『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(原題:Manchester by the Sea)
監督:ケネス・ロナーガン
出演:ケイシー・アフレック,ミシェル・ウィリアムズ,カイル・チャンドラー,
グレッチェン・モル,ルーカス・ヘッジズ,ベン・オブライエン他
なんばパークスシネマで3本ハシゴの3本目。
『スプリット』→『夜に生きる』と来て、〆に本作を。
この順で観て良かったと満足感いっぱいのハシゴでした。
前述の『夜に生きる』の監督・脚本・主演はベン・アフレック。
その弟のケイシー・アフレックが主演。
兄ちゃんよりもカワイイ顔でモテそうなのに、活躍ぶりははるか下。
というイメージがありましたが、これはイイ。
第89回アカデミー賞では主演男優賞を受賞。大納得です。
アメリカ、ボストンの郊外。
アパートの便利屋リーは、その腕は認められているものの、
愛想がなさすぎて居住者としばしばトラブルを起こす。
そんなある日、兄ジョーが危篤との報せを受け、
故郷の港町マンチェスター・バイ・ザ・シーへとリーは車を走らせる。
すでにジョーは息を引き取ったあと。
ジョーの友人ジョージらの助けを借り、葬儀の段取りをすることに。
問題はジョーの一人息子で16歳のパトリック。
ジョーの遺言を聞きに弁護士を訪ねると、
パトリックの後見人としてジョーはリーを指名していると言う。
ジョーから事前に相談はなかったから、突然の話に戸惑うリー。
とりあえず葬儀を終えるまで町にとどまり、今後のことを考えるのだが……。
もともとは、ケネス・ロナーガン監督とマット・デイモンが共同で企画に乗りだし、
マット・デイモンが主演するという案があったようです。
しかし結局マットはプロデュースに回り、主演はケイシーに。
マットのほうが客を呼べる俳優かもしれませんが、いかにもすぎる。
これはケイシー主演にしたことが大正解。
冒頭は幼き日のパトリックと父親のジョー、
それにパトリックの叔父に当たるリーが船ではしゃぐ姿。
そのリーに暗い表情などかけらもなく、
いったいいつからリーはこんな無愛想な奴になったのか、
どんな事情があるのだろうと観客は考えます。
これをもしマットが演じていたならば、観客はもっと感情移入しやすいはず。
ケイシーは徹底して無表情で、その時点では感情移入できません。
それゆえ、過去のできごとがあきらかになり、
ケイシーの心の内が察せられるようになるとジワ~ン。
人生には、乗り越えようと思っても決して乗り越えられないこともある。
時がいくらかは癒やしてくれたとしても、忘れるなんて絶対にできないこと。
これもまた、「気持ちの整理をつける」までの過程。
「救われた」という台詞に涙が溢れました。
『追憶』の面々に言いたい。あからさまに嗚咽なんてしなくたって、
役者は哀しみも切なさも表現できるのですよと。
今月はまだ残っているけれど、たぶん今月観た映画の中でピカイチ。
すごく良かった&好きでした。
ところで余談。このタイトルの“マンチェスター・バイ・ザ・シー”って、
これごとごと町の名前だということ、ご存じでした?
私は「海のそばのマンチェスター」っちゅうタイトルなのだと思っていました。
無知な自分が恥ずかしい。すみません。(–;
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