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『影裏』

『影裏』
監督:大友啓史
出演:綾野剛,松田龍平,筒井真理子,中村倫也,平埜生成,國村隼,永島暎子,安田顕他
 
TOHOシネマズ伊丹にて、
 
沼田真佑の芥川賞受賞作大友啓史監督が映画化。
原作は未読で、映画版とどう違うのか知りません。
その後、読みました。そのときのレビューはこちら
 
岩手県盛岡市に転勤してきたばかりの今野秋一(綾野剛)、30歳、独身。
社交的とは言いがたい彼は、慣れない土地で心細さを感じている。
 
ある日、社内の禁煙の場所で喫煙する日浅典博(松田龍平)を見かけて注意する。
まったく気にするそぶりもなく吸い続けるそいつは同僚で、
何を思ったか突然日本酒の一升瓶を抱えて今野の部屋へとやってくる。
 
以来、日浅に誘われて酒を飲んだり釣りに行ったり。
もっぱらひとりで過ごしていた今野の休日は見事に変わり、毎日が楽しくなる。
 
ところが日浅が何も告げずに会社を辞めてどこかに行ってしまう。
日浅と同じ部署の西山(筒井真理子)らから、
あれほど仲が良かったのに何も聞かされていないのかと訝られ、
本当に何も知らない今野は喪失感を拭えないまま月日が経ち……。
 
映画版を観るかぎりではそれほど芥川賞っぽくはない。
ただ、ところどころ「全部言わんけど読み取れ」みたいな部分があります。
 
今野がただ孤独な青年なのではなく、ゲイであるとわかるのは中盤以降。
しかし、序盤に彼が眠るベッドの撮り方は、
晒し出された綾野剛の脚を爪先から映していて、なまめかしい。
後になれば、あのショットは伏線だったのだとわかります。
 
日浅に惹かれてゆく心を抑えられなくなる今野。
一緒に映画を観に行けば切ない想いが極まってひそかに涙を流し、
焚き火を見ればそれがガラスの炎のように見えて自らの恋心と重ねてしまうのです。
綾野剛、お見事。
 
一方の日浅はちゃらんぽらん。
今野の気持ちを知っていながら弄んでいるようなところがある。
経歴を詐称して、國村隼演じる父親や安田顕演じる兄に絶縁されている。
あの東日本大震災が起きてから行方不明になっているというのに、
父親も兄も日浅を探そうともせず、「死んでいるとは思わない。
どこで何をしようが生きていける奴」と断言する。
 
「嘘をつかれたから縁を切る」という父親の言葉を聞いて、
今野がつぶやくひと言が印象的。「その程度の嘘で」。
ゲイである自分は、つきたくない嘘をつかざるを得ない場面だらけだったのでしょう。
 
消化不良の部分はありますが、なんだか心に残る作品です。

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『阪神タイガース THE MOVIE 猛虎神話集』

『阪神タイガース THE MOVIE 猛虎神話集』
監督:石橋英夫
ナビゲーション:掛布雅之
ナレーション:石坂浩二
 
阪神タイガースの創設85周年を記念して製作された、
球団初の公式ドキュメンタリーですと。
年間予約席を持つ身としては、そりゃまぁ観に行かねばなるまい。
TOHOシネマズ伊丹にて。
 
割引のある日に観に行こうとしたら、いつ行こうが割引なしって、どんな強気。
レディースデーの割引もレイトショーの割引もなしなんて。
1,900円払って観に来ている客は当然阪神ファンでしょう。
 
ナビゲーターは顔ぱっつんぱっつんに膨らんでいる掛布雅之。
ナレーションを石坂浩二が担当し、
あとは阪神ファンで知られる有名人たちが出演。
千秋はちょこっと出るだけですが、
松村邦洋は掛布と対談、佐藤隆太が若手選手へのインタビュアーを務めています。
 
1985年のバース・掛布・岡田のバックスクリーン3連発に始まり、
取り上げられる「ネタ」は、1973年の江夏豊による史上初の延長ノーヒットノーラン、
そして自分でサヨナラホームラン打っちゃったというやつ。
名ショート特集にちゃんと鳥谷が入っているのが嬉しい。
鳥谷に関しては、2000本安打を放ったシーンもしっかり。
阪神で2000本安打を達成したのは藤田平と鳥ちゃんだけ、
そして甲子園でそれを達成したのは鳥ちゃんだけですからね。
 
掛布と対談するのは、江夏、田淵。
佐藤隆太は大山と近本にインタビューしています。
江夏と掛布の時代は大きく取り上げられているけれど、
その次に取り上げられているのは最近のことで、あいだはわりとざっくり。
すっぽり抜けていると言ってもよさそう。
矢野タイガースが映る時間は結構長い。
北條とか木浪なんてこんな映画でいっぱい映るほどの活躍か!?
 
エンディングには“六甲おろし”が流れます。
客が多ければみんなで歌うことでしょう。
 
ビミョーな感じですが、これはこれで楽しかったです。
鳥ちゃんの扱いがテキトーではなかったことだけでも良しとします。
 
コロナウイルスにあっちもこっちも揺れる。
高校野球もプロ野球もどうなるのかなぁ。

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『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』

『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(原題:Knives Out)
監督:ライアン・ジョンソン
出演:ダニエル・クレイグ,クリス・エヴァンス,アナ・デ・アルマス,ジェイミー・リー・カーティス,
   マイケル・シャノン,ドン・ジョンソン,トニ・コレット,クリストファー・プラマー他
 
飲み友だちの姉さんと、飲む前に映画も一緒に鑑賞。
何を観るかは私に一任されていました。
エンターテインメント感動系のわかりやすい作品が好きな姉さん。
しかしちょうどよさそうな感動系が上映されていないため、
いちばん面白そうな本作を選択。大正解!
 
TOHOシネマズ梅田にて。
 
彼のオリジナル脚本とのことで、オリジナル好きの私はウキウキします。
締まった肉体をいっさい見せないダニエル・クレイグも珍しくて(笑)○。
 
世界的ミステリー作家にして大富豪のハーラン・スロンビーが、
85歳のバースデーパーティが開かれる予定の日の朝、遺体で発見される。
豪邸の自室のソファに横たわり、ナイフで自ら首を掻き切った様子で、
自殺であることはまず間違いないと考えられるが、
関係者ひとりずつに対して事情聴取がおこなわれることに。
 
捜査にやってきたのはエリオット警部補とワグナー巡査。
しかしその後ろに居座っている人物がひとり。
彼は名探偵として名高いブノワ・ブランで、
この事件について調べてほしいという匿名の依頼を受けたのだと言う。
 
事情聴取を受けるのは、スロンビー一族のほか、家政婦や看護師。
ハーランが特に信頼する女性看護師マルタ・カブレラが本件の鍵を握ると思われ……。
 
映画らしい映画とでも言えばいいのでしょうか。
とにかく至福の130分。
ニューヨーク郊外にあるという設定の大豪邸の風情がまず楽しく、
先日観た『ダウントン・アビー』を思い出します。
いや、ダウントンほどの豪邸ではないですが。(^^;
 
監督の「アガサ・クリスティを思わせるミステリー映画を撮りたい」という思惑どおり、
名探偵ポアロのような、それ以上にユニークかもしれない名探偵ブノワ。
シリアス一辺倒ではなくて、ふきだしてしまう台詞やシーンも多数。
ミステリー小説ファンの警官が、ブノワの推理にいちいち目を輝かせているのも可笑しい。
そうではないほうの警部補を演じるのは俳優でラッパーキース・スタンフィールド
彼のブノワに対するツッコミがまた笑えます。
 
とにかく曲者俳優ばかり。
亡き長男の未亡人役にトニ・コレット。次男役にはマイケル・シャノン
この辺りは何かやっていそうだという怪しい感じがとてもイイ。
ハーランの孫役には“キャプテン・アメリカ”クリス・エヴァンスですからね。
この「普通はない感」が良くて、キャストがハマりまくっています。
 
めーっちゃ面白かった。

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『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』

『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』(原題:The Peanut Butter Falcon)
監督:タイラー・ニルソン,マイケル・シュワルツ
出演:シャイア・ラブーフ,ダコタ・ジョンソン,ジョン・ホークス,ブルース・ダーン,
   ザック・ゴットセイゲン,ジョン・バーンサル,トーマス・ヘイデン・チャーチ他
 
同じくイオンシネマ茨木にて。
 
批評家から絶賛されていると聞けば、小難しい作品なのではと心配になりますが、
これは全然そんなことない。清々しい作品です。
 
ダウン症の青年ザックは、プロレスラーになるのが夢。
悪役“ソルトウォーター・レッドネック”の大ファンで、
彼のレッスンビデオをざっと千回は観ている。
どうしてもソルトウォーター・レッドネックのスクールに入って指導を受けたい。
 
しかしザックは養護施設に入居中。
家族に見放された彼は、主に老人介護施設として成り立っている施設に入れられ、
外出はいっさい許されていない。
インテリの美人介護士エレノアは優しくてザックと仲良しだが、
彼女に頼んでも施設の外へは出してもらえそうにない。
 
ある日、入居者の老人カールの協力を得て脱出に成功したザックは、パンツ一丁で走る。
人目を避けて停泊中のボートに隠れるが、そのボートが動きはじめてびっくり。
操縦者はならず者の漁師タイラー。
彼は地元の漁師の獲物を盗んだためにトラブルとなり、
腹いせにその漁師たちの道具に火をつけて逃げていたのだ。
 
ザックを見つけたタイラーもびっくり。
追っ手をまいてからザックと別れようとするが、ザックがついてくる。
放っておけずにプロレスのスクールまでザックを連れて行くことにするのだが……。
 
もともとわりと好きなんです、シャイア・ラブーフが。
でも、ならず者というのは映画の中だけのことではなく、
本作の撮影中にも酔っぱらって騒ぎを起こし、続行が危ぶまれたとか。
しかし、実際にダウン症のザック・ゴットセイゲンが、
幼い頃からの夢を叶えて俳優としてデビューしようとしている。
それを自分のせいで駄目にしたらあかんやろと思い直して真っ当に臨んだそうな。
 
施設でザックのことをうすのろ呼ばわりする職員たちと、
優しく接していても実は上から見ているエレノアと、
結局は同じだというタイラーの言葉にハッとさせられます。
特別扱いはしないタイラーとザックの珍道中に私たちも夢を見る。
 
良い作品でした。

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『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』

『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』(原題:Disobedience)
監督:セバスティアン・レリオ
出演:レイチェル・ワイズ,レイチェル・マクアダムス,アレッサンドロ・ニヴォラ他
 
今年になってからよく利用するようになったイオンシネマ茨木にて。
 
原作はフェミニスト小説家といわれるナオミ・オルダーマンの自伝的小説。
監督は『ナチュラルウーマン』(2017)のセバスティアン・レリオ。
主演のレイチェル・ワイズがプロデューサーとして名を連ねるイギリス作品です。
原題の“Disobedience”の意味は「不従順」とか「反抗」とか。
 
ニューヨークで写真家として活躍するロニートのもとに父親の訃報が届く。
父親は厳格なユダヤ教のラビで、ロニートはその一人娘。
あるとき、レズビアンであることが父親にばれ、
親子の縁を切られたロニートは信仰を捨てて故郷を飛び出していた。
それ以来、立ち寄ったこともなかったイギリスのユダヤ人コミュニティへと戻る。
 
狭い地域のこと、ロニートが家を出た経緯を誰もが知っているから、
彼女に温かい目を向ける人などほとんどいない。
そんな中で彼女との再会を内心喜んでいたのが幼なじみのエスティ。
エスティこそがロニートの父親にばれたときの相手。
 
エスティはロニートの父親の後継者と期待されているドヴィッドの妻となっていた。
故郷を出て行ったロニートとは違い、
生涯をコミュニティの中で掟に従って生きることこそが幸せだと
自分に言い聞かせてきたエスティだったが……。
 
神に仕える宗教者たちは大きな心を持っていると思いたい。
でも偏見に満ちていて、男尊女卑もいいとこ。
女の幸せは家事に勤しんで子どもを産むことと決めつけられていて、
でもみんなそうであることに何の疑いも持っていません。
 
レイチェル・ワイズ演じるロニートとレイチェル・マクアダムス演じるエスティの濡れ場は唐突で、
あまり美しいものとも思えず、こんなヘヴィーなやつは要らんかったかも。
そこは引っかかります。
 
了見の狭い人たちばかりのコミュニティの中、自由を求めて飛び出そうとするエスティ。
ドヴィッドがそれを許容するとは思えなかったので、まさかの展開にはジワ~ン。
ドヴィッド役のアレッサンドロ・ニヴォラも良かったです。
 
人は変われる。

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