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2021年8月に読んだ本まとめ

2021年8月の読書メーター
読んだ本の数:11冊
読んだページ数:3478ページ
ナイス数:1049ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly

■神遊び (集英社文庫)
20年前の作品の復刊だなんてことを知らずに手に取りました。「怖っ」と叫ぶようなホラーを期待していると拍子抜けしそうなぐらい素直。最後に嫌な一文みたいなこともなく、ほっとすらしてしまう物語です。車を乗り入れることが困難なほどの山間にある村に伝わる「神遊び」。そんな神遊びに思い出を持つ人々の連作短編。第2編を読むとき、たいていの人が「おい、おまえ。学習してへんやん」と思うことでしょう(笑)。結局、怪異というのは、人の心の隙を突いて現れるものなのか。ならば日頃から後悔のないように人と相対して生きたいものですね。
読了日:08月02日 著者:清水 朔
https://bookmeter.com/books/18234255

■鏡じかけの夢 (新潮文庫)
今までに読んだ著作から、もっとイマドキの女性を書く作家なのだと思い込んでいました。川瀬七緒の『女學生奇譚』を思い出す、古めかしく耽美な雰囲気にゾワゾワする作品です。不思議な鏡に魅入られた人たち。磨けば願いを叶えてくれるなら磨きますよね。しかし磨き手が複数いて、すべての人の願いが叶うのだとしたら、ひずみが生じる。タダで願いが叶うわけもなく、必ず代償が要るであろうことにそのときは気づきません。人の欲を嘲笑うかのような鏡が怖い。映画『返校』を観たばかりだから、鏡に映るものに余計にビビってしまうのでした(笑)。
読了日:08月04日 著者:秋吉 理香子
https://bookmeter.com/books/18001703

■イントロの法則80's 沢田研二から大滝詠一まで
深夜に放送していた頃はかかさず観ていた“ザ・カセットテープ・ミュージック”。ゴールデンタイムに昇格して1時間番組になってからちょっと遠のいていましたが、最近また観るようになりました。目次を見てほとんどの曲を知っているという人は間違いなく楽しめると思います。イントロを思い出せなかった曲はYouTubeで検索しつつ。なんか好きなんだなぁ、80年代の曲。同番組で取り上げられたテーマの中では、イントロではなくアウトロの話も面白かったから、スージーさんにはアウトロで1冊書いてほしいものだけど、さすがにそれは大変か。
読了日:08月05日 著者:スージー鈴木
https://bookmeter.com/books/13131341

■キネマの神様 (文春文庫)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】読んでから何年も経っているので、原作にどれくらい忠実かはわかりません。だけどずいぶん違うことはわかる。マハさんの著作は、本作も含めていつも中盤までが好き。申し訳なくも終盤の怒涛の勢いは熱すぎて若干苦手です。映画版はそうでなかったところはいいとして、コロナ禍をからめたのはちょっと取って付けたように感じたりも。ゴウちゃんって、原作ではもっと愛すべきキャラだったと思うのですが、これじゃただのアル中、ギャンブル依存症だと思ってしまう私はたぶんひねくれている。素直な人向き。
読了日:08月10日 著者:原田 マハ
https://bookmeter.com/books/3194432

■護られなかった者たちへ (宝島社文庫)
実際にあった震災や事件を絡めて書かれた小説は、無理矢理感が強くて偽善臭の漂っていることも多いように思います。でもこの著者の作品では一度もそんなふうに感じたことがありません。倹しく真面目に生きているのに死んでゆくしかなかった人。えげつない殺され方をした役人のことを決して気の毒だとは思えない。死ねばいいと思っている私も、命を軽んじるなと諭されているかのよう。彼は絶対に犯人じゃないと思うのは七里ファンなら当たり前。残り数十頁になっても、こんなのは読めている。でも最後の5頁でどっひゃー。どうよ。またやられました。
読了日:08月12日 著者:中山七里
https://bookmeter.com/books/18106934

■スケルトン・キー (角川文庫)
澤村伊智『予言の島』を最近読んだ人なら私と同じように思うはず。えっ!?多重人格なの!?ちゃうやん、ほかにもおったんかいなって。このトリックは流行りなのでしょうか(笑)。サイコパスはどんな状況でも心拍数が上がらないのだということを初めて知りました。緊張しぃですぐに心臓がバクバクする私は羨ましいぐらいですが、何にでもドキドキできることを幸せに思うべきか。同じ血を引きながら、遺伝を喜ぶ者と悩む者が存在する。道尾さんは続編を書く人ではないでしょうけれど、行方がわからないからってまた出て来ないでくださいよ。怖い。
読了日:08月14日 著者:道尾 秀介
https://bookmeter.com/books/17851765

■侠飯7 激ウマ張り込み篇 (文春文庫 ふ 35-8)
第6作を読んだとき、「もはや料理以外のことはどうでもよくなっている」みたいに書いたのが聞こえたかのように、今回は侠飯だということを忘れてしまいそうなプロローグ。やらかしてばかりの新人刑事が、柳刃と火野のもとで潜入捜査に臨みます。ヤクザのふりに慣れない彼が可笑しくて、前半はシリーズでいちばん笑ったかも。いつくたばるかわからないからいい加減なものは食いたくない。それだけでなく、料理するときの創意工夫は刑事としての仕事にも通ずるものがある。やっぱり柳刃の説教なら私は素直に聴けそうです。大事なのはセンスじゃない。
読了日:08月15日 著者:福澤 徹三
https://bookmeter.com/books/18197959

■甲子園でもう一度きみに逢えたら (文芸社文庫 か 9-1)
読むなら今しかないタイトル。主人公は四国出身、東京勤務を経て大阪へ異動。まさか勤務時間中にパチンコへ行くのが大阪では普通だと思われても困りますが、甲子園に行けばこんなおっちゃんゴロゴロいる。観戦が涼しげなものだと思うのは甘いのも事実。私が生まれて初めて熱中症を体験したのは甲子園です。お手洗いではおばちゃんたちが「今日はあかん。ホンマにあかん。顔ドロッドロやわ」と化粧が流れ落ちる顔を鏡で見てぼやいてるし(笑)。本の感想やなくて甲子園の紹介みたいになってもた。コーラの海では泳ぎたくない。体ベタベタになるやん。
読了日:08月20日 著者:片瀬 真唯子
https://bookmeter.com/books/18043844

■連弾 (中公文庫 さ 83-1)
最初は佐藤青南じゃなくて中山七里みたいだと思いました。単にベートーヴェンからの連想か(笑)。途中まではとても面白い。クラシックとはおよそ縁がなさそうな風体の男が殺され、やがてある指揮者に疑いがかかる。徐々に指揮者の正体が明らかになってゆきます。捜査に当たるのはベテラン刑事と若い女性刑事。後者は絶対音感の持ち主で、音楽隊の採用なのに刑事課に配属。このコンビで続編もできそうですが、如何せん、犯人の思考回路がキモすぎる。ひとりよがりの勘違い男には「慟哭」ならず。失読症相貌失認については理解ある社会を望みます。
読了日:08月27日 著者:佐藤 青南
https://bookmeter.com/books/18168199

■あきない世傳 金と銀(十一) 風待ち篇 (ハルキ文庫 た 19-26)
第10巻の平穏が続きっぱなしだとは誰も思っちゃいませんよ。だけどこの野郎、どんだけ性格悪いねん、結め。こりゃ死ななきゃ治らんやろから死んどけと思ってしまう私も相当腹黒いです、すみません(笑)。こんなふうに憤った場面もあったものの、勧進相撲に見る後半の晴れやかさ。いつまた盗まれるかと霜月朔日まで気が気じゃありませんでしたが、何度も同じ目に遭わすような芸のないことはしはりませんわね、高田先生。浅草太物仲間の皆さん、大好きです。心乱されるのと落ち着かせてもらえるのと、ちょうど良い塩梅の第11巻。この先あと何巻?
読了日:08月29日 著者:高田 郁
https://bookmeter.com/books/18229817

■神様の罠 (文春文庫 つ 18-50)
コロナ禍の『オール讀物』に掲載された短編らしいです。もろコロナを意識した話もあれば、まったくそうではない話も。いずれにせよ読書を楽しませてくれるものには違いありません。有栖川有栖の作品は、何でも想像力を働かせればこんなふうに話を膨らませられるのだと思えて楽しい。若干イヤミス風の割合の物語が多いなか、芦沢央の話にはしんみり。コロナで理不尽に傷つけられた店の経営者や肉親を看取ることが叶わなかった人がいると思うと心が痛みます。辻村深月の話もコロナならでは。少し希望も湧いて〆。実際にもこんな出会いがあったりして。
読了日:08月31日 著者:辻村 深月,乾 くるみ,米澤 穂信,芦沢 央,大山 誠一郎,有栖川 有栖
https://bookmeter.com/books/17888193

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『白頭山大噴火』

『白頭山大噴火』(英題:Ashfall)
監督:イ・ヘジュン,キム・ビョンソ
出演:イ・ビョンホン,ハ・ジョンウ,マ・ドンソク,チョン・ヘジン,ペ・スジ他
 
観た順序を昨日入れ替えてUPしたついでに、これも先にUPします。
 
金曜日は少なくとも数本が新たに公開になる日。
先週も観たい作品が何本か封切られ、どれを最優先にするかしばし悩む。
しかし悩んだのはあくまで「しばし」の間。
イ・ビョンホンハ・ジョンウマ・ドンソクが共演する映画を後回しにできるわけがない。
イオンシネマ茨木へ行くべし行くべし。
 
輝かしい軍歴を持つチョ・インチャン(ハ・ジョンウ)は除隊の日を迎えてウキウキ。
臨月の妻ジヨンを心配させてばかりだったから、今日でこの仕事とおさらば、
明日からは愛する妻と生まれてくる子どもと共に穏やかに暮らすことができるはず。
 
ところが帰宅途中、激しい地震に見舞われる。
白頭山が噴火し、遠く離れたソウル高層ビルまで倒壊するなど、甚大な被害が発生。
 
地震直後、韓国を脱出してアメリカに向かう準備をしていたカン・ボンネ(マ・ドンソク)。
火山の専門家である彼は、何年も前から白頭山噴火の可能性を指摘し、
それを回避する方法を検討すべきだという論文を発表してきた。
しかし誰も耳を傾けなかったばかりか、彼のことを単なる目立ちたがり屋だと非難。
 
今になって政府から助言を求められて呆れるボンネだったが、
これまでの彼の調査によれば、噴火は75時間以内にあと3度起きるはず。
4度目となる最後の噴火では、韓国も北朝鮮も間違いなく壊滅する。
 
政府から半ば脅される格好で韓国にとどまったボンネは、
4度の噴火による国家殲滅を阻止するための方法を提示。
白頭山近くの地下マグマ溜りで核爆発を意図的に起こし、
エネルギーを解放するしかないと断言する。
 
韓国に核爆弾はないから、北朝鮮から盗むよりほかない。
爆発物の処理に長けるインチャンが呼び寄せられ、北朝鮮行きを命じられる。
その任務は、北朝鮮の工作員リ・ジュンピョン(イ・ビョンホン)の身柄を拘束し、
ジュンピョンから核爆弾の隠し場所を聞き出して盗むことで……。
 
実際にもしも国家が壊滅するほどの噴火が起きるとしたら、
こんな方法で回避することは可能なのか、それとも荒唐無稽な話なのか知りません。
でもこの3人の共演というだけでもうあとはなんでもよくなる(笑)。
 
筋肉を駆使したスポーツの選手という場合もあるし、
『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)のような正義感あふれるオッサンの場合もある。
でも体型を徹底的に無視したこんなインテリ役は初めてで、キャスティングがもう可笑しい。
 
ちょっとヒールな役のイ・ビョンホンはやっぱりイ・ビョンホンだから、
悪い人のままでは終わらない。ある意味、いちばんオイシイ役。
『アルマゲドン』(1998)のブルース・ウィリスの役目と言えるでしょうか。
そんな彼とハ・ジョンウのやりとりはコミカルで、切羽詰まった場面でも楽しい。
 
まもなく父親となるインチャン。
父親だったのに、父親になることから一旦逃げたジュンピョン。
予想できる展開ではありますが、間違いがない。
 
劇場で見る醍醐味があると思います。
最優先にしてよかった。

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『ある家族』

『ある家族』
監督:ながせきいさむ
出演:川崎麻世,野村真美,寺田もか,木本武宏,阿部祐二,秋吉久美子,木村祐一他
 
シネ・リーブル梅田にて、3本ハシゴの1本目。
 
高校の同期生の息子くんが子役で出演していると聞き。
その同期生とは同じクラスになったことがなく、私の親しい友だちの同級生でした。
だから、顔は知っているけれど、言葉を交わしたことはほとんどなし。
それがSNSで繋がるのですから、懐かしく嬉しいご縁です。
前述の『子供はわかってあげない』と本作の間に観た映画が8本ありますが、
そんな事情もあってこれを先にUPします。
 
ファミリーホームと呼ばれる児童養護施設があることをそもそも知りませんでした。
さまざまな事情で親と暮らせなくなった子どもを5人から7人、
施設というよりは普通の一軒家で預かって生活する、児童養護の形なのだそうです。
本作の一ノ瀬ホームの「お父さん」は、元児童相談所の職員で、
負傷して体の自由が利かなくなったのをきっかけに退職、ホームを運営しているという設定。
 
一ノ瀬夫妻(川崎麻世&野村真美)には実子のアカネ(寺田もか)のほか、
ユリ、タケル、カリン、レン、ショウタ、アイ、チハルという子どもがいる。
子どもたちは実の親に捨てられたり虐待されたりして居場所を失い、
児童相談所を通じて一ノ瀬ホームへやってきた。
 
一定の年齢に達すれば退所しなければならないから、
就職も住むところも決まった最年長のユリは皆に別れを告げて笑顔で出て行くが、
後日スナックで客の見送りをしている彼女を見かけたタケルは驚く。
 
また、虐待を受けて入所していたカリンを母親が迎えにくるが、
また戻ってくるのではないかとの心配が一ノ瀬夫妻やタケルの頭をよぎる。
かくして心配どおりのことが起きる。
 
そんなこんなの折、「お母さん」が倒れ、進行した癌であると判明。
体に支障のある「お父さん」だけでホームを運営していくのは無理だと、
子どもたちそれぞれの里親を探すことになるのだが……。
 
公式サイトを見ても役名が書かれていないので、俳優の名前と役名が一致しづらいのが残念。
子役のみんながそれぞれなんという名前なのかをちゃんと知りたいところ。
役名は暗記して帰宅、忘れないうちにこれを書いています(笑)。
 
高校の同期生の息子は山川大遥(たいよう)くん。先に聞いていたおかげでわかりました。
彼はショウタ役で、子どもたちの中でただひとり台詞なし。
というのもショウタは聴覚障害者なのです。だから、会話はすべて手話で。
なんと難しい役どころなのでしょう。
言葉としての台詞はなくても、台詞は台詞で覚えて、手話も覚えて、
自分の心情を観ている者に姿や表情で伝えなければいけない。
次々と里親が決まっていく中、自分には声がかからない。
親にさえ捨てられた自分のことをほしいと言ってくれる人などいるわけがない。
そう訴えて涙する彼を見たら、こっちも泣かずにはいられません。
美少年というわけじゃないけれど(ごめんやで)、ええ役者になりそうでものすごく楽しみです。
 
就職先で上手く行かなくて水商売に入ったユリに「あんな仕事なんか」と皆が言うのは、
水商売に対して失礼ではないかと思いますし、
ホステスたちを意地悪に描いているのも必要あったかどうか疑問です。
川崎麻世の演技が少し過剰に感じられる部分はあったりもするものの、
本作で児童養護施設の実情を知ることができたのはよかった。
『かば』を観たときにも思ったように、こうして伝えていかねばならぬこと。
 
児童相談所が不要になる世の中になればいいのにという台詞がありました。
本当にそう思います。
日々起きている虐待やネグレクト。心が痛みます。
心を痛めているだけじゃなくて、なんとかしなくちゃいけない。

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『子供はわかってあげない』

『子供はわかってあげない』
監督:沖田修一
出演:上白石萌歌,細田佳央太,千葉雄大,古舘寛治,斉藤由貴,豊川悦司他
 
ほっんとに歳を取ったなぁと感じる今日この頃。いろいろと面倒くさい(笑)。
平日の終業後は、映画は観たくても遠くまで行くのは嫌。
109シネマズ箕面かエキスポシティにしか寄りたくないと思う。
一昨年頃までは仕事帰りに頻繁に足を伸ばしていた西宮はしんどすぎて無理。
伊丹ならまだマシだけど、それでもちょっと遠く感じる。
箕面とエキスポシティの次に近いのはイオンシネマ茨木かなぁ。
 
そんな茨木ですが、沖田修一監督の作品でなければ先延ばしにしたかも。
原作は田島列島の同名漫画なのだそうです。
沖田監督といえばまず思い出すのは『南極料理人』(2009)。
これは言わずもがなの南極観測隊のお話。
『滝を見にいく』(2014)は滝を見にいくツアーのおばちゃんたち。
『モリのいる場所』(2017)は老画家が主人公でした。
沖田作品でこんなにもバリバリ高校生が主人公の話は初めて観るかも。
 
最初、スクリーンを間違えたかと思いました。
だって上映開始から流れる映像は延々アニメのシーン。
退出して確認しようかと思い始めたとき、画面が切り替わってホッ。
 
高校2年生の朔田美波(上白石萌歌)はアニメオタクで、
特にお気に入りなのは“魔法左官少女バッファローKOTEKO”。
 
水泳部に所属する美波は、プールサイドから見上げた屋上に人影を発見。
その人影が手にしていたものが気になって駆け上がったところ、
そこにいたのは書道部の門司くん(細田佳央太)。
思いがけず門司くんも相当のKOTEKOファンだと判明して意気投合。
 
ある日、美波はKOTEKO関連の映像を見せてもらいに門司くん宅へ。
代々書道家だという門司くんの家の座敷に束で置かれていたお札(ふだ)は、
美波の実父が彼女の誕生日に突然送ってきたものと同じだった。何故だ。
 
そこで自分の家庭の事情を門司くんに明かすことになった美波。
母親(斉藤由貴)は美波の実父とずっと前に離婚して、
今の父親(古舘寛治)と再婚したこと。小学生の弟がいること。
絵に描いたような幸せな家族で、何の不満もないこと。
それだけに実父の話はなんとなく家族の前ではできないこと。
 
しかしやはり実父に会ってみたい気持ちはある。
門司くんは探偵だという彼の兄(千葉雄大)を紹介してくれて、
お札を頼りにさっそく捜査を開始したところ、
実父は藁谷友充(豊川悦司)、怪しげな新興宗教の教祖だと判明するのだが……。
 
うん、とってもよかったです。
もう本当に絵に描いたような幸せな家庭なんです。
だから、美波の両親が再婚だと知ったときは「えっ」。
美波を見ていると、まさか継父だとは思わなかったから。
 
再婚ならばどこかぎこちなさがあるとか思い込んでしまっているけれど、
そうではなくてむしろ幸せだからこそ言い出せないことがある。
表には出ない美波の葛藤に気づいた母親がそんな話をするシーンがとてもよかった。
 
両親が別れた理由は明らかにされません。
でも憎み合って別れたのではないこともわかる。
豊川悦司演じる実父は、自分の立場をちゃんと弁えています。
今の美波の幸せがいちばん。でも会いに来てくれて嬉しい。
口に出して言わずとも、そのトヨエツの表情になんとも可愛げがある。
 
門司くんの祖父役で出演している品川徹がサイコー。
確か台詞は「門司くんですけど?」だけ。爆笑です。
 
最後の屋上のシーンはちょっと笑いすぎだなぁと私は思うのですが、
そこまでは完璧に好み。
シュールな会話にクスッと笑う。夏の間に観たい作品。
人生、オーケー牧場。

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『フリー・ガイ』

『フリー・ガイ』(原題:Free Guy)
監督:ショーン・レヴィ
出演:ライアン・レイノルズ,ジョディ・カマー,ジョー・キーリー,リル・レル・ハウリー,
   ウトカルシュ・アンブドゥカル,タイカ・ワイティティ,チャニング・テイタム他
 
109シネマズ箕面にて。もちろん字幕版を鑑賞しました。
 
ショーン・レヴィ監督、大好きです。
皆さんご存じであろう作品としては“ナイトミュージアム”シリーズ。
『リアル・スティール』(2011)なんかも知名度高いか。
劇場未公開だったけどめちゃくちゃ面白かったのが『インターンシップ』(2013)。
どれもこれもワクワクさせてくれて、ちょっぴり切なくもある作品ばかり。
 
ついついそっちを優先して観てしまったのですが、こっちに軍配。
スカヨハの元ダンナでブレイク・ライブリーの現ダンナ、ライアン・レイノルズ、絶好調です。
 
毎日同じ時間に起きて、金魚に「おはよう」の挨拶。
シャツとチノパンに着替え、出勤途中のカフェで「いつもの」コーヒーを買う。
巡査に声をかけたら勤務先の銀行へ向かい、窓口業務に就く。
そのうち銀行強盗がやってきて、犯人から言われたとおりに床に伏せたまま、
別に不安も感じずに、警備員で親友のバディと世間話をする。
そんな日々を繰り返している好青年ガイ。
 
実は彼は大人気オンラインゲーム“フリー・シティ”の中のモブキャラ(=背景キャラクター)。
バディもカフェの店員も巡査も、みんなモブキャラ。
モブキャラにはプレイヤーはいないし、いつも同じように行動し、同じ台詞を言うだけ。
なのにある日、ガイはふとカフェで口走る。「いつものじゃなくてカプチーノにしてみようかな」。
これに周囲のモブキャラが大慌てしたのを見て、「冗談冗談」と言うガイ。
 
プレイヤーのいるアバターは皆、サングラスを装着している。
ガイたちモブキャラとは住む世界が違う、カッコイイ人たち。
ところがガイは、サングラス族の中に理想の女性を見つけてしまう。
 
彼女はモロトフ・ガール、プレイヤーはミリーという女性。
ミリーは男友達のキーズとあるゲームを開発したが、
それを最大手ゲーム会社“スミナ”の社長アントワンに奪われた。
自分たちのコードが盗まれたことを証明しようと、ゲームの中で証拠を探すミリー。
そこへ現れたガイがプログラムにないはずの行動を取るものだから、ミリーは驚き……。
 
自分がモブキャラだとは知らずに生きてきたガイ。
理想の女性を探し、それがモロトフ・ガールだと知り、猛然とアタックする。
純粋無垢な感情しか持っていないので、めちゃくちゃ素直。
“フリー・シティ”は殴ったり殺したりすることでレベルが上がるゲームですが、
モロトフ・ガールから「レベルが上がったらつきあってあげる」みたいに言われて、
ならばとアバターが銃を撃てないようにすることでレベルを上げる。
異例の行動でがんがんレベルを上げて行くガイはたちまち人気者になります。
 
ミリーとキーズが開発したゲームは、バイオレンスではない。
もっと平和なゲームを開発したはずなのに、コードを盗用されて、
こんな「美しくない」ゲームができ上がってしまった。
そして、ふたりが目指していたのは、ゲームの中で成長するAI(人工知能)
 
アントワン役で出演しているのはタイカ・ワイティティ
この人、『ジョジョ・ラビット』(2019)の監督さんですよ。絶対変だ(笑)。
監督しても出演しても面白すぎます。
 
AIが出てくる映画って、開発者の意図に反してAIが感情を持ち
悪いほうに話が進むことが多い。
でも本作では、AIにも性善説が適用されるかのようで、すごくよかった。
AIの予期せぬ暴走はあるかもしれないけれど、
開発者がこんな心を持っていれば、悪いほうには進まない。
 
「僕は君へのラブレター」。ちょっと泣いちゃいました。
この台詞を聴くために、もう1回観たくなっています。

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