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『箱男』

『箱男』
監督:石井岳龍
出演:永瀬正敏,浅野忠信,白本彩奈,佐藤浩市,渋川清彦,中村優子,川瀬陽太他
 
なんばパークスシネマで『エア・ロック 海底地球避難所』『ソウルの春』を観終わった時点で20時半。
帰ろっかな~、でももう1本観る元気はないでもないな~と思い、本作も観ることに。
 
原作は1973(昭和48)年に発表された安部公房の同名小説。
未読ですけれども、始まった瞬間に芥川賞作家の作品だなぁと思いますよね。
監督は石井岳龍(聰亙)。この人も芥川賞作品を好んで映画化する監督。
 
もとは冷蔵庫が入っていたとおぼしき段ボール箱をかぶって生きる男(永瀬正敏)。
何者かが彼を撮影する一方で、彼を追いかけ回して攻撃してくる者もいる(渋川清彦)。
ある日、怪我をした彼の段ボール箱に手紙を投げ込んだ女(白本彩奈)から、
近くに病院があると教えられて診察を受けに行ってみると、そこには偽医者(浅野忠信)がいた。
 
男はすぐに偽医者が自分を助けるふりをして襲ってきた者だと気づく。
偽医者は病で動けない本物の軍医(佐藤浩市)の世話をする身で、
箱男になりたがっている軍医に代わり、偽医者が男のことを調べていたらしい。
 
やがて軍医が死亡すると、偽医者は自分こそが箱男になろうとする。
ひとつの町にふたりの箱男は要らぬと、生死をかけた攻防が始まるのだが……。
 
何度も繰り返される「箱男を意識するものは箱男になる」。
実際、本作の中では取り憑かれたように皆が箱男になりたがる。
目の部分だけ開けられた穴から外を覗き、女性たちの脚を描く。
妄想をノートに書いて書いて書き続けているわけですが、妄想なのか現実なのかもわからなくなってきます。
 
面白い世界だとは思うけれど、私は箱男にはなりたくない。
安部公房も石井監督もアタマおかしい。失礼な言い方ですみません。でも凡人には理解不能。
また、これを理解できるようになりたいとも思いません。凡人でええし(笑)。

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『ソウルの春』

『ソウルの春』(英題:12.12: The Day)
監督:キム・ソンス
出演:ファン・ジョンミン,チョン・ウソン,イ・ソンミン,パク・ヘジュン,キム・ソンギュン,
   チョン・マンシク,チョン・ヘイン,イ・ジュニョク,キム・ウィソン,チョン・ドンファン他
 
なんばパークスシネマにて、前述の『エア・ロック 海底緊急避難所』の次に。
 
「ソウルの春」とは「プラハの春」に由来する言葉です。
1979年10月26日、独裁政治で国民を苦しめていたパク・チョンヒ大統領が暗殺されました。
この事件については『KCIA 南山の部長たち』(2020)を観るとわかりやすい。
独裁者が暗殺されたことからにわかに民主化への期待が高まり、「ソウルの春」が謳われたのに、
同年12月12日、チョン・ドゥファンがクーデターを成功させて全権を掌握。
民主化は遠のき、のちに『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017)で描かれる光州事件が起きることになります。
本作はクーデターが画策されるまでと実行されてからの様子を描いた、実話に基づくフィクション。
実在の人物の名前は用いずに仮名が使われています。
 
パク・チョンヒ大統領暗殺事件に国中が動揺しつつも民主化への期待に沸く韓国。
そんななか、暗殺事件の捜査を指揮することになったのは、チョン・ドゥグァン保安司令官(ファン・ジョンミン)。
チョン・ドゥグァンは民主化を嫌い、自らが新たな独裁者となることを目論む。
 
そんなチョン・ドゥグァンの暴走を懸念する陸軍参謀総長チョン・サンホ(イ・ソンミン)は、
首都警備司令官にイ・テシン(チョン・ウソン)を任命。
出世にまるで興味のないイ・テシンは無欲で高潔な人物。
チョン・サンホからの話を断るが、ソウルを守れるのは君しかいないと懇願され、受けることに。
 
もともとイ・テシンに敵対意識を持つチョン・ドゥグァンにはそれが面白くない。
イ・テシンを買うチョン・サンホもろとも潰しにかかろうと、
チョン・サンホこそがパク・チョンヒ大統領暗殺事件に関わる人物だとして、
チェ・ハンギュ大統領の裁可を得ようとする。
 
チョン・ドゥグアンの息がかかる将校たちは、まずはチョン・サンホを拉致するのだが……。
 
なんとしんどい話なのか。
毎度韓国のこういう作品を観ると思うことですが、独裁政権が怖すぎる。
民主化のいったい何を恐れているのか。
全権をひとりで持つことを目論み、それに群がる腰ぎんちゃくたち。
しかも国防長官の情けないことといったら。
ここに果たして信頼関係はあるのかどうか不思議です。
 
軍人や政治家全員が悪いわけではない。清い政治を目指している人もきっといる。
でもそのたびに自分のことしか考えていない人たちに飲み込まれ、拷問され、死んでゆく。
腹立たしいのは、悪い奴が長生きするってところです。
 
軍事内秘密組織の「ハナ会」ってきっとまだあるのですよね?
民主化を阻もうとする人たちが世の中に存在し続ける。
武力を持って人を圧しようとすること。とても怖い。

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『エア・ロック 海底緊急避難所』

『エア・ロック 海底緊急避難所』(原題:No Way Up)
監督:クラウディオ・ファエ
出演:ソフィ・マッキントッシュ,ウィル・アッテンボロー,ジェレミアス・アムーア,マヌエル・パシフィック,
   グレイス・ネッテル,ジェームズ・キャロル・ジョーダン,フィリス・ローガン,コルム・ミーニイ他
 
京都へ墓参りに行くために休みを取った日、帰ってもどうせ暑いだけだからとなんばパークスシネマへ。
 
絶対B級だとわかっていてもスルーできないんです、海洋パニックもの
『海底47m』(2017)の製作陣がまたしても手がけているという。
それにしても“海底47m”シリーズの製作陣がらみって多くないですか。どんだけ活躍しとるねん。
 
ロサンゼルス国際空港。
親友同士のジェドとカイルは、ジェドの恋人エヴァと共にメキシコリゾート地ロス・カボス行きに搭乗。
エヴァと過ごす時間を楽しみにしていたのに、彼女は州知事の娘だから、
娘のことを心配する父親がボディガードのブランドンも同行させることを決める。
ブランドンが気を利かせて帰ろうとするも、エヴァは「今日は嫌な予感がする」と言って同行を頼む。
 
無事に離陸したかと思いきや、途中、鳥と衝突してエンジンが炎上する。
ドアや窓が吹っ飛び、シートベルトを着けていなかった乗客はそのまま空へ。
旅客機はそのまま海へと墜落、機体はどんどん水中を進み、岩盤に当たって止まる。
 
生存者はエヴァとジェド、カイル、ブランドン。10歳の少女ローザとその祖母ナナ。
そして男性客室乗務員のダニーロの7名のみ。
ブランドンの的確な指示により、なんとか生存に望みをかける彼らだったが、
利用できそうなものを調べに行ったブランドンがサメに襲われて死亡。
彼が残した言葉を思い返しながら、生きて帰る方法を模索するエヴァたちは……。
 
原題は“No Way Up”、「上がれない」ですよね。
「海底緊急避難所」なんて副題が付いているから、海底にそういう建物でもあるのかと思っていました。
そんなものがあるはずもなく、生存者は機体後部のエア・ロック(小部屋)で策を練ります。
密閉空間で安全かというとそんなこたぁない。機体がちぎれているからごく近くまでサメが来る。
 
唯一私が名前を知っていた俳優がコルム・ミーニイで、彼がブランドン役。
デブデブの体に似つかわしくないほど(失礼)機敏で、さすがボディガードと言えるほど洞察力もある。
こんな人がついていてくれたら安心なはずが、思いのほか早く死んでしまいます。
 
州知事の娘が乗っていたとあって、捜索は相当大がかり。
海上に散らばる機体のかけらが発見されて安泰と思ったら、
助けに来たダイバーたちもあっさりサメに襲われちゃって、あらら(笑)。
 
想定内の展開ではあるけれど、私はやっぱり好きだなぁ。
生存者もまぁそうなるわなという3名。
 
サメは泡を嫌うから泡を出していれば襲われないって本当ですか。
役に立つときがあるかどうかわからんけど。
てか、そんなものが役に立つような場所には行きたくありません。(^^;

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2024年8月に読んだ本まとめ

たった3冊しか読めませんでした(泣)。
映画を観る本数を減らしてその時間を本に注ぎ込むほうが良いかしら。
2024年8月の読書メーター
読んだ本の数:3冊
読んだページ数:862ページ
ナイス数:523ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly/2024/8
■みんなのヒーロー (幻冬舎文庫 ふ 40-1)
人気俳優だったのはほんの一瞬。すっかり落ち目になった主人公が、大麻を吸ってラリったまま運転した車で人を轢いたところを、デブでブスのファンに見られてしまうという不幸。結婚してくれなければ轢き逃げを暴露すると脅されて地獄の日々が始まります。しかしまるで同情に値しないクズ男。脅す女のほうもえげつない。著者は元芸人の藤崎さんだから、登場人物や番組名はパロディのオンパレード。そこの部分は面白いものの、相当嫌な話。みんなのヒーローはいったい誰さ。できれば『お梅は呪いたい』のお梅にこの人たちを呪ってもらいたい。(^^;
読了日:08月11日 著者:藤崎 翔
https://bookmeter.com/books/21919038
■復讐の泥沼 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
ここ最近どころかここ数年に読んだ本の中でいちばん嫌なオチでした(笑)。冒頭からなんだこの女は!と思う。事故現場で自分と一緒に居た相手が死んでしまったからって、居合わせた医者らしき人物を憎むなんて逆恨みもいいところ。以降も主人公である彼女のぶっ飛び言動のせいで好きになれないまま進んだかと思うと、彼女が追う男のほうも驚くべき性質の持ち主。それでも彼の不幸な生い立ちを思えば致し方ない気もして、最後は彼を応援しかけていたのですけれど。えーっ。こんな女がいたら本気で怖い。泥沼に突っ込んで二度と出てこないでください。
読了日:08月13日 著者:くわがきあゆ
https://bookmeter.com/books/22056156
■眠れぬ夜のご褒美 (ポプラ文庫 ん 1-17)
美味しいものが出てくる話には無条件に飛びついてしまうところがあります。それがもしもたいした話じゃないとしても、料理を想像しただけで心が満たされるからいいやって。本作はたいした話じゃないとは言わないけれど、各話のタイトルだけでもう満足。どこか1軒行ってみたいところを挙げるとしたら丑三つ時の寺でしょうか。ウチのダンナは化学調味料アレルギーですが、「正しくないラーメン」のほうが旨いという点には賛同すると思います。面白いと思ったのは「ワケアッテ」。なるほど、「訳あり」じゃなくて「分け合って」。そのほうが断然いい。
読了日:08月26日 著者:標野 凪,冬森 灯,友井 羊,八木沢 里志,大沼 紀子,近藤 史恵
https://bookmeter.com/books/22011622

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『クレオの夏休み』

『クレオの夏休み』(原題:Ama Gloria)
監督:マリー・アマシュケリ
出演:ルイーズ・モーロワ=パンザニ,イルサ・モレノ・ゼーゴ,アルノー・ルボチーニ,
   アブナラ・ゴメス・ヴァレラ,フレディ・ゴメス・タヴァレス,ドミンゴス・ボルゲス・アルメイダ他
 
昨年の3月からずっと、毎月最終日曜日の晩に動物園前の動楽亭でおこなわれる落語会に行っていました。
若手落語家の笑福亭笑利さんの“20ヶ月連続古典落語根多下ろし公演”。
毎月ネタ下ろしだなんて無謀なことをするもんだと思っていましたが、応援したくて皆勤賞を目指す。
ところが今年3月に母が倒れて入院、その月はさすがに行けず、皆勤賞が消えました。
翌4月に母が亡くなり、実家の片付けなどに追われて動物園前からは足が遠ざかる。
 
母が存命だったときは、動物園前に行くたびに「今から寄席だよ」「楽しんでね」とか、
終演後に「帰るね」「気をつけて。おやすみ」などと電話やLINEのやりとりをしていたものだから、
そのときのことを思い出すと妙に寂しくなってますます足が遠のく。
そろそろ行こうかなと思ったときにはチケットが完売していたりして、
あぁ、このまま私は笑利さんとオサラバかしらなどとも思っていました。
 
しかしあんなに応援したいと思っていたのに、このままサヨナラでいいのかと思い直し、
8月は久しぶりに行ってみることにしました。
演目は聴きたかった『皿屋敷』だし、ゲストのアキナはまだ生で見たことがなかったし。
 
結果、思いきって行ってよかった。やっぱり応援したい噺家さんです。
 
で、動物園前に行く前に映画を1本ぐらい観たいと思い、シアターセブンへ寄りました。
 
フランス作品。
監督はこれが長編デビュー作となるマリー・アマシュケリ。
クレオを演じるルイーズ・モーロワ=パンザニはこれまで演技未経験者らしい。
なんですかこの愛らしさは。もう今から彼女の今後が楽しみで楽しみで。
 
生まれてすぐに母親を亡くした6歳の少女クレオ。
アフリカ・カーボベルデ出身の女性グロリアがナニー(乳母)として彼女を育てている。
クレオはグロリアのことが大好きでたまらない。
 
ところがある日、グロリアの母親が亡くなったと連絡が入る。
故郷に我が子を残したままパリに来ていたグロリアは、これを機会に里帰り。
もうフランスに戻ってくることはないと言う。
悲しみに暮れるクレオに、グロリアは夏休みに遊びに来るように言い残す。
 
グロリアと約束したのに、クレオがひとりでカーボベルデに行く話をなかなか進めてくれない父親。
クレオから嘘つきと責められ、ついに父親も決心。
遠くカーボベルデのグロリアに会いに行き、ひと夏を過ごすクレオだったが……。
 
どうしたらこんないい子に育つのだろうと思うくらい、クレオは愛らしい子。
「子どもらしい」という言い方は語弊があるかもしれませんが、
ませて子どもらしくない子どもじゃなくて、めちゃめちゃ子どもらしい子ども。
 
シングルファーザーの父親も、出番は多くないけれど善人だとわかる。
父親とクレオのやりとりも思わず微笑んでしまう素敵なものです。
こういうシーンを見ると、人にまかせっぱなしにせず、でもまかせられるところはまかせて、
子どもの表情をよく見ながら日々を送るのがいかに大切かわかるような気がします。
 
カーボベルデに行くと、そこにはグロリアだけではなく、彼女の家族がいる。
長女はすでに大人で妊娠中。心にも余裕があるからクレオにも優しい。
だけど長男のセザールはまだ少年で、生まれたときから不在だった母親がいきなり帰ってきたうえに、
よその国でまるで我が子のように育てたクレオが遊びに来たものだから面白くありません。
 
やがて長女が出産すると、グロリアも孫の面倒ばかり見るようになる。
赤ちゃんは可愛い。でもグロリアを赤ちゃんに取られたような気がして、クレオは時に暴挙に出てしまう。
それがいけないことだとクレオはわかっていて、泣きじゃくる姿はたまりません。
 
こんなに幼いのに、きっと母親のことなんて何も覚えていないだろうに、母親のことを大事に思う気持ち。
それを演技で表現出来るこの少女は、いったいどんな感受性の持ち主なんだと驚きます。
 
少女のひと夏の思い出を描いた作品って、「珠玉の」と言いたくなるものが多いですね。
『コット、はじまりの夏』と並んで好きな作品になりました。

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