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映画版には怖くて手を出せないけど、『のぞきめ』の原作を読みました。

先頃公開された『のぞきめ』。キャッチコピーは「覗かれると死ぬ」。
もともとホラーは大の苦手なのに、
そんなおどろおどろしい映画を観るのは絶対無理。
それ以前に板野友美主演ということで、
アイドル起用の『貞子』のようなでパターンだと思ってノーチェックでした。

さて、なんばと天王寺で映画のハシゴをした日、
未体験ゾーンだったアポロビルに足を踏み入れて驚喜。
ちゃんとした書店が入っているではないですか。

あべのアポロシネマの階下のフロア丸ごとに入るのは喜久屋書店。
本は紙で読みたい私は、本屋がなくなると本当に困るので、
せめて見かけた本屋では多少なりとも貢献したい。
ゆえに、家に帰れば「積ん読」が200冊を超えているにもかかわらず、
出先で書店を見かけるとついつい立ち寄って数冊購入してしまいます。
鶴橋駅前の高坂書店なんてのも然り。

で、映画を観たあとに喜久屋書店でぶらぶら。
そのときに『のぞきめ』を見かけ、原作者が三津田信三だと知りました。
三津田信三は以前読んだ『厭魅の如き憑くもの』がとても面白く、
登場人物を同じくする“刀城言耶”シリーズが積ん読の山の中に。
彼の著作ならば面白くないわけがないと購入。

出だしはとても怖くて挑戦的。
『残穢』同様、しかし『残穢』以上に著者本人の体験談のような書き出しで、
序章では「もしも“あれ”を感じたら本を閉じることを勧める」。
何よ、その煽りは。怖すぎるっちゅうのよ。勇気を振り絞ってその先へ。

物語は序章と終章、その間に挟まれた第一部と第二部から成ります。

第一部は昭和の終わり、著者が友人から聞いた体験談『覗き屋敷の怪』。
友人は学生時代にリゾート地とは名ばかりの寂れた貸別荘地でバイト。
彼を含めて男女2名ずつが管理人から担当棟を決められています。
あるとき、山道脇の棟を担当する女子大生が巡礼の母娘に誘われてから様子が変に。
管理人には内緒でバイト全員で山道を歩いてみたところ、怪異に見舞われます。

第二部はさかのぼって昭和の初め、第一部と同じ村での出来事を記した『終い屋敷の凶』。
当時は大学生、のちに民俗研究家となった人物がしたためた手記の形をとっています。

序章で著者が知人から怪異ネタを買わないかと持ちかけられて断ったところ、
後日その知人からネタを記したノートが送られてきます。それが第二部の手記。
知人が民俗研究家から盗んだノートだと著者は知っていたため、民俗研究家に返還。
すると民俗研究家から「自分の死後はこの手記を本にして良い」との許可を示す手紙が。
手記を開いて、以前友人から聞いた話、つまり第一部を著者が思い出すという構成。

よくできています。
ホラーとミステリーの融合だと著者が自負しているとおり、単なる怪異譚ではありません。
第二部の終盤では謎がするすると解明されてゆき、
そら無茶やろ!というツッコミも多少入れたくはなりますが、
怨みや呪いによる怪異現象のみというオチで済ませられるよりは、
あり得ない話であっても一応理論づけられていて安心。

まるで昭和の忌まわしい村の雰囲気が目に浮かぶよう。
桜庭一樹の『赤朽葉家の伝説』や京極夏彦の著作が好きな人ならば、これも気に入るはず。
しかも京極夏彦よりは文体が読みやすい。いや、あの読みにくさも好きですよ。

ところでこれはどのように映画化されたのでしょうか。
第二部には女性アイドルを起用した役柄など想像できず、第一部だけを映画化したのか。
ならば単に脅かすだけのホラーになっていると思われます。ムリっ!
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