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『シサム』

『シサム』
監督:中尾浩之
出演:寛一郎,三浦貴大,和田正人,坂東龍汰,平野貴大,サヘル・ローズ,
   藤本隆宏,山西惇,佐々木ゆか,古川琴音,要潤,富田靖子,緒形直人他
 
イオンシネマ茨木にて。
 
寛一郎の顔がちょっと苦手でパスしようかと思っていましたが、親の七光りという感じでもなくなり、
『ナミビアの砂漠』の勘違い男の役もなかなかよかったからやっぱり観る。
 
北海道が蝦夷地と呼ばれていた江戸前期、松前藩の収入の柱となっているのはアイヌとの交易。
松前藩士・高坂孝二郎(寛一郎)の家も、アイヌとの交易を生業とする。
父親が亡くなり、息子たちに期待を寄せる母親(富田靖子)に応えようと、
孝二郎は初めて兄の栄之助(三浦貴大)と共に交易の旅に出る。
 
蝦夷地に足を踏み入れた夜、荷をあらために行った栄之助が戻ってこない。
すると、栄之助がいるはずの小屋から火の手が上がり、そこには首を斬られた栄之助が倒れていた。
使用人の善助(和田正人)の仕業だ、奴を追えと言い残して息を引き取る栄之助。
 
森の中で善助と向かい合う格好になった孝二郎は、攻撃を受けて川に転落。
目が覚めるとそこはアイヌのコタン(=村)だった。
アイヌの人々から手厚く介抱された孝二郎は、しばらくここにとどまることになり……。
 
「シサム」とはアイヌの言葉で「よき隣人」の意味なのだそうです。
当時の日本人はアイヌの人々のことを「蝦夷」と呼んでおり、
孝二郎も同じように呼んでいましたが、それが心ない蔑称だと知る。
「人」を意味する「アイヌ」と呼び方を変えると同時に、彼らへの認識も変化を見せます。
 
善助がなぜ栄之助を殺してしまったのかが明らかになると、
兄の敵を討ちたい気持ちが消えたわけではないけれど、松前藩の過ちを正さねばならないとも思う。
実話を基にしたフィクションとのこと、本当に孝二郎のように行動した人がいたのでしょうかね。
 
戦いは世界のどこかで今も必ず起きていることだけど、刃を向け合わずになんとかならないものなのか。

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『ぼくのお日さま』

『ぼくのお日さま』
監督:奥山大史
出演:越山敬達,中西希亜良,山田真歩,潤浩,若葉竜也,池松壮亮他
 
仕事帰りにテアトル梅田で2本ハシゴの2本目。
 
奥山大史監督の前作『僕はイエス様が嫌い』(2019)はとても苦手でした。
なんだか宗教色が濃かったのを覚えています。
本作もそんなだったらツライなぁと思っていましたが、予告編を観るかぎりそうではなさそうで。
ロケ地は北海道内各地とのこと。
 
スケートリンクがある北国の田舎町。

小学6年生のタクヤ(越山敬達)は軽度の吃音症ではあるもの、それが原因でいじめを受けたりはしていない。
しかし身体能力が高いとは言えず、夏の野球も冬のアイスホッケーもド下手で笑われる。
 
ある日、タクヤはフィギュアスケートの練習をするさくら(中西希亜良)にひと目惚れ。
彼女のように飛んだり回ったりしてみたいと、ひとりで練習を始める。
その様子に気づいたのが、さくらのコーチを務める荒川(池松壮亮)。
ホッケー靴のままでは無理だと、昔自分が使っていたスケート靴をタクヤに差し出す。
 
以降、みんながスケートリンクから帰ってから、荒川がタクヤの指導をするように。
荒川はふと思い立ち、さくらとタクヤにペアでアイスダンスに挑戦しないかと提案するのだが……。
 
これはかなり好きでした。
ゆるゆると穏やかに話が進むのかと思っていたら、想定外の厳しさ。
 
もともと一流のフィギュアスケーターだった荒川は都会で暮らしていましたが、
さくらの母親(山田真歩)から娘のスケート指導を請われ、この町にやってきます。
 
荒川はゲイで、家業のガソリンスタンドを継いだ五十嵐(若葉竜也)と同棲中。
ふたり仲睦まじく居たところをさくらが見かけてから暗雲が立ちこめる。
さくらには男同士の恋愛感情など理解できないから、
荒川がタクヤをフィギュアスケートに引き入れたのはタクヤをそういう目で見ているからなのではと考えます。
 
不潔、汚らしい、気持ち悪い。そんな感情を隠せず、荒川に毒を吐く。
見られていたことなど知らない荒川は、急に辞められて戸惑います。
ペアダンスの受験会場にさくらが現れてくれることを願いましたが叶わず。
 
荒川もタクヤも打ちひしがれているはずなのに、本作では誰も泣きわめいたりしない。
ただ現状を受け入れて、淡々と日々を過ごす。それが切ない。
 
いつかわかってくれる日が来ますように。
北海道の風景がとても美しいです。

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『チャイコフスキーの妻』

『チャイコフスキーの妻』(原題:Zhena Chaikovskogo)
監督:キリル・セレブレニコフ
出演:アリョーナ・ミハイロヴァ,オジン・ルンド・バイロン,フィリップ・アヴデーエフ,ミロン・フョードロフ,
   ヴァルヴァラ・シュミコワ,ウラジーミル・ミシュコーフ,アレクサンドル・ゴルチーリン他
 
仕事帰りにテアトル梅田にて2本ハシゴの1本目。
 
眠くなりそうで避けていたロシア/フランス/スイス作品なのですが、
その昔、が自分のお葬式ではチャイコフスキーの曲をかけてほしいと言っていたため、
ならばチャイコフスキーの映画を観ておこうと思い直して。
 
ロシアの天才作曲家と崇められるピョートル・チャイコフスキーは、
その妻アントニーナとの関係に苦しんだことで知られています。
と言っても私は知らなかったので、鑑賞前にウィキを読み、付け焼き刃の知識のみ。
 
ある宴に出席したさい、アントニーナは輪の中心にいたピョートルにひと目惚れ。
8つ上の彼になんとか振り向いてほしいと思い、ラブレターを送り続けると、
女性にはまるで興味のなかったピョートルがやってきて、
兄妹のような関係ということでよいならばとアントニーナに求婚する。
 
1877年に挙式して夫婦となるが、ピョートルにとっては苦痛でしかない時間が始まる。
彼に尽くそうとするアントニーナのことがただただ鬱陶しいうえに、
一応は地方貴族だった彼女が用意するはずだった持参金が聞いていた額と違う。
ひとりならば働かずともなんとかなっていた暮らしの質がどんどん下がり、
このままでは家ごとアントニーナに持って行かれそうだと考え、離婚を願う。
 
アントニーナの顔も見たくないピョートルは家を出たまま帰らず、
ふた月ともたずにふたりの結婚生活は破綻。
しかしアントニーナは「チャイコフスキーの妻」であることに固執して……。
 
演奏のシーンはほとんどないので、音楽映画をイメージして観に行くと残念に思うでしょう。
チャイコフスキーの即興演奏や、モスクワ音楽院に学んだアントニーナのささやかなピアノ演奏、
あとはいくつかの演奏会のシーンがあるのみです。
 
アントニーナは悪妻と言われているようですが、きっと誰と結婚してもチャイコフスキーは変わらなかった。
結婚そのものが彼には不向きで、家族も友人たちもそれをわかっているから、
別れるようにとアントニーナに忠告するけれど、彼女は聞き入れることができません。
 
そもそも彼女がここまで彼に入れ込む理由がわかりません。
ほかに類を見ない大人の男性を感じたからなのか、チャイコフスキーだから近づいたのか。
彼が偉大な音楽家だなんて私は知らなかったのよと言うけれど、嘘ですよね。
 
冒頭はチャイコフスキーの葬儀のシーンで始まります。
あくまで彼の妻としての存在感を放っていたかったのに、死んだ彼から顔も見たくないと言われる。
ここまで嫌われても愛し続けるのは、イカれているとしか言えないかも。
 
彼の死後はほとんど精神病院で過ごしたというアントニーナ。哀れです。
本作の鑑賞前日に観た『アビゲイル』では“白鳥の湖”が流れていたのが奇遇。
私がチャイコフスキーに呼ばれたか。

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『アビゲイル』

『アビゲイル』(原題:Abigail)
監督:マット・ベティネッリ=オルピン,タイラー・ジレット
主演:メリッサ・バレラ,ダン・スティーヴンス,キャスリン・ニュートン,ウィル・キャトレット,ケヴィン・デュランド,
   アンガス・クラウド,アリーシャ・ウィアー,マシュー・グード,ジャンカルロ・エスポジート他
 
TOHOシネマズ梅田にて、前述の『侍タイムスリッパー』を観たあと、歪な形状のシアター5へ。
こちらは100人も入らないところ、ほぼ満席。
この手のホラー作品は若者にたいそう人気のようで、2人連れはもちろんのこと5人連れも見かけました。
『侍タイムスリッパー』と上映シアターを逆にしてもよかったと思いますが、
あまり大きなシアターでホラーを観るのもなんだか違う気がするから、これが正解か。
 
余談ですが、今年同じタイトルの作品があったじゃん、たいして面白くなかったのに再上映するの?と思ったら、
それは『ARGYLLE/アーガイル』でした。全然ちゃうやん。(^^;
 
監督は“スクリーム”シリーズをはじめとするとことんホラーのコンビだから、私は無縁。
 
12歳の少女を誘拐する目的で集められた6人はそれぞれに得意分野があるが、お互い素性を知らない。
侵入先の家を見れば大富豪であることは歴然としているものの、いったい誰の家なのか。
とにかく少女を拉致することに成功し、6人は首謀者のランバートから指定された場所へと向かう。
 
それは人里離れた屋敷で、ランバートが6人の到着を待ち構えていた。
6人は本名を名乗ることを禁じられ、不満を唱えるメンバーにランバートが命名。
ジョーイ、フランク、サミー、ピーター、ディーン、リックルズと呼び合うように言われる。
さらにはここで少女を監禁していることがバレては困るからとスマホも没収される。
ランバートは少女の父親から身代金をもぎとるまで24時間ここで潜んでいるようにと言い残し、出て行く。
 
少女の子守役を引き受けたジョーイは、泣きじゃくる少女の名前がアビゲイルであると知る。
父親が誰なのかをジョーイが問うと、アビゲイルは教えられないと頑なな態度を見せるが、
父親は自分のことなど愛していないから誘拐に遭っても気にしないし、犯人のあなたたちこそ気の毒だと言う。
 
ジョーイから報告を受けたフランクがアビゲイルを問い詰めたところ、父親の名前が判明。
その瞬間、フランクは降りると言い出す。
なぜなら父親はクリストフ・ラザロ、都市伝説かと疑われるほどの悪行を噂される人物だったから。
慌ててフランク以外のメンバーも降りようとするが、屋敷は施錠されていて出ていけない。
 
やがて、ディーンが首をもぎとられた遺体となって発見される。
残虐な行為をものともしないラザロの手下が屋敷に潜んでいるのかと思いきや、
少女のはずのアビゲイルが古代から生き続ける吸血鬼だとわかって……。
 
冒頭、“白鳥の湖”を踊るアビゲイル。
そのあまりの可憐さに、この子役は本当のバレリーナなのかと思いました。
現在14歳のアリーシャ・ウィアーは8歳のときにミュージカルデビュー。
その後もミュージカルやドラマ、映画などに出演し、幼いながらもキャリアを築き続けているようです。
本作のためにバレエを学び、スタントなしで役をこなしたそうな。めちゃくちゃ上手くて怖くなる。
 
アビゲイルを誘拐するために集められたのではなく、アビゲイルの餌食として集められた面々。
適当に選び出されたわけじゃなく、直接的か間接的か、ラザロにあかんことをしている。
序盤で殺されてしまったディーンとリックルズが何をしたのかは教えてもらえないまま。
ついでながらディーン役のアンガス・クラウドは昨年25歳で他界。これが遺作とは若すぎて無念。
 
犯行グループのメンバーがみんな難ありのため、アビゲイルの味方をしたくなりましたが、
あまりに恐ろしい吸血鬼でやっぱりジョーイを応援することに。
昔はたいそうなイケメンだったダン・スティーヴンスはやっぱりそうなるのね。えげつないのよフランク。
 
ジョーイとアビゲイルの様子が最後ちょっと切なくて、良いホラーを見せてもらいました。

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『侍タイムスリッパー』

『侍タイムスリッパー』
監督:安田淳一
出演:山口馬木也,冨家ノリマサ,沙倉ゆうの,峰蘭太郎,庄野崎謙,紅萬子,福田善晴,
   井上肇,安藤彰則,田村ツトム,多賀勝一,吹上タツヒロ,佐渡山順久他
 
8月のお盆の頃に池袋のミニシアターたった1館で上映を開始したら、
瞬く間に口コミで「面白い」と評判になり、ひと月経とうとする今、
全国100館以上で上映されることになったという正真正銘の自主制作映画です。
 
ミニシアターどころかシネコンでも上映されるようになったというから凄い。
まさに『カメラを止めるな!』(2018)の勢い再び、という感じだけれど、
なんぼなんでもTOHOシネマズ梅田のシアター3でというのは読み違いじゃないでしょか。
だってここは同劇場で3番目に大きなシアターで、470人以上入るんですから。
もう少し徐々に拡げて行けばよいものを最初からこれでは。昼間の回、2割の入りです。
 
でも、口コミで噂になるだけあって面白いのは事実。
 
幕末の京都。剣豪として名を馳せる会津藩士・高坂新左衛門(山口馬木也)は、
長州藩士・山形彦九郎(庄野崎謙)を討つように命じられ、そのときを迎える。
強者同士が刃を交えたところ、突然落雷に見舞われて意識を失う。
 
目を覚ました新左衛門は、どうもまわりの様子がおかしいことに気づく。
自分と同じ侍の格好をした者もいるが、見たことのない格好をしている者も。
しかも町人たちが同じふるまいを繰り返し、訳がわからない。
 
しばらくして、おなごが絡まれているところ、「心配無用之介」なる侍が助けに来たのを見て、
居ても立ってもいられなくなった新左衛門が「助太刀いたす!」と飛び出すと、
「カット!」の声がかかり、えらく怒られる。そう、そこは現代の時代劇撮影所の中だったのだ。
 
江戸幕府が滅んでから140年が経っていることを町のポスターで知る新左衛門。
しかしその江戸時代から来た本物の侍だと言ったところで誰にも信じてもらえないだろう。
行くあてもなく彷徨ううち、自分が彦九郎とにらみ合った寺の前にたどり着く。
そこで倒れているところを寺の住職夫婦(福田善晴&紅萬子)が見つけて介抱する。
 
寺は撮影のロケに必ず使われているらしく、時代劇の助監督・山本優子(沙倉ゆうの)と住職夫婦は懇意。
撮影所をうろついていた新左衛門の行く先を気にしていた優子は、住職から連絡を受けて駆けつける。
新左衛門を記憶喪失の時代劇役者だと思い込み、住職夫婦は彼の面倒を見ることに。
真実を口に出せない新左衛門もまた、この世で斬られ役として身を立てようと考えて……。
 
安田淳一監督が貯金を使い果たしたことをSNSに投稿していますが、
エンドロールを見れば誰もが手弁当で参加していることがありありとわかる。
キャストと裏方の名前が同じなんだもの。皆さんよう頑張りましたねぇ。
 
時代劇に苦手意識のある人には本作から入ることをお勧めしたいぐらいです。
こんな時代があったこともわかるし、いま時代劇が置かれている状況もわかる。
そして、見ている人は見ていてくれるのだということを信じたくなる。
 
日本一の斬られ役、故・福本清三に今もう一度、これからもずっと敬意を表して。
シネコンの大きなシアターがいっぱいになるまで上映が続きますように。

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