『宇宙でいちばんあかるい屋根』
監督:藤井道人
出演:清原果耶,桃井かおり,伊藤健太郎,水野美紀,山中崇,醍醐虎汰朗,坂井真紀,吉岡秀隆他
109シネマズ箕面にて、仕事帰りに1本だけ。
原作は2003年に刊行された野中ともその同名ファンタジー小説。
藤井道人監督の前作は『新聞記者』(2019)だから、
またえらく趣の違う作品に手を出したものだなと思いましたが、
それより前の作品を眺めてみれば、
『全員、片想い』(2016)とか、『オー!ファーザー』(2013)とか。
そうか、社会派一辺倒というわけではないのですね。
実母はつばめが2歳の頃に出て行き、麻子からは惜しみない愛情を受けて育った。
しかし、麻子が妊娠中の今、なんとなく自分だけが家族ではないような気がしてしまう。
つばめが想いを寄せているのは、隣家の大学生・亨(伊藤健太郎)。
亨の誕生日前日の深夜、手紙を書いて隣家の郵便受けに入れるが、翌朝になってから激しく後悔、
取り戻しに行こうとしたところ、亨に声をかけられて弱り果てる。
結局奪還できないまま登校すると、1カ月だけつきあって振った誠(醍醐虎汰朗)に睨まれる。
同級生女子たちからは気にすることないなどと言われるが、どうも居心地が悪い。
放課後にかよっている書道教室の屋上でひと息つく時間だけが落ち着ける。
そんなある日、いつものように屋上に上がると、謎の老婆が現れてびっくり。
「ほしのとよ」というその名前から、つばめは老婆を星ばあ(桃井かおり)と呼ぶことに。
最初はその風貌と物言いに面喰らっていたつばめだが、
「歳を取ったら何でもできる」という星ばあにあれこれ相談するようになり……。
ゆるり、良い感じです。ぎすぎすした気持ちのときには溶かしてくれそう。
奈央もつばめもとても良い子。
作り笑いで事を荒立てることなく生きているけれど、内心もやもや。
星ばあと出会ってからの彼女には変化が訪れて、後悔を恐れなくなります。
やらずに後悔するよりは、やってみて後悔するほうがいいというのは昔からよく言われることですが、
本作を観ると本当にそうだと思う。当たって砕けろ。
まぁ、こんな彼女がそもそも告白されたからって1カ月だけつきあって、
よう振れたなと思わなくもありません(笑)。
それを恨みに思う男子が悪態つくのを見て、
「言いたいことがあるなら直接言って」とつばめがキッパリ言うシーンは気持ちいい。
「ママはおまえに一目惚れしたんだ」。
夫とこんな可愛い娘が一度に手に入るなんてと喜んだという継母。
このシーンは泣かずにはいられない。
みんないい人。和む。
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