『正体』
監督:藤井道人
出演:横浜流星,吉岡里帆,森本慎太郎,山田杏奈,前田公輝,田島亮,宮崎優,西田尚美,
山中崇,宇野祥平,駿河太郎,木野花,田中哲司,原日出子,松重豊,山田孝之他
染井為人による原作を読みはじめたのが本作公開の数日前で、読了してから観るつもりが間に合わず。
結局620頁弱の半分ほどまで読み進めてから本作を鑑賞しました。読了後の感想はこちら。
8回目のジョングクを観る前に、シアタス心斎橋にて。
監督は藤井道人。この人、年にいったい何本お撮りになっているのでしょ。
『パレード』に『青春18×2 君へと続く道』って。多作すぎる。
無実を主張するも聞き入れられることなく死刑判決を受けるが、ある日、吐血を装って搬送された隙に脱走する。
一刻も早く鏑木を見つけようと又貫は後輩の井澄正平(前田公輝)を連れて鏑木を追う。
と、あらすじにするとこれだけです。
偽名を使って変装を続けながら各地を転々とする鏑木に出会う人々。
ブラックな建設現場で親しくなるのは野々村和也(森本慎太郎)。
横暴な現場監督(駿河太郎)に罵倒されるだけだったところ、鏑木に助けられます。
ただし、寝るところは別で、彼は安藤に指一本触れません。
いずれも鏑木に謎めいたところは感じているものの、その人間性に惹かれています。
鏑木の正体があの事件の容疑者で死刑囚だと判明したときに意見を求められた酒井が、
「彼が本当はどんな人なのかわからない」と話したとき、
安藤が「私たちといるときの彼も本当の彼だと思う」と言うのが印象的。
ドラマティックな展開に持って行き過ぎかなとは思いましたが、ラスト間際では涙がこぼれました。
「なぜ逃げたのか」と又貫に聞かれたときの鏑木の答え。それを聞いてどうするかを決意した又貫。
原作ではもっと多くの人が逃亡中の鏑木と関わっています。
この映画版では安藤の父親(田中哲司)が痴漢の冤罪に苦しむ人になっていますが、原作では別の章仕立て。
安藤の上司を演じる宇野祥平が本作でもいい味を出しています。
一家惨殺事件の唯一の生き残り女性を演じる原日出子は台詞が少なくともさすが。
本作でいちばんの極悪人は残虐極まりない真犯人(山中崇)よりも松重豊演じる刑事部長に思えます。
殺人現場にいた男性が18歳でちょうどいいから、あいつにしておこうって。
冤罪は絶対に生んではいけない。未来を奪ってはいけない。
原作のラストに呆然として「あんまりだ」と思った方には特に本作の鑑賞をお勧めします。
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