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『四畳半神話大系』と闇鍋と。

ファンの方には何をいまさらと言われそうですが、
いまいちばんお気に入りの作家は森見登美彦氏です。

『太陽の塔』で惹きつけられ、摩訶不思議な『きつねのはなし』にハマり、
『夜は短し歩けよ乙女』を読み終えたときは満面の笑みに。
「幸せだぁ!」と叫びたくなるほどでした。

その後、文庫化されている作品は買い揃えたものの、
気に入った作家の著作を一気読みすると、必ずとてつもない寂しさに襲われます。
あの寂しさを思うとなかなか手をつけられずにいましたが、
視界にちらちらし続けていることにも耐えられなくなり、
ついに『四畳半神話大系』を読むことに。
これがまた……やられました。

京都の大学にかよう男子学生の一人称による小説で、4話構成。
前知識がないまま第1話を読み終えたときは、「ふーん」てな感じ。
ところが、第2話に入って、何でしょう、この既視感(デジャヴ)。
しかも、会話中に「デジャヴですよデジャヴ」なんて台詞まであるし。
構成の妙に気づいたとき、ニンマリしてしまいました。

もしかして未読で、読んでみようかなと思った方には、
何も知らずに読んでいただきたい気もするのですが、とりあえずはご紹介。

第1話から第4話まで、すべて同じ一文で始まり、同じ一文で終わります。
主人公が入学時に選んだサークルによって、大学生活がどう変わったか。
3回生になった彼がそれを語っています。

第1話は、映画サークル「みそぎ」に入った場合。
第2話は、「弟子求ム」の奇想天外なビラに引かれ、ある男に弟子入りした場合。
第3話は、ソフトボールサークル「ほんわか」に入った場合。
第4話は、秘密組織「福猫飯店」に入った場合。

どれも登場人物やアイテム、情景がかぶっています。
猫から出汁を取っているという噂の猫ラーメン。幻の高級亀の子たわし。
ふにふにしたスポンジ製のクマ。ダッチワイフの香織さん。
魚肉ハンバーグに、ちりめん山椒に、出町ふたばの豆餅、カステラ。
貴重な書類は階上の水漏れによって猥褻非猥褻のへだてなくふやけ、
主人公の後輩である明石さんの絶叫は、どの話でも「ぎょええええ」。
もう可笑しいなんのって。

森見さんの文体が駄目な人はとことん駄目なようで、
駅のホームでゴミ箱に放り込んだなんてレビューも見かけました。(^^;

出だしの一段落は、
「大学三回生までの二年間、実益のあることなど何一つしていないことを断言しておこう。
異性との健全な交際、学問への精進、肉体の鍛錬など、社会的有為の人材となるための
布石の数々をことごとくはずし、異性からの孤立、学問の放棄、肉体の衰弱化などの
打たんでも良い布石を狙い澄まして打ちまくってきたのは、なにゆえであるか」。
これであかんと思った人は無理かも~。

ところで、抱腹絶倒の闇鍋シーンも登場することから、
10年ほど前の台風が来そうだったけどそれた日に、
闇鍋ならぬ闇バーベキューをしたことを思い出しました。
真っ暗な河原でつつく鉄板は、何が何だかまったく見えないので、
ニンジンだかサツマイモだかわかりゃしません。
なんだかわからないままで口に放り込む瞬間はかなり恐ろしい。
「見えないものを喰うというのは、思いのほか不気味なことである」。まったく同感。
「何だかコレうにょうにょしてるわよッ」。可笑しすぎ。

映画サークルに入る設定があったものだから、
映画ネタなしのこんな日記も入れちゃいました。すんません。
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