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『グッド・ワイフ』

『グッド・ワイフ』(原題:Las Niñas Bien)
監督:アレハンドラ・マルケス・アベジャ
出演:イルセ・サラス,カサンドラ・シアンゲロッティ,パウリナ・ガイタン,
   ジョアンナ・ムリージョ,フラビオ・メディナ他
 
京都シネマで3本ハシゴの3本目。
ドイツ作品と韓国作品の後はメキシコ作品です。
 
1982年のメキシコが舞台って、なんでそんなにピンポイントなのかと思ったら、
この年、メキシコが経済危機に襲われたのですね。
1970年代にメキシコで石油投資ブームが沸き起こり、
製造業の工場もどんどんメキシコへ移転。融資もバンバンおこなわれました。
当時の金利はメキシコのほうがアメリカより高く、儲かる儲かる。
誰も国家が破産するなんて考えないよなぁ。
その状況が急に変わり、債務危機に陥ったそのときが本作の舞台。
 
1982年、メキシコシティの高級地区ラスロマス。
実業家の妻として大豪邸に暮らすソフィアは、
セレブ妻たちの中にあってもとりわけ富裕で美貌を誇る女王的存在。
 
そんな彼女がどうしても好きになれないのがアナ。
化粧といい服装といい、野暮ったすぎるくせして、
セレブの仲間に入りたがっている様子。
実際、アナはすでにセレブで、夫は著名人らしく、
ソフィアの友人アレハンドラにはアナのことを認めるように言われているが、
どうあろうとアナのことは受け入れたくない。
 
アナを無視したって何の問題もない、そう思っていたが、
このところ、買い物に行くとクレジットカードが止められていたり、
邸宅の使用人たちから給料が未払いだと催促されたりして……。
 
イルセ・サラス演じるソフィアが、不安はいっさい口に出さないけれど、
輝くばかりだった容貌に影が差し、疲れた顔になってゆく。
顔色と行動に焦りがあらわれていて非常に面白い。
 
ソフィアが小馬鹿にしているアナ役のパウリナ・ガイタン。
エリザベス・テイラーやソフィア・ローレンを気取って
カラーコンタクトを入れていることも揶揄されたりするけれど、彼女はたくましい。
ソフィアにビシッと「どうしていつもそんなに偉そうなの」と言うシーンには拍手。
「女なら誰でもお姫様を夢見るものよ」とアナが言い切るシーンにも迫力があります。
 
使用人たちの姿が『チャンス! メイドの逆襲』(2009)とかぶります。
中南米の国って、どこもこんな感じなのでしょうか。
セレブはお金がなくなってもそれを認めず、ずっとセレブ。
メイドや運転手に対してこんなにも偉そうで、自分にお金を使い続ける。
 
意味深な表情のシーンいろいろ。何かあったかなかったか。

—–

『マルモイ ことばあつめ』

『マルモイ ことばあつめ』(英題:Malmoe: The Secret Mission)
監督:オム・ユナ
出演:ユ・ヘジン,ユン・ゲサン,キム・ホンパ,ウー・ヒョン,キム・テフン,キム・ソニョン他
 
京都シネマで3本ハシゴの2本目。
 
韓国の作品。
史実を基にしたフィクションです。
 
1940年代、日本統治下の京城
日本語教育が進められ、朝鮮語を話すことができない子どもたちが増えている。
生まれながらの名前も日本式の名前に改名することを推奨される。
 
朝鮮語学会代表のリュ・ジョンファンは、失われゆく朝鮮語を守るため、
朝鮮語の辞書を作ることを決意。
自らが営む書店を隠れ蓑にして事務所を設け、
志を同じくする学者や記者たちと共に日々ことば集めに尽力している。
 
ある日、辞書作りに携わる学者チョ・ガプインが助っ人だと言って男を連れてくる。
男は数日前にジョンファンの鞄を盗もうとしたキム・パンス。
泥棒を雇うつもりはないと憤るジョンファンをガプインがなだめて言うには、
パンスが盗みを働こうとしたのは息子の学費を工面しようとしてのこと。
生真面目なジョンファンとお調子者のパンスはまったく相容れないが、
パンスは雑用係として学会事務所に出入りするように。
 
相変わらずちゃらんぽらんなパンスに呆れていたジョンファンは、
あるときパンスが非識字者であることに気づく。
パンスに1カ月で文字を覚えるように約束させると、
最初は渋面を見せていたパンスがやがて文字を読み書きできる楽しさを知り……。
 
辞書作りの映画といえば『舟を編む』(2013)。
原作と共に大好きな作品ですが、それとこれとでは背景がまるで違う。
辞書なんて売れないと出版社が経費を削減することはあっても、
自分の国にいるのに自分の国の言葉を話すことが許されず、
辞書を作っていることがバレれば殺されるかもしれないわけで。
 
反韓思想を持つ人が観れば腹を立てるだろうし、
反日思想を持つ人が観れば、より日本を嫌いになることでしょう。
でも、そういう問題ではないと思うのです。
普通に、自分の国の言葉を守ろうとした人たちの物語として観たい。
 
私たちは日本で日本語を取り上げたことはないのですから。

—–

『お名前はアドルフ?』

『お名前はアドルフ?』(原題:Der Vorname)
監督:ゼーンケ・ヴォルトマン
出演:クリストフ・マリア・ヘルプスト,フロリアン・ダーヴィト・フィッツ,カロリーネ・ピータース,
   ユストゥス・フォン・ドナーニー,ヤニナ・ウーゼ,イリス・ベルベン他
 
緊急事態宣言発令前も解除後も、この劇場がいちばん客が入っている気がします。
上映時間と上映時間の間には、スタッフがひとつずつ座席を拭いていらっしゃいます。
京都シネマで3本ハシゴの1本目。
 
こんな内容だからてっきりもともとドイツで生まれた話だと思っていたら、
オリジナルは2010年にパリで初演された人気舞台劇
それをゼーンケ・ヴォルトマン監督が映画化してドイツで大ヒット。
 
哲学者文学教授のシュテファンと国語教師の妻エリザベトは、
エリザベトの弟夫婦のトーマスとアンナ、
エリザベトとトーマスの幼なじみで姉兄弟のように育ったレネを招き、
ホームパーティーを始めるところ。
 
まずレネとトーマスがやってきて、妊娠中のアンナのお腹の中にいる子どもの話に。
男の子だということで、トーマスはすでに名前を決めているらしい。
それをみんなで当てようと、口々に名前を挙げはじめるが全部ハズレ。
トーマスから正解を聞いて唖然、「アドルフ」だと言うのだ。
 
アドルフ? あのアドルフ?
ヒトラーの忌まわしき名前を息子に付けるなんてどうかしている。
ありえないことだと全員が非難するのだったが……。
 
もとが舞台劇なので、夫妻の家の中だけで事は進み、
登場人物も彼ら以外は電話で話すエリザベトの母親のみ。
この雰囲気は『おとなの事情』(2016)に似ています。
 
最初はアドルフという名前について議論していたのに、
次第に彼らのあれやこれやが明らかになる。
母親の恋人って、え、そうだったの!?とか、
良き妻のはずのエリザベトが実はそんなに鬱屈した思いを抱えていたのかとか。
 
日本人とはちょっと笑いのツボが違うのでしょう、大笑いにはならない。
まぁ、妻の不満というものは全世界共通なのかなと思うぐらいで。
 
「アドルフ」という名前について、法律で語られているところが面白かった。
禁止されているだろうそんな名前はとシュテファンがスマホで調べたら、
基本的には禁止ではない、その名前を付ける理由が納得できるものであれば、なんですって。
「アディダス」の創始者の名前がアドルフだということも初めて知りました。
アディダスのアドルフはまさか後にヒトラーが出てくるなんて思いもしなかったでしょうけれど。(–;
そんなこんなで、いろいろと物知りになれます。

—–

『今宵、212号室で』

『今宵、212号室で』(原題:Chambre 212)
監督:クリストフ・オノレ
出演:キアラ・マストロヤンニ,ヴァンサン・ラコスト,カミーユ・コッタン,
   バンジャマン・ビオレ,キャロル・ブーケ他
 
予告編を観たとき、ちょっと面白そうだと思いました。
しかしさほど評判がいいわけでもなく、上映終了が近づいてくる。
もうパスだなと思いはじめた頃、
前述の『君がいる、いた、そんな時。』とハシゴする機会が訪れました。
同じくテアトル梅田にて。
 
フランス/ルクセンブルク/ベルギー作品。
 
パリに暮らすマリアとリシャールは結婚して20年。
大学で教鞭をとるマリアは、若い男に目がない。
気に入った相手を見つけると自分から誘って即ベッドイン。
火遊びと割り切り、寝た男の数は両手でも足りないほど。
一方のリシャールはピアニスト
マリアと出会ってから25年、一度も浮気したことはない。
 
その日も浮気をしたマリアは、何食わぬ顔をして帰宅。
しかし彼女のスマホの画面を偶然見てしまったリシャールは、
そこに並ぶ男からの甘い言葉に唖然。
マリアに詰め寄ると、まるで悪いとは思っていない様子。
 
ふて寝をするリシャールを放置して、
向かいのホテルの212号室に泊まることにしたマリアだったが、
目の前に25歳のリシャールが現れて……。
 
ジャンルとしてはファンタジーになるのでしょうかね。
「マジカルロマンティックコメディ」というらしい。
 
マリアの前に登場するのは若かりし頃の夫のみならず、
夫がまだ16歳だった頃の情事の相手や、
ひと部屋には入りきれないと思うほどの数のマリアの浮気相手。
 
マルチェロ・マストロヤンニとカトリーヌ・ドヌーヴの娘だなんて、大変。
でも、美しい歳の取り方をしていると思います。
 
「若気の至り」じゃなくて「青春時代の酔狂」というのがものすごく気に入りました。
みんな大なり小なりそんなものがあるはず。
 
羨ましいのはこのアパルトマンの環境。
映画館の上階で、向かいにはこんな洒落たホテル。
静かな生活ができるかどうかは知らんけど、いいなぁ、徒歩30秒で映画館へ行けるなんて。
私だって、車で5分で行ける映画館があるからいっか。

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『君がいる、いた、そんな時。』

『君がいる、いた、そんな時。』
監督:迫田公介
出演:マサマヨール忠,坂本いろは,小島藤子,阪田マサノブ,岸本雄二他
 
観た順にUPして行くはずが、このところ劇場に通いすぎていて、
1日1本観た順にUPするマイルールを守っていると、
どの作品もUPする頃には上映終了間際になってしまうのです。
かと言って1日複数回UPするのはしんどいから、
どうしても先にご紹介したい作品は順序を無視してUPすることにしました。
 
テアトル梅田の上映スケジュールをぼんやりと眺めていたとき、
本作の舞台挨拶付きの回があると知りました。
どんな作品なのかなと思ったら図書室がどうとかこうとか書いてある。
図書館が出てくる作品は外せないでしょ、観てみよう。
 
舞台は広島県呉市の小学校。
その呉市出身の迫田公介監督の長編映画デビュー作なのだそうです。
 
岸本正哉(マサマヨール忠)は、父親が日本人、母親がフィリピン人。
ハーフであることをからかわれ、そこそこに酷いいじめを受けている。
そんな彼の心の支えは、毎日放課後に図書室へ行くこと。
本を読むのが好きで、自ら小説を執筆中の正哉に対して、
司書の山崎祥子(小島藤子)だけが優しく接してくれる。
 
同じクラスの香山涼太(坂本いろは)は変わり者として有名。
放送委員の涼太は、DJカヤマを名乗って校内放送に力を注ぐが、
うるさいだけでちっとも面白くない放送をみんな鬱陶しがって嘲笑うだけ。
それでも気にせずにマイペースで放送を続ける涼太に正哉は半ば呆れている。
 
ある日、またいじめられた正哉が、誰もいない屋上で鬱憤を晴らそうとしたところ、
どこからともなく現れた涼太が、「英語が話せるなら放送に参加して」と言う。
冗談じゃないと断る正哉だったが、涼太はしつこくつきまとう。
挙句、図書室までやってくると、正哉が祥子と過ごす時間に割り込んできて……。
 
演技初挑戦の小学生が主役とあって、上手だとは言いがたいのですが、
そのぶん、とても初々しい。
役の上での彼のことも、俳優としての彼のことも応援したくなります。
 
心ない言葉に傷つけられ、いじめに遭っているのに、
気づかないのか気づかないふりをしているのか、てんで頼りにならない担任教師。
自分がこんなにも悩んでいるのに、いじめられる原因の母親は能天気に見える。
でも、母親が口ずさむ歌の意味を知れば、能天気なばかりではないことがわかります。
 
フィリピーナだといじめられる正哉だけど、彼には愛情深い両親がいる。
一方、明るくふるまっている涼太は家庭環境に問題があり、
また、祥子の心にもとてつもなく大きな闇がある。
「自分だけどうしてこんな目に」みたいにふてくされた顔をしていた正哉が、
涼太や祥子の心の傷、そして母親の心の裡を感じて立ち向かいます。
 
この前日に観た『コンフィデンスマンJP プリンセス編』の豪華な舞台挨拶とは異なり、
監督がたったひとりで乗り込んできた舞台挨拶。
髪の毛金色なのに(笑)訥々と話す監督の真摯な態度に、頑張れと声をかけたくなりました。
監督が涙声になるもんだから、一緒に泣きそうになってしまった。(^^;
そんな監督に情が移り、書き溜めてある15本以上を保留してこれを先にUPする次第です。

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