読んだ本の数:14冊
読んだページ数:4057ページ
ナイス数:1300ナイス
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■喋る男 (講談社文庫)
嫌味な中年アナウンサーが番組制作AI開発局なる部署へ左遷され、自分の喋りをコピーするAIに立場を乗っ取られる話……を想像していたのに、まるで違った。主人公のイメージは最初と最後では180度変わる。彼がアナウンサーになりたての頃の練習の話も面白いし、新しい試みが現実になればさぞ楽しかろうと思います。ただ、私の心に響くところまでは行かなくて、字大きめで200頁ちょいなのに読了までやたらと時間がかかってしまいました。こうなるのはたいてい文庫書き下ろし作品なのは気のせいか。たぶん飲酒しながら飲むのがあかんのだわ。
読了日:10月03日 著者:樋口 卓治
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■浅田家! (徳間文庫)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】監督ご本人がお書きになった原作の映画化だから、台詞も一言一句同じと言ってよいでしょう。前半は浅田家の家族写真にニヤニヤ。後半の浅田家以外の家族写真については、桜吹雪をはじめとする撮影時の演出が映像化されてなお良し。二宮くんと菅田くんの涙滲む表情にももちろん泣かされるけど、いちばん泣かされたのはまさかの北村有起哉。写真整理の場にイチャモンつけにきたクレーマー役です。妻夫木くん演じる兄が餞別にくれたお手製アルバムだけは、原作で想像したもののほうが重厚だったかも(笑)。
読了日:10月04日 著者:中野量太
https://bookmeter.com/books/16347361
■稲荷書店きつね堂 (ハルキ文庫)
お稲荷さんの祠近くの書店。店主の老人が倒れるのを見た白狐像は、少年の姿に変身。少年が店を手伝っていたら、学校はどうなってるねんと通報されそうだと思うのは野暮でしょうか(笑)。少年が素性を明かしても、老人や近所の書店のバイト青年は驚かない。すぐに信じて受け入れるのが温かい。御利益を売りつけようとする化け狸もどこか憎めなくて、やわらかい物語です。狐からいきなり人間になったのに、稲荷神の御使いだから商売の基本は押さえているというのが可笑しい。「大船に乗った気持ちで」なんて、少年の言うことやないけど、可愛いなぁ。
読了日:10月05日 著者:蒼月 海里
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■三つ編み
便所の汲み取りに生まれついた女性(インド)と、自らも籍を置く父親の会社が危機に瀕している女性(イタリア)と、癌に侵されていることを知った弁護士の女性(カナダ)。いったい誰がいちばん不幸だろうかと考えてしまいました。最も驚いたのは最初の女性スミタ。そこには尊厳など微塵もありません。彼女が受ける仕打ちは想像を絶している。人間以下の出自を彼女自身は受け入れても、自分の娘には読み書きを習わせたい。『82年生まれ、キム・ジヨン』の先行き暗いエンディングと比べて希望があります。「生まれはよくなくとも、勇気はもてる」。
読了日:10月06日 著者:レティシア コロンバニ
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■巡る女 (中公文庫)
主人公めぐるが就活中に大雨に遭い、判断に迷う姿が第1章。以降の章タイトルは、3つの選択肢のうち彼女が選んだもの。「走った」「待った」「戻った」。どの選択が最善だったかは、きっと自分が3人いないとわからない。第2章に水商売の女性を指して「自分もお気楽な仕事をしたかった」という言葉があって不愉快でしたが、第4章ではチーママとなっためぐるが描かれていてなるほど。面白かったけど、この著者なら男性が主人公の物語のほうが好き。ドタバタ度控えめの荻原浩、イライラ度控えめの辻村深月、幸せ度控えめの山本幸久のように思えて。
読了日:10月08日 著者:山本 甲士
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■82年生まれ、キム・ジヨン (単行本)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】読後1年以上経っているから、原作の細かい部分は忘れてしまっています。とにかくラストの精神科医のひと言が薄気味悪くて強烈だった覚えが。映画版は夫を演じるのがコン・ユという時点で原作とは違った結末が想定されましょう。実際そのとおり。この夫であればジヨンは大丈夫だと思えます。ジヨンの家族も同僚も個性豊かで、クスッと笑える台詞も多く、「原作でどんよりした気持ちになったから映画版はパス」と思っていらっしゃる方には鑑賞をお勧めしたい作品です。原作にはなかった希望が見える。
読了日:10月11日 著者:チョ・ナムジュ
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■星の子 (朝日文庫)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】大森立嗣監督のことだから、わかりやすいドラマになるはずもなく、原作そのままの印象です。あとがきで説明されていた「あれ私の親なんです」とちひろが言ったときの南先生の顔に注目していたら、これまた岡田将生の表情がそのまんま。原作の「好きな人が好きなことをわかりたいだけ」と集会で話した茶髪青年のシーンがなかったのはちょっぴり残念。ちひろと姉が夜更けに会話するシーンがいくつかあり、また、姉のその後がわかる台詞もあって、姉置いてけぼりだった原作よりも焦点が当たっています。
読了日:10月11日 著者:今村夏子
https://bookmeter.com/books/14631648
■望み (角川文庫)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】『82年生まれ、キム・ジヨン』にコン・ユが出演すると決まった時点で良い夫が想定されたように、本作の夫婦を堤真一と石田ゆり子が演じるとなれば、息子は加害者ではなく被害者であることが確定でしょう。だから、どっちなのだろうと考えさせられることはありません。父親の言葉が息子に響いていたとわかるシーンがとてもよかった。シリアスな人間ドラマだけどエンタメらしく、非常にわかりやすい「感動」です。記者役の松田翔太や最後の最後に登場する三浦貴大も、出番少なくも印象に残る出演でした。
読了日:10月11日 著者:雫井 脩介
https://bookmeter.com/books/13609877
■ラーメン らーめん ラーメンだあ! (小学館文庫)
ラーメン。好きか嫌いか聞かれたら好きだけど、全然執着なし。年に数回食べる程度。「お決まりの増量コール」なるものも何のことだかさっぱりわからずに読みはじめる。何が驚いたって、ラヲタがラーメンを評するときの語彙力。「丼の表情」!? 「毅然とした底光りを放つ美味しさ」!? 凄すぎる。私にもラヲタの友人がいます。月40杯食すと聞いてびっくりしていたけれど、そうですか、年間千杯食べる人も少なくないのですね。きっと皆さんの血はラーメンでできている。冴えないサラリーマンだったとしても、ひとつの道を極めれば人生が変わる。
読了日:10月13日 著者:一柳 雅彦
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■OFF 猟奇犯罪分析官・中島保 (角川ホラー文庫)
ひなちゃんロスからやっと抜け出てケッペーに愛情を傾けてきたのに、今になって野比先生のスピンオフだなんて、小粋というのか小憎らしいというのか(笑)、内藤さん。シリーズを読破した人なら誰もが知ることですが、野比先生やっぱりいい人。根っからの善人であるがゆえに、殺人者となるまでの葛藤が伝わってきます。比奈子と出会い、思いがけず夜を共にする段を本編で読んだときは「なんか、ガラじゃねぇよ」と思っていたけれど、本作では自然に感じました。しかし今頃こんなスピンオフを出すことをいつからお考えになっていたのか。策士だわ~。
読了日:10月15日 著者:内藤 了
https://bookmeter.com/books/16598150
■おらおらでひとりいぐも (河出文庫)
芥川賞受賞作を読むたびに自分がいかに凡人であるかを思い知らされます(笑)。沖田修一監督の映画の予告編を観て、難解じゃないかも♪と手を出しました。独居女性・桃子さんの脳内に他者が現れる。亡夫と出会った頃の話は楽しく読めたのですが、それ以外は何が起きているのか私にはイメージできず、町田康の解説を読んでなるほどと思う。あ、町田さんも芥川賞作家か。私の場合は映画版を観てからのほうが楽しめたでしょう。しかし著者が55歳を過ぎてから物書きを学んで作家になったというのが凄い。何をするにも遅すぎることなんてないんだなぁ。
読了日:10月20日 著者:若竹千佐子
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■家守 (角川文庫)
10年以上前に同著者の『葉桜の季節に君を想うということ』を読んだとき、これが叙述トリックというものかと感嘆し、あまりに見事に騙された自分がおかしくて笑ってしまいました。その印象が強いけれど、これは叙述トリックではありません。短編5つ。どれも自分あるいは誰かの居場所を歪な形で守っている人たちの話。表題作よりもむしろ惹かれたのは『鄙』。良くも悪くも結束した僻地の村の様子は、実際にあるかもしれないと思わされます。この『鄙』で謎を解き明かす恭一は、弟を語り手にして官能小説作家探偵としてシリーズをつくれそうですね。
読了日:10月25日 著者:歌野 晶午
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■あきない世傳 金と銀(九) 淵泉篇 (ハルキ文庫 た)
毎度のことながら「え~、マジで!?」というところで終わった前巻。美人で善人で経営者としての才覚まである姉を持ったら、卑屈になる気持ちもわからんではないけれど、人としていちばんあかんことを妹はやりよった。その後がまた憎たらしい。幸は「絶対許しまへん」と言うてますけど、ほんまに今後もずっと和解せずに結を叩きのめしてやってくれと思うのは性格悪いでしょうか(笑)。仲間外れとは子どもじみた行為を指す言葉だと思っていましたが、元はこういう仲間から来ているのですかね。転んでもただでは起きひんのが幸やでぇ。今に見ておれ。
読了日:10月27日 著者:高田郁
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■災厄 (角川文庫)
著作にこんなパンデミックものがある作家にとって、このコロナ禍はあり得ることだったのでしょうか。現実と比較して読みたくなる。小説の中で起きていることを思えば、現実のほうが落ち着いているか。災禍に人を罵倒するだけのお偉方に辟易。主人公も嫌な奴だったけど、かつて裏切った相手と和解してからは応援したくなりました。昼行灯かと思われた官房長官が最後は頼もしい。自然は悪意なきテロリストだという言葉が頭に焼き付いています。「悪気はなかった」という言い訳が厄介なように、悪意のないテロというのはどうしようもない。災厄は続く。
読了日:10月30日 著者:周木 律
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