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『12か月の未来図』

『12か月の未来図』(原題:Les Grands Esprits)
監督:オリヴィエ・アヤシュ=ヴィダル
出演:ドゥニ・ポダリデス,アブドゥライ・ディヤロ,レア・ドリュッケール,ジーネ・トリキ他

GW終盤、この日も晩は飲み会で、その前に映画を2本と西宮市大谷記念美術館。
まずは映画の1本目、テアトル梅田にて本作を。
 
原題はフランス語でLes Grands Esprits”、
英語タイトルはもっとシンプルに“The Teacher”です。
実際にこういう施策がパリであり、教師や生徒への取材をもとにつくられた作品とのこと。
 
その指導ぶりは非常に厳しく、点数の悪い生徒には容赦ない。
 
フランソワの父親は有名な作家。
その出版記念行事の席に顔を出したフランソワは、居合わせた美人女性客に、
パリの名門学校と郊外の学校では生徒の学力に差がありすぎること、
その差を解消するためにはベテラン教師を郊外に派遣すべきだと話す。
女性は政府の教育機関に勤めているらしく、もっと話を聞きたいとフランソワに言う。
 
後日、ランチを一緒にどうかという誘いにフランソワはうきうき。
相手の勤務先にいそいそと駆けつけるが、なんとランチには彼女の上司も同席。
先日のフランソワの提案が画期的なので実現したい、
ついてはまずは1年間、フランソワ自身に郊外の中学校へ行ってほしいと。
 
まさかそんな話になるとは想定していなかったフランソワは固辞。
しかし気まずい空気が流れたことからなんとなく承諾してしまう。
赴任先の中学校はこれまでの高校とはあまりに環境が異なり、問題児ばかりで……。

ドゥニ・ポダリデス演じるフランソワは、最初はいけすかない奴です。
見た目も冴えないくせして、何その自信と言いたくなる。
美人相手にちょっと偉そうに自説をぶってみたのが見え見えで、
そのせいで問題中学校へ派遣されることになり、まったくイイ気味でした。
 
ベンツに乗って赴任地に向かうと、周りの様子がどんどん荒んで行く。
所得もどんどん下がって行くのが景色を見るだけでわかります。
教室の扉を開くとさまざまな人種の子どもたち。
挨拶なんてほとんど誰もしないし、授業を聴く気はこれっぽっちもなし。
 
「教師の話は聴くのが当たり前」、そう思っている先生って案外多いような気がします。
子どもたちが話を聴こうとしないのは、あなたの話がつまらないから。
聴かせる力がないのをすべて、聴かない子どものせいにする。
 
フランソワもまさにそんな人でした。
独身の彼は、姉や姪っこたちから「勉強が苦手な子もいるのよ。
おもしろい授業をしてみれば」と言われても最初は無視。
でも、どうにもこうにもならないとわかって、徐々に彼自身が変わってゆく。
 
いけすかない奴だと思っていたけれど、融通が利かないだけで悪い奴ではない。
ほかの教師たちは問題児をすぐに退学にすればいいと思っていても、
フランソワは子どもたちが1冊の本を読み切ることを目標に掲げ、
リタイアする子がひとりも出ないように方法を考えます。
彼が選んだのは『レ・ミゼラブル』。きっと読みたくなる。
 
最後はちょっと泣けますよ。

—–

『主戦場』

『主戦場』(原題:SHUSENJO: The Main Battleground of The Comfort Women Issue)
監督:ミキ・デザキ
 
なんですか、この混みっぷりは。
『誰がために憲法はある』を観て外に出たら、あふれんばかりの客。
すでに満席で、新たに入ってきたお客さんには立ち見、
あるいは1階下のシアターセブンでの追加上映の案内がされていました。
先にチケットを買っておいてよかった。
 
監督は日系アメリカ人のドキュメンタリー作家ミキ・デザキ。
これが長編デビュー作だそうです。
 
「従軍慰安婦をめぐる論争に真正面から切り込んだドキュメンタリー」との触れ込み。
知っておくべき話かと思って覚悟を決めて観に行ったものの、
日本人としてはなんともつらい。
 
どう書けばいいのかまったくわかりません。
どれが真実なのか、事実なのかもわからない。
 
日本、韓国、アメリカで巻き起こっている論争。
その中心人物たちに取材し、それぞれの主張を聞いているといえばそうなんですけれど、
結局「日本が悪い」というところへ持って行きたいのかなと思ったりします。
なんというのか、取材される日本人のほうが明らかに阿呆に見えるようにつくられている。
「フェミニストにはブスが多い」「国家というものは謝っちゃいけないんです」、
「自分以外の学者の本は読まないようにしている」、
こんなことを平然と言ってのける人ばっかり選んだのではと、ちょっと疑ってしまうんだなぁ。
 
これに限らず「対立」を描いた作品を観るときに思うこと。
本当に相手の言うことをちゃんと聞いているんだろうか。
聞いたうえで反論しているんだろうか。
本作でも、自分の書いたもの以外読まないと笑って話す学者は論外として、
対立する立場の人の書いたものを読んでいないと言い切る人がいます。
「読もうと思ったけどとても読めたものではない」と言って。
 
こんなところに東野圭吾を持ち出してもアカンかと思いますが、
相手を理解しようという気持ちは両者にあるのでしょうか。
敬意なんて払えるわけないということなのでしょうけれど、
相手の言い分もよく知ったうえで言いたいこと言おうよと思うのは
何もわかっちゃいない私のような者の甘さなんだろうなぁ。
 
とりあえず、誰が何を主張しているのか今までわからなかった慰安婦問題。
どの立場のどういう人たちがどう言っているのかはわかりました。
安倍さんが危険だということには完全に同意します。

—–

『誰がために憲法はある』

『誰がために憲法はある』
監督:井上淳一
 
正直言ってあまり観るつもりはなかったのですけれど、
家からシュッと行けそうなシネコンでは観るものがなく、
2日前に行ったばかりの第七藝術劇場へ。
 
『セメントの記憶』の衝撃度が高くて書き忘れていましたが、
ナナゲイさん、椅子が替わったんですよね。
名古屋の劇場から譲り受けたそうで。
ずいぶんへたっていた椅子がちょっぴり(かなり)新しくなり、
ドリンクホルダーも設置されています。
 
これと後述の『主戦場』と、ものすごくお客さんが入っています。
 
日本国憲法を擬人化した芸人・松元ヒロによる一人語り「憲法くん」。
というものを私はそもそも知りません。
それを渡辺美佐子が演じるって、どういうことかまったくわからんまま観に行きました。
 
渡辺美佐子が「姓は日本国、名は憲法、言いにくいから憲法くん」として、
日本国憲法をわかりやすく説明してくれます。
そのあと、彼女が中心メンバーとして長年活動を続けている原爆朗読劇について。
朗読劇に参加するほかのメンバーも名女優たち。
高田敏江、寺田路恵、大原ますみ、岩本多代、日色ともゑ、
長内美那子、柳川慶子、山口果林、大橋芳枝といった人たちです。

渡辺美佐子が初恋の話を始めたとき、どこに行き着くのかわかりませんでした。
小学校のときにほのかな恋心を抱いていた相手。
何十年後かに彼を探し出して会う企画なんてのはよくありますが、
本人ではなく親御さんが現れて、息子が原爆で亡くなったと告げる。
こんな残酷な展開が待っていたなんて、誰が想像できるでしょう。
そんなことがあって、彼女が関わるようになった朗読劇。

戦争で深い傷を負ったわが国が、もう二度とそんな思いに遭わぬよう、
理想を掲げて日本国憲法をつくったはず。
なのに今、その憲法が変えられようとしている。
理想と現実は違うから、現実に合うようにと。
 
日本国憲法が生まれて70年。
「その間、僕は誰も殺さなかった。それが誇り」という渡辺美佐子演じる憲法くんは言います。
人は理想に近づこうとするものではないのでしょうか。
理想は理想で、現実と違うからと投げ出してしまうためのものなのか。
 
日色ともゑが出演作を選ぶときに問うてみることが印象に残っています。
「そこに正義はあるか」。

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『ザ・バニシング 消失』

『ザ・バニシング 消失』(原題:Spoorloos)
監督:ジョルジュ・シュルイツァー
出演:ベルナール・ピエール・ドナデュー,ジーン・ベルヴォーツ,
   ヨハンナ・テア・ステーゲ,グウェン・エックハウス他
 
カルト的人気を誇る1988年のオランダ/フランス作品。
日本では劇場未公開でしたが、このたび初公開。
『恐怖の報酬』(1977)といい、何十年も経ってからの公開が嬉しい。
これを見逃すまいと思い、この日はシネマート心斎橋へ行ったのでした。
 
でも、観るかどうかはすごく迷ったのです。
というのも、ジョルジュ・シュルイツァー監督自身がハリウッドリメイクした『失踪』(1993)は、
私がこれまでの人生で観た中でいちばん恐ろしいと感じた作品だったから。
そんな作品のオリジナルって、もっと怖いかもしれんやん。
わざわざ嫌な思いをしに観に行く価値あるやろかと葛藤。
 
結局、観なかったらそれはそれで後悔するだろうと観に行くことに。
 
オランダ人カップルのレックス(♂)とサスキア(♀)は、フランスに旅行。
途中、車への給油を促すサスキアをレックスが無視。
なのにガス欠で止まったことからふたりは喧嘩。
夜道で怖がるサスキアを放置してレックスはガソリンを買いに。
ポリタンをぶらさげて戻ったレックスとサスキアの間に重い空気が流れるが、
レックスが心から詫びたため、すっかり仲直りしてラブラブ。
 
サービスエリアに寄り、サスキアはご機嫌なまま買い物に。
ところがいくら経っても戻ってこない。
警察に通報しても、痴話喧嘩の果てに逃げられたという認識。
そんなわけはないと、レックスは半狂乱になってサスキアを探すが、
いったい誰が彼女を連れ去ったのか、見つからないまま。
 
それから3年が経過。
レックスはリネカという新しい恋人とつきあっているものの、
失踪したサスキアのことが忘れられない。
レックスはリネカに言う、「僕が真相を知らず、でもサスキアが幸せなのと、
僕が真相を知って、でもサスキアは死んでいるのとどちらがいいんだろう」。
 
やはり真相を知りたいレックスは、犯人に向けてメッセージを送り続ける。
するとある日、犯人とおぼしき男が接触してきて……。
 
サスキアを拉致したのは、フランス人の大学教授。
社会的信用もあり、妻と娘の良き夫良き父でもある。
彼は女性を拉致して生き埋めにしていたという驚愕の真相。
 
クロロホルムを嗅がされて、目が覚めたら棺桶の中
土がかぶされていて、声をあげても誰にも聞こえない。
棺桶の中で動けず飲まず食わずで、人間って何日生きていられるのでしょう。
いや、こんな状態では生きていたくなんかない。気が狂いそうです。
 
オリジナル版は教授が何の実験をしたかったのかがよくわかりません。説明不足。
本人は閉所恐怖症で、閉所に閉じ込められた人がどうなるか知りたかったのか。
リメイク版では確か、男性が同じ目に遭わされて殺されかけたとき、
男性の新しい恋人が気づいて救出したというエンディングだったと思いますが、
オリジナルは誰にも気づかれずにそのままおしまい。
リメイク以上に嫌な感じです。嫌すぎて笑ってしまった。
 
リメイクを観ていたおかげで「えっ、こんな悲惨な話!?」と思わずに済んだけど、
もうこんな悲惨なエンディングの話は観たくない。
何はともあれ、心理的に人生でいちばん怖かった映画のオリジナルを観られてスッキリです(笑)。

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『Be With You いま、会いにゆきます』

『Be With You いま、会いにゆきます』(英題:Be With You)
監督:イ・チャンフン
出演:ソ・ジソブ,ソン・イェジン,キム・ジファン,コ・チャンソク,イ・ジュンヒョク
   ソン・ヨウン,イ・ユジン,キム・ヒョンス,パク・ソジュン,コン・ヒョジン他
 
ナナゲイで観た『セメントの記憶』の衝撃をひきずりながら、心斎橋シネマートへ。
ちょうど木曜日だったので会員サービスデー。お得な1,000円です。
 
原作は市川拓司のベストセラー小説だというのはもう説明不要ですね。
日本では同名の『いま、会いにゆきます』として(2004)に映画化。
そのときの共演がきっかけで竹内結子中村獅童ができちゃった結婚したのでした。
私はレンタルDVDで確かに観たおぼえはあるのですが、
「死んじゃったお母さんがが戻ってきた」ということぐらいしか記憶になし。
中村獅童がタイプとはいえないからでしょうか。
別に嫌いじゃないんですけれど、好きでもない、というのかどーでもよくて。
やはり主演俳優がタイプかどうかって大事ですよねぇ。
 
で、本作はその韓国版リメイクです。
こっちの主演ソ・ジソブが中村獅童よりずっとタイプ。
女優ソン・イェジンは可愛くて美人、竹内結子にちょっと似たタイプかも。
こんなに泣ける良い作品でしたっけ。泣いた泣いた。
 
夫ウジンと小学生の息子ジホを遺して亡くなったスア。
ジホは母親スアのお手製絵本にあるとおり、
梅雨の始まりとともに母親が帰ってくると信じている。
 
高校時代は将来を嘱望される競泳選手だったウジンは、
体調に問題があって水泳を辞め、今はプールに用務員として勤務する身。
頼りないウジンがシングルファーザーとなったことを周囲は心配するが、
近所でパン屋を営む気の好いホングの手も借りながら、なんとかやりくり。
 
天気予報が梅雨入りを宣言した日、
スアが約束の場所へ帰ってくるはずだと言ってきかないジホ。
ウジンは仕方なくジホを連れて廃線となった線路のトンネルへ。
するとそこにはスアにそっくりの女性がうずくまっていた。
 
彼女はすべての記憶を失っているらしいが、スア本人としか思えない。
ウジンとジホは彼女を家へ連れ帰ると、訝る彼女にスアの写真などを見せ、
妻であること母親であることを説得し、彼女もそれを受け入れる。
 
こうして幽霊かもしれないスアと、ウジン、ジホ家族3人の生活がまた始まるのだが……。
 
梅雨が終わってスアは天国へと帰って行くんですけれど、
最後にすっごいドンデン返しがありまして。
 
この日の晩の食事会で本作の話をしたら、
ほかの3人ともなんとなくはオリジナル版や原作のことを知っていて、
でもこんなドンデン返しはオリジナルにあったかいな、なかったんちゃうか、
原作にはあったような気がするとか、ワーワー言うておりました(笑)。
 
オリジナルが15年前の作品だから、今さらネタバレにはならないでしょう。
 
自分がいずれここからいなくなる運命だと知ったスアは
まだ幼いジホがひとりで何でもできるように、
また、ジホが体調に不安を抱える父親ウジンのことまで守れるように、
家事をひとつひとつ教えます。
目玉焼きのつくり方、掃除機のかけ方、洗濯物の干し方。
母親の意図を察したジホがしっかりとそれを覚えるようになります。
学芸会の席でほかの生徒たちが各々得意なことを挙げるなか、
最初は普通の子どもたちと同じように夢を語るつもりだったジホが、
スアから習ったことを得意なものとして挙げる様子は涙なしでは観られません。
 
死期を悟った人が、遺された家族がひとりでも生きていけるように、必要なことを教える。
『海洋天堂』(2010)然り、ビデオ録画の仕方を教える『八月のクリスマス』(1998)然り。
泣いてしまうのは当たり前。
ウジンとスアの馴れ初めの話にも胸がキューッ。ボロ泣きでした。
ホング役のコ・チャンソクもめちゃくちゃいい味。
 
オリジナルでも同じくらい泣いたなら覚えているはずなので、
これはリメイクの圧勝ということで。
気持ちよく泣きたい気分の人、ぜひどうぞ。

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