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『いつか家族に』
『いつか家族に』(英題:Chronicle of a Blood Merchant)
監督:ハ・ジョンウ
出演:ハ・ジョンウ,ハ・ジウォン,ナム・ダルム,チョ・ジヌン,ユン・ウネ他
シネマート心斎橋でハシゴのラスト。
『ときめき☆プリンセス婚活記』→『死体が消えた夜』→本作。
この日のハシゴのこれが本命でした。
原作は中国の作家、余華のベストセラー『血を売る男』だそうで、
その舞台を韓国に移しての映画化。
何しろ監督と主演がハ・ジョンウですから、期待が高まるというもの。
朝鮮戦争休戦直後の1953年。
青年サムグァンは、ポップコーンを売る村一番の美女オンナンに一目惚れ。
しかしサムグァンは女に免疫がないうえに、
オンナンには金持ちの恋人がいる。あのキザ野郎になんとか勝てないものか。
自分の持っているものをすべてオンナンに与えよという知人のアドバイスに、
サムグァンは自分の血を売って金を稼ぐ。
その金で彼女をデートに誘って食事やら服やらを贈りまくる。
喜ぶオンナンにひと言、「いつ結婚してくれるのか」。
今の恋人と別れたくないオンナンだったが、
彼女の父親を味方につけることに成功したサムグァンは結婚にこぎつける。
11年が経ち、3人の息子を授かったサムグァンとオンナン。
所帯を持ってもあいかわらず美しいオンナンと
三者三様、でも皆かわいい息子たちに恵まれ、毎日幸せなサムグァン。
ところがあるとき、妙な噂が村に広まっていることを知る。
長男イルラクはサムグァンよりもオンナンの元カレにそっくりだ、
あれはサムグァンの子ではないにちがいないと。
噂を放っておけなくなったサムグァンがムキになって調べてみると、
イルラクはサムグァンとオンナンから生まれるはずのない血液型で……。
期待が大きかったせいで、結果的にはガッカリ度合いが高かった。
終盤は周囲からすすり泣きの声が聞こえていましたが、私は泣けず。
序盤はコミカルなシーンも見受けられ、普通はそれが楽しいと思えるところ、
本作では時おり不愉快に感じてしまう。
いくら他人の子だったからと言って、子どもに罪はない。
アボジアボジと慕うイルラクを徹底的に次男三男と差別する。
説明を求められた妻が合意のもとではなく押し倒されたのだと言っても
妻を罵るだけで仕事もしようとしない。アンマリな男です。
アンマリな男だったゆえに、病に罹ったイルラクのために奔走する姿は確かに涙を誘う。
こんなふうに血を売らなければ、子どもを医者に診せることすらできなかった。
子どもを救うためには親が臓器を売ってでもなんとかしなければならなかった。
そんな時代があった、そんな人たちがいた、
そしてもしかしたら今もそんな国があるのかもと思うと苦しいですが、
ちょっとお涙頂戴に走った感があって残念です。
でもハ・ジョンウがまたメガホンを取るなら観てみたい。
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『死体が消えた夜』
『死体が消えた夜』(英題:The Vanished)
監督:イ・チャンヒ
出演:キム・サンギョン,キム・ガンウ,キム・ヒエ,ハン・チアン,イ・ジフン他
シネマート心斎橋にて予定外の『ときめき☆プリンセス婚活記』を観た後、本作を。
これはもともと観たかった作品です。
ホラーまがいのオープニングにはちょっとビビりました。
深夜の国立科学捜査研究院の遺体安置所で停電が起こる。
のんきにくつろいでいた警備員が仕方なしに調べに行くと、
誰もいないはずの廊下を横切る人の影。
さらにはまるで生きているかのように遺体が座り込んでいるのを発見。
驚いた警備員は誰かに殴られて失神する。
通報を受けたベテラン刑事ジュンシクと彼の部下が現場へ向かうと、
安置所からある女性の遺体ひとつが消えていた。
消えたのは財閥系の大手製薬会社の会長を務める女性。
彼女の年下の夫で大学教授のジンハンに遺体消失の旨を伝える。
警察から連絡を受けたジンハンは逆に大慌て。
自分が殺した妻の遺体が消えるなんて。
妻から所有物のように扱われて不満を感じていたジンハンは、女子大生と不倫。
その女子大生が妊娠したことから、妻を殺害したのだ。
証拠が残らない新薬を使い、完璧な殺害計画だったはず。
なのに遺体が消えてしまうなんて。誰が何の目的で盗んだのか。
ジンハンに疑いの目を向けるジュンシクは、
署長からのジンハンを解放するようにとの命令に背き、執拗に尋問する。
やがてジンハンが部屋にひとりになるたびに妙なことが起きる。
妻は生きているにちがいない。
死んだふりをして遺体安置所に入り、抜け出して夫に復讐しようとしている。
妻ならそれぐらいのことをやりかねないとジンハンは怯え出すのだが……。
知らない俳優ばっかりだし、なんか地味っぽいと思っていたのに、
このサスペンスミステリー、めちゃくちゃ面白い。
最後のどんでん返しはあっぱれで、見事に騙されました。
そうか、そういうことだったのかと感心。
何を書いてもネタバレになるため、書けません。
ただ、悪いことってできないんだなぁ。
過去に後ろ暗いことがあるならば、生きている間に罪滅ぼしを。
じゃないと酷い目に遭う。
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『ときめき☆プリンセス婚活記』
『ときめき☆プリンセス婚活記』(英題:The Princess and the Matchmaker)
監督:ホン・チャンピョ
出演:シム・ウンギョン,イ・スンギ,キム・サンギョン,ヨン・ウジン,
カン・ミンヒョク,チェ・ウシク,チョ・ボクレ,ミンホ他
毎年暮れの休みに突入すると、シネマート心斎橋でハシゴするのが恒例となっています。
テアトルグループに吸収される前は韓国作品を多く上映していた劇場ですが、
今もそれはちゃんと引き継がれていて、韓国作品を観るならここ。
そしてハシゴした作品全部アタリのことも多いから、良い気持ちで帰れるんです。
TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスポートの使用期間中で疲労が溜まっていたため、
この日のハシゴは2本に留めておくつもりで、朝9時頃、車で家を出発。
28日だったから、まだ正月休みでない会社も多いはず。
新御堂筋が混んでいるだろうし、心斎橋まで1時間以上かかるかも。
その推測が外れ、意外に空いていて40分ぐらいで到着。
南堀江の“CAFE CONTEMPO”でモーニングをテイクアウトしてから劇場へ。
う~ん、まだ10時。予定していた2本ハシゴの前にもう1本観られそう。
しかしこのタイトルの韓流でしょ、私は観ないよ普通。
でも上映開始に間に合うのに、観ないのももったいなくない?
ということで、まったく期待せずに鑑賞。そうしたら大当たりで。
主演はシム・ウンギョン。
『サニー 永遠の仲間たち』(2011)、『怪しい彼女』(2014)とコメディ作品の彼女は絶品。
コメディじゃなくてもイケるんでしょうが、そっちはあまり印象に残っていません。
舞台は李氏朝鮮、英祖29年に当たる1753年。
深刻な干ばつのせいで、民衆は餓え、今にも暴動が起きそうな気配。
憂える王は、この危機から脱するためにどうすべきか悩み抜き、
王女ソンファがめでたく結婚すれば、神が恵みの雨を与えるだろうという結論に達する。
ソンファは実は呪われし王女として民衆の間で笑われている。
幼い頃から彼女に関わる者はなぜか不幸に見舞われるため、
そんな彼女の婿になる奴は貧乏くじを引いたも同然というわけだ。
しかし王はソンファと最高の相性を持つ男を婿に迎え入れようと、
婿にふさわしい男を貧富問わずに募集をかける。
王子になれるとあれば多少の不幸に見舞われても致し方ない。
多くの男たちが我こそは王子にふさわしいと押しかける。
応募した男たちと王女の相性を見ることになったのは、
朝鮮最高の監察官(=占い師)ソ・ドユン。
候補が4人に絞り込まれたようだと侍女から知らされたソンファは、
自分の婿になるかも知れない男たちを一目見ておきたいと、
侍女の協力を得てこっそり宮中を抜け出し、一人で町をうろつくのだが……。
ソンファ役にシム・ウンギョン。ソ・ドユン役にイ・スンギ。
このふたりを見ているのが非常に楽しい。
だいたい、干ばつをなんとかするために結婚だなんて、
いったいいつの話やねんと思うのですが、いやいや、そんな時代のこと。
なんでも神の思し召しだったのでしょうか。
すべてを委ねられる占い師だから、悪だくみをする人もいて当然。
ドユンはあり得ないぐらい誠実で、占い師としても超優秀。
対する悪い占い師には強力なバックがいて、ドユンはそれに巻き込まれます。
そもそも占いを信じない私も最初はアホくさと思っていたのに、
途中からはその占いで悪い奴らをギャフンと言わせてやれと祈ってしまいました。
王道のハッピーエンドにとても幸せな気持ち。
どっしりと重くて悲惨な韓国作品も好きだけど、
こういう素直な恋愛コメディもいいなぁ。
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『私は、マリア・カラス』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の17本目@なんば)
『私は、マリア・カラス』(原題:Maria by Callas)
監督:トム・ヴォルフ
フランスのドキュメンタリー作品。TOHOシネマズなんば別館にて。
マリア・カラス。
世紀の歌姫と謳われる、ギリシャ系アメリカ人のソプラノ歌手。
1923年にニューヨークに生まれ、53歳で亡くなった彼女について、
これが長編デビューとなるトム・ヴォルフ監督が
世界中から集めた未公開資料や映像をまとめた作品です。
客は高年齢層ばかり。そりゃそうです、知らないもの。
私も名前を知っているぐらいで、顔も本作で初めて知ったぐらいです。美人だなぁ。
海運王アリストテレス・オナシスとダブル不倫していたのも知らなんだ。
カラスとオナシスは9年もつきあっていたそうで、
そりゃオナシスが妻と離婚したら、自分と結婚してくれると思いますよね(笑)。
なのにオナシスはジョン・F・ケネディの未亡人ジャクリーン・ケネディと再婚。
そのときのカラスのうちひしがれた様子も綴られています。
こういったゴシップにまつわる映像も多いですが、カラスの歌も堪能できます。
特に嬉しかったのは、『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディがかける、
プッチーニのオペラ曲『蝶々夫人』のアリア“ある晴れた日に”がしっかり聴けること。
この美貌と素晴らしい歌声。
歌を離れたときもあったけれど、また舞台に立つ日を待ち望んでいたというカラス。
45歳で亡くなったフレディ・マーキュリーもそうだけど、
どうしてみんなこんなに早く亡くなってしまったのか。惜しい。
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