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『おっさんのケーフェイ』

『おっさんのケーフェイ』
監督:谷口恒平
出演:川瀬陽太,松田優佑,赤城,小林陽翔,埜田進,神保舜莉紋,
   松浦祐也,山下りな,冨宅飛駈,空牙,スペル・デルフィン他
 
シネ・リーブル梅田にて4本ハシゴの2本目。
 
2005年に立ち上げられたCO2(シネアスト・オーガニゼーション大阪)。
プロアマ問わず若手映画監督から作品を募り、選考された監督作品を助成。
オリジナル映画が完成したあかつきには上映会も開催されます。
本作はCO2第13回の助成作品で、谷口恒平監督の長編デビュー作。
 
ところで、「ケーフェイ」って何のことだかご存じでしたか。
プロレスファンなら誰でもご存じの言葉らしいのですが、
私はこれがプロレスの映画であることすらあらすじを読むまで知らず。
道頓堀プロレス全面協力だそうで。
 
大阪に暮らす11歳のヒロト。
担任教師がそれぞれ特技を挙げて皆の前で披露するようにとの課題を出す。
今したいことも夢中になれるものもないヒロトは、どうすればいいのかわからない。
ダンスの上手い同級生の輝男がテレビで取材を受けているのを見て、
ならば自分もやってみようかとダンス教室に入るが、リズム感まるでなし。
輝男とその取り巻きからからかわれ、気持ちが沈むヒロト。
 
ぼんやりと歩いていたとき、プロレスラーが目の前に飛び出してきてギョッ。
驚かせてしまったお詫びにと、プロレスを見せてもらったヒロトは興奮。
さっそく書店で購入したプロレス雑誌を立ち止まって読んでいると、
通りかかった中学生にからまれて、お金まで取られそうになる。
 
助けてくれた冴えないオッサンが落としたコンビニ袋の中を見ると、
そこには人気レスラー、ダイナマイトウルフのマスクが入っているではないか。
あれはいつも河原でプロレスの練習をしているオッサン、坂田。
オッサンが実はダイナマイトウルフだと思い込んだヒロトは、
坂田のもとを訪れ、プロレスを教えてほしいと頼み込む。
 
そんな折り、ダイナマイトウルフがプロレスを引退して
市会議員に立候補するというニュースが流れるのだが……。
 
川瀬陽太演じる坂田が駄目駄目すぎて(笑)、最初はどうなんだと思いました。
もうとっくにプロレスラーではないのにプロレスラーのふりをして出かけ、
坂田の母親もそのことを知っているくせに「今から試合か」と尋ね、坂田に金をもたせる。
その金で風俗に行くんですよ、プロレスの技をかけてくれる店に。
行き帰りはいつも紙パックの日本酒をちびちびと飲んでいて。
そのヨレヨレぶりは、とてもプロレスラーとは思えません。
 
加えてあかんのが、大人たちの大阪弁
川瀬陽太のなんちゃって大阪弁にどこの人かいなと調べたら、神奈川県出身。
プロレス技が得意な風俗のお姉ちゃんの大阪弁は聴くに堪えません。
この人は絶対関西人やと思える役者はひとりもいないという有り様。
子どもたちのほうは完璧と言わずともそれなりな感じです。
 
大阪弁がこれだと、観るほうのテンションが下がってしまうのですけれど、
それでも終盤の坂田の行動はよかった。
勝つだけがすべてじゃない。こんな勝負もありなんだなと思いました。
 
ダッチワイフにマスクとトランクスを穿かせて技をかける。
そりゃ小学生が学校でそれをやったら、先生まっ青やな(笑)。

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『サッドヒルを掘り返せ』

『サッドヒルを掘り返せ』(原題:Sad Hill Unearthed)
監督:ギレルモ・デ・オリベイラ
 
先週、次年度に繰り越せない有休があと1日残っていたため、
晩の飲み会に合わせて火曜日に休みを取りました。
火曜日はテアトルグループの劇場の鑑賞料金が1,000円。
2月で有効期限の切れたメンバーズカードを新たに申し込み、
入会金1,000円を払って4本観ても5,000円というのは嬉しい。
シネ・リーブル梅田にて。
 
同劇場で上映中の『ウトヤ島、7月22日』と本作のどちらを観るか迷って、
明るい気分になれそうなこちらを選択。
レビューサイトでの評判はイマイチでしたが、私はすごく楽しかった。
 
ローマ出身のセルジオ・レオーネ監督。
1960年代にイタリア製の西部劇をヒットさせたことで有名です。
マカロニウェスタンブームの火付け役となった『荒野の用心棒』(1964)に始まり、
『夕陽のガンマン』(1965)、『続・夕陽のガンマン』(1966)が世界中で大ヒット。
“サッドヒル”とは、『続・夕陽のガンマン』のクライマックスシーンに登場する墓地の名前です。
 
サッドヒルのセットは、スペイン北部ブルゴス郊外のミランディージャ渓谷に作られました。
5千もの墓が同心円状に建てられ、まるでコロシアム(=円形闘技場)のよう。
スペイン政府の協力を得て、スペイン軍の兵士たちが設営に携わった巨大なセットですが、
撮影が終了した後、十字架は解体されて近所の家の雨漏り修理に使われたとか。
 
2014年、『続・夕陽のガンマン』をこよなく愛する地元の映画ファン4人が、
サッドヒルの復元に乗り出します。
まずは土を搔いてサッドヒル中心部に埋め込まれていたはずの石を掘り当てることに。
週末2回ほど費やせばできるだろうと思っていたが甘かった。
もっと人数を増やせないものかとSNS等を利用、活動についてUPしたところ、
ボランティアを希望するファンがヨーロッパ中から集まりました。
みんなが鋤や鍬を手に駆けつける姿を想像すると微笑ましい。
 
こうして始まった一大プロジェクト。
2016年に『続・夕陽のガンマン』撮影50周年記念イベントが開催されるまでの全貌が
フィルムに収められています。
 
『続・夕陽のガンマン』はアメリカの南北戦争時代の話。
それをイタリア人監督がスペインで撮っていたのですねぇ。
当時のスペインはフランコ政権
こんな反戦映画の撮影が許されるわけもないと思いきや、
アメリカの話だから別に関係ないさと許可が下りたそうで。
しかも兵士たちはお手伝いせよとの上からの命令に背くこともできず、
あれにもこれにも力を貸すことになった様子。
 
そんな当時の裏話も楽しい。
作曲家エンニオ・モリコーネや美術監督、兵士にもインタビュー。
さまざまな映画評論家の解説がとても面白いです。
 
主要キャスト3人のうち、悪玉役のリー・ヴァン・クリーフと
卑劣漢役のイーライ・ウォラックはすでに亡くなっていますが、
善玉役のクリント・イーストウッドはご存じのとおり健在。
『運び屋』ではシワシワ爺さんの裸、もうええっちゅうねんと言った私ですが、
このクリントは文句なくカッコイイ。泣かされてしまった。
 
『続・夕陽のガンマン』を観たくなると同時に、メタリカを聴きたくなる作品です(笑)。
メタリカが30年使い続けているコンサートのオープニング映像と曲が、
『続・夕陽のガンマン』の終盤で流れる“The Ecstasy Of Gold”だから。
メタリカのボーカル、ジェイムズ・ヘットフィールドもいっぱい登場。
 
プロジェクトの発足人たちは言います。
ここをテーマパーク化する気はこれっぽっちもない。
観光客が続々と押し寄せる場所になっても嫌だ。
静かに、でも人々に忘れ去られることはない場所であってくれたら。

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2019年3月に読んだ本まとめ

2019年3月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:2791ページ
ナイス数:1079ナイス
 
■君がいない夜のごはん (文春文庫)
ネタのジャンルを限定しない、何でもありの穂村さんも面白いけれど、食に絞ったネタもまた楽しい。酔っぱらいの考え、理解できないですよねぇ。酔っぱらいの私にも理解不能です。しらふで酔っぱらいにつきあってくれる人にはホントに毎度どうもすみません。「混ぜ」の問題に関しては、どうも私は穂村さんと同じ。気合いが欠如していてこれまたすみません。『絶叫委員会』でアホほど笑ったから、他の作品も同程度の笑いを期待してしまっています。そう考えると笑い控えめだけど、間違いなく楽しい。電車の中で読むとやっぱり怪しい人になりそうです。
読了日:03月01日 著者:穂村 弘
 
■今日は天気がいいので上司を撲殺しようと思います (集英社オレンジ文庫)
奥付の頁に「この作品はフィクションです」とあるのを見て「当たり前や!」と笑ってしまったのは初めての体験。パワハラ上司を殺したい、あるいはそいつのせいで死にたい社員の話3つ。物騒なタイトルでも爽やかな表紙だから、元気を貰えそうだと思ったらとんでもない(笑)。これはもうホラーじゃあないか。ちょっといい話で終わりそうだと思っても落とされ、貞子ばりの話なんかもあったりして、頭の中で鳴り響く「きっと来る〜♪」。みんな、こんなに我慢せずにとっとと辞めようよね。クソ上司に天罰が下るところを見られると確約されない限りは。
読了日:03月03日 著者:夕鷺 かのう
 
■日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫)
かつて、茶道部と落研どちらにするか迷って落語を選んだ人間です。そんな私に合わせてくれたかのようなあとがき。小三治師匠のおっしゃるとおり、書店の茶道のコーナーに並べておくべき本ではありません。「言わなわからん」が私の信条ですが、言葉の空振りになることもあるんだなぁ。どんなことも一生に一度限り。今、目の前にあることを大切に。もうひとつの私の信条は「明日死んでもいいように生きる」だけど、物事を片づけるだけが今しなければいけないことではないのですね。一期一会、五感を使って今を味わうことを大事にしたいと思いました。
読了日:03月05日 著者:森下 典子
 
■晴れた日は謎を追って がまくら市事件 (創元推理文庫)
浜田青年、こんなところにイタンスカ。不可能犯罪ばかりが起こる蝦蟇倉市を舞台にした短編集で、伊坂幸太郎の『ジャイロスコープ』に収められていた「浜田青年ホントスカ」を改めて読む。この短編集に臨む作家5人の姿勢いろいろ。前の作家の話をまるで気にせずに書いている人もいれば、小ネタ程度に話題に出す人もいる。その点で、道尾秀介から伊坂幸太郎への流れは連作風の楽しさを味わわせてもらえました。蝦蟇倉市地図の掲載もオツ。2作目もあるんすか。次も是非というほどには面白くなかったのですけど、一応2作目も行っとくかな程度には。
読了日:03月11日 著者:伊坂 幸太郎,大山 誠一郎,伯方 雪日,福田 栄一,道尾 秀介
 
■空色バトン (文春文庫)
私にありがちなことですが、かなりメゲていて本を読むのもツライ。でも意地で何か読もうと薄さに釣られて購入しました。すごくメゲていたけれど、もしかするとここに出てくる中学生たちの悩みのほうが大きいかもしれない。だって彼女たちはまだ15年かそこらしか生きていない。経験値が少ない分、いろんなことを大きく感じているでしょう。だったら今の私の悩みなんてたいしたことない。読み終わって本を閉じたとき、ありがとうと思いました。ところで、書籍販売サイトに「230頁以下の本」なんてカテゴリーがあれば、きっと私は飛びつく(笑)。
読了日:03月14日 著者:笹生 陽子
 
■ささやかな頼み (ハヤカワ・ミステリ文庫)
原作に退屈気味だった人に朗報です。映画版はまったく違うのでぜひご覧ください。私の場合、もし先に映画版を観ていなければ挫折していたかもしれません。笑えるところは1ミリもない原作と異なり、映画版はステファニー役のアナ・ケンドリックのおかげでコミカル。原作では普通のブログだったところを映画版では動画ブログにして成功。オチも何もかも違って、こりゃまるで別物とも言えるけれど、映画版は痛快。読後感ドンヨリ、鑑賞後感スッキリ。悪女エミリー役のブレイク・ライヴリーがずたぼろにされて笑ってしまった。このキャスト、サイコー。
読了日:03月17日 著者:ダーシー・ベル
 
■九月の恋と出会うまで (双葉文庫)
泥棒と鉢合わせして殺されてしまうはずの私を救ってくれたのは未来の隣人。そして今も隣人。映画版では、今の隣人と未来の隣人の声がちがうということに納得の行く理由付けがされていませんでした。原作を読んでマジかいと笑ってしまいました。だって、花粉症のせいで声がちがって聞こえるって、どんな力技(笑)。映画版では、今の隣人と未来の隣人は別人だと思いつつも、今の隣人に恋をして、彼が未来の隣人と同一人物だったらいいのにと願う。だけど原作では、未来の隣人に恋をする。どちらも同じ結果になるものの、映画版のほうが切なくて好き。
読了日:03月23日 著者:松尾 由美
 
■冷たい手 (光文社文庫 み 34-3)
「もう会わない」と宣言してきた友達がその直後に殺される。そもそも1年に1度しか会わない友達。ワケありありで、次から次へと「えーっ」な展開。主人公の周りは嫌な奴だらけ。特に担当刑事、いっぺん逝ってしまえ(笑)。コイツのあまりに不愉快な物言いのせいで頭に血が上りつつも途中で止められなくて一気に最後まで。悲惨な話なのですが、痛々しい描写も露骨ではなくて助かりました。登場人物に共感を呼ぶ魅力的な人がいればもっとよかったのですけれど。私の推理はろくに当たらない。本作でもやっぱり当たらない。そこには辿りつけんやろっ。
読了日:03月24日 著者:水生大海
 
■BACK 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 (角川ホラー文庫)
タヒチでの幕開けに、邦画でよくありがちな「意味のない海外ロケ」を想像して、なんでやねん。と思ったのも束の間、わけのわからん事件にどハマリ。冴えわたる野比先生のプロファイリング、犯人の狙いがまさかそこだとは。軽すぎるきらいのあった東海林さん、だんだん良さがわかってきました。彼が本作中で読む本のタイトルが『BACK』というのは、読者に媚びているようで個人的には嫌だ(笑)。三木さんの「勘違いが高じて病気の域に達したのでは」に大笑い。「寄り添うことって難しい」という台詞が心に残ります。次作も読まなきゃしゃあない。
読了日:03月30日 著者:内藤 了

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『ビリーブ 未来への大逆転』

『ビリーブ 未来への大逆転』(原題:On the Basis of Sex)
監督:ミミ・レダー
出演:フェリシティ・ジョーンズ,アーミー・ハマー,ジャスティン・セロー,ジャック・レイナー,
   ケイリー・スピーニー,クリス・マルケイ,サム・ウォーターストン,キャシー・ベイツ他
 
風邪をひいてへろへろの金曜日にTOHOシネマズなんば別館で2本ハシゴの2本目。
前述の『ブラック・クランズマン』の次に観ました。
 
これもやはり実話が基。
アメリカ合衆国最高裁判所の女性判事ルース・ベイダー・ギンズバーグが、
史上初の男女平等裁判に挑んだ弁護士時代の話。
彼女がいなければ、あらゆる点で今よりも男女差別が多かったはず。
 
ミミ・レダー監督は、ナタリー・ポートマンを主演に起用したかったそうですが、
これはフェリシティ・ジョーンズで正解だったのでは。
夫役のアーミー・ハマーもめちゃくちゃよかった。
 
ルースはハーバード大ロースクールの1回生。
2年上の先輩マーティンとすでに結婚しており、生まれて間もない娘もいる。
夫婦で家事と育児を分担しつつ授業も受けてきたが、夫が精巣癌で倒れる。
生存率5%と言われる手術に賭け、看病しながら夫の授業にまで出る。
 
マーティンは奇跡的に回復してニューヨークの法律事務所に就職。
ルースは家族のそばを離れたくないとコロンビア大へ転籍する。
同大を首席で卒業したものの、「女性弁護士を雇うと、家族が嫉妬する」などという理不尽な理由で、
10以上の法律事務所から断られる。
致し方なく法律事務所への就職をあきらめ、ラトガース大学で教鞭を執ることに。
彼女が教えるのは法律と性差別について。
 
法廷に立つことなく、学生たちに講義する弁護士のルース。
成長した娘ジェーンはそんな母親に不満を持っているらしく、反抗的な態度を取る。
ジェーンから痛いところを突かれて、ルースも不機嫌。
それを察したマーティンが、あるときルースに「君が興味を示しそうだ」と言って持ち込んだ案件とは。
 
ある中年のサラリーマンが、母親を介護するために介護士を雇おうと考えた。
彼は独身で、自分に代わって母親を看るものがいないから。
ところが、未婚男性は介護士を雇ってもその分の所得控除が受けられない。
法律の条文を読んだルースは、これが男性に対する性差別であると気づく。
法律における女性に対する性差別を是正するには、
男性に対する性差別について訴えることが一助となるのでは。
なぜなら裁判官は男性ばかりだから、男性に対する性差別であれば共感するはずだとルースは考える。
 
ルースとマーティンはこの件について訴訟を起こすことに決めるが、
女性弁護士が吠えたところで世間は冷たい。
アメリカ自由人権協会(ACLU)が共に声をあげてくれればと、
ACLUの旧知の友人メル・ウルフに助けを依頼するが駄目。
そこでルースは女性弁護士で公民権運動家のドロシー・ケニヨンに会いに行く。
ドロシーの口添えにより、メルも協力を申し出る。
 
なんとか訴訟の提起にこぎつけたものの、
法廷に立った経験のないルースはメルらを招いた口頭弁論の模擬でしどろもどろになってしまい……。
 
黒人が、とか、女性が、とか、何かと差別に関する映画が多い今日この頃です。
本作では、ルースがなんとか教職を得たのも「辞めた黒人の代わりに女性を雇ってもいい」と言われた末で、
なんともあちこちに差別が溢れています。
ハーバードのロースクールの学部長とその奥さんまでが
女が弁護士になるなんてなどと露骨に嫌な態度を示していたなんて、がっかりです。
 
差別が描かれるどんな映画を観ても思うのは、差別意識をまったく持たない人もいるということ。
ルースの夫マーティンなんて、この時代の人とは思えない。
「マーティンのような男と結婚できてよかったね」と彼の上司から言われて
「女を下に見ている」と憤るルースは、ちょっと何にでもナーバスになりすぎではと思うけど、
仕事もバリバリにできて、料理も妻よりはるかに上手で、子どもの面倒も実によくみる。
こんな男性が増えたら、世の男性たちは言い訳ができなくて困るはず(笑)。
 
最後の法廷のシーンに胸を打たれます。
こんな女性がいたということ(今もご健在ですが)、知っておきたい。
 
余計なことですが、ルースが娘のジェーンに「おまえ」と言う字幕には違和感。
ここは「あなた」でよかったんじゃないかなと思います。

—–

『ブラック・クランズマン』

『ブラック・クランズマン』(原題:BlacKkKlansman)
監督:スパイク・リー
出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン,アダム・ドライヴァー,ローラ・ハリアー,トファー・グレイス,
   コーリー・ホーキンズ,ライアン・エッゴールド,ヤスペル・ペーコネン,ハリー・ベラフォンテ他
 
ダンナ出張中で毎晩映画三昧できるはずなのに、風邪をひきました。
先週初めから喉が痛くて、これは普通なら鼻に来て熱も出るパターン。
なのに先週は土曜日も出勤予定だったから寝込んではならぬと自らに言い聞かせ、
毎日仕事帰りにとりあえず1本ずつは観ました。
 
金曜日、体調は恐ろしく悪かったけれど、「明日の仕事が終わるまでは倒れちゃ駄目」と、
さらにハードなスケジュールを自分に課し、終業後に2本観ることに。
次年度に繰り越せない有休のうち、時間休が1時間だけ残っていたので、
16:15に上がって、なんばへ向かいました。
 
17:50からTOHOシネマズなんば別館で上映開始だった本作。
16:15に職場を出れば余裕で間に合うと思っていたのに、すでに中環も新御もババ混み。
いつも駐める堺筋沿いのタイムズに入庫したのは17:40でした。ギリギリ。
 
『グリーンブック』のオスカー作品賞受賞を「最悪」と称したスパイク・リー監督。
それを聞いてさぞかし小難しい作品を撮る人なのだろうとお思いになった方。
そんなことはありません。
アメリカで黒人の置かれた状況、そして今も置かれている状況を
ユーモアを織り交ぜつつきっちりと描いている人です。
 
映画のネタになる話がどれだけ転がっているねんと思うほど、実話が基の作品が多い。
そんな中でもこれはぶっ飛び。実際にあったことだなんて。
タイトルの「クランズマン」は白人至上主義団体“KKK(クー・クラックス・クラン)”のメンバーを指します。
「ブラック」だから、「黒人のKKKメンバー」ということですよね。あり得ないけどあったこと。
なお、主演のジョン・デヴィッド・ワシントンはデンゼル・ワシントンの息子。
お父さんとはちょっとちがうコメディ路線で活躍できそうな感じです。
 
1970年代後半のアメリカ・コロラド州
アフリカ系アメリカ人のロンは、コロラドスプリングス警察で人種を問わない求人があると知って応募。
同警察初の黒人刑事となる。
しかし求人は「差別をしません」というポーズだけだったのか、
実際に就職してみると、ロンに与えられた仕事はファイルを探す係。
露骨に差別的な態度を見せる署員もいて、ロンは面白くない。
 
ある日、署長から潜入捜査の任務に就くように命じられて大喜びするが、
それは黒人運動の指導者を迎える集会に参加して情報を収集せよというもの。
つまりは白人の手先になれというものだった。
その後に言い渡されるのもつまらぬ仕事ばかり。
 
そんな折り、ふと目についたKKK地方支部のチラシ。
ロンは白人を装って独断で電話をかけ、「KKKの活動に興味がある」と伝える。
するとそれを信じたKKK支部が有望な新メンバー獲得だと思ったのか、
ロンに会いたいと連絡を寄越す。
 
KKKを叩く絶好のチャンスに、上司たちもロンの潜入捜査を認めるが、
ロン自身がKKKの支部に出向くわけにはいかない。
そこで、ロンの先輩刑事でユダヤ人のフリップがロンのふりをすることに。
 
こうして電話はロン、実際にKKKメンバーと会うのはフリップと役割分担。
無謀とも思える計画が実行に移されるのだが、意外にも上手く潜入捜査は進み……。
 
ロンの代わりに現場へ行くフリップはユダヤ人。
KKKは黒人ばかりかユダヤ人も認めていません。
だからユダヤ人であることがバレてもいけない。
フリップのことをユダヤ人ではと疑うKKKメンバーからパンツ脱がされそうになったりも。
そもそもロンが最初の電話でうっかり本名を名乗っているところからもう可笑しい。
 
フリップ役のアダム・ドライヴァーの顔が私はどうも苦手なのですが、
『パターソン』(2016)と本作の彼は良かった。
フリップと、ヤスペル・ペーコネン演じるもうひとりの先輩刑事フェリックスがごく普通で◯。
新人の黒人刑事を馬鹿にする署員もいるなか、彼らにとっては新人は新人でしかない様子。
上司たちも、世間の黒人に対する偏見に対抗する気はないけれど、
ロンの「やる気」は買って、とりあえずはやりたいようにやらせてくれる。
彼が白人になりすました電話に相手がまんまと騙されるのを
みんなで聞いて笑いをこらえるのが大変というシーンも好きでした。
 
客席からしばしば笑い声が沸き起こるほど面白い作品でしたが、
それと同時にめちゃくちゃ重い。恐ろしい。
観た者が笑っておしまいにはできない力強さがあります。
 
闘いつづける監督、スパイク・リー。

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