映画を観て泣いたり笑ったりは毎週のこと。
本を読んで涙ぐむのもよくあることですが、
ひとりで「可笑しいよぉ」とつぶやきながら、
ひくひくするほど笑ってしまう本にはそうそうめぐり逢えません。
それが最近、3冊もそんな本に当たりました。
もしも電車の中で読んでいたら、明らかに怪しい人になっていたでしょう。
1冊はお気に入りの作家、荻原浩の『なかよし小鳩組』。
倒産寸前の零細広告代理店に、嘘のような大仕事の話が舞い込みます。
社長が小躍りしている姿は、たいてい不吉な前ぶれ。
「ヤクザだったりして~♪」と相手のオフィスへ行ってみれば、
これがほんとにヤクザで……というお話。
主人公のバツイチでアル中のコピーライターが、
実に情けなく、だらしなく、だけど熱くて、
ヤクザとのやりとりはもうたまらん。
彼の娘である小学生がまた男前で。
ラストはきちっと、じんわり。憎いです。
前作の『オロロ畑でつかまえて』を読んでからなら、よりいっそう楽し。
あとの2冊は京極夏彦の“百鬼夜行”シリーズ中、『百器徒然袋』なる妖怪探偵小説。
百鬼夜行シリーズでは脇役だった探偵、榎木津を中心とした中編集です。
“百鬼夜行”シリーズといえば、そのうちの2作が映画化されています。
前者と後者では、小説家役が永瀬正敏から椎名桔平へと変わっていますが、
それ以外のキャストは同じです。
で、探偵役を演じたのは阿部寛。
原作を知る人からは賛否両論あったかと思いますが、
私にはこの阿部ちゃんがピタッと来ていて、以降、“百鬼夜行”シリーズを読むと、
必ず探偵に阿部ちゃんの姿を当てはめてしまいます。
『百器徒然袋』はどれも可笑しいですが、
涙が出るほど笑ったのは「鳴釜 薔薇十字探偵の憂鬱」。
披露宴会場で繰り広げられるドタバタに、
阿部ちゃんを想像してさらに笑ってしまいました。
これ、誰か映画化してくれないかなぁ。
“百鬼夜行”シリーズを読んでからでないと、
この探偵の可笑しさはわからないかもしれません。
けれど、このぶっ飛んだ探偵ぶりは、誰かと分かち合いたいおもしろさ。
「おもしろいっ!」とひとこと言うだけで
読者の腹の皮をよじらせる探偵なんて、ちょっといないかと。
このシリーズは昭和20年代が舞台。
東京の町並みや人びとの服装などの描写も興味深いです。
昭和38年生まれの京極さん、なんでそんなに詳しいの。
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