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『なん・なんだ』

『なん・なんだ』
監督:山嵜晋平
出演:下元史朗,烏丸せつこ,佐野和宏,和田光沙,吉岡睦雄,外波山文明,三島ゆり子他
 
晩はおそらく35年ぶり、京都のライブハウス“磔磔”へ。
お誘いいただいて大西ユカリと憂歌団の木村充揮を聴きに。
木村さんって今おいくつなのかと思ったら、来月68歳。
ということは、私がよく聴いていた頃は30代前半でいらっしゃったのですね。
そんな年齢のときからあんな酔っぱらいであんなダミ声であんな歌。凄いよ。
天使のダミ声とはよく言ったものです。確かに天使だわ。
 
そのめっちゃ楽しかったライブの前に京都シネマで映画を2本、まずは本作を鑑賞。
上映前にプロデューサー、寺脇研氏のご挨拶がありました。
寺脇氏は、本作の主人公夫婦と同世代の70歳。
それに対して山嵜晋平監督は40歳。スタッフは監督より年下の20~30代。
若い世代が撮る親世代はどんな感じなのでしょう。
 
小田三郎(下元史朗)と美智子(烏丸せつこ)は東京に暮らす熟年夫婦
結婚してまもなく40年が経とうとしている。
 
ある日、美智子が出先で交通事故に遭い、昏睡状態に陥っているとの連絡が入る。
文学教室に行くと言って美智子は出かけたのに、搬送されたのは京都の病院。
事情がわからず困惑しながら三郎は病院に駆けつける。
 
容体は安定しているというのに目を覚ます気配のない美智子。
三郎が彼女の所持品を確認すると、長年愛用していたカメラも含まれていた。
フィルムを現像に出してびっくり、そこには写っていたのはホテルとおぼしき場所で、
三郎の知らない同世代の男が被写体となっているではないか。
 
何が起きているのかをどうしても知りたい。
三郎は一人娘の知美(和田光沙)に美智子の浮気疑惑について話し、
ふたりは美智子の実家である奈良へと向かうのだが……。
 
夫・三郎のあまりの駄目駄目ぶりに失笑が客席に生まれることしばしば。
相方がやきもちを焼くほど実際にはモテないものなのでしょうが、
この夫婦の場合は「浮気は気のせい」ではありません。
美智子の浮気相手・甲斐田一雄(佐野和宏)を探し当てて問いただしてみれば、
ふたりが初めて出会ったのは53年前、再会したのは33年前で、
以来ずーっと不倫関係にあったというではないですか。三郎唖然(笑)。
 
三郎は憤りますが、知美は美智子の味方。
お母さんの気持ちがわかる、それにこれは浮気じゃなくて本気だとも言います。
もう三郎の立つ瀬はないうえに、自身に認知症の兆候が現れていることも感じている。
こういうとき、夫は、妻は、そして浮気じゃなくて本気の相手はどうするでしょう。
 
でもねぇ、玄関あがって「水」とだけ言うような奴はこんな目に遭いますよ(笑)。
社会的ステータスもそうだけど、男としての器の大きさが違いすぎる。(^^;
「オレの人生、なんなんだ」。アンタの人生、そんなもん。
 
いろんな立場から見ることができて面白かった。

—–

『スティルウォーター』

『スティルウォーター』(原題:Stillwater)
監督:トム・マッカーシー
出演:マット・デイモン,アビゲイル・ブレスリン,カミーユ・コッタン,
   リル・シュヴォ,イディル・アズーリ,ディアナ・ダナガン他
 
TOHOシネマズ西宮で4本ハシゴの〆。
21:10の上映開始時点でへろへろでしたが、これがまた超面白くて。
奇跡的に4本ともまったく眠気に襲われず。
 
“スティルウォーター”が地名だとは知りませんでした。
と思ったら、偶然読んでいた『償いの雪が降る』に出てきたのがまさにそこで。
 
アメリカ・オクラホマ州スティルウォーターに暮らす肉体労働者ビル。
油田の閉鎖で職を失い、今は建設現場で日銭を稼いでいる。
 
彼の一人娘アリソンは現在フランス・マルセイユの刑務所にいる。
留学していた彼女は、ルームメイトのリナを殺害した容疑で有罪になり、5年前から服役中。
面会に訪れたビルにアリソンは無実を訴え、弁護士に再調査を依頼してほしいと言う。
しかし、弁護士は再調査の価値はないとビルを追い払う。
 
娘からの信用は皆無のビルは、弁護士に追い返されたことをアリソンに告げられず、
代わって自分が真犯人を見つけることを決意。
金はない、言葉も通じない異国の地にしばらく滞在するのだが……。
 
娘の信用がない理由は途中で明かされますが、妻を喪った後の彼は酒浸り。
アリソンの世話は亡き妻の母親シャロンに任せっきりで、
父親らしいことは何ひとつしてきませんでした。
今は断酒して娘のためになりたいと思っていますが、なかなか。
 
そんな彼に手を差し伸べるのは、シングルマザー舞台女優ヴィルジニー。
『ハウス・オブ・グッチ』でパトリツィアから追い出された女性パオラ役だった、
フランス人女優のカミーユ・コッタンが演じています。
彼女の娘マヤ役のリル・シュヴォがこのうえない可愛らしさ。
このふたりが荒んだビルの心を解きほぐしていきます。
 
アリソンを演じるのは子役から着々とキャリアを伸ばしているアビゲイル・ブレスリン
あの可愛らしさはもうなくて(笑)、ちょっとおばちゃん化しているふうですらありますが、
この役にはまぁ合っていたかなぁ。
 
真相は如何に、という面白さもありますし、
スティルウォーターからマルセイユへとやってきてまた戻ってゆくビルの、
その心情は計り知れないものがあります。
マルセイユの公営住宅は『レ・ミゼラブル』(2019)のそれを思い出して怖いぐらいでした。
タクシーの運転手に行き先を告げて「正気か」と言われるような場所って、日本にもありますか。
 
幸せな話ではない。
でもしみじみと噛みしめたい物語です。

—–

『ブラックボックス:音声分析捜査』

『ブラックボックス:音声分析捜査』(原題:Boite Noire)
監督:ヤン・ゴズラン
出演:ピエール・ニネ,ルー・ドゥ・ラージュ,アンドレ・デュソリエ,オリヴィエ・ラブルダン,
   ギョーム・マルケ,セバスチャン・プドルース,アン・アズレイ,オーレリアン・ルコワン他
 
TOHOシネマズ西宮にて4本ハシゴの3本目。
ランチタイムにひとり呑みしていますし、2本目まではすごく面白かったから寝なかったけど、
3本目のこれを観る頃にはそろそろ睡魔に襲われても不思議はないのでは。
と思ったらこれがまたすこぶる面白くて。
ちょっと興奮するぐらいの出来のフランス作品でした。
 
マチューはBEA(フランス航空事故調査局)の音声分析官。
大変優秀ではあるが、時にこだわりすぎて上司ポロックから諭される。
 
ある日、パリからドバイへと向かって旅立った旅客機がアルプスのベルヴォー付近に墜落。
乗員乗客316人が全員死亡するという航空事故が発生する。
当該旅客機はヨーロピアン航空の最新型アトリアン800。
 
さっそくBEAの音声分析官が通称“ブラックボックス”と呼ばれるフライトレコーダーを回収し、
音声分析に取りかかることになるが、ポロックはマチューを担当から外してしまう。
 
面倒くさい奴だと思われたのだろうか。
ポロックがマチューの代わりに指名したのは、明らかにマチューより能力の劣るバルザン。
ポロックとバルザンが事故調査に着手するのを恨めしげに見つめるマチュー。
 
ところが後日、局長のレニエから突然呼び出され、ポロックの失踪を知らされる。
後を引き継ぐように言われたマチューは事故調査を開始する。
と同時に上司の失踪には何か理由があるはずだとこっそり調べ始めるのだが……。
 
音声分析官といえば、『ウルフズ・コール』(2019)が記憶に新しい。
あっちは潜水艦、こっちは同乗しているわけではないけれど飛行機。
聞こえすぎる耳を持つというのは良いことばかりじゃないんですねぇ。
 
マチュー役のピエール・ニネがいかにも神経質で、不気味ですらあるのが面白い。
彼には同じ航空学校を卒業した美しい妻ノエミがいて、
途中からは彼女のことすら信じられなくなります。
 
いったい何があったのかわかるくだりは凄い緊迫感。
航空業界に限らずとも、こんなことが実際にあるのかもしれないと思うと怖い。
罪のない人をテロリストに仕立て上げ、事故をそのせいにしちゃうなんて。
人の命よりも儲け。そんな企業ばかりじゃないと思いたい。
 
最後まで観たら、最初に戻ってもう一度伏線をたどりたくなります。
めっちゃ面白かった。

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2022年1月に読んだ本まとめ

2022年1月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:3770ページ
ナイス数:955ナイス
■常設展示室 (新潮文庫)
妹・マハよりも兄・宗典を応援したい派です。そのせいかどうかはわからないけど、こんなにも人気作家のマハさんをそこまで好きにはなれません。長編小説の序盤ではいつも引き込まれて涙さえ流してしまうのに、終盤に熱い様相を呈すれば呈するほど、私は冷めてしまうのです。そして気づきました。短編小説ならば熱くなりすぎる前のちょうど良い加減で話が終わる。たぶん私は彼女の短編のほうが好き。表紙に惹かれて買いました。絵についての知識が皆無でも、目の前にこの世界が広がるはず。大阪では再来週までメトロポリタン美術館展開催中。観たい。
読了日:01月02日 著者:原田 マハ
■あなたとなら食べてもいい (新潮文庫)
「あなたと食べたい」じゃなくて「あなたとなら食べてもいい」。どんな上からなんだよと思わなくもないけれど(笑)、素直に「あなたと」と言えない気持ちが込められているように思います。特に1つめの『くろい豆』はそう。男性より女性にお奨めしたくなる話が多いですが、3つめの『居酒屋むじな』は私には「つげ義春の優しい版」みたいなイメージで、こんな居酒屋が本当に存在していたならと可笑しくもあり切なくもあり。2つめの『消えもの』のみミステリータッチで異質です。7つの物語にハズレは無し。知らなかった作家に会えるのもうれしい。
読了日:01月05日 著者:千早 茜
■氷に閉ざされて (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション ハ 7-18)
まったく、二見書房ってどうしてこんな表紙にするのかしら。『そして彼女は消えた』といい、物憂げなブロンド美女が載っていると買いづらいってば。しかし映画なら雪山遭難ものは外せない私は読んでみることに。表紙が思わせぶりなだけかと思ったら、本作に関しては正しい表紙でした(笑)。小型飛行機に乗り込んだ未亡人がマッチョなパイロットと共に墜落。もとは敬遠し合う仲だったのにこの状況下でラブラブに。中盤以降は欲情に駆られるのをどう抑えるかが焦点(笑)。ふたりの死を目論んだ犯人は、そいつじゃなきゃそいつしかおらんっちゅうの。
読了日:01月09日 著者:リンダ・ハワード
■明け方の若者たち (幻冬舎文庫)
映画版の鑑賞後、彼女が既婚者だったという事実、それを彼は最初から知っていた事実が原作ではどう描かれているか知りたくて買いました。衝撃的なのは原作も映画版も同じ。映画版はほぼすべて原作のまま。変更に笑ったのは、原作ではサイゼリヤだったのが、映画版では餃子の王将だったところ。原作を読んでわかった私の勘違いにも笑う。ふたりがあるバンドのアルバムについて言い合うシーンで、私には“Ratt(ラット)”だと聞こえていたのに、原作を読んだら“RADWIMPS(ラッド)”でした(笑)。人生のマジックアワーはいつでしたか。
読了日:01月11日 著者:カツセ マサヒコ
■かなしきデブ猫ちゃん (集英社文庫)
年初だから、まずは薄めの本で冊数を稼いで今年の読書に弾みをつけようという姑息な考えから読みました。ついには絵本まで書きはじめた早見さん。捨てネコカフェから温かい家族にもらわれていったデブ猫ちゃん(♂)。安泰かと思いきや、チビ猫の登場で立場が危うくなります。悲しくて家出した彼が愛媛県内を巡るロードムービー。猫らしく描かれていた第1部から一転、第2部では二足歩行。堤防に腰かけて物思いにふける様子など人間のまんまです。温泉では頭にタオルのせてババンバンバンバン。絵が猛烈に可愛くて、早見さんの本というよりは……。
読了日:01月12日 著者:早見 和真,かのう かりん
■きみはだれかのどうでもいい人 (小学館文庫 い 49-1)
原田マハの『あなたは、誰かの大切な人』の真逆を行くタイトル。凹みますねぇ。だけどそんなもんでしょう。職場でどれだけ「あなたがいないと困る」と言われている人であったとしても、辞めたところで仕事は普通に回る。県税事務所に勤める4人の女性の視点から描かれたこの連作短編集は「あるある」だらけ。ひとつ言えるのは、どんな人にも必ず悩みはあるということ。いかに能天気に見えようが、物事に動じないように見えていようが、生きていれば悩む。あと、映画や本での総務係の扱われ方がいつも不思議。総て務める、なくてはならない係なのに。
読了日:01月16日 著者:伊藤 朱里
■はるか (新潮文庫)
『ルビンの壺が割れた』を読んだとき、失礼な言い方ではありますが、執筆するに当たって特に何の知識も下調べも必要としない物語だと思いました。その点で本作は前作とはまったく違います。AIのいろいろ、へーっ、ほーっの連続。『夏への扉』へのオマージュなのだろうかと思いきや、幸せには終わらないのを見ると、主人公がだんだん取り憑かれたようになって行く『人魚の眠る家』を思い出したりも。映画『レプリカズ』ほどの無茶ぶりにはならずとも、死者を生き返らせようとすれば良いことは起こらない。技術が進歩すれば、こっちが消されるかも。
読了日:01月17日 著者:宿野 かほる
■下町ロケット ゴースト (小学館文庫 い 39-5)
池井戸さんの著作は、たいてい最初から引き込まれて頭に血が上るものなのに、本作はこちらのエンジンがかかりにくい。ちょっと退屈だなぁと思っていたら、半分に差しかかった辺りでいきなり全開に。要はそこまではあからさまに悪い奴が出てこなかったからでした(笑)。ライバルになりそうな中小企業を姑息な手を使って潰そうとするなんてことが普通にあるならばとても寂しい。正義が勝つシーンは恒例のスッキリ、でもその後は少し悲しい。儲かるかどうか以前に、人として正しいかどうかという基準での経営判断。それだけでは駄目なものでしょうか。
読了日:01月21日 著者:池井戸 潤
■桜底 警視庁異能処理班ミカヅチ (講談社タイガ)
新シリーズは幽霊が見える青年が主人公。映画『さんかく窓の外側は夜』志尊淳が演じた青年はその能力を呪っていましたが、この青年・怜はちゃっかりそれで金稼ぎ。そうしないと生活が立ち行かないという事情もあります。そんな彼がスカウトされて警視庁の地下室へ。秘密の捜査班のメンバーはみんな異能者。起こる事件は相変わらずえげつないから、想像力をあまりたくましくはしたくないけれど(笑)、思った以上にコミカルです。しかしやっぱり凄いわ内藤さん。どうして次から次へとこんなにおもろいシリーズを書けるんですか。次巻以降にも期待。
読了日:01月23日 著者:内藤 了
■償いの雪が降る (創元推理文庫)
タイトルと表紙と帯からしみじみとした大人のミステリーを想像していたら、『自由研究には向かない殺人』と似た設定のサスペンスフルな青春ミステリーでした。但し、あっちのピッパは複雑な家庭環境ながらも温かい家族に恵まれ、こっちのジョーの親はアル中DV。大学の課題で身近な年長者の伝記を書くことになったとき、親には近寄りたくないから老人介護施設に入居する余命わずかな他人、しかも元殺人犯から話を聴いて冤罪を確信します。隣人の女子学生やジョーの自閉症の弟との関係性がイイ。ピッパ以上に無謀でハラハラさせられたけど。面白い。
読了日:01月27日 著者:アレン・エスケンス
■殺した夫が帰ってきました (小学館文庫 さ 40-1)
ストーカーに襲いかかられそうになっているときに、殺したはずの夫が現れて助けてくれる。ストーカーと幽霊、いったいどちらがより怖いか真剣に考えてしまいます。ま、幽霊だったらこの物語は成立しないんですけれど。主人公と同じく私が考えつくのは「双子の兄弟」。しかしそんな安直なオチもあり得ない。最終的には「実はこうでした」とあちこちから人が出てきて、ちょっと複雑にしすぎ、しかも都合よすぎの感があります。でもDVに遭っている人の切実な思いは伝わってくる。どうにか逃げて、二度とひっかからないで、安住の地を見つけてほしい。
読了日:01月28日 著者:桜井 美奈
■沈黙のパレード (文春文庫 ひ 13-13)
500頁の厚さも何のその。20頁目に至るまでにすでに面白くなっているからどんどん読めます。ガリレオ湯川教授が謎を解き明かす今回の事件は、絶対犯人に間違いないのに黙秘権を行使する奴が登場。しかも20年以上前にも殺人を犯して逃れることに成功している。遺族や親しかった人たちが鉄拳制裁を加えたいと思うのは当然。私は『オリエント急行殺人事件』よりも映画『親切なクムジャさん』を思い出しました。さすが東野圭吾だけど、やっぱり足りないんですよね、ギューッと胸を絞られるような切なさが。当人たちの気持ちを思えば十分切ないか。
読了日:01月31日 著者:東野 圭吾

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『コーダ あいのうた』

『コーダ あいのうた』(原題:Coda)
監督:シアン・ヘダー
出演:エミリア・ジョーンズ,エウヘニオ・デルベス,トロイ・コッツァー,フェルディア・ウォルシュ=ピーロ,
   ダニエル・デュラント,エイミー・フォーサイス,マーリー・マトリン,ケヴィン・チャップマン他
 
TOHOシネマズ西宮にて4本ハシゴの2本目。
 
大好きだったフランス作品『エール!』(2014)をアメリカでリメイク。
本作を観るまで、聴覚障害者の両親を持つ子どものことを“coda”と呼ぶとは知りませんでした。
 
アメリカ・マサチューセッツ州の海辺の町に暮らす高校生ルビー。
両親も兄も耳が聞こえず、家族の中で健聴者は彼女のみ。
おかげでルビーは幼い頃から家族のサポート役として毎日を生きている。
家業の漁業はもちろんのこと、家族には何から何までルビーのサポートが必要なのだ。
 
高校の新学期、片想い中の相手マイルズが合唱部に入ろうとしているのを知り、
ルビーも合唱部への入部を希望する。
ルビーは歌うことが大好きで、船でも家でも歌声を響かせてきたが、家族は音楽とは無縁。
人前では歌ったことがなくて、せっかく入部した合唱部から一度は逃走してしまう。
 
それでもやはり歌いたいと顔を出したルビーは、
名門音楽大学バークリー出身の顧問ベルナドに歌への思いを打ち明ける。
ルビーの歌を聴いたベルナドは彼女に類稀なる才能を見いだし、
バークリーを目指すよう熱心に勧めるのだが……。
 
主人公の女子高生の両親と兄を実際に聴覚障害者の俳優が演じています。
母親役のマーリー・マトリンは『愛は静けさの中で』(1986)で一躍有名になりましたが、
映画ではその後ほぼお見かけした記憶がないので、私の中では一発屋のイメージでした。
あちこちのTVドラマシリーズに出演されていたとは知らず、すみません。
 
両親に終盤までイライラさせられます。
子どもが生まれるとき、健聴者だとわかるとガッカリするものなんですか。
耳が聞こえることで、この子とはわかりあえないかもしれないと思う。
子どもが五体満足でありますようにとか、そう望むのが当然かと思っていたので、
がっかりしたという言葉は衝撃的です。
 
娘がどれほど音楽が好きで、歌いたいと思っていても、その歌は家族には聞こえない。
だから、両親にとって音楽は無意味だし、無意味なことをするぐらいなら、
自分たちのために家に残ってサポートをし続けてほしいと思う。
音楽への道を進みたいけれど、家族を見捨てることはできないとあきらめるルビーに、
兄だけは「自分を犠牲にするな。やりたいことをやれ」と怒ります。
 
聴覚障害者たちの中にいれば安心だと、ルビーに頼りっきりで、
健聴者と積極的につきあってこなかった両親。
ルビーが歌うとき、すべての音が消し去られ、客の反応から娘の歌を知る父親の顔が印象的です。
ルビー役のエミリア・ジョーンズの歌声は本当に素晴らしい。
 
どこの国でリメイクしてもよさそうな話です。
とはいうものの、日本ではリメイクしてほしくないかな(笑)。
 
オススメです。

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