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『バイス』

『バイス』(原題:Vice)
監督:アダム・マッケイ
出演:クリスチャン・ベイル,エイミー・アダムス,スティーヴ・カレル
   サム・ロックウェル,タイラー・ペリー,アリソン・ピル他
 
選挙の日に、TOHOシネマズ伊丹にて1本だけ。
 
いつの頃からかよく見かけるようになった、
プロデューサーとして名を連ねているブラッド・ピット。本作もそう。
ついでにと言っちゃなんですが、ウィル・フェレルの名前も。へ〜っ。
本人が出演するのはおちゃらけた作品でも、
こういう社会派作品の製作に関わっているとわかれば、
「出来る人」みたいなイメージがつきそうな気もします。
 
ジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領(バイスプレジデント)を務めたディック・チェイニー。
彼の実像とともにブッシュ政権の内幕を描く、かなりブラックなコメディです。
 
1960年代半ば。
ディックは学業に優れているわけでもスポーツに秀でているわけでもない若者。
そんな彼の恋人リンは名門大学でオールA。
彼女の勧めでイェール大学に進学したディックだったが、
授業にも出ずに酒ばかり飲んで事故を起こしてはリンにすがる。
 
いくら成績が良くても自分は女だから議員にも大統領にもなれない。
その夢をディックに託しているのに、彼はどうしようもないろくでなし。
我慢ならないリンは、心を入れ替えなければ別れるとディックに宣言。
 
どうしても別れたくなかったディックは一念発起。
下院議員ドナルド・ラムズフェルドのもとで政治のいろはを学びはじめたところ、
彼にはその天賦の才能があったようで、めきめきと頭角をあらわす。
さまざまな政界の要職を歴任したのち、世界最大の石油掘削機販売会社のCEOに着任。
平穏無事に家族で暮らす日々が続くはずだった。
 
そこへ、ジョージ・W・ブッシュから連絡が入る。
大統領選に出るから、大統領になったあかつきには副大統領になってくれないかと。
副大統領といえば形だけの役職に過ぎない、ただのお飾り。
断るつもりで出向いたディックだったが、
ありとあらゆる権限を得る手段があることに気づく。
こうしてディックはアメリカのみならず世界を思い通りに動かしはじめるのだが……。
 
構成が面白く、途中でエンドロールもどきが流れたときは笑いました。
 
とにかく曲者役者ばかり。
老けメイクはものすごく苦手な私ですが、クリスチャン・ベイルの顔ももともと苦手なため、
むしろチェイニー役の彼が老けメイクをしていてくれてよかった(笑)。
ラムズフェルド役のスティーヴ・カレル、ブッシュ役のサム・ロックウェル
3人とも堂々のタヌキおやじぶり。
 
チェイニーもすごいんですけど、その奥様リンの逞しさといったら。
女にできることは限られていた時代、夫を利用してどんどんのし上がって行きます。
 
悪いところばかりが描かれているのではなく、
チェイニーとリンが娘たちを大事にしていたことも見て取れる。
レズビアンだと両親に打ち明けた次女を守るため、
大統領になることをあきらめたわけですが、
しかし、長女が政界に進出するときは両親共に次女を守らなかった。
そのせいで長女と次女の仲が険悪になってしまったのは悲しいことです。
 
こういう話まで入れたせいで、ちょっと中途半端になった印象。
夫婦も娘もみんな健在だから、気遣いを見せざるを得ななかったのかも。
もっとブラックなほうが面白い作品になった気はします。
 
若者たちは政治になんてまるで興味ないんだよ、
『ワイルド・スピード』のほうが楽しいんだから。

—–

『マイ・ブックショップ』

『マイ・ブックショップ』(原題:The Bookshop)
監督:イザベル・コイシェ
出演:エミリー・モーティマービル・ナイ,パトリシア・クラークソン,ハンター・トレメイン,
   ジェームズ・ランス,フランシス・バーバー,レッグ・ウィルソン他
ナレーション:ジュリー・クリスティ
 
十三で1本、梅田で3本、計4本ハシゴしたこの日。
本命はシネ・リーブル梅田で4本目に観た本作でした。
 
原作はブッカー賞受賞作家ペネロピ・フィッツジェラルドの『ブックショップ』。
 
1959年、イギリスの海岸沿いにある小さな町。
戦争で夫を亡くしたフローレンスは、この町に書店を開くことを決意する。
夫との夢が、1軒も書店のないこの町に書店を開くことだったから。
 
7年のあいだ空き家だったオールドハウスを買い取り、
着々と書店オープンの準備を進めていたところ、思わぬ横やりが入る。
保守的な町では新しいものを嫌う人も多く、地元の有力者ガマート夫人がその筆頭。
 
ガマート夫人は、自分もオールドハウスを買うつもりであったと言い、
すでに住居としても使用しているフローレンスに引越しを強要する。
フローレンスが断ると、以来、ガマート夫人の執拗な嫌がらせが。
 
それでもなんとかオープンにこぎつけたフローレンス。
応援してくれる人はごくわずかな中、
町外れの屋敷に40年ひきこもっている老紳士ブランディッシュから
フローレンスお薦めの本を見繕って届けてほしいという連絡が。
こうしてフローレンスとブランディッシュのささやかな交流が始まるのだが……。

湿気の多い建物なんて、およそ書店には向かないと思うのですが、
そこはスルーするとして。(^^;。
 
フローレンスにエミリー・モーティマー
『メリー・ポピンズ リターンズ』のジェーン伯母さんですね。
ブランディッシュにビル・ナイ。めちゃくちゃイイ。
意地悪で不愉快なこと極まりないガマート夫人にパトリシア・クラークソン
 
ネタバレになりますけれども。
 
ブランディッシュの説得にガマート夫人が心を入れ替えてハッピーエンド、
なんてことには残念ながらなりません。
見かけだけの慈善家に結局は負けてしまうという、悲しいエンディング。
でも、書店を手伝っていたおしゃまな少女クリスティーンが
ちょっとした(ものすごい)仕返しをしてくれて胸のすく思い。
 
独裁者は自分の支配下にあると信じる人々が本を読むことを嫌う。
書店や図書館を封じ、本を没収し、焼いてしまうこともある。
書店のある国は栄えるという言葉を思い出します。
人が考えるということを抑えつける国は発展しない。
 
ずっと心に残りそうな物語です。
本好きの人には絶対オススメ。

—–

『ザ・プレイス 運命の交差点』

『ザ・プレイス 運命の交差点』(原題:The Place)
監督:パオロ・ジェノヴェーゼ
出演:ヴァレリオ・マスタンドレア,マルコ・ジャリーニ,アルバ・ロルヴァケル,ヴィットリア・プッチーニ,
   ロッコ・パパレオ,シルヴィオ・ムッチーノ,シルヴィア・ダミーコ,ヴィニーチョ・マルキオーニ他

ナナゲイで『世界一と言われた映画館』を観て、
梅田阪急のB2でグラスワイン1杯とおつまみセット。
グランフロントを通ってシネ・リーブル梅田へ移動しました。
最近はムスリムの人たちもよく見かけます。
世界中のあちこちから観光に来られているのですねぇ。
 
イタリア作品。
監督は『おとなの事情』(2016)のパオロ・ジェノヴェーゼで、
アメリカの人気ドラマのリメイクとのこと。
2016年にシーズン1から3まで制作され、Netflixで放映されたそうな。
もとのドラマを観ていないので比べようがありませんが、
もともとイタリアのドラマだったかのようなヨーロッパ感が漂っています。
 
ローマのとある交差点角にあるカフェ“ザ・プレイス”。
分厚い手帳を手に一日中おなじ席に居座り続ける謎の男。
 
彼に相談事をしてアドバイスに従えば、どんな願い事も叶えられるという。
入れ替わり立ち替わりやってくる老若男女9人の訪問者の願いはさまざま。
認知症の夫に戻ってきてほしい、幼い息子の病を治したい、
美人になりたい、視力を取り戻したい、神の存在を感じたい、などなど。
 
その願いを叶えるためにはどうすればいいのかと問う訪問者たちに
謎の男が命じるのはあまりにおかしなことばかり。
爆弾を仕掛けよ、少女を殺せ、強盗せよ、妊娠せよ、強姦せよ。
客たちは非情な話で無理難題だと思いつつも、
自らの願いを叶えたい一心で、なんとか実行しようとするのだが……。

一見かかわりのない9人が相談に来ていると思いきや、繋がっています。
観ている間に、その繋がりが少しずつわかっていくのが面白い。
 
キャッチコピーは、「欲望の代償は、他人の運命」。
自分の欲望のために人は残忍になれるのか。
根っからの悪人は相談に来ないから、そこまで残忍にはなれません。
男の言うとおりにしようと努めた結果、見えてくるもの。
良い結果ばかりではなく、辛い結果も待っています。
 
謎の男の口数がとにかく少ない。
感情を表にも出さないようにしているけれども、微妙に見え隠れします。
そんな男を演じる主演のヴァレリオ・マスタンドレアをはじめとして、
イタリアでは有名な俳優が多く出ているようで。確かに巧い。
 
オリジナルのアメリカ版をものすごく観てみたいです。
きっとずいぶん空気はちがうのでしょうね。

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『ショーン・オブ・ザ・デッド』を劇場で。

そのときは劇場未公開だったから、DVDをレンタルして観ました。
それが15年もたった今年、なぜか劇場公開するという。
 
名画なら“午前十時の映画祭”の上映作品に選ばれることもあるでしょう。
『ショーン・オブ・ザ・デッド』だってある意味名画なんですけどね、
“午前十時”でかかるような格調の高さはあるはずもなく(笑)。
近頃はドリパスなんてのもありますが、
ドリパスで一定数の購入者が確保できて公開に至ったという話も聞いていない。
いったいどういうわけなのか知らんけど、
これを劇場で観る機会を逃すわけにはいかんとTOHOシネマズ梅田へ。
 
ちなみに本作の前に観たのが前述の『世界一と言われた映画館』で、
十三と梅田で15分しか間のないハシゴを敢行しました。余裕です。
 
15年越しで劇場公開にこぎつけたといっても、
シアター1とか2とかで上映するほど客は見込めないらしく、
こぢんまりとシアター4で。
土曜日の昼間でしたが、半分ぐらいの客の入りですかね。
ちょい寂しいけれど、来ている人はきっとマニアのはず(笑)。
 
あらすじは当時のページをお読みいただくとして、
鑑賞中にやはり気になるのは今なぜ公開されたのかです。
 
主演のショーン役、サイモン・ペッグは、当時は知る人ぞ知るだったけれど、
ここ15年でたぶん知名度がぐんと上がりました。
なんてったって、“ミッション:インポッシブル”シリーズのベンジー役ですから。
 
でも、サイモン・ペッグの知名度が上がったからって、今さら劇場公開はしないでしょ。
で、ハタと思う、これってもしかしたら『ボ・ラプ』のせい?
終盤のドタバタシーンでジュークボックスから突如として流れるのはDon't Stop Me Now”。
ゾンビに気づかれないようにと静かにしているところへそんなものが流れるから、
「クイーンを止めろ」とショーン必死。
ゾンビもそうでない人間も曲に合わせてリズムを取っていて可笑しい。
エンドロールではYou're My Best Friend”がかかります。
ジョン・リードが「キャッチー」言うてたやつ。
レイ・フォスターが「これで行く!」言うてたやつ。
 
本作で最後にクイーンの曲が使用されていることなんてすっかり忘れていた私は、
相当興奮しました。やっぱりまだクイーンから離れられない運命なんだわ。
 
むかし劇場で観そびれたこんな作品、どんどん公開希望します。

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『世界一と言われた映画館』

『世界一と言われた映画館』
監督:佐藤広一
ナレーション:大杉漣
 
7年前に『世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか』を読みました。
このブログの大半は映画のことを書いていますが、
あまりに面白い本を読んだときはそれも書きたくなります。
今は読書管理ツールを使用しているので、本の単独ネタをUPすることもなくなりましたけれど、
7年前はそんなツールもなかったか、いや、あったけど知らなかったか、
とにかくわりとはりきって書いたおぼえがあります。レビューはこちら
 
その本の映画化というわけではありません。
でも「世界一の映画館」は同じ映画館を指しています。
これは観に行かなくてはならんでしょう。
こんな作品を上映してくれるのは、やっぱり十三・第七藝術劇場。
 
山形県酒田市にあった映画館“グリーン・ハウス”。
昭和51(1976)年の酒田大火の火元となった映画館でもあります。
詳細は上記レビューUPしたページをご覧くださいませ。
 
本を読んだときにある程度の状況は思い浮かべることができたとはいえ、
実際の映像で火事の模様を見て衝撃を受けました。
たった1軒の映画館から火が出て、22.5ヘクタールも焼き尽くすなんて。
約1,800の家や建物が焼失し、負傷者多数、死者も1名。
 
当時の様子について、喫茶店“ケルン”の名物バーテンダーが語ります。
風の強い日だったそうで、ケルンの前の大木が倒れそうになるほどだったとか。
その日でなければ、こんなに被害は広がらなかったでしょうに。
 
まだ新人だった消防士の話に、『オンリー・ザ・ブレイブ』(2017)を思い出します。
火に勝負を挑んでいる彼らは、火に負けるはずがないとも思っている。
なのに退却しなければならないと悟った瞬間の悔しさ。
 
本ではどちらかといえば映画館の話よりもフランス料理店の話のほうが面白く、
レストランのことはあまり描かれていないのは残念か。
映画なんですから、レストランよりも映画館の話が主で当然ですね(笑)。
 
酒田市のことを少し知ることができたような気分になっています。
ナレーションは大杉漣。彼の声も聴けて嬉しくなりました。

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