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2025年1月に読んだ本

2025年1月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:2704ページ
ナイス数:963ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly/2025/1
■私にふさわしいホテル (新潮文庫)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】のっけから余談ですが、昨年は映画館で380本鑑賞しました。過去最高は340本足らずだったので自分でも驚く。2025年最初の映画鑑賞はこれ。原作を読んでから8年近く経っているので自身の感想を読み返す。映画版では実在の作家の名前を挙げるわけには行かなかったでしょうし、私の中では主演のイメージがのんとは違ったこともあり、まったく異なるエンタメとして楽しみました。原作にあったように「執念とハッタリ」を利かせている作家は今いかほどいるかしら。今年は400本鑑賞を目指します。
読了日:01月02日 著者:柚木 麻子
https://bookmeter.com/books/9997361
■鎮魂 (双葉文庫 そ 05-01)
『正体』の余韻をひきずったままの新年1冊目。没入しつつも『正体』の読み応えには敵わないと思っていたのに、あの人があの人だとわかってからは平常心でいられなくなりました。復讐は誰も幸せにしないとは思う。だけど吹っ飛ぶ前のあの人の表情を想像すれば、復讐を成し遂げることでしか心が救われることはなかったとも思う。こんな奴らはみんな死んでしまえばいいと思う一方で、あの人と刑務所で面会した彼の様子に、改心や更生する場合ももしかしたらあるのではと思うのでした。もっとも彼はもう生きることに執着がないけれど。なんだか切ない。
読了日:01月04日 著者:染井 為人
https://bookmeter.com/books/21888001
■汝、星のごとく
読み始めてすぐに太田裕美の『木綿のハンカチーフ』の短調版だと思いました。歳がバレますけど(笑)。都会に行って稼ぐようになった彼。地元に残った彼女は彼と会える日を心待ちにしていたのに、彼はどんどん変わってゆく。ただ、おそらくあの歌の主人公たちはこんな複雑な家庭環境で育ったわけではないでしょう。17歳から32歳にかけて、人生はいろんなことが起きる。永遠に続くと思っていた恋もそうは行かないけれど、巡り巡ってこうなるのであれば、きっと生涯を閉じるときに思い出す大切な日々になる。互助会が必要な人、いっぱいいるはず。
読了日:01月07日 著者:凪良 ゆう
https://bookmeter.com/books/19974694
■歌舞伎座の怪紳士 (徳間文庫)
私の劇場通いは主としてなんばグランド花月と祇園花月なのですが、この本を読むと、どちらも至近距離にある大阪松竹座と南座をスルーしとったらアカンやん私、と思うのでした。歌舞伎に限らず伝統芸能は決してとっつきにくいものではないということがわかるし、ミステリー要素もあって読みやすい。難しいという先入観を持たずに何でも観てみることで世界が広がるのだなぁと思えます。鬱々とした毎日を送っているときは新しいものに目が向かなかったりするけれど、そういうときこそ試し時かも。そもそも私が花月通いを始めたきっかけもそうですから。
読了日:01月10日 著者:近藤史恵
https://bookmeter.com/books/19320918
■DOLL 警察庁特捜地域潜入班・鳴瀬清花 (角川ホラー文庫)
どんどん好きになっているシリーズです。最初の頃は、少なくない読者に「性格に難あり」として評判イマイチだった“よろず建物因縁帳”の春菜よりも、私はこっちの清花のほうが苦手でしたが、今はひたすら応援したくなっています。それもこれも可愛い桃ちゃんがいるからか。博物館に勤務しているゆえ、田の神さんは標本資料にあります。でもこんなだとは知らなかった。土井さんのイチイチ「~」が入る喋り方にうんざりしていたのに、慣れました(笑)。土着の風習というのは全く以て面白い。けれど、安易に触れてはいけないものだという気もします。
読了日:01月14日 著者:内藤 了
https://bookmeter.com/books/22298096
■少女たちは夜歩く (実業之日本社文庫)
ホラーミステリーの連作短編だとこんなふうになるのかと感心しきり。読みはじめたときはたいして怖くないと思っていたのに、主人公が変わるたびにこれが誰だったのかを確かめようと、前の話に戻ってはゾッとする。最後の一文まで、前話までに登場した誰なのかがわからない場合もあって、気づいたときには戦慄。城山の周辺に住む人々に降りかかる悲劇は途切れることなくすべて繋がっているのでした。不気味だけど鮮やかで、お見事と言いたくなります。同著者の『入らずの森』といい、この人に「森」を書かせると面白い。私は絶対入りたくないけど。
読了日:01月17日 著者:宇佐美 まこと
https://bookmeter.com/books/18068608
■星を編む
読後の余韻をいまだに引きずっている『汝、星のごとく』。続編の本作を読んで、北原先生の過去、櫂を支えた編集者たち、そして北原先生と暁海の生き様にこうして触れられてよかったという思いしか起きません。特に北原と暁海、ふたりの生涯を読者に見守らせてくれた、そんな感じでしょうか。これも余韻に浸るのみ。自分よりも上の年齢の人物の心情を細やかに描写できる作家って凄いといつも思う。不満な点を挙げるとすれば、重版続きで櫂のオカンがウハウハだろうということ(笑)。それすら櫂は空の上で苦笑いしつつも喜んでいるのかもしれません。
読了日:01月21日 著者:凪良 ゆう
https://bookmeter.com/books/21605269
■つちはんみょう
舘野さんが語り描く虫は限りなく美しい。この世に生を受けても生きられる時間はごく短い。たった4日間の生涯。一緒に生まれたきょうだいがいるだろうに、その4日間さえ生きていられないかもしれないから、生き延びるためにすぐに離ればなれになって、ほかの虫たちの体に必死でつかまりながら飛んでゆく。虫が得意とは言えない私でも、そんなことを聞かされると切なくなります。私たち人間の人生の縮図なのかなという気もして。余談ですが、映画『嗤う蟲』を観た直後だったから、虫の描写が凄すぎるよ舘野さん、とより思いました。
読了日:01月28日 著者:舘野 鴻
https://bookmeter.com/books/10771110
■お梅は次こそ呪いたい (祥伝社文庫 ふ 12-3)
お梅は首から上と下、別々に動くことができるようになりました。拾い手一家の鞄の中に潜り込み、行く先々で瘴気をばらまく機会に恵まれたというのに、それでも呪い殺せない。もうどうにも憎めません。第1弾で読者からあったとおぼしきツッコミに対する言い訳にはふきだしてしまい、電車の中で私はとっても怪しい人に。恋患いの章では頁を書き出しての解説に笑う。読了前に映画館へ行ったら、6月公開の矢口史靖監督作品『ドールハウス』の予告編がかかり、これはきっとお梅の呪いだと思いました。でも幸運の人形だもの、君に私は殺せない(笑)。
読了日:01月30日 著者:藤崎 翔
https://bookmeter.com/books/22354177

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『サンセット・サンライズ』

『サンセット・サンライズ』
監督:岸善幸
出演:菅田将暉,井上真央,竹原ピストル,三宅健,山本浩司,好井まさお,藤間爽子,茅島みずき,白川和子,
   ビートきよし,半海一晃,宮崎吐夢,少路勇介,松尾貴史,池脇千鶴,小日向文世,中村雅俊他
 
109シネマズ大阪エキスポシティにて、20:45からのレイトショー。
マジで驚いたのですが、このときに続き、早くも今年2回目の“おひとりさま”
前回はキムタクですよ、今回は菅田将暉ですよ!? なんで客が私ひとりなの。
 
楡周平の同名小説を『前科者』(2021)や『正欲』(2023)の岸善幸監督が映画化。
脚本はクドカン、宮藤官九郎です。面白くないわけがない。
 
東京の大企業“シンバル”の社員・西尾晋作(菅田将暉)は大の海釣り好き。
新型コロナウイルスの流行をきっかけにリモートワークが導入されたのをきっかけに、海沿いの町への移住を考える。
ネットで物色していると、三陸の宇田濱(架空の町で、ロケ地は宮城県気仙沼市)に破格の物件を発見。
 
大家は同町役場の職員・関野百香(井上真央)。訳あって4LDKの一軒家をほぼ新築のまま置いていた。
本人は父親で漁師の章男(中村雅俊)と近所の実家で暮らしているが、
同町の空き家が増え続けて30軒に達したことから、過疎化を懸念する役場が対策課を設置し、
百香がその担当に任命されたため、担当者が空き家を所有していてはまずかろうと自宅を登録したのだった。
 
登録後すぐに連絡してきたのが晋作だったというわけだが、自宅を賃貸に出すことに決心がつかない百香。
内見希望日にやはり断ろうと自宅に向かったところ、鍵をかけていなかったせいですでに晋作が上がり込んでいるではないか。
 
ただでさえ小さな村のこと。噂はすぐに広まるだろう。
コロナであらゆる施設が閉鎖されたりイベントが中止されたりしているさなか、
空き家対策のためとはいえ、東京から来た人間を入居させたとなると非難を浴びるにちがいない。
百香は晋作に2週間この家から決して出ないようにと言い残し、その場を去る。
 
とはいうものの、海を目の前にしてじっとしていられない晋作は、
サングラスにマスクにキャップといういでたちで釣りに出かける。
百香の家に夜中も電気が灯っている、怪しい男がスーパーに出入りしているとやはりすぐに噂になって……。
 
東日本大震災で津波に襲われた町。
震災直後はいろんな人が復興を手伝いに来てくれたけれど、今はそんな人も減っている。
晋作にとっては過疎化も空き家も、そして震災だってどうでもいい。
海釣りが好きで、この町に憧れて、住みたいと思ってやってきただけ。この町に生まれたかったとすら思う。
 
この町の人たちもこの町が大好きで、よそ者にわかってたまるかと思いつつも、
よそ者と話すときはすぐに自分たちの町を卑下してしまう。
その通りに彼らの町を見下す都会人がいるのも事実。
 
会話の中に双方のいろんな思いが感じられて面白く、温かい気持ちになりました。
上にも下にも見ることなく、でも気遣いつつ話すのは難しい。
だからこそ、自分がいちばん。自分がいちばんいいようにすればいいんだとそれぞれに考えた結果、
最後に3人が選択してたどり着いた結果は最高だと思いました。
 
前述の『室町無頼』と本作と、どちらをこの日の〆に持ってくるか悩んだけれど、
こっちを後に観ることにしてよかった。幸せな帰り道。
……なのにたまに思い出してしまう池脇千鶴(百香の同僚役)のもの凄いオバハン化。怖すぎる。(^^;

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『室町無頼』

『室町無頼』
監督:入江悠
出演:大泉洋,長尾謙杜,松本若菜,遠藤雄弥,前野朋哉,阿見201,般若,武田梨奈,水澤紳吾,岩永丞威,吉本実憂,
   ドンペイ,川床明日香,稲荷卓央,芹澤興人,中村蒼,矢島健一,三宅弘城,柄本明,北村一輝,堤真一他
 
109シネマズ大阪エキスポシティにて。
 
原作の垣根涼介には大藪春彦賞受賞作の『ワイルド・ソウル』のイメージしかなかったので、
へ〜、この人、時代小説も書いていたんだとこのたび知って驚く。
ウィキを読むと、作家デビューしたら10年後に時代小説を書くと決めていたとあります。
サラリーマンとして働くかたわらの作家業だったから、時代小説を書くため資料集めや言葉遣いを学ぶ時間が当初は足りず、
作家として専業で食べて行けるようになったら書こうと考えていたのだと。
 
監督は『SR サイタマノラッパー』(2009)で話題になってから15年以上経ち、
今ではあの頃が懐かしくなるほどメジャーな作品を撮りつづける入江悠
しかし、娯楽大作ばかりかと思いきや、『あんのこと』(2023)みたいな作品もお撮りになるから面白い。
 
今から約560年前、室町時代中期が舞台。
歴史の記録にはたった1行というのか1箇所だけ、「大将」として名前が登場する人物が主人公。
 
大飢饉と疫病のせいで民衆が次々と死んでゆくなか、素浪人・蓮田兵衛(大泉洋)は野垂れ死しかけていた若者・才蔵(長尾謙杜)を拾う。
もともと才蔵は武家に育ったが、父親が亡くなってからは食うに困って高利貸しに手を貸していた。
それに耐えられなくなった才蔵が暴れまわっていたところを洛中警護の任に就く骨皮道賢(堤真一)に捕らえられた。
そのような役を幕府から任されていながら、悪党の頭目でもある道賢と兵衛は悪友。
道賢の手下に斬られそうになっていた才蔵を兵衛が買ったというわけだ。
 
武家育ちの才蔵に武術の才能ありと見た兵衛は、自分の師匠である棒術の達人・唐埼の老人(柄本明)に才蔵を託す。
兵衛に一生ついていくと宣言したばかりなのに、突如として正体不明の老人のもとへ放り込まれた才蔵だったが、
逃げ出さずに修行に励むと、1年後には世間にその名が轟くほどの兵法者となる。
 
兵衛と才蔵は再び合流し、悪政に苦しむ民衆たちと共に一揆を企てて……。
 
物の見事に人が死んでゆくわりには音楽が柔らかめゆえ、悲壮感が抑えられています。
敵対する立場でありながらお互いを尊重する兵衛と道賢には俠気を感じるし、多少なりともグッと来るけれど、
はたして大泉洋がピッタリの役だったかを考えると、ちょっと違うような気がしてしまう。
時代劇ではなくて現代の、シリアスすぎずにちょっと笑える作品の彼のほうが私は好きだなぁ。
 
原作は兵衛ではなくて才蔵が主人公に描かれる物語なのですね。
日本版“ベスト・キッド”にするほうがよかったってことはないですか。
それだとパクリだと言われるか。でも面白そうなんですけど。

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『敵』

『敵』
監督:吉田大八
出演:長塚京三,瀧内公美,河合優実,黒沢あすか,中島歩,カトウシンスケ,高畑遊,
   二瓶鮫一,高橋洋,唯野未歩子,戸田昌宏,松永大輔,松尾諭,松尾貴史他
 
イオンシネマ茨木にて。
 
1998年に出版された筒井康隆の同名小説を全編モノクロで映画化したのは吉田大八監督。
結構好きな監督です。彼が映画化に選ぶ作品がわりと好きというのか。
 
77歳になる元大学教授の渡辺儀助(長塚京三)はフランス文学の権威。
20年前に妻の信子(黒沢あすか)に先立たれたが、古い日本家屋に住みつづけ、規則正しい生活を送っている。
それなりの会社に就職して出世した教え子たちの多くが今も彼を慕い、
雑誌にエッセイを連載する話を持ってきてくれたり、遊びにきてくれたり。
劇団を主宰する教え子(松尾諭)は積極的に片付けを手伝ってくれて、庭の井戸掘りにまで精を出す。
 
そんな教え子の中でも鷹司靖子(瀧内公美)には若干の下心がある。
靖子のほうもそれを察知していると見え、なまめかしい仕草を見せられるとついついよからぬことを考える。
また、友人(松尾貴史)に誘われて行くようになったバーには、
オーナーの姪でフランス文学を学んでいる大学生だという菅井歩美(河合優実)がいて、なんだか色っぽい。
 
預貯金があと何年持つかを冷静に計算し、終末に備える儀助だったが、最近頻繁に届く迷惑メールが気になる。
URLをクリックせずにゴミ箱に捨ててはいるものの、「敵がやってくる」という文言が頭から離れない。
ある日、好奇心に負けてついにクリックしてしまうと……。
 
不思議な感覚で面白い作品でした。
品行方正、誰からも尊敬される老人のはずが、女性に対してはそれなりに破廉恥な感情を持っています。
隠しているつもりがきっちり見抜かれていて貶められる、騙される。
 
途中からは現実なのか彼の妄想なのかが観ているこちらにもわからなくなる。
認知症の兆候としか思えませんが、時折本当にそのことが起こっていたりもする。境目がわからない恐怖。
 
まともな間の彼が作る日々の料理がとても美味しそうで。
白米を炊き、網で魚を焼く。朝食はハムエッグのこともあります。コーヒーは豆からきちんと挽く。
蕎麦を湯がいて刻んだ葱と共に。鶏肉と太い葱を買ってきて焼き鳥串を作る。レバーまであります。
白菜のキムチをどっさり買って韓国冷麺に添えたら体調を崩して病院に行くはめに。
医者からは、若いときと同じように激辛なものを食べちゃ駄目ですよとたしなめられる。
 
平穏な生活って何でしょう。
彼の最期が幸せだったかどうかは私たちにはわからない。
こんな恐ろしい夢を見る前に死にたいと思うのでした。

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『#彼女が死んだ』

『#彼女が死んだ』(英題:Following)
監督:キム・セフィ
出演:ピョン・ヨハン,シン・ヘソン,イ・エル,パク・イェニ,ユン・ビョンヒ,パク・ミョンフン他
 
前述の『アプレンティス ドナルド・トランプの創り方』の次に、同じくキノシネマ心斎橋にて。
よその劇場ではなかなかかからない韓国作品を上映してくれるのは、前身のシネマート心斎橋と同じで嬉しい。
新調された座席は少し後傾していて以前よりも観やすくなっています。
 
監督は本作が長編デビューとなるキム・セフィ。
主演のピョン・ヨハンは『太陽は動かない』(2020)にも出演していた俳優だけど、
TVドラマで主に活躍している人らしく、私の頭の中には残念ながら記憶なし。
 
韓国には不動産公認仲介士という国家資格があるのですね。
「韓国には」と書きましたが、不動産業について何も知らない私は、類似資格が日本にもあるのかどうか知りません。
ただ、聞いたことのない資格の名前だったので、韓国特有のものなのかなと思っただけです。
とにかく、この資格がなければ不動産取引の仲介ができないらしい。
 
本作を観るかぎりでどんなことをする資格なのかを推察すると、
たとえば自分が所有している物件を誰かに貸したいとき、この不動産公認仲介士なる者を通して貸します。
↑これだけが理解に至ったことですが、鑑賞後にネットで調べたら、この仲介手数料がかなり高額で、
公認仲介士の資格を取って数件仲介すれば、大企業に勤務する人と同程度の年収が稼げるそうな。
 
さて、本作の主人公ク・ジョンテ(ピョン・ヨハン)はそんな不動産公認仲介士。
いま若者たちに人気のこの資格について指南する彼のホームページも大人気。
 
そんな彼の決して人に言えない楽しみは、仲介した部屋の大家から預かった鍵を使って住人の留守中に忍び込むこと。
私生活を覗き見した代わりに、ネジの緩んだ箇所を締め直したり水道の詰まりを直したりして退室する。
また、部屋の中を見回してどう考えても不要であろうものをひとつ頂戴してコレクションにしている。
 
おかげで仲介物件の住人のことはたいてい知っているジョンテだったが、まだ何の情報も得ていない気になる女性が近所にいる。
彼女はインフルエンサーのハン・ソラらしく、彼女の私生活が知りたくてたまらない。
どうにか部屋に忍び込む方法がないかと考えあぐねていたところ、なんと彼女のほうからジョンテの事務所にやってくる。
 
ソラが言うには、仕事の都合で町を離れることになったから、部屋を賃貸に出したいと。
大家の了解は得ているのでこの場でジョンテに鍵を渡して後は任せると。
躍りたいほど嬉しい気持ちを隠して鍵を預かったジョンテは、その日からソラの留守を狙って数度侵入。
彼女の私生活に触れて満足感を味わう。
 
ある日、いつものように覗き見のためにソラの部屋に入ると、ソファに横たわったソラが惨殺されていた。
すぐに警察に通報すべきだが、そうすれば自分の不法侵入がバレてしまう。
慌ててその場を去ったジョンテは、賃貸物件を探している途中のカップルに直ちに連絡。
内見に案内するふりをしてそのカップルを先に部屋に入らせ、ソラの遺体を発見させようとするが、
血まみれだったソラの遺体が綺麗さっぱりなくなっているではないか。
 
同じ頃、ソラの親友だというやはりインフルエンサーのホルギが警察へ出向き、ソラと連絡が取れなくなっていることを告げる。
担当した刑事のオ・ヨンジュがソラの部屋を訪れてみると、ソファの下にわずかな血痕が。
事件としての捜査が始まり、ソラの部屋を仲介するジョンテのもとへもヨンジュがやってきて……。
 
以下ネタバレです。
 
とても面白かったですが、気持ちのよい話ではありません。
『ターゲット 出品者は殺人鬼』(2023)でつけ狙われるヒロインを演じたシン・ヘソンが、
本作でもストーキングされる側と見せかけてその実、身も凍りそうな殺人鬼
 
インフルエンサーとしてもてはやされたいがために、食べてもいない「映えるもの」を食べているように見せかけ、
行ってもいないところに行っているように、持ってもいないものを持っているように撮ってSNSに挙げる。
犬や猫の保護に努めているふりをして募金を促しているけれど、見せる役目が終わった動物は無残に殺すという冷酷さ。
自分の悪行をジョンテに見られたと思い込むソラは、彼を罠にはめることを思いつくわけです。
 
ソラのおこないはもちろんおぞましいけれど、覗き見の趣味があるジョンテだって褒められたものではありません。
応援したくなるのはイ・エル(美人!)演じる女刑事のヨンジュぐらいですかねぇ。
彼女は志願して刑事部に配属されたのに、女だからと仕事を振ってもらえない。
逮捕のお膳立てまではさせられても、手柄は全部男どもに持っていかれます。
行方不明のインフルエンサー探しもたいしたことのない話だろうと思っていたら、これがこんな事件で。
濡れ衣を着せられるところだったジョンテがお礼を言いに来たとき、彼に放つヨンジュの言葉が刺さります。
 
自分は被害者ではないということを肝に命じよ。

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