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2019年1月に読んだ本まとめ

2019年1月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:4695ページ
ナイス数:1225ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly

■彼女はもどらない (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
『ぼぎわんが、来る』のイクメンのふりした嫌な野郎とそれにイチャモンをつける高飛車女子の対決で、『スマホを落としただけなのに』みたいな殺人鬼が出没する話(どんな話やねん(笑))だと勝手に思い込んでいました。全然ちゃうがな。えーっ。見事に騙された。しかしどいつもこいつも嫌な奴ばかりで誰も信用できません。好感の持てる人がいない話というのは、面白いとは思っても気が休まらず、酷いやっちゃなぁで終わってしまう。でも相当面白かったです。正月に酒飲みながら適度に酔っぱらって読むにはうってつけ。やっぱり怖いのよ、SNS
読了日:01月01日 著者:降田 天
https://bookmeter.com/books/12015993

■当確師 (中公文庫)
サンドラ・ブロック主演なのに日本では劇場未公開だった『選挙の勝ち方教えます』(2015)なんてそのものズバリの映画がありました。それだとか『女神の見えざる手』(2016)なんかを思い出しながら読む。当選確率99%を誇る選挙コンサルタント。どんな汚い手を使うのかと思ったら、基本的にネガティブキャンペーンは無し。口は悪いけど、やり口は真っ当にも感じられ、最後は正義の味方にすら見えてきます。そんなことを言うと照れ隠しにまた悪態をつきそうな人柄が憎めません。彼と共に働く顔ぶれも面白くて、続編もありかも。痛快です。
読了日:01月02日 著者:真山 仁
https://bookmeter.com/books/13205977

■ふまんがあります (PHPわたしのえほん)
正月におじゃましたお宅にこの本が。酒飲みながら手に取る本ではなかろうと思いつつ読んじゃいました。子どものころ、確かにこんなことを不満に感じていたはず。もともとよく眠る子だったから、早く寝なさいと怒られた覚えはほとんどないけれど。大人はほんとにズルイ。ずるいだけの大人にならないように、この本を読んできっちり子どもを納得させられるような言い訳を考えたい(笑)。絵本を読むと、これ今月の1冊にカウントしていいものかといつも悩むけれど、いいですよね!? だって立派に「本」だもの。「りゆうがあります」も読まなくちゃ。
読了日:01月04日 著者:ヨシタケシンスケ
https://bookmeter.com/books/9859919

■現場者 300の顔をもつ男 (文春文庫)
正直言って、私は漣さんの演技を上手いと思ったことがありません。でもそこが好きだった。どんな役を演じていてもすごく普通で、素の漣さんもこんな人なんじゃないかと思えました。本書中に役柄と自分の境界をなくしたかったというようなことが書かれていて納得。「映るに足る働きをしているだろうか」。とんでもない、それの遥か上でした。個人的にいちばん記憶に残っているのは、『アベック モン マリ』(1999)のトイレに入る前にパンツを脱がないと用を足せない漣さん。そんなのを覚えていてごめんなさい。でも忘れません。大好きでした。
読了日:01月04日 著者:大杉漣
https://bookmeter.com/books/13037479

■夜の国のクーパー (創元推理文庫)
仙台の公務員 in Wonderland。『不思議の国のアリス』を思い浮かべていたら、塀で囲まれた町は『進撃の巨人』、最後は『ガリバー旅行記』に。とても入り込みにくい。もしも伊坂幸太郎の初読みが本作だったら、以降は彼を敬遠していたかもしれません。だけど伊坂慣れしている人なら、なんとなく釣られて進み、猫同士の「舌が出てるよ」のツッコミ合いに笑ったりもしながら、終盤はニッコリしているはず。結果的に私にとって至福の読書時間となりました。いつもこんなふうにやられてしまう。やっぱり好きだなぁ。人には薦めづらいけど。
読了日:01月09日 著者:伊坂 幸太郎
https://bookmeter.com/books/9367577

■ZERO 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 (角川ホラー文庫)
シリーズ第5弾は薄くてシュッと読めそうだと思ったのに。続けて同じ作家は読まないようにしていたのに。え〜っ、to be continuedじゃあないか。第2弾で捕らえた女殺人鬼から逆恨みされる比奈ちゃん。収監中の殺人鬼を崇めるイカレ野郎にすぐに狙われるのかと思いきや、なかなか比奈ちゃんピンチに陥らない。それまでに起きる事件は、個人的には本シリーズ中いちばんグロく感じます。えぐすぎて眉間にシワが寄りましたもん。このままでは終われないので第6弾に行きます。新年早々「続けて読まないマイルール」を破ることに(泣)。
読了日:01月10日 著者:内藤 了
https://bookmeter.com/books/11029540

■ONE 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 (角川ホラー文庫)
まさかの“To be continued”にうちひしがれた翌日、そら読みますよね、続きを。おどろおどろしい部屋で刺されて意識を失った比奈ちゃん、まんなか辺りまで出てこない。行方不明の報に即あおざめたのは死神女史だけ。目覚めた比奈ちゃん、人がよすぎる。その美少年、明らかに変態だってば。オバハンまぬけにあっけなく火だるまで、凄絶すぎて笑ってしまった。先入観ってほんとに怖い。読者のほうはみんな気づいていたわけですが(笑)。刑事さん、疑ってごめんやでぇ。比奈ちゃんのまっすぐなところが好き。とりあえず完結して安眠。
読了日:01月11日 著者:内藤 了
https://bookmeter.com/books/11067592

■この世にたやすい仕事はない (新潮文庫)
本作の雰囲気をざっくりと説明するならば、主人公が発達障害ではない『コンビニ人間』で、段落と読点のある『わたくし率 イン 歯ー、または世界』。前職でメンタルをやられた主人公が短期的に経験する5つの仕事。「職場の人間はシチュエーションに応じて悪人になるから、常に悪い人というのもいない」という一文になるほどそうかも。癒えるまでの繋ぎに過ぎない仕事かと思いきや、なんだかんだでいろいろ考えて取り組むようになっている主人公。こんな仕事、現実にはそうそうないけれど、自分に照らし合わせて勇気づけられる。そんな気がします。
読了日:01月14日 著者:津村 記久子
https://bookmeter.com/books/13261038

■世界でいちばん長い写真 (光文社文庫)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】原作を読んだ後に劇場で映画版を観た場合に限り、ここに書くことにしていますが、これはDVDをレンタルして観ました。というのも、本作の公開時に大阪は地震に見舞われ、私の行動範囲内で唯一の上映館も被災してやむなく休館。上映が延期されるのかと思っていたら飛ばされてしまいました。そんな思い出のためにも覚え書き。背に陽を受けるひまわりはやはり劇場で観たかった。従姉役の武田梨奈が◎。写真屋の店主は吉沢悠でオッサンじゃない(笑)。一番長い写真はエンドロールでしっかりと。よかった。
読了日:01月16日 著者:誉田 哲也
https://bookmeter.com/books/5613806

■鏡の偽乙女 薄紅雪華紋様 (集英社文庫)
仕事で近代の挿絵を見る機会が多く、積読の山の中にあった本作は大正時代の画家が主人公だからまさにピッタリ。久しぶりにこれが私の好きな朱川湊人だと思えました。この世に未練のある霊たちが出没する下宿屋。『妖怪アパート』のように可愛くはない(笑)。霊を払う技を持つ謎の青年画家と親しくなったら、意外に自分にも霊を見る力があると知った主人公。霊たちの想いがわかるとき、とても切ない。表題作については、解決方法を主人公と同じように推理していたから、何もわかっちゃいない自分に気づかされて愕然としました。成仏する姿に泣いた。
読了日:01月17日 著者:朱川 湊人
https://bookmeter.com/books/6999453

■雨の塔 (集英社文庫)
数年前にマイブームだった宮木さん。しかしどうやら私はカラッと明るめの彼女の作品しか知らなかったようです。これは恩田陸『麦の海に沈む果実』を読んだときのような印象。と思ったら、宮木さんが恩田さんを好きだと知って納得。訳ありの少女たちが放り込まれた女子寮。4人はおそらく見た目も性格もまるで異なるのに、なぜか私は見分けるのに苦労しました。章毎に視点が変わっても一人称は用いられず、それでいて主観で話されるからだと思うのですけれども。情景としては美しい。ただ、私はジメッとしていない宮木作品のほうが好みらしい。
読了日:01月20日 著者:宮木 あや子
https://bookmeter.com/books/2344873

■ウツボカズラの甘い息 (幻冬舎文庫)
なぜか女って、「痩せたね」=「綺麗になったね」に聞こえるのです。そうじゃないこともあるけれど、この主人公は痩せればほんとに綺麗な人。美しさを取り戻させてくれた相手を信じて陥る罠。大人しめの新津きよみか暗めの垣谷美雨を思い出すような主婦の話と、新旧男女刑事が捜査する殺人事件の話が交互に。勢い止まらぬ550頁超ですが、犯人の逃亡劇には既視感があり、ちょっと脱力。解説もアイドルが書く時代に。「映画化されてこの役が私ではなかったらどうぞ笑ってやってください」なんて言われたら、彼女以外にキャスティングできひんやん。
読了日:01月22日 著者:柚月 裕子
https://bookmeter.com/books/13150997

■還暦シェアハウス (中公文庫)
あまり時間のないときに読む本がほしくて書店に駆け込み、とりあえず目に付いた書棚でいちばん薄い本を購入。184頁也。どっぷり昭和です。二谷英明を気取り、当時のマドンナは長谷直美似。車でかけるのは当然カセットテープ、ユーミンの『14番目の月』。耳の奥でリフレインするのは渡辺真知子の『迷い道』、ジュークボックスからはアイズレーブラザーズ。「乱パ」という言葉に興奮し、期待してバイアグラを用意する。オッサンの妄想以外のなにものでもありません。上記の人名と曲すべてわかる人でなければツライと思われ。わかる男性ならアリ。
読了日:01月27日 著者:泉 麻人
https://bookmeter.com/books/11559616

■ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫 ラ 19-1)
『ミレニアム』三部作の著者はもうこの世にいないし、あれを誰かが引き継げるとも到底思えず、読まなくてもいいかなと思っていました。とりあえず公開中の映画版を観たら、キャストは地味だけど十分に面白いではないですか。ほならやっぱり原作も読んでおこうという気になり、着手。映画版と原作ではちがうところいろいろ。キーとなるすっごい天才美少年アウグストが原作ではサヴァン症候群という設定にまず驚きました。映画版で活躍したNSAのニーダムの出番がほとんど無し。そのうちかっ飛ばしてくれるのかしらと期待しながら下巻へ。
読了日:01月29日 著者:ダヴィド ラーゲルクランツ
https://bookmeter.com/books/12309837

■ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女 (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫 ラ 19-2)
あらら、予想していたのとはずいぶん違う展開でたまげました。映画版ではざっくりと「カミラの手下」みたいなかたまりだったのが、原作ではひとりずつとても丁寧に描かれています。その分、ややこしくもあり、酒をかっ喰らいながら読んだら把握するのに大変でした。いいかげん、飲みながら本を読むのやめよう私(笑)。リスベットとアウグストの間の見えずとも固い絆に泣きそう。NSAのニーダムは映画版とまるで別人。プレイグとの名コンビが見たかったような気もするけれど、あれは映像ならではのドンパチだったのですねぇ。続編にも期待します。
読了日:01月31日 著者:ダヴィド ラーゲルクランツ
https://bookmeter.com/books/12307093
—–

『ゴールデンスランバー』

『ゴールデンスランバー』(英題:Golden Slumber)
監督:ノ・ドンソク
出演:カン・ドンウォン,キム・ウィソン,キム・ソンギュン,
   キム・デミョン,ハン・ヒョジュ,ユン・ゲサン他

『家へ帰ろう』『LOVEHOTELに於ける情事とPLANの涯て』を鑑賞後、
シネ・リーブル梅田からシネマート心斎橋へ移動。
もちろん伊坂幸太郎原作、韓国のリメイク版を鑑賞しました。

オリジナル版の『ゴールデンスランバー』(2009)は堺雅人主演でした。
リメイク版の主演はカン・ドンウォン
なんとなく似た雰囲気がありますが、徴兵制度のある韓国のこと。
デブとかではないけれど、さほど引き締まった体のイメージはない堺雅人に対し、
カン・ドンウォンは普通の兄ちゃんなのに何そのキレのある動きと思えます(笑)。

お人好しで平凡な宅配ドライバー、キム・ゴヌは、
暴漢に襲われかけた大人気アイドルを助けて国民的英雄に。
誰もがゴヌの顔を知り、宅配先でも写真やサインを求められるほど。

ある日、高校時代のバンド仲間ムヨルから久しぶりに電話が。
ムヨルと会っている最中に、ゴヌの目の前で次期大統領候補の乗車する車が爆発したうえに、
ムヨルはゴヌの配達車に乗って勝手に走行し、配達車もまた爆発する。
次期大統領候補もムヨルも死亡し、呆気にとられるゴヌ。

どうやらムヨルは政府の仕事に就いていた様子。
ゴヌを次期大統領候補の暗殺犯に仕立て、
ゴヌ自身も死亡したと見せかける計画を完遂するためにムヨルが派遣されたが、
ムヨルはゴヌの代わりに死ぬことを選んだわけだ。
去り際のムヨルの言葉、「誰も信じるな。生きろ」を思い返し、ゴヌは走り出す。

ゴヌの自爆を偽装する予定だったのにそうはならなかった。
ゴヌに生き延びられては政府の陰謀がバレてしまう。
特殊部隊を動員してゴヌを追い回すが、ゴヌも必死で逃げつづけ……。

カン・ドンウォンがめちゃくちゃイイ。
馬鹿みたいにお人好しで、配達先ではゴミ袋まで預けられる。
疎遠だった友人から久しぶりに連絡があれば、
ノルマ達成のための勧誘だろうと推測しても喜んで出かけ、相手の言いなりになる。
このくだりだけでも泣けてきます。

どこまで人がいいんだ、損な人生だと呆れられたとき、
損したっていいんだよ、少しぐらい損してみなよという彼にも泣かされました。
マスコミに押しかけられた実家の父親のコメントが泣けるのはオリジナル版と同じ。

助けたアイドルの世話になって整形して……というラストとは異なります。
この持って行き方はオリジナルより好きかも。

やっぱり笑って泣けます、韓国作品。
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『LOVEHOTELに於ける情事とPLANの涯て』

『LOVEHOTELに於ける情事とPLANの涯て』
監督:宅間孝行
出演:三上博史,酒井若菜,波岡一喜,三浦萌,樋口和貞,伊藤高史,阿部力
声の出演:柴田理恵

前述の『家へ帰ろう』とシネ・リーブル梅田にてハシゴ。
舞台挨拶付きの本作をオンライン受付開始と同時に予約していました。
テアトルグループ会員でも割引なし定価1,800円だから、
舞台挨拶なくてもいいから1,300円で見せてよと鑑賞前は思ったけれど、
この舞台挨拶はめちゃくちゃ楽しかった。1,800円に不満なし。

『くちづけ』(2013)や『あいあい傘』(2018)の宅間孝行監督。
役者としては多種多様な作品に出演されていますが、
舞台挨拶時にご本人がおっしゃっていたとおり、
監督作にはどちらかといえば感動ドラマのイメージがあります。
今回は低予算作品だから、お金をかけられない分、逆に制約も少ない。
撮りたいものを撮ろう、たまにはこんなサスペンスを、という腹で。
しかし監督らしく、舞台で観てみたいなぁと思えるところは同じ。

新宿・歌舞伎町ラブホテル、828号室。
刑事の間宮(三上博史)は、勤務時間中にもかかわらず、
お気に入りのデリヘル嬢・麗華(三浦萌)を呼ぶ。

麗華と事に及んでいると、けたたましく鳴らされるチャイム。
間宮が出てみると、そこには彼の妻・詩織(酒井若菜)が。
詩織も同業者で婦警。夫と浮気相手を罵倒しはじめ、どうにも止まらない。
夫婦喧嘩は勝手にやってくれと逃げ出そうとする麗華に銃が発砲され、
あろうことか麗華は死んでしまう。

慌てた間宮と詩織はとりあえず麗華の遺体を浴室へ。
間宮は貸しのあるヤクの売人ウォン(波岡一喜)に連絡し、
死体の処理を任せるのだが……。

とにかく悪い奴ばっかりなんです。
普通、誰かひとりは肩入れしたくなる登場人物がいそうですが、
まとめて地獄へ墜ちるのを願いたくなるぐらいみんな悪い(笑)。

何かあるよねと思っていても騙されるドンデン返し。
さらにラストは唖然として口開きました。
私なんて声に出して「えっ!」と言うちゃいましたからね。(^O^;

舞台挨拶がなかったら、この上なく後味の悪い作品だと思ったかも。
でも、宅間監督と三上さんの話がすげぇ面白かったから、
こりゃもう一度観たらもっと楽しめそうだと思っています。
トレンディドラマに出ていたころの三上さんが懐かしい。
久しぶりに見た気がしますが、相変わらずいい役者さんだなぁ。

質疑応答時にまっさきに挙手して当てられて、
感激のあまり泣きだしちゃったお姉ちゃん。
泣くほど嬉しかったのは、宅間さんと三上さん、どちらに会えたから?
涙をこらえながら質問するのを温かく見守る壇上の人と客席、
劇中の悪人とちがって善人ばかりでした。(^^)
—–

『家へ帰ろう』

『家へ帰ろう』(原題:El Ultimo Traje)
監督:パブロ・ソラルス
出演:ミゲル・アンヘル・ソラ,アンヘラ・モリーナ,オルガ・ボラズ,
   ナタリア・ベルベケ,マルティン・ピロヤンスキー,ユリア・ベーアホルト他

週に一度は『ボヘミアン・ラプソディ』を観たくなっているところ、
なんぼなんでももうそろそろ「いろいろ観る」モードに戻らなければと、
気になっていた本作をシネ・リーブル梅田で観ることに。

スペイン/アルゼンチン作品。今年初泣き映画となりました。

アルゼンチン・ブエノスアイレスで一人暮らしのユダヤ人の老人アブラハム。
子どもや孫をたくさん授かったものの、誰もアブラハムを引き取る気はない。
家を売却してアブラハムは老人ホームに送り込まれる予定。
しかも壊疽しかけている右脚をまもなく切断されてしまうことになっている。

今日は最後の日ということで、家族が集まって記念撮影。
長年暮らした家と別れを惜しみたいからと、明朝の迎えを頼んで家族を帰す。

皆が帰ってから、アブラハムはこっそり出かける準備をする。
実は老人ホームに入るつもりなどなく、ポーランドに行くと決めていたのだ。
第二次世界大戦中に彼をかばってくれた親友がまだそこにいるはず。
有り金全部と親友に渡すためのスーツ一着を携え、
70年前の約束を果たすために家を出るアブラハム。

しかし旅は前途多難。空港では税関で引っかかる。
そこをクリアしたらポーランドまでは列車で。
列車の出発時間まで近くの宿で休憩するつもりが寝過ごすわ、
起きて食事に行っている間に宿に泥棒が入って金を盗まれるわ。
マドリードにいる唯一疎遠だった娘に連絡を取り、金を融通してもらうしかなく……。

登場人物がみんな味があって素敵です。
飛行機内で隣席に座る若者レオナルド、宿の女主人マリア、
看護師ゴーシャとのやりとりは特に楽しい。

ホロコーストを生き延びた人の話は巷に溢れかえっているけれど、
語り継ぐことが途切れてはいけないものだと思います。

ポーランドへ行くためにドイツの地を一瞬でも踏みたくないアブラハムは、
ドイツ人女性の助けを強く拒みます。
でも、ドイツ人みんなが悪いわけじゃない。
敵対するさまざまな国、その国の人だというだけで憎むのはまちがっている。
そのことに気づいていてもなかなか許せなくしてしまうのが戦争なのでしょう。

死を考える年齢になったら、思い残すことはできるだけなくしたい。
そうじゃなきゃ、死にきれない。
—–

『この道』

『この道』
監督:佐々部清
出演:大森南朋,AKIRA,貫地谷しほり,松本若菜,小島藤子,
   由紀さおり,安田祥子,羽田美智子,松重豊他

TOHOシネマズ伊丹にて、前述の『蜘蛛の巣を払う女』とハシゴしました。

私の出身高校の校歌は、北原白秋作詞、山田耕筰作曲なんです。
スゴイでしょ!?とかつて自慢したことが何度かあります。
本作を観たら意気消沈、自慢できることでもないのかぁ。

1952(昭和27)年、「北原白秋 没後十周年記念コンサート」が開かれる。
白秋が作詞した童謡『この道』を指揮するのは山田耕筰(AKIRA)。
コンサート終了後、耕筰にインタビューする記者(小島藤子)が
白秋はどんな人だったのかと尋ねると、途端に耕筰は口を閉ざす。
詫びつつも詰め寄る記者に対し、耕筰は言う。「どうしようもない奴だった」と。

1910(明治43)年、初夏のこと。
詩人の北原白秋(大森南朋)は、隣家の人妻・俊子(松本若菜)に夢中。
彼女の夫の留守を狙っては入り浸り、俊子にソフィと名づける始末。
見かねた与謝野晶子(羽田美智子)が忠告するが、ろくすっぽ聞いていない。

晶子の懸念どおり、妻の浮気を疑う俊子の夫に罠を仕掛けられ、
あっけなくそれにひっかかって逮捕される。
晶子の夫・鉄幹(松重豊)が釈放金を払ってくれたおかげで家に戻るが、
学習能力のない白秋は、懲りずに俊子と結婚したものの、逃げられてしまう。

二度目の妻ともじきに別れ、
やがて白秋は三度目の結婚。妻・菊子(貫地谷しほり)と子どもに恵まれる。
白秋にかまわずにはいられない鈴木三重吉(柳沢慎吾)は、
1918(大正7)年に児童文芸誌『赤い鳥』を創刊し、童謡と児童詩欄を任せていたが、
白秋とドイツ帰りの音楽家・山田耕筰を引き合わせることに。

ふたりの最初の出会いは最悪。
耕筰が白秋の詩に音楽を付けたいと言ったことに対して、
白秋が自分の詩だけでは不完全なものだと言われたように取ったためだ。
売り言葉に買い言葉で喧嘩となり、別れたふたりだったが、
地震をきっかけにふたりの仲は変わってゆき……。

自慢の校歌だったはずがガックリした理由は、
売れっ子になった白秋と耕筰が社歌やら校歌やら頼まれるたびに
ホイホイと引き受けて作りまくっていたというくだりがあったからです(笑)。

それでもいい歌には変わりない。
ホイホイ作っていたからといって、いい加減だったわけでもないと思い直し。

馴染みのある童謡がたくさん出てきてしんみり。
老けメイク苦手な私も、この耕筰役のAKIRAのメイクはよくできていたと思います。

軍歌しか作ることが許されなくなるかもしれぬと憂えていたふたり。
今も彼らの歌が残り、そしていろんな歌が生まれている国を喜んでくれていることでしょう。

EXILEにはまったく興味のない私ですが、
ATSUSHIが歌うエンディングの『この道』はとても良かったことを付け加えます。
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