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『消えた時間』

『消えた時間』(英題:Me and Me)
監督:チョン・ジニョン
出演:チョ・ジヌン,ペ・スビン,チョン・ヘギュン,チャ・スヨン,イ・ソンビン他
 
これも“おうちでシネマート”、独占配信。1,200円払って視聴。
2019年の製作で、韓国で公開されたのは2020年。
 
田舎に引っ越してきた夫婦。
夫スヒョクは小学校の教師で人望厚い。清楚な妻イヨンも近所で良い評判しかない。
しかしこの夫婦には誰にも言えない秘密があった。
 
イヨンは毎日夜になれば憑依され、別の人格に変わってしまうのだ。
スヒョクの母親になったり、コメディアンになったり、力道山になったり。
スヒョクは別人格のイヨンとも上手くやり、そのことをイヨンも自覚していた。
朝になればイヨンは元通り、何の問題もないはずだった。
 
ところがある晩、近所の住民が憑依の様子を覗き見てしまう。
覗き見た住民は黙っていられずに村中に言いふらし、
その結果、怯えた村人たちはイヨンを鍵付きの檻に閉じ込める。
夜が近づけば村人の誰かがやってきてイヨンを閉じ込め、
朝になると鍵を開けに来る、その繰り返し。
 
そんな日が続いた後、スヒョクの家が火事に遭う。
スヒョクとイヨンは遺体となって発見され、村は騒然とする。
捜査を担当する刑事ヒョングは単なる事故とは思えず、
村人たちひとりひとりの取り調べを開始するのだが……。
 
気づいたときにはヒョングがなぜかスヒョクに替わっているという、
不条理バリバリ、非常に説明しづらい話です。
見た目はヒョングのままなのに、彼に会う人が皆、彼のことを「先生」と呼ぶ。
村人たちの目にはなぜかヒョングがスヒョクに見えているんですね。
 
帰宅するとそこには別人が住んでいる。妻子はどこへ行ったのか。
隣人は自分に見覚えがない様子。
腑に落ちなくて暴れると警察を呼ばれる始末。
誰もが自分のことをスヒョクだと思っています。
 
スヒョクとイヨンを死に追い込んだのは村人たちですが、彼らも根は善人。
噂を広めた住民は大いに責任を感じている。
その罪悪感からなのか、スヒョクは今も生きていて、しかも独身。
イヨンの存在は最初からなかったことにされてしまうのです。
 
最初は抵抗を試みるものの、スヒョクとしての人生を受け入れて、
小学校に教師として通いはじめるヒョングはどうなるのか。
ヒョング役はチョ・ジヌン
彼がワケわからんまま巻き込まれる話はたいてい面白い。
 
なるほどね。出逢うべくして出逢ったふたり。
このエンドレスな状態は切ない。辛いけど好きでした。

—–

『愛の終わり、私のはじまり』

『愛の終わり、私のはじまり』(英題:In My End is My Beginning)
監督:ミン・ギュドン
出演:オム・ジョンファ,キム・ヒョジン,ファン・ジョンミン,イ・フィヒャン,キム・ガンウ他
 
緊急事態宣言発令中でシネマート心斎橋も休館。
ふとシネマートのHPを覗いたら、“おうちでシネマート”開催中。
料金形態は1,200円、550円、440円の3つ。
シネマート独占配信作品が1,200円で、
劇場公開されたわりと新しめの作品が550円、
その他の作品は440円のようです。
 
ら抜きが好きではない私にこのサイト名はどうなのよ。
そんなん文句を言うても仕方ないし、「ミラレール」じゃ語呂も悪いうえに、
可能じゃなくて受動を表すふうに取られそうだし、もういいです(笑)。
 
せっかくなので初っぱなは独占配信の作品を選びましょう。
韓流に強いシネマートだから、やっぱりラインナップに韓国作品が多い。
そのうちの1本、2013年の作品。
 
同じ劇団に所属するジェイン(ファン・ジョンミン)とジョンハ(オム・ジョンファ)は夫婦。
順風満帆の結婚生活を送っていると妻のジョンハは信じていた。
 
ところがある晩、ジェインが交通事故で死亡する。
当時、彼は女性と車中で性行為に及んでおり、
サイドブレーキが甘かったせいで車が動いて他車と衝突。
浮気相手はジョンハの後輩ナル(キム・ヒョジン)だった。
 
やがてジョンハは、ジェインの性的嗜好が普通ではなかったことも知る。
ナムの首を絞めたり緊縛したり。ジョンハはショックから立ち直れない。
 
そんなジョンハのもとへ、ひとり生き残ったナルがやってくる。
ナルは「ここに置いてほしい」と懇願し、
ジョンハからどんな仕打ちを受けようとも出て行こうとせず……。
 
作品紹介に「あなたの奴隷にしてほしい」と書いてあったのは見ましたが、
韓国の人の名前は男女どちらなのか私にはわからない。
だから、亡夫が刺激的なセックスを求めていたことを知った妻が、
誰か別の男にそんなことをのたまったのだと思っていました(笑)。
そうしたら、「奴隷にしてほしい」と言ったのは、妻ではなく亡夫の浮気相手。
しかもその女が妻に向かって「奴隷にしてほしい」って、どないなこっちゃ。
 
なんというのか、この妻ジョンハがいけ好かない女なんです。
そりゃ憎いでしょう、浮気相手のことは。
でも徹底的にナルを虐めようとするその顔が怖すぎる。
美人ですけどねぇ、どちらかといえば性格悪い役のほうが似合いそう。
 
亡くなったジェインが、自分が書いた小説をジョンハに読み聞かせ、
それがそのままジェインとジョンハとナルの物語になっている。
もしかして夢オチなんじゃないのかと思わせるファンタジーでもあります。
 
つまらなくはないけれど、率先して観たくなるほどではないなぁ。
ファン・ジョンミンのファンならいいかもしれないけれど、
でも彼が女性の首を絞めているところとか見たいですか。
女優ふたりもちょっと中途半端に綺麗な感じで、
劇場公開に至らなかったのはごもっともだと思われます。
脱いでいるならともかく、絡みが激しいわりに乳首は絶対見えませんから(笑)。
 
観るなら新作落ちする頃でいいんじゃないですかねぇ。
でも、こんなご時世。1,200円払って観ようじゃないか。

—–

『リバー・オブ・グラス』

『リバー・オブ・グラス』(原題:River of Grass)
監督:ケリー・ライカート
出演:リサ・ドナルドソン,ラリー・フェセンデン,ディック・ラッセル,
   スタン・カプラン,マイケル・ブシェミ他
 
シネ・ヌーヴォにて、前述の『今年の恋』の次に。
 
ケリー・ライカート監督、私は初めて聞く名前です。
インディペンデント映画の雄と称えられる女性監督らしく、
昨秋、東京と京都で開催された“秋の文化芸術週間 2020”では、
同監督の特集が組まれたそうです。連日満席だったとか。
 
このたびシネ・ヌーヴォでは1日限定で3作品を一挙に上映。
3本とも観るのは時間的に無理だったから、この1本のみ。
座席の間隔を空けての販売ではありますが、満席です。
 
本作はライカート監督初の長編で、1994年の作品。
 
警官が落とした拳銃を偶然拾った男リー。
あてもなく家出した主婦コージー。ふたりが出逢う。
ふたりの逃避行が始まります。
 
銃拾って、撃っちゃって、こりゃマズイということで逃げた男。
そんな男と一緒にいたら、自分だって家を出てきた身、
捜索願が出ているだろうから逃げなきゃと思う女。
でも実は誰からも追われていなかったりするこの悲しさ。
 
一文無しになって、食べるもの着るものを調達するついでに強盗を働こうとする。
でも「金を出せ」となかなか言い出せずにいると、
後から入ってきた男に強盗という行為そのものを横取りされちゃったり。
 
有料道路の通行料も持ち合わせていない。
普通の映画なら、そのまま車でぶっちぎるでしょう。
でもその勇気もなくてバーの前で急停車。
職員に路肩に寄るように指示され、おとなしく待つ。
これも普通ならそのまま逃走するでしょう。
待ちつつも、あぁ絶対バレたな、捕まるなとふたりでドギマギしているのに、
戻ってきた職員は、「金がないならUターンしなさい」。
ハイとこれまたおとなしく元来た道を帰って行くんですよね。
 
いろいろとバカでマヌケで、シュールな笑いはありますが、
絶賛する人が多いなか、私はそれほど好きじゃない。
なぜでしょう、もしかするとリー役のラリー・フェセンデンがタイプじゃないからか(笑)。
どうせ一緒に逃げるなら、好みのイケメンじゃないと、心が躍りません。
ま、コージーとリーの間にロマンスのかけらもないのは面白いところですが、
相手がイケメンじゃないうえにおかしい男ならロマンスも生まれないほうがいいや。
 
上映後にこの特集開催者によるトークショーがありました。
最初、片方の人があり得ないほど緊張されていて、敬語もしどろもどろ
見ているのがつらくなるぐらいだったので、
もう少しスムーズなトークが聴けたらよかったなぁ。
頑張っているのは伝わってきました。
 
玄人受けはするんだろうと思います。バリバリ素人ですみません。
でも、日本では今まで観ることのできなかった作品を観られるのは嬉しいです。
引っ張ってきてくれてありがとう。

—–

『今年の恋』

『今年の恋』
監督:木下恵介
出演:岡田茉莉子,吉田輝雄,田村正和,石川竜二,東山千栄子,
   三遊亭圓遊,浪花千栄子,若水ヤエ子,三木のり平他
 
緊急事態宣言発令下でもなんとか営業中のシネ・ヌーヴォでは、
「おちょやん」公開記念として、浪花千栄子の出演代表作15本を一挙上映中。
どれか1本は観たいと思っていたところ、
訃報が届いたばかりの田村正和も出演している本作と時間が合いまして。
 
1962年の公開作品です。
木下恵介監督が製作も脚本も担当した松竹の正月映画だそうで、
1967年には連続テレビドラマとしてリメイクされています。
 
山田光(田村正和)と相川一郎(石川竜二)は同じ高校に通う親友同士。
光は良家のぼんぼん、一郎は繁盛している料理屋の息子で、
上級生からは「スカしている」と因縁をつけられることしょっちゅう。
強くなって仕返ししてやろうと、光は一郎を誘ってボクシング部へ。
 
ふたりともこんなふうで成績はお世辞にもいいとは言えない。
なんとか一郎に大学へ行ってほしいと願う姉・美加子(岡田茉莉子)は、
弟がふらふらしているのは友だちが悪いせいだと思っている。
一方、大学院生である光の兄・正(吉田輝雄)も、
弟の成績が上がらないのはつるんでいる友だちのせいだと考える。
 
相川家の様子をこっそり偵察することにした正は、
ガールフレンドを連れて相川家が営む料理屋“愛川”へ。
ところが女中として現れた美加子は驚くほどの美人で一目惚れ。
美加子にデレデレする正に怒ったガールフレンドは憤り、
正にコップのビールを浴びせかける。
その様子を見た美加子は呆れ果て、正に悪い印象を持つのだが……。
 
九条に着いてからハタと気づいたのですけれど、
NHKの朝の連ドラ“おちょやん”を一度も観たことがなかった私は、
浪花千栄子をまったく知らないのです。
彼女の特集だからといって、彼女の主演作を集めたものではありません。
連ドラを観ていたとしも本物の浪花千栄子の顔はわからなかったでしょうが、
彼女役を演じていた杉咲花からどんな人を想像すればいいのか。
 
結局、彼女がどの人だったのかわかったのはこうして書いている今。
そうか、美加子の母親役が彼女だったのか〜。
 
なんにせよ、とても楽しい作品でした。
当時の料理屋にプライバシーなんてあったもんじゃない(笑)。
女遊びをすれば直ちに家族にチクられてしまうのですから。
また、今だったら即刻問題になりそうな発言がいくつも登場。
ボクシングも「愚連隊しかやらない」とか、酷い言われようだし(笑)。
これを観て笑っていられた時代、そして今それを観て笑っていられることを
とても幸せに思うのでした。
 
岡田茉莉子ってものすごい美人ですね。吉田輝雄はタイプじゃないなぁ。
田村正和が高校生のときからちっとも変わらない顔立ちだったことにびっくり。
美加子の父親役、つまり浪花千栄子の夫役を演じていた三遊亭圓遊も可笑しい。
相川家の女中役を演じていた若水ヤエ子は伊藤沙莉に似ている!
 
そういえば先週、ナナゲイでシネ・ヌーヴォのスタッフをお見かけしました。
普通に客として来られていた模様です。
ナナゲイのスタッフが「浪花千栄子特集、盛況らしいですね」と声をおかけになったら、
「そうなんですよ。なんか、ウチに初めて来られるお客さんも多いみたいで」。
「若い方も観に来られているんですか」というナナゲイスタッフの問いに、
「いえ、若い人は来られていません」とお答えになっていました(笑)。
はい、確かに昨日も年配者ばかりでした。(^^;

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『AGANAI 地下鉄サリン事件と私』

『AGANAI 地下鉄サリン事件と私』
監督:さかはらあつし
来る日も来る日も十三へ。
どこの映画館へ行こうかなと選べる日はいつになったら来るのか。
ま、連日十三というのも楽しいですけどね。
すでにこのとき物心ついていた人なら覚えているはず。
1995年3月20日に起きた地下鉄サリン事件。
その車両にちょうど乗り合わせていて被害を受けたさかはらあつし監督は、
オウム真理教からアレフへと改称して活動を続ける宗教団体に接触。
広報部長の荒木浩に取材を申し込みます。
上映終了後にリモートトークショーがあり、
この日のゲストはさかはら監督と京都府立大学の宗教学の先生でした。
眠くなるシーンなどひとつもない作品でしたが、
やはりこうして話を聴くと、もう一度観たくなりますね。
さかはら監督は最初、アレフに寝泊まりさせてくれと頼んだそうです。
それは断られ、ならばと荒木氏を説得した末に選んだ形がロードムービー。
荒木氏の思い出の地である丹波や実家の高槻を共に訪れます。
実は序盤、さかはら監督の喋り方にちょっと抵抗をおぼえました。
ラッパーのようないでたちをした監督は、荒木氏にタメ口。
荒木氏のほうはずっと敬語で喋っているものですから、
被害者とはいえ、ほぼ初対面の相手にその喋り方はどうよと思いました。
しかし監督はお若く見えるだけで、帽子を取れば白髪混じり。
しかも荒木氏とは同窓の京都大学出身で、ひとつ歳上だというではないですか。
ならばタメ口もごもっとも、人は見かけによりません。失礼しました。
アレフの広報部長だからさぞかし口が達者だろうと思いきや、
荒木氏は大人しめで、ああ言えばこう言うふうにも思えません。
だけど麻原彰晃を今でも信じて尊敬していると言い切り、
事件は麻原彰晃の意図したことではないと信じている、いや、信じたいだけなのか。
高学歴の人のことだから始終考えているのかと思っていましたが、
この宗教団体の人は、教団と教義のこと以外考えたくないみたい。
さかはら監督が空海の三教指帰の話を持ち出し、
考えが2つ3つあってそれ以上考えないというのと、
1つしかなくてそれについてしか考えないのは全然ちがうとおっしゃっていました。
まさに荒木氏には1つの考えしかありません。
京都府立大学の川瀬貴也先生が、高学歴の人がオウム真理教に多い理由について話していたのも面白かった。
麻原彰晃って、ヨガの指導者としては優秀だったんですねぇ。
勉強のできる頭でっかちの人は、そこに身体論を絡められると落ちやすい。
映画自体は2015年に撮り終えていたけれど、その後、上祐史浩と激しく議論し、
この映画を上映するせいでアレフに入信希望者が増えたらどうしようかと、
葛藤に葛藤を重ねて完成までに5年かかったのこと。
加害者の名前はこうして覚えている人が多いのに、被害者の名前は知らない。
そして被害者の会にもヒエラルキーのようなものが存在して、
監督のように事件後に一旦渡米し帰国した人には入会が許されないという話も興味深い。
上映終了後のリモートトークショーってなんとなく面倒だと思っていましたが、
緊急事態宣言発令下で伺う機会が増えてみたら、やっぱり面白い。
作り手の話は聴かなきゃいけないと再認識しました。

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