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『サムライと愚か者 オリンパス事件の全貌』

『サムライと愚か者 オリンパス事件の全貌』(原題:Samurai and Idiots: The Olympus Affair)
監督:山本兵衛

前述の『追想』を観てからシネ・リーブル梅田へ移動。
遠いよ梅田スカイビルと思いながら、このところしょっちゅう行ってます。
相変わらず外国人観光客多い。
スカイビル3階のドラッグストアなんて、呼び込みも中国語やし。

ドイツ/フランス/イギリス/日本/デンマーク/スウェーデン作品。
前日は山本兵衛監督の舞台挨拶付きで、盛況だったようです。
この日も関心が高いのか結構客が入っていました。

2011(平成23)年に雑誌『FACTA』がスクープした「オリンパス損失隠蔽事件」。
オリンパスが1200億円もの巨額損失を約20年にわたって隠蔽し、
負債を粉飾決算によって処理したとされる事件です。

山本監督は、元オリンパス社長のマイケル・ウッドフォード氏、
スクープ記事を書いた山口義正記者、FACTAの阿部重夫編集長、
オリンパス元専務で再建を目指すべく奔走した宮田耕治氏、
修行僧でありウッドフォード氏の通訳であるミラー和空氏、
『Financial Times』の元記者ジョナサン・ソーブル氏などに取材しました。

私は事件そのものをほぼ知らなかったので、
あのカメラのオリンパスでしょ?何をしたの?という好奇心で観に行っただけ。
そうしたら、うーん、何とも言えない嫌~な気持ちに。

外国人で初めて社長に就任したウッドフォードさん。
社長でありながら、何が起きているかをまったく知らされず、
気づいて説明を求めたら即解任されたそうです。

ウッドフォードさんを呼び戻そうと動いたのがすでにOBだった宮田さんですが、
「本音としては、もう戻らないほうがご本人は幸せでしょう」という。
宮田さんは、長く勤めた会社が好きだから、正しいことをしてほしい。
別にウッドフォードさんをかばいたいわけではない。
ただ、会社が立ち直るにはウッドフォードさんを呼び戻そうとすることが必要だと。

最初にスクープ記事が出たときは、オリンパスは記事自体を無視。
日本のメディアもオリンパス幹部の言い分を載せただけで、ほぼスルー。
損失隠蔽が明らかになったあとも、メインバンクは引き上げる様子なし。

正しいことをしようと立ち上がる人がいても、とことん潰される。
日本人だからかなぁと思う半面、いや、アメリカとかでもこんなことあるでしょ、
保身に走ることを考える会社は、日本に限らないのではと思ってしまう。

経済バカ(経済だけじゃないけど)の私にもわかりやすい作品でした。
損失を隠すためにこんな方法を考えるのかと、アホみたいに感心したりもして。
その賢さを正しいことに使えんか?と、ただただ思います。

ついでに、映画の本筋とは何の関係もないことも言わせていただくならば。
字幕の「ら抜き」が気になって仕方がありませんでした。
「見れる」はもう現代の許容日本語になっているとして、「育てれる」は嫌だなぁ。
通訳や翻訳など、日本語に関わるお仕事に就いている人は、
正しい日本語を使う人であってほしいと思うのは駄目でしょうか。
“クレしん”で「ら抜き」が使われてもなんとも思いませんが(むしろ当然かと)、
こういう堅い作品では気になってしまいます。
先日NHKのアナウンサーが「すいません」と謝っているのを聞いて、
えっ、NHKのニュースでもそんな日本語使っちゃうのかと驚きました。
そりゃ世間に「清々しい」を「きよきよしい」と読んじゃう人がいっぱいいても
もはや不思議じゃない。(^^;
—–

『追想』

『追想』(原題:On Chesil Beach)
監督:ドミニク・クック
出演:シアーシャ・ローナン,ビリー・ハウル,アンヌ=マリー・ダフ,
   エイドリアン・スカーボロー,エミリー・ワトソン,サミュエル・ウェスト他

夏休み中は嬉しい。
学生じゃないんだから、車で通勤する人の数はふだんと変わらないはずなのに、
チャリで横切る高校生がいないせいか、平日の道がいつもよりは空いている。
休日も朝早い時間帯なら車すくなめでキタやミナミまでスイスイ。
しかも夏休み中以外ならありえない7時台からでも上映する映画あり。
あ、劇場によりますね。大阪ステーションシティシネマは早いよ~。

7時台から上映しているのは『BLEACH』で、すでに観たやつだったから、
8時過ぎ上映開始の本作を観ることにしました。
前日はココでそこそこワインを飲んだから、起きるのは辛かったけれども。

原作はイアン・マキューアンの『初夜』で、彼自身が脚本を手がけたそうです。
同じマキューアン原作の『つぐない』(2007)が好きでした。
そのとき子役で鮮烈な印象を残したシアーシャ・ローナンもすでに24歳。
最近の主演2作、『ブルックリン』(2015)と『レディ・バード』(2017)がどちらも似たような印象で、
これも予告編を観る限り、そないに変わらん感じ。
だから、期待はあまりせず、かといってスルーもできずで選択。

1962年の夏、イギリス。
工場経営者の父親を持つお嬢様育ちのフローレンスは、ヴァイオリンの名手。
音楽で優秀な成績を収めたのち、友人たちとエニスモア四重奏楽団を結成。
いつの日かウィグモアホールでコンサートを開く夢を持っている。

田舎で平々凡々とした暮らしを送るエドワードは、歴史学者を目指して勉強中。
その歴史で良い成績を取ったことを誰かに聞いてほしいのに、
脳に障害のある母親にはまるで通じず、幼い妹たちも無関心。
とにかく話し相手を見つけようと出かけた先でフローレンスと出逢う。

お互いに一目惚れしたふたりが家庭環境の違いを乗り越えて、ついに迎えた結婚式。
挙式後にドーセット州チェジルビーチ(=原題)のホテルにチェックイン。
初夜を迎えるはずが……。

長く交際しているのに、結婚式の日までお預けを食らわされていたエドワード。
一方、彼のことを深く愛しているのに、セックスへの嫌悪感を消せないフローレンス。
結婚式の6時間後の彼女の提案を彼はどう受け止めるか。

まったく退屈はしなかったのですが、乗れない。
メロドラマ風の展開でしかもセックス絡みの話だと、
男女とも、好きなタイプの顔じゃなければツライ(笑)。
フローレンス役のシアーシャ・ローナンは良しとして、
エドワード役のビリー・ハウルの顔が私のタイプから遠すぎる。
歴史で良い成績を取ったというけれど、口はいつも半開きで阿呆っぽい(スミマセン)。
知的という言葉からはかけ離れていて、困ったなぁと思いながら観ていました。

その思いがラスト15分で一転。
十数年後に普通の中年男となったエドワードは断然いい。
彼が経営する店にやってきてレコードを買い求める少女。
期せずして涙ぽろり。こんな最後が待っていたとは。
その後の老けメイクはやっぱりちょっと苦手だったけれど、観てよかった。

チープ・トリックが聴きたくなる。
—–

『クレイジー・フォー・マウンテン』

『クレイジー・フォー・マウンテン』(原題:Mountain)
監督:ジェニファー・ピーダム
ナレーション:ウィレム・デフォー

シネ・リーブル梅田にて、
『バンクシーを盗んだ男』『最初で最後のキス』→本作。

「山もの」大好きなので、狙っていた作品。
そのわりには、冒頭でウィレム・デフォーが出てきたときになんで?
ピアノの調律シーンが出てきたときにもなんで?
そっか、「オーストラリア室内管弦楽団による荘厳なクラシック音楽に乗せて」というのも
本作の売りだったんだ。すっかり忘れていました。

うっかりすると寝てしまいそうな、雄大な山岳映像詩。
かろうじて寝ませんでしたけれど。

エベレスト、モンブラン、マッターホルン。畏れ多き山々。
昔は怒りを買っては大変と近づかないものだったと。
なのに人びとはいつから山に登るようになったのか。
そんな歴史をウィレム・デフォーのナレーションで。

背景にはクラシック音楽が流れているわけで、
山の厳しさをも伝えているとはいうものの、そりゃ睡魔に襲われるでしょ。(^^;

思わず目を見開いてしまうのは、この人たちアタマおかしいでしょというシーン(笑)。
『X-ミッション』(2015)そのまんま。
いや、あっちはフィクション、こっちはノンフィクションだから、
こっちのほうがそのまんま、つくりものではない。
数々のXスポーツのシーンには目が点になりました。
あの~、この人たちはみんな、生還されたのでしょうか。
お亡くなりになりましたと言われても不思議ではない激突も。

山はすべての人に平等で、かつ無関心。
山に取り憑かれる人の気持ち、わからないけどわかるような。
—–

『最初で最後のキス』

『最初で最後のキス』(原題:Un Bacio)
監督:イヴァン・コトロネーオ
出演:リマウ・グリッロ・リッツベルガー,ヴァレンティーナ・ロマーニ,レオナルド・パッツァーリ,
   トマス・トラバッキ,デニス・ファゾーロ,アレッサンドロ・スペルドゥーティ他

前述のバンクシーと後述の山の映画が目的だったので、
本作を観たのは、2本の間を埋めるのにちょうど時間がよかったからにほかなりません。
しかし終わってみればノーマークだった本作がいちばんよかった。

イヴァン・コトロネーオ監督はそもそもは脚本家。
『あしたのパスタはアルデンテ』(2010)や『はじまりは5つ星ホテルから』(2013)を書いた人。
監督としてはこれが3作目だそうですが、日本で公開されるのは初めて。
甘い青春ものを想像していたら、その思いを打ち砕かれました。

イタリア北部、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州にある町ウーディネ。
トリノの施設から里親に引き取られることになったロレンツォは、
16歳でゲイレディー・ガガに憧れ、スターを夢見る高校生。
しかし初日からオカマっぽい服装だとからかわれ、早くもいじめの対象に。

そんな彼に唯一声をかけたのは同級生の女子ブルー。
彼女は、人気者の先輩を彼氏に持つせいでほかの女子たちから妬まれ、
学校の壁の下品な落書きに名前を挙げられている。
「本物のゲイなの? ふりだけ?」と率直に尋ねるブルー。
ふたりはすぐに親しくなり、一緒に過ごすように。

ロレンツォが一目惚れしたのは、やはり同級生でバスケ部員のアントニオ。
優秀だった兄と比較され、馬鹿呼ばわりされているが、
無口なアントニオは言い返さないどころかほとんど口をきかない。
そのせいで知的障害があるとまで噂されている。

クラスの目立つグループの誕生会に招待されなかったロレンツォとブルー。
ふたりはアントニオも当然招待されていないはずだと考え、彼を呼び出す。
誘いの言葉に半信半疑で出かけたアントニオは、
いじめなどに屈せず好きなように振る舞うふたりと意気投合。
以来、3人は友情を育むのだが……。

16歳のブルーが40歳になったときの自分に宛てて書いた手紙の形で。

思春期の子どもたちにもいろいろな悩みがありますが、
本作で描かれるのは子どもたちのそれだけじゃない。
3人の親にもそれぞれ事情や迷いがあって、それが丁寧に描かれています。

いろいろあったけど楽しかったあの頃。
そういういい話で終わることを想定していたら、まさかの。

あのとき、ほかの言葉を選べなかったか。ほかの態度を取れなかったか。

レディー・ガガをはじめ、音楽もとてもよかった。
『50年後のボクたちは』(2016)と並んで、耳にも心にも残る1本でした。
タイトルの意味がわかるとき、とても切ない。
—–

『バンクシーを盗んだ男』

『バンクシーを盗んだ男』(原題:The Man Who Stole Banksy)
監督:マルコ・プロセルピオ
ナレーション:イギー・ポップ

この日の朝、ダンナがタイから帰国しました。
晩は毎土曜日の習慣、帰国日といえども普通に外食の予定なので、
それまで昼寝するであろうダンナを家に残し、私は映画に行くのでした。

暑いけれども地下道を通ってシネ・リーブル梅田へ。
阪急梅田駅から梅田スカイビルまでたどり着くのって、10分じゃキツイですよね。
だいたいいつも15分と見積もっています。
寒いときはさっさと歩けても、この炎天下では足取り重くて堪えるのよ。

前日に観た『オーシャンズ8』にもバンクシーがチラリと出てきて嬉しかった。
『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』(2010)以来、虜です。

ご存じない方のためにちょこっと説明しますと、
バンクシーは正体不明のグラフィティアーティスト。
グラフィティアートというとただの落書きと見られる向きも多いですが、
彼の作品の場合は数千万円、時には1億円という価格で取引されるのですから、
落書きの域なんて遙かに超えています。

その活動地域はロンドンを中心として世界中。
誰にも見られないようにどこかにこっそり現れては作品を残す。
所詮落書きと、ただちに消されてしまうこともあります。

『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』(2014)では1カ月毎日、
ニューヨークのどこかの路上に作品を発表し、
自分がいち早くそれを見つけようとする人びとでエライ騒ぎになりました。

戦場まで出かけていくこともあり、命を張った落書きと言えます。
しかも作品の完成度はめちゃくちゃ高く、上品。
やっぱり落書きの域を超えている。

そんなバンクシーが、今回はパレスチナ・ヨルダン西岸地区ベツレヘムへ。
パレスチナとイスラエルを分断する巨大な壁に絵を描きました。
ロバと兵士が描かれたその絵を見た一部の人が、
パレスチナの住民をロバだと茶化していると非難。

壁の持ち主である地元の大金持ち、マイケル・カナワッティが、
タクシー運転手のワリド・“ザ・ビースト”をはじめとする数名に、
壁から絵を切り取ることを命じます。
海外に持ち出し、売上金は教会の改修に寄付するとかなんとか。
ワリドたちにも報酬を払うからなんてことも言って。

壁から絵を切り取れるものなんですね。
ウォータージェットカッターとかいうものでギュイーンと切り取っていました。
鼻高々に話していたワリドですが、報酬なんて一銭も貰えず。
まんまとマイケルだけが儲ける話に乗ってしまったわけで。

上映終了後に映画評論家ミルクマン斉藤氏のトークイベント。
客が20名ほどしかいなかったので静かなものでしたが、
そろそろバンクシーの正体が明らかになりつつあるという話など、
今後も活動が楽しみになるトークでした。

バンクシーがヨルダンで昨年開業したという「世界一眺めの悪いホテル」、
ものすごく気になります。
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