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『メイ・ディセンバー ゆれる真実』

『メイ・ディセンバー ゆれる真実』(原題:May December)
監督:トッド・ヘインズ
出演:ナタリー・ポートマン,ジュリアン・ムーア,チャールズ・メルトン,コーリー・マイケル・スミス,
   エリザベス・ユー,ガブリエル・チャン,パイパー・クールダ,D・W・モフェット他
 
今月はほぼ毎週足を運んでいるなんばグランド花月。
この日は連休の中日で、夜の回を予約していました。
飲酒する予定もないので車で向かい、黒門市場の東側のコインパーキングへ。
いつもはどこなと空いているのに、どこもかしこも満車でしばらくうろうろ。
ようやく残り1台空いているところを見つけて駐車。
TOHOシネマズなんばで2本ハシゴの1本目。
 
“May December”は親子ほど年齢差のあるカップルを指すそうです。
5月と12月では確かに半年の開きがあるけれど、
別にその月じゃなくてもよかろうに、なぜ5月と12月が選ばれたのでしょうね。
“May and December affair”なんて言葉もあり、これは「年齢差のある不倫」の意らしい。
 
フィクションではありますが、1990年代の事件がモチーフになっています。
実際の事件は、夫も子どももいるメアリー・ケイ・ルトーノーという36歳の女性教師が、
自らの生徒だった13歳の少年ヴィリ・フアラアウと性行為に及び、児童レイプの罪で逮捕されました。
ヴィリとは二度と会わないことを誓って減刑されましたが、メアリーはすでに妊娠中で出産。
また、執行猶予期間中に約束を破ってヴィリと会い、再び妊娠して獄中出産します。
メアリーの出所後、成人していたヴィリと結婚したことも大きな話題となりました。
 
トッド・ヘインズ監督が面白いのは、単にこの事件を再現したわけではないところ。
もっとも、同事件をモチーフにした作品としては『あるスキャンダルの覚え書き』(2006)があるので、
同じアプローチではリメイクみたいになっちゃいます。ヘインズ監督はそんなことはしない。
 
かつて全米を揺るがせたメイ・ディセンバー事件から23年が経過。
当事者のグレイシー(ジュリアン・ムーア)とジョー(チャールズ・メルトン)は、
長女オナーとその弟妹で双子のチャーリーとメアリーと、良い関係を築いているように見える。
 
このたび、あの事件の映画化が企画される。
人気女優のエリザベス(ナタリー・ポートマン)がグレイシーの役を演じることになり、
役作りのためにグレイシーと関係者に取材にやってくるのだが……。
 
という物語になっています。
 
実際のメアリーとヴィリは教師と生徒というつながりでしたが、
本作では共にペットショップで働いており、店の倉庫で事に及んでいたという設定。
 
エリザベスはこの役のオファーを受け入れたものの、
やはり心の奥底ではグレイシーのしたことを嫌悪しているように見えます。
あんなことをしたくせに恥の意識がまるでなさそうだとグレイシーを密かに見下し、
現在自分と同い年のジョーに興味を示してふたりきりになるチャンスを狙う。
だけど、グレイシーも本当はいろいろと傷ついて神経質になっている。
 
この事件のことを世間の人はどう思っているのでしょう。
私はやっぱりグレイシーを責めずにはいられません。
どっちが誘ったんだか知らないけれど、相手は10代前半の男子ですよ。
ヤラせてくれる女性が目の前にいたら、そりゃなんぼでも、となるでしょう。
それを愛し合っていると思うかもしれないけれど、ヤラせてくれるから会うわけで、
一緒にいるだけで幸せだなんてことにはならないし、考えてもみないと思います。
エリザベスがやってきたのをきっかけに、それを考えるようになったジョー。
 
実在のメアリーとヴィリが今も仲睦まじく暮らしているならともかく、
結婚十数年が経ったときにヴィリのほうから離婚を申し立てています。
それから数年後にはメアリーが病に倒れて他界。
結局、みんな傷ついている。良い人生だと思ったかどうかは本人にしかわからないけれど。

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『Shirley シャーリイ』

『Shirley シャーリイ』(原題:Shirley)
監督:ジョゼフィン・デッカー
出演:エリザベス・モス,マイケル・スタールバーグ,オデッサ・ヤング,ローガン・ラーマン他
 
祇園でひとり晩ごはんの前に京都シネマで2本ハシゴの2本目。
 
実在の作家シャーリイ・ジャクスンをモデルにした作品なのですが、私はこの作家を知らなくて。
1918年サンフランシスコ生まれの女流作家で、2008年には彼女の名前を冠した賞も創設されています。
本作で彼女を演じたエリザベス・モスが本物の彼女の写真とそっくりすぎる。
 
1948年、アメリカ合衆国北東部、バーモント州南部最大の町ベニントン。
作家のシャーリイ・ジャクスンは短編『くじ』が話題を呼び、名作家に。
しかし彼女の性格には大いに問題があり、夫でベニントン大学の教授であるスタンリーは困っている。
シャーリイは家から一歩も出ず、自宅に人を招いてパーティーを開けば辛辣すぎる物言い。
誰もが彼女を偏屈とみなしているうえに、今は執筆もまるで進んでいない。
 
そこでスタンリーは新任の助手フレッドとその妻ローズを利用することを思いつく。
しばらく家に滞在させる代わりに、ローズにシャーリイの世話をしてほしいと。
何をしでかすかわからぬシャーリイを見張って、家事も引き受けることになったローズ。
 
フレッドにすら内緒にしていた妊娠をシャーリイから暴露され、
その後もいちいち棘のある言葉を投げかけられ、ローズは悔しさでいっぱいだが、
今がフレッドの昇任のチャンスだとこらえるしかない。
 
ところがローズの存在がシャーリイにインスピレーションを与え、滞っていた執筆が進みはじめる。
シャーリイが新しい長編小説の題材として選んだのは、
ベニントン大学に通う18歳の少女ポーラが突如消息を絶った未解決失踪事件
ローズの協力によりポーラの情報を入手したシャーリイは……。
 
エリザベス・モスの演技が圧巻。
また、ローズを演じるオデッサ・ヤングも抜群です。
可愛いだけの妻だったローズが逞しくなると共に美しくなる。
それに引き換え、下衆なスタンリーと実は平々凡々すぎるフレッド。
こんなのに惹かれる女子学生たちもどうなっているんだか。
 
シャーリイの小説をぜひ読んでみたいと思っていますが、きっと相当変なんだろうなぁ。
凡人が読んでも理解できない作品のような気がして。『くじ』にはチャレンジしてみます。

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『潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断』

『潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断』(原題:Comandante)
監督:エドアルド・デ・アンジェリス
出演:ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ,マッシミリアーノ・ロッシ,ヨハン・ヘルデンベルグ,
   シルヴィア・ダミーコ,ジュゼッペ・ブルネッティ,ヨハネス・ヴィリックス他
 
祇園でひとり晩ごはんの前に京都シネマで2本ハシゴ。
と言っても、とても観たい作品があったわけではなく、これもノーマーク。
戦争中の話は気が重たくなるし、時間が合わなければスルーしていたはず。
ほとんどこれしか時間が合わなかったおかげで観られたことに感謝。
 
イタリア/ベルギー作品。実話に基づく。
 
第二次世界大戦下、海へと出たイタリア海軍の潜水艦“コマンダンテ・カッペリーニ”。
艦長は以前の赴任地で大怪我を負い、鉄のコルセットを着用しているサルヴァトーレ・トーダロ。
怪我を幸いに退役して傷病年金を受給することを妻のリナは望んだが、
海の男でありつづけたいサルヴァトーレはそれを拒み、海へと戻ったのだ。
 
副長はサルヴァトーレと共に瀕死から蘇ったヴィットリオ・マルコン。
60名近い乗組員を従えて出航、敵の撃沈を目指して進む。
 
ある夜、前方にベルギーの貨物船“カバロ”を発見。
向こうから攻撃を仕掛けてきたため、応戦してカバロを撃沈する。
するとやがてカバロの乗組員たちが漂流しているのに遭遇。
 
ベルギーは中立国であるにもかかわらず、イギリス軍の物資を積載して運んでいたらしい。
明らかなる敵を自艦に乗せることは許されず、
もしもそんなことをすればサルヴァトーレは責任を問われて大問題になる。
悩み抜いた末、彼らを助けることに決めたサルヴァトーレだったが……。
 
私は潜水艦オタクでもないし、兵器オタクでもなければ戦争にも詳しくないから、
この戦争描写がどれぐらいリアルなのか、またはリアルではないのかはわかりません。
その辺りに詳しい人が観たら、ちゃんちゃらおかしいということになるのかも。
 
しかも、言うなればわかりやすい美談。
でもこれがよかったんだなぁ。
 
いつ死ぬかもわからない状況下で音楽を聴き、皆で食事を共にする。
イタリア料理のレシピをすべて知っていると豪語する若き料理長ジジーノは、
艦長のリクエストに応じて何でも作ってみせます。
「ニョッキ」と言われたときに、「セモリナか小麦粉かどっちですか」と真剣に聞くシーンは笑った。
「どっちでもええ」と言われるんですけど。
 
救出されたカバロの乗組員の大半は感謝しているけれど、2人だけ、そうではない奴もいる。
サルヴァトーレらをファシスト呼ばわりして、カッペリーニを沈めようとしたりも。
そのときにカバロの艦長ヴォーゲルが見せる怒り。
 
たとえ敵であろうともここは海。
サルヴァトーレの決断は誇り高く、それに従った乗組員たちも誇り高い。
救出したせいで艦内は座ることもできないほど人があふれ、甲板までいっぱい。
イギリス軍海域を通過するさいに潜らなければ攻撃を受けるとなったとき、
潜れば甲板の人たちが死んでしまうからと、サルヴァトーレはイギリス軍に停戦を求めます。
そんなことが聞き入れられるわけがないと思っても、やってみなきゃわからない。
事実、驚くべきことにそれが聞き入れられて、カッペリーニは攻撃を受けずに通過します。
 
それに尽きるのではないでしょうか。
 
エンドロールではジジーノが延々と料理の名前を挙げ続ける声が(笑)。
ズッパ(イタリア語でスープ)なんたらという料理、どんだけ多いねんと笑ってしまった。

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『密輸 1970』

『密輸 1970』(原題:Smugglers)
監督:リュ・スンワン
出演:キム・ヘス,ヨム・ジョンア,チョ・インソン,パク・ジョンミン,キム・ジョンス,コ・ミンシ他
 
イオンシネマ茨木にて、前述の『お母さんが一緒』の次に。
 
予告編を観て以来、絶対面白いに違いないととても楽しみにしていた作品です。
まんま実話なのかと思って観はじめたけれど、さすがにそれは無理だろうと観ながら思う。
かつて韓国の沖合で密輸犯罪がおこなわれていたという史実に基づいているそうで、
モチーフにしたという程度なら納得。仰天の実話というのは言い過ぎかと。
だけど、史実をモチーフにしてここまで面白くできるのが凄い。
 
舞台は1970年代、韓国ののんびりとした漁村クンチョン。
漁業が主のこの村では、女性陣も有力な稼ぎ手。
海女として海に潜ると魚介類を獲って生計を立てていたが、
近隣に建つ化学工場から流れ出る汚水のせいで漁獲量が激減する。
 
そんなときに持ち込まれたのが、密輸に関わる話。
日本製の食品や海外の宝飾品など、一旦海に沈めた密輸品を彼女たちが引き上げるのだ。
違法行為に手を染めることに躊躇はあるものの、金は必要。
海女のリーダーであるジンスクは、自分の父親を説得して船を出してもらうことに。
引き受けてみると密輸品の引き上げは意外と簡単。
一気に暮らしが潤い、海女たちは大喜びで街へと繰り出すようになる。
 
ところがある日、密輸品の引き上げ中に税関の摘発に遭い、
すべて没収されたうえに、ジンスクの父と兄が海へ転落して死亡。
船から即逃亡した海女のひとりチュンジャを除く全員が逮捕されて刑務所送り。
税関に密告したのはチュンジャだという噂が流れる。
 
それから数年が経ち、ジンスクらは出所するが、もう仕事はない。
男性たちの衣類の洗濯などでわずかな金を受け取るのみ。
乳飲み子を抱える者が無理をして海へ出て、サメに襲われる事故も起きる。
 
皆で困り果てていたところに戻ってきたのがチュンジャ。
ソウルで派手な生活を送っていたとおぼしき彼女は、
ジンスクの父亡きあと漁の仕事を引き継いでいたドリの前に姿を現わすと、
ソウルで密輸を仕切るクォンとの取引をドリに持ちかける。
その取引には海女たちの力が必須で……。
 
予告編を観たときは、韓国作品らしく笑えるシーンも多そうに思いましたが、
コミカルなシーンは想像していたほど多くはなく、わりとシリアス。
笑いが少ないのは拍子抜けでしたが、それでも凄く面白かった。
 
チュンジャの裏切りだったのかどうかという点は最初にまず気になるところですが、
序盤の彼女を見ていると、相当嫌な女で、こいつなら平気で裏切りそうだと思う。
けれども話の展開として実はそうではないというふうになるはずで、
実際、チュンジャはそんなことはしないだろう、黒幕ありだなと思いはじめます。
 
チュンジャとジンスク、そして村の喫茶店の若いママ、オップンが協力し、
みごと敵を出し抜く流れが痛快。
最後まで適度にハラハラしながら、でもこれは絶対ハッピーエンドになるはずだから安心。
 
チュンジャ役にキム・ヘス、ジンスク役にヨム・ジョンア、オップン役にはコ・ミンシ
クォン役にはチョ・インソン。この人、モデル出身なのですよね。イケメン。
そして憎き税関のオッサン役はキム・ジョンス。名バイプレイヤー
 
やっぱり面白いよねぇ韓国映画。と思うと共に、綺麗な海が戻ることを祈る。

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『お母さんが一緒』

『お母さんが一緒』
監督:橋口亮輔
出演:江口のりこ,内田慈,古川琴音,青山フォール勝ち他
 
封切り日の夜の回をイオンシネマ茨木にて。
 
原作はペヤンヌマキ主宰の演劇ユニット“ブス会*”の同名舞台劇
橋口亮輔監督がTVドラマシリーズ化してCSチャンネルで放映。
それを劇場用に再編集した映画版なのだそうで、
「ホームドラマチャンネル開局25周年記念オリジナルドラマ」との触れ込みです。
 
「お母さん」の姿は冒頭で車の中に薄ぼんやり映るだけ。
もとが舞台劇らしく、物語は必要最低限の人数で進んで行きます。
 
母親の誕生日を祝うため、親孝行のつもりで温泉宿に連れてきた三姉妹
長女の弥生(江口のりこ)は容姿にコンプレックスを持ち、
美人と言われてちやほやされてきた次女の愛美(内田慈)に嫌味を言い通し。
一方の愛美は愛美で、優等生の弥生と常に比較されたことを根に持っている。
 
男性と交際経験がまったくないままで見合い結婚をした母親は、
いつも父親の悪口を娘たちに聞かせ、ネガティブな発言ばかり。
そんな母親に嫌気が差して、弥生と愛美は早々に実家を出た。
そのあと母親の面倒を見つづけてきたのが三女の清美(古川琴音)。
 
実は今回の旅行で清美が母親に用意したプレゼントは、自分の結婚宣言。
いきなり母親に会わせるわけにもいかないから、まずは姉たちに紹介しようと、
宿に到着後、相手のタカヒロ(青山フォール勝ち)を呼び寄せる。
 
ところが、まさか清美が結婚を考えているとは想像もしていなかった姉たちは仰天。
祝福してくれるどころか思いとどまるように言われて清美も憤慨し……。
 
江口のりこと内田慈の演技は予想できることでしたが、
古川琴音もこんな役を演じられるとは意外。でもピッタリ。
それぞれの外見と中身(は実のところは私らにはわからないけれど)がハマり、
とても面白いドラマに仕上がっています。
 
もともと橋口監督の作品は好きですが、やっぱり好きだなぁと再認識。
弥生のひがみっぷりが物凄いのと、愛美の色目使いがなかなかキモいのとで、
序盤は鬱陶しくなったりもしたけれど、それもこれも演技が上手いから。
 
男性と女性の思考回路が異なるというのを私に教えてくれたのはこの映画ですが、
男は「それはそれ、これはこれ」で考えられるということが、
青山フォール勝ち演じるタカヒロを見ているとよくわかります。
彼の台詞の中で、「思い詰めて夜に考えたことはたいてい間違っている。
大切なことは太陽の出ているときに考えたほうがいい」がとても心に残りました。
 

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