけが成功を収めたことが悔しいらしい。ちっせぇ男です。
 
ただただ良い音楽を作りたくて作曲に没頭しているハチャトゥリアンのことを
音楽には政治的意味が込められるものだと言って貶めようとしたり。
しかしナチスドイツが兵士にワーグナーをよく聴かせていたとは知りませんでした。
作曲家が意図してもいないのに政治的意味を持たされてしまうことは
往々にしてあるのでしょう。逆に実は意図しているということもあるのでしょうけれど。
 
アルメニアに特別な想いを抱くハチャトゥリアンはこう言ったそうです。
アルメニア人虐殺をもしも世界が傍観せずにいたら、ユダヤ人虐殺は起こらなかったかもしれない」。
 
戦地で負傷して帰国し、退院したらまたすぐ出征する兵士たち。
出征前夜にせめてバレエが観たくて劇場に向かい、何も観られないと知って憤る。
そんなとき、ハチャトゥリアンの独断で兵士らは招き入れられ、
目を輝かせてリハーサルに見入る。とてもいいシーンでした。
 
「運動会の曲」にこんな誕生秘話があったことが知れてよかった。

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『ぶあいそうな手紙』

『ぶあいそうな手紙』(原題:Aos olhos de Ernesto)
監督:アナ・ルイーザ・アゼヴェード
出演:ホルヘ・ボラーニ,ガブリエラ・ポエステル,ホルヘ・デリア,ジュリオ・アンドラーヂ他
 
シネ・リーブル梅田にて。
前述の『ハニーボーイ』といい本作といい、派手な展開は全然ないのに、
どうして眠くならないのか。
よさげなのに眠くなる作品とこれらと、どういう違いがあるんでしょうねぇ。
 
ブラジル作品。
原題の“Aos olhos de Ernesto”を直訳すると「エルネストの目には」。
邦題は内容にぴったりだとは思いませんが、観たい気持ちにはなります。
 
ブラジル南部の町ポルトアレグレ。
78歳のエルネストはウルグアイからこの地にやって来て46年。
妻に先立たれて今は一人暮らし。
視力が次第に衰えて、近頃は何もかもがぼやけて見える。
そんなエルネストを心配して、息子のラミロが一緒に暮らそうと言うが、
エルネストは金もないくせに断固拒否。ラミロは困り果てている。
 
ある日、エルネストのもとへ1通の手紙が届く。
それはウルグアイ時代の女友だち、ルシアからだった。
自分で読もうにも文字が見えないから、家政婦に読んでもらおうとするが、
彼女はポルトガル語しかできず、スペイン語の手紙は読めないという。
隣に住むハビエルに頼むと、女性からの手紙ということで茶々を入れすぎる。
腹が立って途中で取り上げ、手紙の続きは未読のまま。
 
そこで出会ったのが23歳の見るからに奔放な女性ビア。
手紙を読んでもらったところ、返事を書こうとビアが言い出し……。
 
ちぃともいい子じゃないんです、このビアが。
エルネストの目がほとんど見えていないことをそれとなく確かめると、
置いてあった鍵を盗んで勝手に合鍵をつくる。
それを用いて忍び込むと、部屋の中にあった金をくすねてしまう。
なのに観ていてイライラしないのは、エルネストがすべて承知のことだから。
手癖が悪いことを知っていながら部屋の中に入れるのです。
 
いくら彼女には彼女の事情があるといっても、
そんな女だから、金だけ盗んでいなくなる。
打ちひしがれるエルネストの姿にたまらなく悲しい気持ちになっていると、
手紙の返事が読みたいからと彼女が舞い戻ってきて、
すべてエルネストに打ち明けるシーンが◯。
 
最近観たなかでは『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』のラストが
100点だったと書きました。
本作のラストも素敵です。老いたってロマンチック、ええやんか。

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『ハニーボーイ』

『ハニーボーイ』(原題:Honey Boy)
監督:アルマ・ハレル
出演:ルーカス・ヘッジズ,ノア・ジュープ,シャイア・ラブーフ,
   FKAツイッグス,ローラ・サン・ジャコモ,クリフトン・コリンズ・Jr.他
 
シネ・リーブル梅田にて。
 
エンドロールが回りはじめてから、
本作の脚本を担当したのが父親役のシャイア・ラブーフであることを知りました。
へ〜っ、あの人、脚本を書けるんやと感心していたら、
なんと本作はシャイア・ラブーフの自伝的作品とのこと。
しかもアルコール依存症だった彼が治療の一環として綴ったのがこの脚本。
映画化することなんて考えもせずに書いたのに、
その出来に目を見張ったアルマ・ハレル監督が映画化を申し出たそうな。
 
ハリウッドスターのオーティスは、飲酒運転で事故を起こす。
アルコールによるトラブルを起こすのは3度目だったため、更生施設送りに。
PTSDの兆候ありとの診断を受けるが、オーティスには心当たりがない。
カウンセラーから過去を振り返れば原因がわかるかもしれないと言われ、
子ども時代の記憶をたどろうとするのだが……。
 
飲酒運転を起こした現在のオーティスを演じるのはルーカス・ヘッジズ
最近ものすごい売れっ子。ちょっと問題のある青年を演じるとピカイチ。
どの彼もいいけれど、イチオシは『ある少年の告白』(2018)だなぁ。
 
彼が回顧するのは、人気子役だった12歳の頃のこと。
その時代のオーティスを演じるノア・ジュープの可愛いことと言ったら。
カワイイ顔してハードなアクションもこなすから鍛えていて、
わりとたくましい体つき、で、タバコも吸っちゃう。
愛くるしいことこのうえない息子を演じています。
そんな彼がステージパパ、ジェームズと暮らした辛い時代。
 
この癇癪持ちで暴力的で前科者のジェームス役がシャイア・ラブーフ。
彼自身の生い立ちを描いているのだと思うとより感慨深い。
母親と暮らすこともできるのに、自分が稼いで一緒にいてやらないと、
父親はますます駄目になってしまうと思い込む。これもやっぱり共依存
 
シャイアはまだ30代半ばに差しかかったばかり。
いい役者なので、今後は酒に溺れることなく歩んでいってほしい。
 
非常に良い作品でした。

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『君が世界のはじまり』

『君が世界のはじまり』
監督:ふくだももこ
出演:松本穂香,中田青渚,片山友希,金子大地,甲斐翔真,小室ぺい,
   板橋駿谷,山中崇,正木佐和,森下能幸,江口のりこ,古舘寛治他
 
前述の『もち』とハシゴ。同じくテアトル梅田にて。
 
『おいしい家族』(2019)のふくだももこ監督による。
主演は最近なんだか私のお気に入り、松本穂香
めちゃめちゃブルーハーツを聴きたくなる映画。
 
大阪郊外の町。
高校2年生の縁(松本穂香)は学年トップの秀才で優等生、
琴子(中田青渚)は成績ビリで問題児だが、ふたりは大親友。
 
男を取っ替え引っ替えしている琴子だったが、
ある日、ひとり涙していたサッカー部の業平(小室ぺい)に一目惚れ。
心を入れ替え、業平一筋で行くと決める琴子。
 
そんな琴子にひそかに想いを寄せているのはサッカー部の主将・岡田(甲斐翔真)。
学校一の人気者でモテモテの岡田なのに、琴子はその存在さえ知らない。
縁が岡田に発破を掛けるも、岡田は尻込み。
 
一方、縁と同学年の純(片山友希)は、父親(古舘寛治)のことが鬱陶しくて仕方ない。
母親が家を出て行ったのは、父親が母親の仕事を奪ったからだと考えている。
家事を完璧にこなし、いくら純が無視しても食事をつくりつづける父親。
家に帰りたくなくてショッピングモールで時間をつぶしていると、
東京からの転校生・伊尾(金子大地)を見かけて後を追うのだが……。
 
大好きです、この映画。
さして珍しくもない青春群像劇なのですけれど、重さがちょうどいい。
みんな表向きは明るく平和で「普通」。
でも、精神疾患のある父親の面倒を見ていたり、
好きな人に好きと言えない事情があったり、それぞれ悩みは尽きない。
 
業平の事情を知ってしまったとき、気まずい空気が流れそうなのに、
縁は「業平くん、ごはん食べた?」と自宅へ招きます。
突然男子を連れ帰った娘を温かくもてなす縁の両親(山中崇正木佐和)。
このときを含め、本作ではお好み焼きが重要。
 
青春って、苦いよね。辛いよね。
でも大人になって振り返ったら、笑えることも多いはず。

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