『0.5ミリ』
監督:安藤桃子
出演:安藤サクラ,柄本明,坂田利夫,草笛光子,津川雅彦,織本順吉,木内みどり,
土屋希望,井上竜夫,東出昌大,ベンガル,角替和枝,浅田美代子他
3月に宴会をしたさい、下戸の1名を除いては皆エライことになったメンバーで、
11月最後の土曜日にちょっと早めの忘年会。
別のアラ還の、いや、よく考えたらアラ古稀の友人から推薦してもらったお店は
阪急豊中駅から徒歩5分ほどの“海雲丸”。
このお店は魚料理メインの居酒屋で、出てくるのに時間はかかるけど、美味しい!
しかも化学調味料は使っていないと思われます。
飲みに行った後に服からにおう、思わずファブリーズしたくなる居酒屋臭、
あれは化学調味料のせいだと私は思っているのですが、
それがほとんどと言っていいほどしませんでしたから。
「絶対に“小”にしておくべき」と友人から言われていたシーフードサラダ。
そう言われると普通サイズを注文してみたくなるというものですが、
オーダーを取りにきてくれたおばちゃんが「小で十分やと思う」と。
素直に従い、出てきた“小”を見てビックリ。でかっ!
これ、普通サイズ(ちなみに“普通”でも900円)だといったいどないな大きさで?
3月がエラかったからというわけでもありませんが、ちょっとお酒控えめで。
それでもとっても楽しく過ごし、翌朝はテアトル梅田へ本作を観に。
介護ヘルパーの山岸サワ(安藤サクラ)は、派遣先の片岡家で雪子(木内みどり)から唖然とする依頼をされる。
それは雪子の父親・昭三(織本順吉)と寝てやってほしいというもの。
すなわち「ヤレ」ということかと思いきや、
「どうせ勃ちゃしないから、添い寝してくれるだけでいいの」と雪子。
派遣会社には絶対に内緒にするという条件で、サワは話を呑む。
当日、雪子が用意した布団に昭三と入るサワ。
ところがひとりでは身動きを取れないはずの昭三に顔を舐め回されて逃げ出したところ、
倒れた昭三の着物にストーブの火が燃え移ってしまう。
なんとか消そうとするも無理、助けを求めて階下へ走り降りると、
そこには首を吊っている雪子と、傍らに立ち尽くす中学生・マコト(土屋希望)の姿が。
昭三は死亡、片岡家は火事、サワはもちろん派遣会社をクビに。
寮も追い出されたものだから、金もなければ住むところもなし。
わずかな荷物を抱えて電車に乗ればウトウト、慌てて降りたらコートを車内に置き忘れ。
寒空の下を薄着で歩くはめになる。
そんなサワの目に留まったのが、カラオケ店に入る老人・康夫(井上竜夫)。
店に入ったもののカラオケ店がどういうところかわからない康夫に、
受付の店員(東出昌大)が困ってイライラ。
サワは康夫の手を引っ張って入室すると、一緒に歌って飲んで食べ。
オールナイトで明けた朝、康夫とサワは明るく別れる。
以後、住まいと食べものを得るため、サワは老人を「物色」。
康夫の次にサワが目をつけたのは、駐輪場で自転車を次々とパンクさせる茂(坂田利夫)。
警察に通報されたくなければ自分を同居させろと茂を脅し……。
茂の次は本屋でエロ本を万引きしようとしていた義男(津川雅彦)。
教鞭を執り、地元で名士と崇められている義男の慌てぶりの面白いこと。
義男の家を出たのちにマコトと再会、マコトの父親・健(柄本明)と同居します。
相対的に客は年齢が高そうだし、トイレに行く人が多いのではと思っていましたが、
196分、休憩なしの3時間超ぶっ通しにもかかわらず、席を立つ人がほとんどいません。
これはそれに耐えうる膀胱の人が多かったのか、
作品自体がおもしろくて集中度が高かったからなのか。
くすっと笑ってしまうシーンもあれば、切なさに泣いてしまったシーンも。
康夫も茂も義男も、最初はサワのことを鬱陶しく思っていたのに、
サワと過ごすうちに癒やされ、心を開いてゆきます。
最初に泣いたのは、康夫が別れぎわにサワにコートを掛けてやるシーンでした。
あきらかに詐欺に引っかかりかけているとおぼしき茂は、サワに諭されると、
「誰もボクの話なんて聞いてくれへんのに、あの人(詐欺師)だけは話をちゃんと聞いてくれてん」。
お年寄りが詐欺に引っかかる話を聞くたびに「なんで?」と思っていましたが、
「騙されててもかまへんねん」という心情に苦しくなりました。
マコトがいっさい口をきかなかった理由がわかるシーンは衝撃的。
そして、それまでのサワのひと言ひと言にも意味があったとわかります。
それにしても凄い一家ですねぇ、奥田瑛二一家と柄本明一家。
監督が長女、主演が次女、義男の家のお手伝いさん役で角替和枝も出演していて、
安藤サクラと舅姑との共演が見られます。
イマドキの若くて誰が見ても美人な女優だったらこうは行かない。
安藤サクラだからこそ。彼女の演技に打ちのめされました。圧巻。
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