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『ミッドナイト・トラベラー』

『ミッドナイト・トラベラー』(原題:Midnight Traveler)
監督:ハッサン・ファジリ
 
第七藝術劇場にて、ドキュメンタリー3本ハシゴの〆。
 
アメリカ/カタール/カナダ/イギリス作品です。
 
アフガニスタンの映画監督ハッサン・ファジリは、タリバンから死刑を宣告されます。
彼が撮ったドキュメンタリー作品がタリバンの不興を買ったから。
親しかった友人は政府への不満からタリバンに入れ込み、
しかしハッサンの身が危険だということを知らせてきてくれました。
その友人が殺害されたことを知り、ハッサンは家族4人で出国することを決意します。
 
まず向かったのはタジキスタン。
そこで庇護申請の書類を提出しますが、却下されてしまう。
一旦アフガニスタンに戻ることを余儀なくされ、
その後、安全な場所を求めて一家の過酷な旅が始まります。
本作はその5,600キロに渡る旅を3台のスマホで撮影したもの。
 
食べるものがなくて果実を盗もうとしたら追いかけられたなんてのは笑えます。
でも、ぼったくりの密航業者に娘の誘拐を示唆されるのはもちろん笑えない。
難民キャンプに収容され、買い物に出かけたら、「移民は出て行け」と石をぶつけられる。
収容施設もさまざまで、不衛生なところも多い。
なんだかわからない虫に刺されて、娘の顔も体もぼこぼこになったり。
マイケル・ジャクソンの曲で楽しげに踊る娘の顔をずっと見ていられたらいいのに。
 
金を払えば密入国という手段もある。
けれど、不法に入国すれば、いつまでも追い出される心配がつきまとう。
時間がかかってもいいから合法的に入国したいという妻。
 
夫妻ともに映像に関わる仕事をしているからなのか、
悲惨な中にあっても景色も表情も豊かでとても美しい。
それだけに、彼らが安心して暮らせる日が来てほしい。
いまだに安住の地が見つからないまま。
コロナでより過酷な日々になっているかもしれません。

—–

『パンケーキを毒見する』

『パンケーキを毒見する』
監督:内山雄人
ナレーション:古舘寛治
 
第七藝術劇場にて、ドキュメンタリー3本ハシゴの2本目。
 
結構話題になっているので、ご存じの方は多いかもしれません。
これもよく客が入っています。
 
企画・製作を務めたのは、河村光庸。
『ヤクザと家族 The Family』(2020)などのプロデューサーですね。
このたび彼が手がけたのは、内閣総理大臣・菅義偉の素顔に迫るというもの。
 
本作を製作するに当たり、菅さんのグループに所属する議員や秘書、
懇意のマスコミ関係者、菅さん御用達のホテルからスイーツ店に至るまで、
ありとあらゆる方面の人たちから取材をお断りされたそうです。
 
そんななかでインタビューに応じたのは、石破茂、江田憲司、村上誠一郎。
元通産・経産の官僚で、“報道ステーション”での発言のせいで降板させられた古賀茂明。
元文部・文科の官僚で、森友問題を追及する前川喜平などなど。
 
こうして政治的な映画を観るとき、偏った見方にならぬよう、
中立でいようと思うがゆえというのは言い訳ですが、私はいつまで経っても政治バカのまま。
学生団体“ivote”の存在も初めて知りました。
彼ら言う、「若者が選挙に行かない理由」や「多数派に投票してしまう理由」は腑に落ちる。
ニュースに興味を持てず、「パンケーキ」という言葉が出てきたらそれに惹かれる。
そうなのかもしれません。政治バカのままでいたらあかんなぁ。
 
国会答弁ってこんなにも面白いものなのですね。
一日中観ていられるものなのかも。
 
『ベイビーわるきゅーれ』に「警察より政治家のほうがよっぽど怖い」、
みたいな台詞があったのを思い出します。うーむ、深い。
 
そうそう、『バケモン』のナレーションにケチをつけました。
古舘寛治のこのナレーションは絶品です。

—–

『ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。』

『ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。』
監督:島田陽磨
 
前夜に『死にたくなったら電話して』を読んだら十三に行きたくなり、
第七藝術劇場にて、ドキュメンタリーを3本ハシゴの1本目。
 
熊本県で訪問介護の仕事に就いている林恵子さん。
成人した子どもたちが出て行った後、恵子さんは認知症の姉を引き取って暮らしています。
 
彼女にはもう一人の姉、愛子さんがいました。
恵子さんより20歳上の愛子さんは、母親の亡き後、弟妹の面倒をひとりで見ていました。
なかでも愛子さんによく懐いていたのが恵子さんでした。
 
しかし在日朝鮮人の男性から見初められて結婚した愛子さんは、
1960(昭和35)年、政府が後押しする「北朝鮮への帰国事業」に乗り、
日本人妻として北朝鮮へと渡ってしまいます。
3年経てば帰ってくると言っていたのに、そのまま半世紀以上が経ちました。
 
北朝鮮から来る愛子さんの手紙に書かれていたのは、金や衣服の無心。
手紙のみならず電話がかかってくることもあり、
ほとほと嫌になった恵子さんは、愛子さんからの連絡を無視するようになります。
 
けれど、歳を取って初めてわかる我が姉の気持ち。
大好きだった姉にこのまま会わずにいてよいものだろうか。
一方の愛子さんも90歳を前に、弟妹の、特に恵子さんが元気かどうかを知りたくて、
再び連絡を取れるものなら取りたいと思いはじめます。
 
姉妹の58年ぶりの再会。
両親の墓参りをしたいという愛子さんの願いは叶わず、恵子さんが北朝鮮へ。
さまざまな規制のもと、やっと会えたふたり。孫同士も会うことができました。
 
愛子さんの孫が歌う曲にはどれもこれも「将軍様」やら「党」やらの歌詞があり、
なにやらとても複雑な気持ち。
国交が正常化されたら行き来できると愛子さんは言うけれど、そんな日は来ない。
 
コロナ禍の前に姉妹が会えたことは本当によかった。
今は手紙を送ることすら許されていないそうです。
愛子さんの無事を祈る。

—–

『バケモン』

『バケモン』
監督:山根真吾
ナレーション:香川照之
 
せっかくシネ・ピピアまで出向いたのでもう1本。
『ブータン 山の教室』の次にこれも観ました。
 
テレビ番組の構成および演出家である山根真吾監督は、
2004(平成16)年に笑福亭鶴瓶を追いかけはじめたそうです。
そのとき鶴瓶は古典落語の大ネタ“らくだ”に本格的に取り組んだところ。
以来、“らくだ”を演じる鶴瓶をメインに、
芸人としての鶴瓶をカメラで追い続けた17年間の記録が本作です。
 
のっけから、標準語を話す人の「つるべ」のイントネーションが気になります(笑)。
ここを気にするのはあかんやろと自分でも思うのですが、どうしても気になる。
ここでつまずいてしまうともう乗れないわけで、ごめんなさい。
 
で、ですね、よく客が入っていましたが、こんなことでつまずいたのはおそらく私だけ。
作中の落語にも皆さんよく笑っていらっしゃいました。
 
ナレーションを担当したのが香川照之だと知ったのは、実はこれを書いている今なんです。
てっきり監督ご本人がナレーションも務めているのかと思っていました。
そうか、香川照之なのか。「つるべ」のイントネーションも致し方なし。
 
役者としての香川照之、嫌いじゃないですよ、好きです。
でもこのナレーションは力が入りすぎていて私は駄目でした。
彼の声が本作に合っていなかっただけではなく、
「マスク、マスク、マスク」とか「ニッポンチャチャチャ」の連呼とか、
そもそものナレーションの原稿が好きじゃない。
 
話があっちに行ったりこっちに行ったり、だらだらとしたものにも感じられて、
睡魔に襲われたところもあります。
“らくだ”だけに絞ってもよかったのではないかなぁ。
“らくだ”は改めて聴きたいとは思いましたが。残念ながらそれだけでした。

—–

『ブータン 山の教室』

『ブータン 山の教室』(原題:Lunana: A Yak in the Classroom)
監督:パオ・チョニン・ドルジ
出演:シェラップ・ドルジ,ウゲン・ノルブ・へンドゥップ,ケルドン・ハモ・グルン,ペム・ザム他
 
梅田で2本ハシゴした後、阪急電車宝塚線に乗って売布神社駅に向かいました。
宝塚唯一の映画館シネ・ピピアは駅の真ん前の公共複合施設ピピアめふの5階に入っています。
ここって、全国でも珍しい公設民営方式の映画館だということを初めて知りました。へ~っ。
 
なかなか観る機会のないブータン作品で、2019年の制作。
今春から、シネ・リーブル梅田、シネ・ヌーヴォ、京都シネマ等々、
あちこちで上映されていましたが、どこもすでに終了。
観ようと思ったらもう売布まで行くしかありません。
でも行くには車でも電車でも意外と時間がかかる。面倒くさい。
 
しかし、私が映画好きだと知っている勤務先の先生から会うたびに聞かれるのです。
「観に行きましたか!?」。
前週末にもわざわざ私のいる部屋へ顔を出して聞いてくださり、
この先生がここまで言わはるなら、やっぱり観に行かなあかんやろと思って。
 
いや~、よかった。面倒くさいと思いながらも観に行って本当によかった。
同じ先生にお聞きして観に行った『羊飼いと風船』(2019)は若干寝ましたが(笑)、
この『山の教室』は大好きです。
 
ブータンの首都ティンプーで祖母と二人暮らし教師ウゲン(♂)。
教師になるには5年間の研修が必要で、今はその4年目。
しかしウゲンはそのまま教師になるつもりなど毛頭ない。
オーストラリアに渡ってミュージシャンとなることを夢見ている。
 
そんなウゲンだから、日々の教師生活もいたって不真面目。
あるとき呼び出され、研修の最後にルナナという村への赴任を命じられる。
 
そこは、ブータンでいちばんどころか世界でいちばんの僻地にあると言える学校
標高は5千メートル近くあり、ティンプーから辿りつくまでに8日間もかかる。
電気も通っていないこの村へ、致し方なく向かうウゲンだったが……。
 
仕事柄、ブータンに触れることがたまにあります。
まずティンプーで暮らしているときの祖母の様子に興味が湧く。
彼女が手に持っているのはマニ車。
くるくると回しながら孫に説教しているのが可笑しい。
 
せっかく祖母の望む安定した公務員生活を送れそうなのに、ウゲンはやる気ゼロ。
彼の言動は日々をナメているとしか思えなくて、
嫌々ルナナに向かう途中も、迎えに来てくれた村人ミチェンたちに横柄です。
 
ウゲンが履いているのは、都会で買った「泥にも雨にも強い靴」のはず。
だけど、彼が歩けば靴は泥だらけで靴下までグチョグチョ。
対するミチェンたちが履いているのは安っぽいゴム長で、
でもこれがどこも汚れずにものすごく綺麗なまま。凄いことですよねぇ。
 
村まであと2時間という場所に村人が総出で迎えに来ている。
それすらも鬱陶しそうだったウゲンは、着いてすぐに「無理だから帰る」と言います。
教師の到着を心待ちにしていた村長ですが、無理強いはしません。
8日間歩き通しだったミチェンたちが体を休めたらまた送りますと言う。
そうこうしているうちにウゲンの気持ちが変わってゆくのはお決まりのパターン。
 
お決まりのパターンなのに清々しい。
『北の果ての小さな村で』(2017)も僻地の村に赴任を命じられた教師が戸惑う話でしたが、
あっちは教師自体が当てにされていないところがありました。
こっちは教師が誰からも求められています。
学びたい気持ちがいっぱいで、でもルルナという村のことをこよなく愛している。
学びたいのは村を出て行きたいからでは決してなくて、
医者や教師になれば、自分がこの村の役に立てると思っている子どもたち。
 
皆に引き留められてウゲンが村に残るとか、
オーストラリアまで一度は行ったけれど帰って来るとか、
そこまで描いていないところも好きでした。
今後は先生のお薦めをとっとと観に行きたいと思います。(^o^)
 
余談ですが、シネ・ピピアに併設された喫茶店の名前が“バグダッド・カフェ”
どんなところかな~と期待しつつ行きましたが、単に映画館のロビーにある喫茶コーナーでした(笑)。
ネーミングだけでも楽しいから○。ホットドッグセットを食べたよ。

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