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『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』

『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』(原題:My Salinger Year)
監督:フィリップ・ファラルドー
出演:マーガレット・クアリー,シガーニー・ウィーヴァー,ダグラス・ブース,ショーナ・カースレイク,
   コルム・フィオール,ブライアン・F・オバーン,ヤニック・トゥルースデール,ハムザ・ハク他
 
近所の劇場で何も割引がない日は気持ちに迷いが出てとても厄介です。
遠方まで行く気なんてまるで起こらないにもかかわらず、
しゃあないなぁ、甲子園も雨で試合中止やし、なんばまで行くかと。
 
渋々向かいはしましたが、とても観たかったアイルランド/カナダ作品です。
本作に関しては批評家は好意的に評価、一般人では退屈だと言う人が多いようですが、
私にとってはとても心地よくて穏やかな気持ちになれる作品でした。
 
主人公はアメリカ人の実在のジャーナリスト、ジョアンナ・ラコフ。
彼女の自伝『サリンジャーと過ごした日々』が基になっています。
「サリンジャー」とは言うまでもなくあの『ライ麦畑でつかまえて』の作家のこと。
 
作中ではジョアンナについての説明がないため、知らなければフィクションだと思ってしまいそう。
彼女は1972年にニューヨーク州で生まれ、オハイオ州の大学で学んだ後、
ロンドンの名門大学で英文学の修士号を取得していますが、
映画の中ではカリフォルニア州バークレーに住んでいたことになっています。
 
1995年。作家志望のジョアンナは、同じ志を持つ友人を訪ねてニューヨークへ。
恋人のカールが待つバークレーに戻るのをやめて、このままここで仕事を探すことにする。
出版社は作家志望の若者を採りたがらないとの噂を聞き、出版エージェントに応募。
そこは顧客の中にあのJ・D・サリンジャーもいる老舗のエージェントだった。
 
ジョアンナを面接したのはサリンジャーの代理人を務めるマーガレット。
マーガレットの助手として無事採用され、ウキウキするジョアンナだったが、
彼女に与えられた仕事はテープ起こしとサリンジャー宛のファンレターを処分すること。
サリンジャー自身がファンレターに返事を書くことはないばかりか読みもしないという。
一応ジョアンナが読んでから定型化されている文言でファンに断りの手紙を書き、
その後はシュレッダーにかけて処分するように指示を受けて……。
 
エージェントのこの対応に耐えきれず、ジョアンナはこっそりファンに返事を書いたりも。
しかし別にサリンジャーの名を騙るのではなく、ちゃんと自分の名で書きます。
そのせいで彼女めがけて苦情を言いにやってくる学生なんかもいる。
サリンジャー本人から返事をもらえたら成績Aをもらえるはずだったのにもらえなかったとか。
逆恨みもいいとこですよね(笑)。
 
ファンレターを読み、このファンがどんな人物なのかとジョアンナは思いを馳せる。
そのシーンがファンタジックなので、そこがお好みでない人も多いはず。
また、派手な展開が待っているわけでもなければ、娯楽に富んだ場面もないため、
退屈だという人がいるのもわかります。でも、つまらないとすぐ寝る私が寝なかった。(^o^)
 
ジョアンナ役のマーガレット・クアリーが知的で可愛い。
何もかも計算尽くではないと思えるところに好感が持てます。
上司のマーガレットを演じるのはシガーニー・ウィーヴァー
鬼女性上司と新人秘書という構図から『プラダを着た悪魔』(2006)のように宣伝されていますが、
同じなのはその立場だけですよね。業界が違うのですから、起きることも違う。
『プラダを着た悪魔』も大好きだったけど、私はこっちも好きだな~。
 
ひとつ解せないのは、ジョアンナがニューヨークで同棲を始めた相手ドン。
ダグラス・ブースという役者は過去にも私は見たことあるらしいけど知らん。
ダニエル・ラドクリフを太らせたみたいな感じで、好きじゃない。
こんな自意識過剰な奴よりもバークレーに置いてきた元カレ、カールのほうが断然ええやん。
と思っていたら、ジョアンナが振ってくれてスッキリしました。
 
私は、出版関係の会社が舞台という設定が好きなのかもしれません。
 
ところで、今のいま知りました。
マーガレット・クアリーって、あの『フォー・ウェディング』(1994)のアンディ・マクダウェルの娘だったのね!?

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『死刑にいたる病』

『死刑にいたる病』
監督:白石和彌
出演:阿部サダヲ,岡田健史,岩田剛典,宮崎優,鈴木卓爾,佐藤玲,赤ペン瀧川,
   大下ヒロト,吉澤健,音尾琢真,岩井志麻子,コージ・トクダ,中山美穂他
 
109シネマズ大阪エキスポシティにて1本だけ。
 
原作である櫛木理宇の同名小説を読んだときの感想はこちら
白石和彌監督による映画化ということで覚悟はしていましたが、覚悟が足りなかった(笑)。
グロいのなんのって。序盤から直視できないシーン多数。
 
上映前、後方座席にいた親子連れ(30代の娘と60代の母親と推定)のお母さんのほうが、
「これって洋画じゃなくて日本の映画なん?」と尋ねていました。
本編開始後、そのお母さんのほとんど叫びに近い声がごにょごにょ聞こえてきます。
はっきりとは聞き取れなかったけど、おそらく「こんなん観るの無理!」と推測。
お母さん、ご愁傷様です。(^^;
 
Fランクの大学に通う筧井雅也(岡田健史)は、奇妙な手紙を受け取る。
それは獄中からの手紙で、差出人は24人もの少年少女を殺害したとされる犯人・榛村大和(阿部サダヲ)。
雅也は中学生の頃に榛村が経営するパン屋にしょっちゅう通っていたのだ。
 
すでに一審で死刑判決を受けている榛村から面会に来てほしいと言われ、
雅也が拘置所を訪れたところ、榛村は立件済みの9件のうち8件は確かに自分が犯人だが、
残りの1件だけは身に覚えがないと出張。雅也に真相を調べてほしいと言う。
 
榛村を担当する弁護士・佐村(赤ペン瀧川)を訪ね、独自の調査を開始する雅也。
榛村の主張どおり、被害者は10代後半なのに、その1件だけ被害者は20歳を過ぎたOLで、
他の被害者とは殺し方も異なる。この件に関しては冤罪かもしれないと雅也は考えるが……。
 
まったく、なんと嫌な話なのか。
 
原作では榛村はイケメンなんですよねぇ。
阿部サダヲ、嫌いじゃないですよ。いい役者だということはわかっています。
でも、そんなにも好感度が高い人物の容貌だと言えるでしょうか。
この髪型でギョロリとした目、連続猟奇殺人犯とまでは誰も疑わないとしても、
大人も子どもも魅了される人物だとは私は思えません。
 
岡田健史の陰ある雰囲気はピッタリで○。
阿部サダヲ以上に不気味だったのは、雅也の父親役の鈴木卓爾でしょうかね。
「お母さん、決められない」という母親役の中山美穂も合っているっちゃ合っている。
だけどこんなミポリン、見たくはない(笑)。
謎の人物役の岩田剛典にはちょっと違和感を抱かざるを得ません。
 
個人的に嬉しかったのは音尾琢真の役どころ。
白石作品の常連と言えますが、ヤクザ映画ではわりと情けない役回りだったり、
こういう普通のオッサンで食い意地が張っていたりする彼の姿は楽しい。
 
親に虐待され、尊厳を傷つけられ、自己肯定感が著しく低く育つと、
誰かに認められることでこんなにも自信を持つ。
でも認める側の人間が歪んでいれば、それは洗脳以外の何物でもなくなってしまう。
 
最後もハッピーエンドとはほど遠く、心が折れそうな余韻を植え付けるものなので、
視覚的にも精神的にもこれに耐えられる人にのみ鑑賞をお勧めします。

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『アポロ10号 1/2:宇宙時代のアドベンチャー』

『アポロ10号1/2:宇宙時代のアドベンチャー』(原題:Apollo 10 1/2: A Space Age Childhood)
監督:リチャード・リンクレイター
声の出演: ジャック・ブラック,マイロ・コイ,リー・エディ,ビル・ワイズ,ナタリー・ラモアオー,
     ジョシュ・ウィギンズ,サム・チップマン,ジェシカ・ブリン・コーエン,
     ダニエル・ギルボット,ザカリー・リーヴァイ,グレン・パウエル他
 
2022年のアメリカ作品。Netflixにて4月1日より独占配信中。
 
とにかく『6才のボクが、大人になるまで』(2014)が大好きだったので、
彼の監督作と聞くと手を出さずにはいられません。
 
同監督の『ウェイキング・ライフ』(2001)は、実写映像にデジタルペインティングを施すという手法が用いられ、
アニメのようでアニメでない、いや、やっぱりアニメでしょという斬新な作品でした。
本作もそれを彷彿させるような映像で、モーションキャプチャーと見紛う。そうじゃないようですが。
 
1960年にアメリカ・テキサス州ヒューストンで生まれたリンクレイター監督。
当時のヒューストンの中心は何が何でもアポロ計画だったらしく、
同監督の少年時代を振り返るかのような内容のアニメーション作品です。
 
タイトルの“アポロ10号 1/2”が示すのは、1969年にアポロ11号月面着陸するちょっと前、
設計ミスによって小さくできあがってしまった宇宙船
おおっぴらにはできないことだから、NASAはこっそり小学校を視察して、
学業優秀で身体能力も高い子どもをこっそり訓練してこれに乗せようとします。
 
白羽の矢が立った子どもが主人公のスタンという設定で、事実かしらと錯覚を起こしてしまいそうですが、
んなわけわない。これは思いっきり妄想のパートですよね(笑)。
大人になったスタンの声を担当するのがジャック・ブラック
彼が当時の思い出を語る形で物語は進行します。
 
ジャック・ブラックの声が心地よいし、絵も好みだし、たいそう楽しい物語のはずが、
あまりに監督の思い出話に徹しすぎているせいで、いささか退屈。ソファで寝落ちしそうになりました。
 
ただ、それは私が1969年には幼すぎたせいもあるのかも。
せめて監督と同年代であったなら、きっと親も興奮してテレビを観ていたであろう月面着陸の瞬間、
この時代に流行っていたものなども想像してもっと楽しめたと思います。
ジャニス・ジョプリンやジョニー・キャッシュ、ジョニ・ミッチェルをよく聴いた人、
ヒッピーに憧れていた人なんかは郷愁に浸れるかもしれません。
 
NASAには黒人の職員がほとんどいなかったなんて話には『ドリーム』(2016)を思い出します。
アポロ11号が月面着陸に成功した後、宇宙船を飛ばす予算を差別撤廃に回すべきだったという話も出てきて、
あぁ、いい話だったねぇというだけでは終わらない。
 
いちばん心が躍ったのは、遊園地のシーンかなぁ。ここでもやはり中心はアポロ計画。
トロッコみたいな乗り物から外に出てきたときの空のまぶしいこと。
 
睡魔には襲われたけど、郷愁に浸るときってこんなもんなのかもしれません。

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『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(原題:Doctor Strange in the Multiverse of Madness)
監督:サム・ライミ
出演:ベネディクト・カンバーバッチ,エリザベス・オルセン,キウェテル・イジョフォー,ベネディクト・ウォン,
   ソーチー・ゴメス,マイケル・スタールバーグ,レイチェル・マクアダムス,パトリック・スチュワート他
 
午前中にシネ・リーブル梅田で2本観た後、弟に会いに行きました。
 
余命を考えなければならなくなった弟ですが、まだまだ元気です。
泣き言ひとつ言わず、かと言ってあきらめていないふうでもなく、でもまだ死んじゃうふうでもなく、
八つ当たりもしなければ、投げやりにもなっていない。わが弟ながら凄いなぁと思う今日この頃。
で、誕生日だった弟に逆に買ってもらったお寿司を食べて(笑)、一旦帰宅。
この日から公開の本作を21:25からのレイトショーで鑑賞。
さすがGWというのか、“ドクター・ストレンジ”が人気なのか。こんな時間でも客そこそこ入っています。
 
相変わらず詳細はわからないというのか覚えられないマーベルスーパーヒーローもの。
でもこれだけあれやこれやとスピンオフ的にやられたら、なんとか思い出せます。
 
細かい話は抜きにして大雑把に言うと。
 
ベネディクト・カンバーバッチ演じる元天才外科医にして最強魔術師のドクター・ストレンジことスティーヴン・ストレンジ。
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で禁断の呪文を唱えたせいで、“マルチバース”が開いてしまいます。
 
さて、“マルチバース”とは何ぞや。
“ユニバース(=宇宙)”の“ユニ”を“マルチ(=多重)”に置き換えた造語なんですと。
日本語に訳すと「多宇宙」とか「並行宇宙」になるらしい。
 
で、マルチバースが開いたせいで、別の宇宙から超強い怪物が襲来。
この事態をなんとか収拾しなければと考えたスティーヴンは、
あの“アベンジャーズ”のメンバーでマルチバースに詳しいとおぼしきワンダ・マキシモフに協力を依頼します。
 
ところがそのワンダは、別の宇宙で2人の愛らしい息子と暮らす幸せなママになっていました。
幸せな自分が存在するマルチバースを自由に行き来できる力を持ちたい。
そんなふうに思うワンダは、まさにその力を持つ少女アメリカ・チャベスを捕まえようとします。
 
優しかったはずのワンダは恐ろしい魔女スカーレット・ウィッチとなり、
スティーヴンとウォンが匿うアメリカを追いかけ回し、
みんなであちこちのマルチバースを行ったり来たりしながらアメリカと世界を守る。
 
これで合っているのかどうかも自信ありませんが、たぶんこんな感じの話です。
 
このシリーズに関しては、製作のたびにさまざまな国で問題になっている様子。
たとえば前作では、チベット僧侶にティルダ・スウィントンを起用したことが、
「なんで白人女性に演じさせるんだ」と問題視されて中国で上映不可が取り沙汰されましたし、
本作ではアメリカがレズビアンだという設定が問題視され、サウジアラビアとエジプトで上映禁止になったとか。
 
ただ暢気に映画を観ているだけの者としては、何が駄目なんだかさっぱりわからんのですが、
もっとあれこれ気に留めながら観なくてはならないものなんでしょうか。(^^;
単純に「面白い」じゃあかんか。たぶん初見でもなんとなくわかるし、楽しめると思いますけど。
 
問題点をさらいながら観るのもいいのでしょうけれど、こんな作品は「面白かった!」、それで私はいい。すんません。

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『不都合な理想の夫婦』

『不都合な理想の夫婦』(原題:The Nest)
監督:ショーン・ダーキン
出演:ジュード・ロウ,キャリー・クーン,チャーリー・ショットウェル,ウーナ・ローシュ,
   アディール・アクタル,アン・リード,マイケル・カルキン,ウェンディ・クルーソン他

シネ・リーブル梅田にて2本ハシゴの2本目。前述の『少林寺』の次に。
 
ダンブルドア先生のイメージがすっかり定着したジュード・ロウ
久しぶりに“ファンタビ”以前のちょっと黒い彼も観たいじゃないですか。
あまり暗い作品は観たくはないけれど、この程度ならいいかと思って。
 
1980年代。ニューヨークに暮らすオハラ一家は4人家族。
夫のローリーはイギリス人の商社マン。その妻アリソンはアメリカ人で、乗馬教室も開く馬の調教師。
長女サマンサは体操教室に通う思春期の娘。長男ベンはやんちゃ盛り。
 
穏やかで幸せな日々を過ごしていたある日、ローリーがロンドンへ移住しようと言う。
野心家の夫のことはわかっているつもりのアリソンは、経済的な不安を持つ。
しかしローリーは自分の手腕を見込まれての異動だと主張し、すでに家も買ったらしい。
 
ロンドンに着いてみれば、城とまでは行かずともあまりに大きな邸。
ローリーによってサマンサは公立学校へ、ベンは名門私立小学校に転入手続き済み。
とりあえず夫の言葉を信じ、大邸宅での新生活を楽しもうとするアリソンだったが……。
 
絵に描いたような幸せな一家だと思えるのは最初だけ。じわじわ怖い。
あのダンブルドア先生(笑)=ジュード・ロウが演じるローリーはとんでもない見栄っ張り。
なぜこんな大ボラばかり吹いている人がロンドンに呼ばれたか不明ですが、
最初だけは上手く行きそうな気配はある。
だけど、自分が儲けることしか考えていないローリーの浅はかさはすぐに露見して、
彼を呼んだロンドンの会社社長もローリーの話など聞かなくなってしまいます。
 
アリソンが事態の異常に気づくのは、厩舎の工事が進んでいないことに気づいたから。
なぜ誰も作業に来ないのかと相手に尋ねたら、「代金が未払いだから」と言われます。
大金を稼いでいると思っていた夫が、工事代を未払いどころか、口座に全然金がない。
財布の中にもわずかしかなくて、妻に金の無心すらする。唖然呆然です。
 
健全な女子だったはずのサマンサも大邸宅に住みはじめてから空虚な気分を味わっている。
タバコにもドラッグにも手を出して、でも家族からは何にも言われない。
いちばん異変を感じているのはまだ幼いベンで、学校に馴染めずいじめられているのに、
家族間に流れる不穏な空気を感じ取っているから、誰にも相談できません。
 
いったいローリーはどうなりたかったのか。
「幸福」になりたいのではなくて、「裕福」になりたかったのです。
見栄を張って自慢話をしたって人から疎まれるだけだと気づかない。
もっとも、そういう自慢話のおかげで集まる人もいるのでしょうけれど。
 
怖い作品ですが、ラストシーンには救われる。こんなふうに朝食を。
どうですか、魔法を使えないダンブルドア先生の姿は。

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