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『淪落の人』

『淪落の人』(原題:淪落人)
監督:オリヴァー・チャン
出演:アンソニー・ウォン,クリセル・コンサンジ,サム・リー,セシリア・イップ,ヒミー・ウォン他
 
京都シネマで4本ハシゴの2本目。
大阪の劇場が休業中でなければ、きっとシネ・リーブル梅田で観ていたでしょう。
 
予告編を観たとき、『最強のふたり』(2011)の二番煎じを想像していました。
だって、身体に麻痺があって車椅子に乗る主人公が家政婦を雇うって、
男か女かの違いを除けば、まんまおんなじ気がしましたから。
そう思いつつもいい話だろうと思って観に行ったら、やっぱりいい話。
むしろ本作のほうがより共感できます。おなじアジアということなのかなぁ。
 
不運な事故に遭って半身不随となった男リョン・チョンウィン。
妻は息子を連れてリョンのもとを去り、再婚。
リョンはわずかな賠償金を頼りにつましい一人暮らし。
車椅子生活ではいろいろと不便があり、身の回りの世話をしてくれる人が必要で、
フィリピンから出稼ぎに来た家政婦エヴリンを雇う。
 
エヴリンは英語はできるが広東語はできない。
リョンは英語ができないから、意思の疎通を図るのも大変
しかし、看護師だったエヴリンは下の世話なども嫌がらない。
ほかに家政婦を探すのも面倒になり、エヴリンを雇い続けることにするのだが……。
 
『最強のふたり』の雇い人と雇われ人が同じ国の人間だったのに対し、
本作は香港とフィリピンというまるで違う国の人間。
エヴリンには夫がいて、その夫と別れるべく香港へやってきました。
フィリピンの婚姻事情については私は全然知りませんが、
離婚するのはたいそう難しいらしく、エヴリンも苦労しています。
 
フィリピンから香港へ出稼ぎに来ている女性たちはSNSを通じて繋がり、
情報を共有し合って、たまにストレスを発散すべく女子会なんかも。
道端に段ボールで囲ったスペースを作り、
そこでお菓子を食べながら話している姿は衝撃的でした。
家政婦として務めるときはバカのふりをしたほうがいいというアドバイスも受けます。
 
写真家になりたくて、大学にも合格していたのに、
夢を諦めざるをえなかったエヴリン。
その夢の実現になんとか協力したくてこっそり行動を開始するリョン。
彼が事故に遭った当時の同僚ファイ役をサム・リーが演じていて、非常によかった。
ファイが何故にこれほどまでリョンに手を貸すのかをエヴリンに問われたとき、
自分はよそからやってきて、広東語も下手で、
だけどリョンだけは優しかったと答えます。
国の事情を垣間見ることができて、いろいろと心に刺さりました。終盤は涙の嵐。
 
英訳タイトルは“Still Human”。
そう、どうなろうが、人は人。
車椅子に乗らなければ動けなくても、心持ちは運べる。
 
今のご時世でも、心持ちだけは運びたい、届けたいですね。

—–

『もみの家』

『もみの家』
監督:坂本欣弘
出演:南沙良,渡辺真起子,二階堂智,菅原大吉,佐々木すみ江,島丈明,
   上原一翔,二見悠,金澤美穂,中田青渚,中村蒼,田中美里,緒形直人他
 
この週、大阪と兵庫に緊急事態宣言が発令され、
大阪の劇場は全部、兵庫の劇場は数軒を残してほぼ全部、休業することになりました。
私の行動範囲内の劇場すべてが休業するなら映画に行くのはあきらめるけど、
京都まで行けば営業しているところがいっぱいある。
いくつかの選択肢の中から、いちばん行きやすい京都シネマへ。
 
大阪で普通に観られる状況であれば、パスしていたであろう作品です。
こういう言い方はいけないのでしょうが、予告編を観るかぎり、
ちょっと偽善を感じるうえに説教臭そう。説教臭いのは苦手ですから。
それと、『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(2017)が苦手だったので、
同じ女優が主演する作品にはあまり気乗りしなくて。
でもまぁ観てよかった。なんだかんだで泣いちゃったシーンも。
 
東京に暮らす16歳の高校生・本田彩花(南沙良)は不登校になって半年。
心配する両親(二階堂智渡辺真起子)に連れられて、
佐藤泰利(緒形直人)とその妻・恵(田中美里)が運営する田舎の自立支援施設へ。
 
“もみの家”と呼ばれるその施設には、なんらかの事情がある人々が入所している。
農作業を軸とした共同生活を受け入れられず、
早く帰りたいと両親に電話をかけて訴える彩花だったが、
学校に行けるまでは帰ってくることを認めないと言われ……。
 
最初は終始うつむいていて、誰とも目を合わせようとしなかった彩花。
嫌々ながらもみんなとの生活を続けるうちに顔が上がってきて、
笑顔を見せるようになると、こちらも嬉しくなります。
 
思ったほどは説教臭くなくてホッ(笑)。
沙良ちゃんも志乃ちゃん役のときよりず〜っと良かった。
 
何十年前ですかね、緒形直人がトレンディドラマに出ていたのって。
こんなおじさん役で出ていることに感慨をおぼえ、
ただただ歳を取ったなぁ、緒形直人も私もと思ってしまうのでした。
 
本作が遺作となった佐々木すみ江さん
あったかくて素敵なおばあちゃん役でした。
ご冥福をお祈り申し上げます。

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『ナイチンゲール』

『ナイチンゲール』(原題:The Nightingale)
監督:ジェニファー・ケント
出演:アシュリン・フランチオージ,サム・クラフリン,ベイカリ・ガナンバー,
   デイモン・ヘリマン,ハリー・グリーンウッド,ユエン・レスリー他
 
この日も本作を観るためにシネ・リーブル梅田へ。
仕事でオーストラリア先住民であるアボリジニの資料を見ることが続いていたので、
アボリジニがどのように迫害されていたのかを知りたくて。
 
19世紀、英国植民地時代のオーストラリア、タスマニア島
些細な罪を犯してもここへ流刑されるような時代。
 
窃盗の罪で流刑されたアイルランド人の女性クレアは、
彼女の美貌と歌声を気に入った英国軍将校ホーキンスに目をつけられる。
ホーキンスは彼女とその夫エイデンに家を与えたものの、
クレアのことをまるで奴隷のように扱い、刑期を終えても釈放しようとしない。
 
エイデンがホーキンスに抗議して諍いになり、
揉めているところをホーキンスの上官が見咎める。
上官はホーキンスの昇進は見送ると宣言する。
 
エイダンに怒りの矛先を向けたホーキンスは、
深夜、部下を連れてエイデン宅に侵入。
クレアをレイプした挙句、彼女の目の前でエイデンと赤ん坊を殺害。
殴打されて死んだかと思われたクレアだったが、翌朝意識を取り戻す。
 
絶対に復讐する。そう誓ったクレアは、
ホーキンスが昇進を直訴しようと軍幹部の駐屯地ローンセストンへ急遽旅立ったことを知る。
ローンセストンまでひとりで行くのは無理だと判断し、
先住民アボリジニの若者ビリーを道案内として雇うのだが……。
 
ある映画祭で上映されたさいは、レイプ等の凄絶なシーンに退席した客が多くいたそうです。
確かにとてもとてもつらいシーン。
 
作品自体も一貫して重暗く、笑えるシーンなどひとつもありません。
最後も復讐は果たしたところでハッピーエンドではないから、きついのなんのって。
 
こうして映画でアボリジニを取り上げたものを観るのは初めてで、
アボリジニが遭ってきたことについて知れました。
アボリジニに限らず、先住民を描いた作品には悲哀を感じますね。
そのほか、生活の困窮からほんの少しの食べ物を盗んだだけで島流しって、
愕然とすることがいっぱいで、打ちのめされます。
 
この日を最後にテアトルグループは全館休業に入りました。
上映終了後、切ない気持ちで帰る客を見送ってくれるスタッフ。
一時的な休業のはずなのに、もうこれっきりみたいな気がして寂しかった。
早く再開できますように。

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『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』

『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』(原題:The Biggest Little Farm)
監督:ジョン・チェスター
 
4月の2週目の月曜日。
この日、まもなく大阪に緊急事態宣言が発令されそうな話になっていて、
そうしたらテアトルグループも休館するとの噂。
本作ともう1本、どうしても観たい作品があったため、
観そびれることを避けようとシネ・リーブル梅田へ。
2本ハシゴできれば連日終業後に梅田まで車を走らせる必要はなかったのですが、
どこの劇場も遅い時間の上映はもはや中止されていたので叶わず。
1日1本観ることになりました。
 
ある夫婦が農場づくりをゼロから始めました。
その様子をフィルムに収めたドキュメンタリー作品です。
夫婦の夫自身が監督を務めています。
 
野生生物番組の制作者兼カメラマンとして活躍するジョン・チェスター。
料理研究家である妻モリーもブログチャンネルを持って活躍中。
 
あるとき、ふたりは殺処分を待つ犬の世話をする人に会います。
200匹もの犬がいると聞き、愕然とするジョンとモリー。
そのうちの1匹と目が合って、この子を引き取ろうと決めます。
 
トッドと名付けられたその犬は、可愛くて可愛くてたまらない。
夫婦といるときはとっても良い子なのに、
ひとりきりでお留守番ということになるとずーっと吠えているらしい。
いろいろ工夫を凝らしてみてもご近所からの苦情が止まず、
ふたりはトッドのために郊外へ引っ越すことを検討。
 
ところがこれが普通の引越しではないところが凄い。
なんと東京ドーム約17個分相当の荒れた土地を購入。
ゼロから農場づくりを始めちゃうんですねぇ。
 
もともとそういう知識があったわけではない。
甘い考えで始めたといえばそうでしょう。
そもそもそんな資金もない。
仲間内で理想の農場の話をしたら、みんなに笑い飛ばされたけれど、
それがなんとなく口伝えに広がって、賛同者が現れます。
 
伝統農法を熟知する人に教えを請い、自然と共生する再生型の農場を。
作物を育てるのは無理だといわれていたパサパサの土も、
自然に基づいた方法を続けていれば甦る。
皆に厭われる動物にもきちんと役割があって、
本作を見ていると害獣や害虫なんて本当は存在しないのではとすら思いました。
コヨーテも、ホリネズミも、てんとう虫も、すべての生き物に役割がある。
 
野生動物を撮り続けてきた人だけあって、映像がとてつもなく美しい。
少しでも多くの人にご覧いただきたい作品ですが、
コロナ騒動で上映がどうなるのか。残念で、心配でなりません。

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『his』

『his』
監督:今泉力哉
出演:宮沢氷魚,藤原季節,松本若菜,松本穂香,外村紗玖良,
   中村久美,鈴木慶一,根岸季衣,堀部圭亮,戸田恵子他
 
2日連続で塚口サンサン劇場へ。
相変わらず超綺麗なトイレ。このご時世だからいつも以上の安心感。
 
たまに私のツボにハマる今泉力哉監督。
 
本作はTVドラマ『his 恋するつもりなんてなかった』のその後だそうですが、
そんなドラマがあったことすら知らず。
ドラマ版と映画版ではキャストはがらりと変わっています。
ドラマ版は大学時代の話らしいから、
数年経った設定の映画版ではもう少し歳を食ったキャストに。
 
主演は“THE BOOM”の宮沢和史の息子、宮沢氷魚
お父さんはそんなに背が高い印象なく、息子のほうがずいぶんすらりとしています。
ダブル主演の藤原季節は私のタイプではない。あ、私の好みはどうでもいっか。(^^;
 
かつて同棲していた井川迅(宮沢氷魚)と日比野渚(藤原季節)。
渚から切り出されて別れたふたり。
就職した会社でゲイだと知られることを恐れた迅は東京を離れ、
移住を積極的に受け入れている自治体、岐阜県白川町へ。
人を遠ざけながらも、畑で作った野菜を町民が獲った肉と交換するなど、
静かに自給自足の生活を送っている。
 
ところがそこへ突然、8年ぶりに渚が現れる。
しかも娘だという6歳の空(外村紗玖良)を連れて。
渚がバイセクシュアルだったことにも気づかず、驚きを隠せない迅。
 
渚は現在、離婚協議中の妻の玲奈(松本若菜)と空の親権を巡って争っており、
これまでは玲奈が通訳の仕事で稼ぎ、渚が家事と育児を受け持っていたという。
離婚すれば無職の渚はどうやって生活するつもりなのか。
生活力をあてにして現れたかのようで、納得のいかない迅だったが……。
 
田舎町でゲイだということが噂になって居づらくなる、
そんな展開かと思っていたのにそうじゃなかった。
田舎の人が移住してきたゲイの若者を受け入れられるわけがないなんて、
こっちの思い込みもはなはだしい。すみません。
鈴木慶一演じる猟師のおっちゃん、
根岸季衣演じるおばちゃんの言葉に目頭が熱くなりました。
 
子どもの親権を争った場合、夫側の新パートナーが男性だとしたら、
実際の裁判もこんな感じになるのでしょうか。
渚側の弁護士役、戸田恵子もよかった。
 
迅に想いを寄せる町役場の職員役が松本穂香
思いきって告白した相手がゲイだった。切ないなぁ。
 
迅と渚のキスシーンを目撃した空の言葉がすべて。
「パパが迅くんを好きで、迅くんもパパが好き。何がいけないの?」
そのとおりです。

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