『夜は短し歩けよ乙女』
監督:湯浅政明
声の出演:星野源,花澤香菜,神谷浩史,秋山竜次,中井和哉,甲斐田裕子,
吉野裕行,新妻聖子,諏訪部順一,悠木碧,山路和弘,麦人他
もう何年も前のこと。
友だちと待ち合わせていた日、私が読んでいたのがこの原作でした。
本を1冊持っていれば、どれだけ待たされようが平気です。
その日、友だちは仕事の都合で待ち合わせに大幅に遅れ、
うわぁエライ待たせてしもたと焦って待ち合わせ場所へ。
私が怒っていても不思議はないと思っていたようなのですが、
ちょうど友だちが現れたとき、はかったように私はこれを読み終わったところ。
そのときの私は信じられないくらい幸せそうな顔をしていたそうです。
いま思い返しても、これを読み終わったときの幸せな気持ちと言ったら。
以来、私は森見登美彦の大ファンです。
だからと言って、新刊が発売されたらすぐに読んでいるわけではありません。
とりあえず購入はするのですが、読むのがもったいないんです。
読んじゃったら、また次の森見さんが出るまで読めないと思うと、
買ったままなかなか着手することができません。
森見さんの著作の中でも特に好きなのがこれと、
『四畳半神話体系』と『有頂天家族』と『恋文の技術』です。
しかし文体が独特で、絶対さくさくとは読めません。
だから、森見さんが嫌いだ苦手だという人がいるのも納得。
数ページ読んで駅のゴミ箱に放り込んだという人のレビューには悲しくなりましたけれども。(^^;
そんなわけで、本作がアニメ映画化されると知ったときからウキウキわくわく。
待ちに待ったこの日、梅田ブルク7で前述の『ハードコア』を観たあと、
TOHOシネマズ梅田別館アネックスへ移動しました。
あまりの嬉しさに最前列のド真ん中の席を確保して。
京都の大学にかよう、イケているとはいえない青年“先輩”。
サークルの後輩である“黒髪の乙女”にひそやかなる想いを寄せている先輩は、
かねてから「ナカメ作戦」を実践している。
ナカメ作戦とは「なるべく かのじょの めにとまる」作戦。
偶然を装って彼女の目に止まり、最初は彼女に奇遇だと思わせて、
奇遇の連続から運命を感じ取ってもらおうとしているのだ。
そんな先輩と乙女は、ある日共通の知人の結婚披露パーティーに出席。
ひたすら外堀を埋めるだけの先輩に、学園祭事務局長はなんとかしろとせっつく。
パーティー終了後、周囲が新郎新婦との二次会に向かうなか、
実は酒豪でありながらパーティーではみんなの手前、
酒を控えるよりなかった乙女は、さぁ今から飲むぞとひとり木屋町へ。
必死で乙女の姿を追う先輩だったが……。
いやもう、なんとも説明のしづらい話です。
原作もそうですが、リアリティーまったくなし。
三階建ての乗用車で移動する富豪の“李白さん”とか、“古本市の神様”とか、
リアリティーはまったくないんだけれど、楽しくて仕方がない。
京都の情景だけはそれっぽくて懐かしくて、
そこで繰り広げられるファンタジーの世界に浸れます。
ただ、原作を読んだときの幸福感はありません。
また、もしも原作を知らずにこれを観た人がいたとすれば、
いったいどんな本なのかは想像しづらいでしょう。
ミュージカルのテイストも私は要らないなぁ。
『四畳半神話体系』や『有頂天家族』のTVアニメ版のほうが好きですね。
エンドロールに協力者として京都中にあるパン屋の志津屋だとか、
老舗の素敵な喫茶ソワレだとかが出てくるのも嬉しい。
万人には決しておすすめできませんが、森見ファンならばどうぞ。
なんぼほど飲むねん。「そこにお酒があるかぎり!」
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