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『悪い夏』

『悪い夏』
監督:城定秀夫
出演:北村匠海,河合優実,伊藤万理華,毎熊克哉,箭内夢菜,竹原ピストル,木南晴夏,窪田正孝他
 
MOVIXあまがさきにて、前述の『教皇選挙』の次に。
 
原作は染井為人の同名小説で、第37回横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞作。
4年半ほど前に読んだときの感想はこちら
城定秀夫監督、かなり好きです。ピンク出身だなぁと改めて思わされるシーンもあります。
 
市役所の生活福祉課に勤務するいたって真面目な公務員・佐々木守(北村匠海)。
生活保護受給者に定期的に面会して現状を聴いているが、先輩職員の宮田有子(伊藤万理華)に言わせれば、佐々木は「甘い」。
彼が担当する山田吉男(竹原ピストル)などは明らかに仮病を装う不正受給者なのに、強く言えずにいるのだ。
 
ある日、宮田が佐々木に相談を持ちかける。
宮田の同僚、つまり佐々木の先輩である高野洋司(毎熊克哉)が自分の立場を利用して、
ネグレクト気味のシングルマザーで生保受給者の林野愛美(河合優実)に肉体関係を強要していると。
その証拠を集めて高野を失職に追いやりたいから協力してほしいと宮田は言う。
 
それよりも前に愛美はすでに友人の莉華(箭内夢菜)に高野の話をしており、
莉華から報告を受けた恋人の金本龍也(窪田正孝)が高野を強請ることを思いつく。
高野が愛美とヤッているところを隠しカメラで撮影すると、
家族や職場にバラされたくなければ金本が集めたホームレスの生保受給申請をすべて通せと高野を脅す。
ところが宮田と佐々木が愛美のところへやってきたと聞き、高野の行動がバレているならばこの計画は無理だと金本は考える。
 
こうして金本が手を引く一方で、愛美とその娘・美空(佐藤恋和)を気にかける佐々木は頻繁に林野母娘のもとを訪れるように。
それを知った山田が、金本が高野にやらせようとしていたことを佐々木にやらせようと企んで……。
 
キャッチコピーにもなっているように、クズとワルしか出てきません。
佐々木に同情の余地はあるものの、当初愛美に対してちょっと説教臭いところが嫌。
正義を振りかざす宮田にしたって、これだけ高野に執着するのは高野と不倫関係にあったことが見え見え。
あ、これは最後まで明らかにはされませんけれど、見りゃわかりますよね。
 
登場人物誰にも共感できない嫌な話なんですが、面白い。
これまで青春恋愛ものへの出演が多かった北村匠海は、一皮むけた印象です。
窪田正孝のワルぶりは相当なもので、めちゃくちゃ似合っています。
 
メインの話が進む裏側では、本当に生活保護の受給が必要な親子の姿があります。
突然の事故で夫を亡くした古川佳澄(木南晴夏)は幼い息子を抱えて生活がままならない。
光熱費が払えずに電気が止められるような状況なのに、税金に頼るのは悪いことだと思っています
同僚に背中を押されてやっと生保の申請に行くと、対応したのはキレた佐々木で。
 
とても辛い話を盛り込みつつ、城定監督は最後にわずかな光を見せてくれます。
 
城定監督作品も、染井さんの小説も大好きです。

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『教皇選挙』

『教皇選挙』(原題:Conclave)
監督:エドワード・ベルガー
出演:レイフ・ファインズ,スタンリー・トゥッチ,ジョン・リスゴー,セルジオ・カステリット,
   ルシアン・ムサマティ,カルロス・ディエス,イザベラ・ロッセリーニ他
 
封切り日にMOVIXあまがさきにて。この劇場に行くのはいつぶりでしょう。
おおっ、2018年12月に4回目の『ボヘミアン・ラプソディ』を観て以来だ。
 
2016年にイギリス人作家ロバート・ハリスが著した“Conclave”を原作とするアメリカ/イギリス作品。
“コンクラーヴェ(=教皇選挙)”を描いた作品としては、『ローマ法王の休日』(2011)もあります。
それを観たときもローマ教皇を決めるのはこんなふうなんだと驚いたものですが、
ユーモアも交えて描かれていたためにあまり重くは感じませんでした。
その点、本作は全然違う。ピリピリとした空気が張り詰めて、重いのなんのって。しかし凄く面白い。
 
カトリック教会の最高指導者であるローマ教皇が急逝。
新教皇を決めるための選挙を仕切るのは、首席枢機卿のローレンス(レイフ・ファインズ)。
 
世界各国から100名を優に超える枢機卿が続々と駆けつける。
準備が整うと、外部から完全に遮断されたシスティーナ礼拝堂で投票が始まる。
 
誰かが投票総数の3分の2以上を集めるまでは新教皇は決まらない。今回は72票の得票が必要。
有力視されていた候補たちの票は割れ、水面下ではさまざまな思惑が動いている。
 
ローレンスはベリーニ(スタンリー・トゥッチ)が選出されることを望んでいたが、ベリーニの票は思いのほか伸びず。
何が何でも新教皇になってほしくないテデスコ(セルジオ・カステリット)が票を伸ばし、
アフリカ出身者初の教皇の座を狙うアデイエミ(ルシアン・ムサマティ)も後を追う。
亡くなった教皇と最後に接見したトランブレ(ジョン・リスゴー)も多く得票するが、どうも信用できない。
 
アフガニスタンのカブールからやってきた新枢機卿のベニテス(カルロス・ディエス)はローレンスに投票しつづけているようで、
これ以上の票割れを防ぎたいローレンスは、ベニテスに自分への投票をやめてくれるように頼むのだが……。
 
「汚点のない人間なんていない」という台詞があります。
だけど教皇にはやっぱり曇りのない人に就いてほしいですよねぇ。
聖職者による性的虐待が取り沙汰されたこともあるから、問題のある人のことは事前に知っておきたい。
新教皇になればメディアはこぞってその過去を調べるし、暴かれて困るようなことのない人でないと。
 
ゲイや女性を蔑んでいる枢機卿もいる。世間の受けだけが良い枢機卿もいる。
教皇になりたいなんて思っていないと言いつつ、みんな教皇になったときの名前を考えていたりする。
ローレンスがどのように選挙を仕切って行くのか、なりゆきを見つめるのが本当に面白い。
 
ローレンス役のレイフ・ファインズが素晴らしいのは言うまでもないことですが、
存在感を発揮してさすがと思わせるのはシスター・アグネス役のイザベラ・ロッセリーニ
選挙にシスターの口出しは無用というのか厳禁とわかりつつ、彼女が言葉を発するシーンは凛々しかった。
 
コンクラーヴェを覗いてみたくなりませんか。

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『ジェリーの災難』

『ジェリーの災難』(原題:Starring Jerry as Himself)
監督:ロー・チェン
出演:ジェリー・シュー,ジェシー・シュー,ジョナサン・シュー,ジョシュア・シュー,キャシー・シュー,
   ハオソン・ヤン,ジャン・ツァイ,ファン・ドゥ,ニック・ベイリー,ヨニ・ロタン他
 
昼間にTOHOシネマズ梅田で『少年と犬』を観て、福島のバーで飲んで、NGKで吉本新喜劇を観て、
そこで帰りゃいいものを、TOHOシネマズなんばに寄ってもう1本。
22:00~23:30の回で、レイトショーもレイトショー。これ観て家まで帰れるんかいなというほどの時間帯。
はい、ちゃんと帰れましたけど。
 
なんとも風変わりな作品を撮ったものです。
完全なる実話で、詐欺被害に遭った張本人とその家族を俳優として起用しています。
ドキュメンタリーかと思って観はじめたら、どうやらそうではない。
けれど俳優にしては素人くさく、演技にしてはリアルすぎると思ったら、騙された本人が演じていたというわけで。
 
台湾出身のジェリー・シューは、アメリカンドリームに憧れて米国に渡り、何十年。
妻のキャシーとは離婚し、息子3人も成人してそれぞれに暮らしているから、ジェリーはひとり暮らし。
それでもキャシーとは定期的に会って頻繁に連絡を取り合う中で、息子たちもよく様子を尋ねてくれる。
 
ところがある日、ジェリーの電話をあと2時間で止めるとの通達を受ける。
何が何やらわからないが、電話を止められては困るなら中国警察に通報するように言われてすぐに電話。
話を聞けば、ジェリーは資金洗浄(マネーロンダリング)の国際的な捜査で容疑者になっているとのこと。
ジェリーがフロリダに持つ銀行口座を介して128万ドルが違法に移動されていると。
 
まったく身に覚えがなくて焦るジェリーに、警察官を名乗るジャンは丁寧に優しく応対。
金の流れを突き止めるため、口座を解約して警察に送金するようにジェリーに指示。
疑わしい銀行に出向き、ジャンに言われたとおりに次々と解約して送金。
株で儲けた金はもちろんのこと、生命保険を解約、年金も満額を払い出して送る。
 
すべての口座が空っぽになった途端、ジャンとは連絡がつかなくなり、詐欺に遭ったと知る。
その額98万8000ドル、日本円にしておよそ1億5千万円。
 
こんな手に引っかかるなんておかしいやろと思うけれど、騙されるときは騙されるんですねぇ。
コツコツ貯めたお金を息子たちのために残そうとしていたのに、まるごと持って行かれて。
けれど救いは家族みんながジェリーに温かかったこと。
ジェリーと正反対に金遣いが荒く派手好きのキャシーは最初こそ「アホか」という態度ですが、
国民性なのでしょうか、彼女も息子たちも「しゃあないわな」という感じ。
 
たぶん生きる気力を失っただろうと思うのに、映画化の話が降ってきて、ジェリーはロー・チェンと共に脚本を執筆。
そのおかげで元気を取り戻したとキャシーも嬉しそう。
 
自分のような詐欺被害者が出ないようにしたくて本作を作ったと言うジェリー。
人の良いお年寄りを騙すような悪人には罰が当たるように祈ります。

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『少年と犬』

『少年と犬』
監督:瀬々敬久
出演:高橋文哉,西野七瀬,伊藤健太郎,伊原六花,嵐莉菜,木村優来,栁俊太郎,一ノ瀬ワタル,
   宮内ひとみ,江口のりこ,渋川清彦,美保純,眞島秀和,手塚理美,益岡徹,柄本明,斎藤工他
 
春分の日。JR大阪駅から環状線で1駅、福島にある大好きなバーで青森の醸造家がつくるワインの並ぶイベントがありました。
15時からのそのイベントの前にTOHOシネマズ梅田でこの日封切りの本作を観る。
 
原作は馳星周による直木賞受賞の同名連作短編集。感想はこちら
映画もきっと良い作品になりそうなところ、メガホンを取るのが瀬々敬久監督というのが気がかり。
瀬々監督は泣かせる話にするのが得意だと思われますが、改変も結構凄いときがある。
『64―ロクヨン― 後編』(2016)にはがっかりしましたし、
『護られなかった者たちへ』(2021)では犯人の性別が原作の男性から映画では女性に変わっていて、
さすがに死体を引きずって階段を上がるのは清原果耶には無理があるやろと思ったものです。
 
本作ではどんな改変が加えられているのかドキドキしていたら、まさかのファンタジーへの改変。えーっ。
 
原作は、男と犬/泥棒と犬/夫婦と犬/少女と犬/娼婦と犬/老人と犬/少年と犬から成っています。
最初の章“男と犬”に登場する男・中垣和正を演じるのが高橋文哉
“娼婦と犬”の章に登場するデリヘル嬢・須貝美羽を演じるのが西野七瀬
 
東日本大震災の半年後、宮城県仙台市に暮らす和正は、地元の先輩・沼口(伊藤健太郎)の紹介で、
被災地の空き家から金目の物を盗んでくる窃盗団のドライバーを務めている。
 
ある日、コンビニの前で見かけたシェパードと目が合い、なんとなく放っておけなくて連れ帰る。
首輪に付いていたタグに書かれている名前は“多聞”。
仕事に出るときも車に乗せて行くと窃盗は大成功。多聞はまるで守護天使のよう。
 
しかしこれで最後にするはずだった仕事の日に失敗。
和正は大怪我を負い、多聞もどこかに行ってしまう。
 
月日が経ち、多聞と巡り会ったのは滋賀県に住むデリヘル嬢の須貝美羽。
多聞に新たに“レオ”と名付けて可愛がっていたが、急病に見舞われたレオを病院に連れて行くと、
そこに和正がやってくる。服役して出所後、ずっと多聞の行方を捜していたのだ。
 
どうしてもレオを手放したくない美羽だったが、きっとレオには会いたくてたまらない人がいる。
その人を追って、はるばる宮城から滋賀までやってきたのだろう。
和正と美羽はレオ=多聞が会いたい人のいる場所まで連れて行く決意をするのだが……。
 
原作では最初の章で死んだ和正が映画版では死にません。それどころか多聞を追いかけてくる。
ところが、殺人を犯した美羽がレオを和正に託して自首した直後に和正が事故死。
おいっ、この後どうするんだよと思ったら、なんと和正が幽霊として多聞に同行。
 
別物として観ればいいんでしょうが、ここまで改変しちゃうかなと思って私は興醒め。
まぁ最後はちょっと泣いたけれど、やっぱり瀬々監督作品には納得いかない。
私以外はたぶんみんなボロ泣きのようで、あちこちから鼻をすする音が聞こえていました。(^^;
 
和正の姉役に伊原六花、母親役に手塚理美
美羽に殺されるヒモ役に栁俊太郎、デリヘルの経営者に渋川清彦、母親役には美保純
獣医には眞島秀和江口のりこ。原作でも心に残る老人役には柄本明
そして、多聞が会いたかった少年の父親役に斎藤工。みんな上手いですけどねぇ。

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『Flow』

『Flow』(原題:Flow)
監督:ギンツ・ジルバロディス
 
NGKへはひとりで行くことのほうが多いのですが、この日は午後休を取って友人と。
認知症の兆候が出はじめたお母さんを仕事しつつ介護している友人は、
私がの癌発覚当時に「笑いたい!」と思ったのと同じ心境らしく、
だったら漫才と新喜劇で笑おうよということで、これが2回目の同行です。
 
終了後、黒門市場近くに駐めていた車に乗って阪神高速で池田まで。
友人を送り届けたその足でTOHOシネマズ伊丹へ向かいました。
 
ラトビア/フランス/ベルギーのアニメーション作品。
監督はラトビア出身のギンツ・ジルバロディス。
同監督が世界的に注目された第1作の『Away』(2019)を私は未見だったものですから、
どんな作品を撮る監督なのかを知らずに観たら、最初から息を呑みました。
 
森の中で暮らす1匹の黒猫
時には犬の群れに追いかけられて逃げ惑うことがあるも、自由気ままな毎日。
 
そんな森をある日大洪水が襲う。森どころか世界が丸ごと水の底に沈んでゆく。
流れてゆく木やがらくたに捕まってなんとか溺れ死せずにいた黒猫は、漂流する1艘の船に遭遇。
居合わせた動物たちと当て所のない旅をすることになる。
 
凄いです。2Dなのに3Dを観ているかのような臨場感。
台詞はひとつもなく、それぞれの動物の鳴き声のみ。
喜び、悲しみ、不安、驚き、何もかもがその声にあらわれています。
 
普段は半目し合っているはずの動物たちが時に力を合わせる。
それも決して「俺たち一緒に頑張ろうぜ」的なノリではなくて、自然とそうなる感じで。
 
たまらないアニメを見せてもらいました。
猫好きの人にも動物好きの人にも超オススメ。
大自然を描いた作品では寝てしまうという人にもお薦めします。
 
世界が再生される瞬間。

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