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今年観た映画50音順〈ら行〉

《ら》
『ラッキー・シスターズ これってチャンス?!』(原題:Las Hermanas Fantasticas)
2024年のアルゼンチン作品。Netflixにて配信。
異母姉妹のジェシカとアンジェラは父の訃報を受けて遺体確認の場で再会。
ふたりとも父親とは長く会っていないから、それが父親かどうかすらわからない。
遺体を確認した父親の秘書に「遺産とかはないの?」とジェシカが尋ねると、
マンションは持っているが悪事を疑われて差し押さえ中だとの返事。
とりあえず父親を偲びたいからと秘書から鍵を預かり、姉妹はマンションを訪れる。
いったい父親は何をしていた人なのか、とにかく凄いマンション。
ふたりで部屋を見てまわるうち、壁の向こうに大金が隠されているのを発見して……。
姉妹ともに父親から捨てられ、幸せに暮らしているとは言えません。
ジェシカはイケイケ女子風なのにファストフード店でバイトしてつましい暮らし。
アンジェラは子どもが嫌いなのに幼稚園教諭になり、全然なついてもらえなくてクビ寸前。
好きでもない男とつきあって、彼の母親の世話になっています。
真面目なアンジェラはそれでも金を盗むのは駄目だと思っているし、父親が悪い人間だったとは思いたくない。
それに対してジェシカは金を持ち逃げして新しい人生を始めたいと思っています。
父親が亡くなるまではジェシカから姉妹の絆を求められても無視してきたアンジェラが、
妹を大事に思うようになったのがわかるシーンが好きでした。
 
《り》
『Lift/リフト』(原題:Lift)
2024年のアメリカ作品。Netflixにて配信。
インターポールからも目をつけられるほどの泥棒サイラスは、
ものの価値をわかっていない単なる金持ちが美術品を持つことを許さない。
良いものはその価値をわかっている人が所有するべきというのが持論。
彼のチームには金庫破りハッカー、パイロットなど凄腕が集まっている。
ある日、国際的なオークションに堂々と出席したサイラスは、覆面NFTアーティストのN8の作品を2000万ドルで落札。
その後N8の誘拐を偽装すると、騒動を巻き起こしてまんまとゴッホの絵画を盗み出す。
インターポールの捜査官アビーとサイラスは、かつてお互いの素性を偽って1週間だけ恋人だった仲。
そのことを知るアビーの上司ハクスリーは、近日中に計画されている犯罪を防ぐため、サイラスに「泥棒」を依頼するよう、アビーに命じる。
計画されている犯罪とは、大金持ちでその実テロリストのヨルゲンソンが
ハッカー集団リヴァイアサンと組み、金塊を移送しようとしている件。これを阻止しなければ、多くの人命が危機にさらされることになる。
ヨルゲンソンは金のためなら平気で人を殺すような人間。
つまり、恐ろしいヨルゲンソンの強盗計画を潰すためにそのヨルゲンソンから盗みを働けという依頼。
さすがに引き受けられないと断るサイラスだったが、チームのメンバーが話を受けようと言い出し……。
サイラス役がケヴィン・ハートだったので、もっとコメディに振っているかと思いきや、意外とシリアス。そこが逆に面白い感じ。
チームのメンバーがみんな信頼の置ける良い奴で楽しかった。
ヨルゲンソン役にはジャン・レノ。クソ野郎のハクスリー役にはサム・ワーシントン。これも意外なキャスティング。
 
《る》
『ルー・ガルー 人狼を探せ!』(原題:Loups-Garous)
2024年のフランス作品。Netflixにて配信。
音楽教師のジェロームは、妻子を連れて認知症の兆候が見える父親ジルベールを訪ねる。
実家にあった“人狼ゲーム”をみんなで楽しもうと提案するが、みんなシラけた顔で中止に。
がっかりしながらジェロームがゲーム盤をしまった瞬間、地震が起きる。
その後どうも家周辺の様子が妙だと家族全員で町に繰り出すと、
中世を再現した祭の最中のはずが、やけに大がかりな再現率。
実はそれは再現どころか本物で、一家は1847年にタイムスリップしていたのだ。
しかし息子のテオがここはゲームの中であることに気づき、
ゲームをつくった先祖に聞けばゲームをを終了させる方法がわかるのではないかと考える。
そこで、一家は魔術師だと疑われて投獄されている先祖に会いに行き……。
冒頭、ゲームをしようとはりきっていたジェロームがそれぞれに役をあてがいます。
タイムスリップ先のゲームの中では各々がその役の能力を持っている。
ジェロームは読心術、テオは物を盗む術、ジルベールは屈強な狩人、娘のクララは透明人間に変身。
末娘のルイーズは人狼になっちゃうんですけど。
人権派の弁護士である妻マリーが中世の横暴な男どもに腹を立ててつい口を出したせいで魔女扱いされるところが面白い。
音楽も絶大な力を放ちます。大画面で観たい物語。
あ、爺ちゃんのジルベール役はジャン・レノ。久しぶりに彼を見た、と思ったけれど、《り》で見とるがな。
 
《れ》
『レディ加賀』
2023年の日本作品。TSUTAYA DISCASにてレンタル。
樋口由香(小芝風花)は加賀温泉の老舗旅館のひとり娘。
子どもの頃に観たタップダンスに魅了され、タップダンサーになるべく上京するが、
そろそろ潮時かと感じていたタイミングで実家に呼び戻され、観念して女将修行を始めることに。
想像以上に厳しい修行に悪戦苦闘しつつも、加賀温泉を盛り上げたいと考える。
新米の女将たちを集めてタップダンスチームを結成、開催を計画するのだが……。
実際に加賀温泉郷で働く女性PRグループ“レディー・カガ”をモチーフとしているとのこと。
町おこしのためのご当地ムービーで、能登半島地震の復興支援映画でもあります。
配給収入の一部を石川県への義援金に充てることも発表されていて、
こりゃもう応援するしかない作品ではありますが、話としてはありきたり。
夢破れた女性が地元に帰って奮起、最後は大盛り上がりで終わるけど、
よく考えてみたら、実は何も解決していないんだもの。
しかもモデルとなった旅館の経営会社がコロナ対策の雇用調整助成金を不正に受給していたことが発覚。
水を差された感が否めません。
 
《ろ》
『ロ・ギワン』(英題:My Name is Loh Kiwan)
2024年の韓国作品。Netflixにて配信。
脱北して中国・吉林省の延吉市で母親と暮らしていた青年ロ・ギワン(ソン・ジュンギ)。
理不尽に虐げられている友人を助けようとしたせいで当局から目をつけられ、お尋ね者に。
母親に守られてなんとか生活していたが、あるとき見つかってしまう。
ロ・ギワンを逃がそうとした母親は車にはねられて死亡。
母親の希望はロ・ギワンが幸せに暮らすことだったから、
彼が中国から出国できるようにと親戚が母親の遺体を病院に売り、金をつくる。
偽造パスポートでベルギーに到着して難民申請するもすぐには認められず。
審査の日まで2ヶ月近くあり、その日までどうしても生き延びなければならない。
公衆トイレや路上で生活していたところ、若者たちから暴行を受ける。
意識を失って倒れている間に財布を盗まれるが、犯人はベルギー在住の韓国人マリ(チェ・ウソン)だった。
マリは裕福な家庭に育ちながら、母親の死を受け入れられず、父親のことを憎んでいた。
ロ・ギワンから盗んだ財布は今は手元にないらしく、必ず返すと言われても信じられない。
それでもマリと会ううち、ロ・ギワンはここで生きる希望を持ちはじめて……。
終始暗く、つらく重い話ですが、飽きることなく最後まで観ました。
北朝鮮からなんとか脱出しても、ほかの国で生きるのは簡単なことではないのですね。
ソン・ジュンギがもう少しタイプだったらもっと好きになれたかもしれませんが、
アイドル並みのイケメンをキャスティングしたらこの悲壮感は出ないかなぁ。

—–

今年観た映画50音順〈や行〉

《や》
『ヤニス・アデトクンボ 栄光への旅路』(原題:Giannis: The Marvelous Journey)
2024年のアメリカ作品。Amazonプライムビデオにて配信。
ヤニス・アデトクンボはギリシャ出身のプロバスケットボール選手
NBAのミルウォーキー・バックスに所属し、2年連続のMVPを達成したほか、
2020年にはあらゆる賞を総なめにして、NBA史上最高と言われる選手のうちのひとりなのだそうです。
こういうのを聞くたびに「最高はひとりでしょ」と思うのですけれど、決められませんよね。(^^;
アテネで生まれた彼ですが、両親はナイジェリアからの移民で就労ビザを持たず。
ヤニスを含む4人の息子たちが幼かった頃は父親は無一文状態だったそうです。
移民が襲撃を受けることも多く、子どもが家路につくときも命がけ。
当時は死ぬほど怖かったと言うヤニス。今でも笑い話にはできないこと。
なんとか生きる術を見つけなければならないと、ビーチで物を売る子どもたち。売れるものなら何でも売る。
そんな生活がインターネットカフェでNBAの試合を観た瞬間に変わる。
すべてをかけて努力してバケットボールの選手になれば家族を救えると考えはじめたヤニス。
身長211㎝と体格に恵まれてはいますが、それだけでバスケの選手になれるわけもない。
ドラフトのシーンはドキドキします。サクセスストーリーは良いもの。
 
《ゆ》
『ユニコーンのテルマ』(原題:Thelma the Unicorn)
2024年のアメリカ作品。Netflixにて配信。
原作はオーストラリア出身の作家アーロン・ブレイビーの児童文学
農場で働くポニーのテルマは、ロバのオースティン、ラバのレジーと共にロックバンド“ザ・ラスティ・バケツ”を組んでいる。
一流のミュージシャンになるのが夢だが、オーディションの結果は無残。
しかしある日、たまたま額にニンジンをくっつけたテルマがショッキングピンクのペンキをかぶったおかげで、
農場を訪れていた子どもに「ユニコーンか」と問われて咄嗟に「そうだ」と答えてしまう。
群衆の注目を浴びたついでに演奏するとたちまち話題に。
有名な音楽番組に出演する話も舞い込み、かねてから温めていたオリジナル曲を披露。
嘘をつくのはよくないとオースティンは諭すが、このもてはやされる状況を手放したくない。
有名なプロデューサーからも音楽で最も大事なのは「見た目」だと説かれ、
世間がほしがっているのはユニコーンの自分だけという結論に達すると、バンドから離れる
ひとりで契約したテルマは、セレブへの道をまっしぐらかと思われたが……。
シリアルのCMに出演するテルマをバンド仲間が呆れて見る様子とか、可笑しいですよね。
バンド仲間たちとの方向性の違いから揉めるというのは映画の中に限らず実際にもあること。
ちやほやされると大切なものを忘れて簡単に捨て去ってしまう。
ちゃんと考えて、ちゃんと話し合って、本当にしたいことは何なのかを見極めるのは難しい。
テルマの声を担当するのは、過去7度もグラミー賞にノミネートされている歌手ブリタニー・ハワード。
日本語吹替版では高之麗。そっちも聴いてみたいですね。
 
《よ》
『余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。』
2024年の日本作品。Netflixにて配信。
原作はSNSを中心に話題を呼んだ森田碧の同名ベストセラー小説。
三木孝浩監督は若手人気俳優を起用するのが上手。
心臓に悪性腫瘍が見つかり、余命1年を宣告された高校生・早坂秋人(永瀬廉)は、
病院の屋上で佇んでいた折に、そこで絵を描く桜井春奈(出口夏希)を見かける。
自身も美術部の秋人が思わず声をかけると、春奈は余命半年なのだと言う。
死ぬのは怖くない、むしろ楽しみだと微笑む春奈に自分の余命のことは言えない秋人。
以降、春奈を見舞うために病院に通うようになるのだが……。
春奈の両親役に仲村トオル大塚寧々。春奈の母親で看護師長役には松雪泰子
生まれつき病気で見舞いに来る人のいない春奈の過去を知った秋人は、
春奈にひとりだけ親友と呼べる友だち=三浦綾香(横田真悠)がいたのに仲違いしたままなことを知ります。
二度と会いたくない人だっているだろうに、お節介な奴めと思ったけれど、
仲違いの理由がわかってふたりが再会するシーンでは貰い涙。
典型的なお涙頂戴ものだと高を括っていたら、ほかにもボロ泣きしてしまった。(^^;
「一日でも、一秒でも長く生きたい」なんて台詞、きっと弟もそうだったろうなと思うのでした。
涙止まらず。

—–

今年観た映画50音順〈ま行〉

《ま》
『マイ・ハート・パピー』(英題:My Puppy)
2023年の韓国作品。TSUYAYA DISCASにてレンタル。
ミンス(ユ・ヨンソク)は恋人のソンギョン(チョン・インソン)にプロポーズ、OKの返事をもらって有頂天。
ところが、ソンギョンが犬アレルギーだと知って呆然とする。
というのもミンスは大の犬好きで、今も“ルーニー”というゴールデンレトリバーと暮らしている。
ソンギョンはルーニーと会うときはアレルギーを止める薬を服用していたらしい。
愛する人にそんなことは続けさせられないと、ミンスはルーニーを手放す覚悟を決める。
しかし、信頼のおける人でなければルーニーを委ねるわけにはいかない。
兄貴と慕うジングク(チャ・テヒョン)に相談し、里親捜しにつきあってもらうことにするのだが……。
こんなの絶対泣く話に決まっているじゃないですか。
と思ったらそれほどでもなく、笑ってじんわり良かったと思える話でした。
ミンスが本当に犬を愛していることが伝わってくるし、
つられてジングクまでいつのまにか犬好きになっているのが可笑しい。
ソンギョンにしても「私と犬とどっちを採るの」なんてことは言わない、良い彼女。
実際の犬アレルギーの人がこの方法で犬と暮らせるかどうかはちょっと疑問だけど。
 
《み》
『緑の夜』(原題:緑夜)
2023年の香港作品。TSUYAYA DISCASにてレンタル。
中国人女性のジン・シャ(ファン・ビンビン)は韓国に渡り、保安検査場で働いている。
ある日、いかにも怪しげな緑色の髪をした若い女(イ・ジュヨン)が金属探知機に反応。
止めようとしたところ、上司がその女性は問題ないのだと言う。
腑に落ちずにいたが、緑の髪の女は気が変わったと言って出国を取りやめて引き返す。
不審すぎて追いかけてみると、やはり彼女は麻薬の運び屋だった。
やがて、ジン・シャの上司も麻薬の元締めと繋がっていることを知り、
ジン・シャと緑の髪の女の逃走劇が始まり……。
巨額の脱税疑惑発覚後に消息不明となったファン・ビンビンが戻ってきました。
『355』(2022)以来の出演作になったわけですが、とても暗い。
凄い美人でもここまでしかめ面で笑わないと、見ていてメゲる。
夫から虐待されるシーンなども凄惨。やっぱりもっとゴージャスな彼女が見たい。
 
《む》
『ムーミンパパの思い出』(原題:Muumipapan Urotyot: Eraan Nuoren Muumin Seikkailut)
2023年のフィンランド/ポーランド作品。TSUYAYA DISCASにてレンタル。
ご存じ、トーベ・ヤンソンの児童文学を基にしたパペットアニメーションです。
蜂に狙われてしっぽの先がもげてしまったムーミントロール
ショックで寝込む彼が医者の診察を受けると、しっぽの先の喪失とは別に病の本質があると言う。
レントゲンを撮ったところ、病の原因は純粋さと理想主義のせいと判明。
息子を元気づけようと、ムーミンパパは若かりし頃の冒険譚を語りはじめて……。
みなし子だったムーミンパパがムーミンママと出会うまでの物語。
みなし子ホームで育ったムーミンパパがホームを飛び出して新しい仲間と巡り会い、大航海へと出発。
いまどきのアニメと比べるととても地味ではありますが、メッセージ性に溢れています。
ただ、ムーミンといえばTVアニメの印象が私には強くて、パペットになると別物の感じはします。
ムーミンが割とわがままな発言をすると、のび太を思い出してしまったりもして(笑)。
 
《め》
『メンドウな人々』
2023年の日本作品。TSUYAYA DISCASにてレンタル。
東京・銀座にある映画会社“映画24区”が全国の自治体と組み、
「地域」「食」「高校生」をキーワードに作る映画シリーズ“ぼくらのレシピ図鑑シリーズ”第3弾。
山梨県富士吉田市、富士山を望む町で暮らす高校生・遠山雄大(片岡千之助)。
実家は織物業を営む老舗で、雄大とちがって良く出来る兄・光大(鳴海翔哉)が継いでいる。
家にも学校にも居場所がなくて、放課後はぶらぶらと時間を潰すのが日課。
ある日、酔っぱらっていた洋食店の主人・桑原猛(的場浩司)とぶつかり、猛は足を捻挫。
雄大はしばらく店の買い出しなどを手伝うことになる。
と、そこへやってきたのが近所の高校の「うどん部」の部員。
高校の家庭科室で水漏れが起きて使えないらしく、猛の店の調理場を貸すことに。
うどん部の部員はたった3名。あまりにガチすぎて、誰か入部してもすぐに辞めてしまうらしい。
部長・勝俣くるみ(藤嶋花音)たちの本気度に圧倒されながらも、なんだかんだでそちらも手伝うはめになる雄大だったが……。
“ぼくらのレシピ図鑑シリーズ”を観るのは初めてでしたが、とても楽しい。
いろいろアレンジされたうどんも登場して、うどんを食べたくなります。
一見元気な人たちだけど、子どもも大人もみんな傷つき迷い生きている。
広大を恨めしく思っていた雄大が、兄だって喜んで実家を継いだだけではないことを知るシーンも○。
そうそう、結果オーライってこともある。
 
《も》
『モダン・マスターズ:S・S・ラージャマウリ』(原題:Modern Masters: S. S. Rajamouli)
2024年のインド。Netflixにて配信。
『RRR』(2022)のS・S・ラージャマウリ監督に取材したドキュメンタリー作品。
もともと映画制作に情熱を傾けていたのは、彼の父親と従兄たちなのだそうな。
自分たちで脚本を書き、作曲し、映画館で試写するところまで行きながら未完成に終わったり、
完成してもヒットには遠く及ばなかったり、憂き目に遭ってばかり。
そんな父親たちを見ていたラージャマウリ監督が大成したわけですね。
ボリウッドでアクションシーンに民謡を用いたのは監督が初めてだとか。
映画作りが大好きな一族。一緒に映画に関われて本当に楽しそう。
昔はまさか日本で自分の映画が大ヒットするとは思わなかったという監督が、
N・T・ラーマ・ラオ・Jr.ラーム・チャランと共に東京を訪れたときのシーンが嬉しい。
ラーム・チャランの出世作『マガディーラ 勇者転生』(2009)のシーンも堪能できるし、
“バーフバリ”シリーズが大ヒットに至るまでの話も面白く、主演のプラバースへのインタビュー映像もあります。
時代に逆行しているなどと非難されることもあったけれど、観客を喜ばせるものを作りたいという監督。
「ボリウッドのジェームズ・キャメロン」ですって。この先も面白い超大作を撮ってくれそう。

—–

今年観た映画50音順〈は行〉

《は》
『薄氷の告発』(英題:Bait)
2023年の韓国作品。TSUYAYA DISCASにてレンタル。
実話が基になっていると思っていましたが、そうではないそうな。
ただ、韓国のアイススケート界では度重なる不祥事が問題になっているらしく、
実際に有罪判決を受けた指導者もいるそうです。
ショートトラックの元韓国代表選手ジュヨン(ペク・ジニ)は全盛期に引退、
現在は高校のカーリング部で女子チームのコーチをしている。
ある日、かつてチームメイトだったユラが自殺したと知り、悲しみと共に怒りに駆られる。
ジュヨンは選手時代にコーチのヒョクス(ペ・ユラム)から性的暴行を受けており
当時それを訴えたジュヨンのほうが責められ、自殺を図った過去がある。
それで選手を引退することを余儀なくされたのだ。
ユラも同じ目に遭って自殺したに違いないと思っていると、
ユラの兄ムヒョク(ソン・ジェリム)が妹の無念を晴らしたいと言ってジュヨンに協力を求めてくる。
一方、ヒョクスはジュヨンの教え子スジをスカウト。
スジもその母親も国家代表選手になるチャンスがやってきたと大喜びで、
ジュヨンがどれだけ引き留めようとも聞き入れようとせず……。
韓国のみならず、アメリカでも日本でも指導者による性暴力が取り沙汰されています。
そんな指導者をクビにすることなく、事件を揉み消して使いつづける協会。
同罪もしくはそれ以上ではないですか。
 
《ひ》
『瞳をとじて』(原題:Cerrar los Ojos)
2023年のスペイン作品。TSUYAYA DISCASにてレンタル。
今年84歳のヴィクトル・エリセ監督が31年ぶりに撮り上げたとして話題になった作品です。
と言っても、映画監督人生でこれがたった4本目の長編作品。
なのに巨匠名匠と呼ばれて国際映画祭の審査員になったりもしていて、どんだけ評価が高いんだ。
元映画監督のミゲルは、20年以上前に起きた事件について取材を受ける。
それは、ミゲルの監督作『別れのまなざし』の撮影中に、主演男優のフリオが突然失踪し、
そのせいで映画自体も未完のまま終わってしまったという事件だった。
取材に協力することにしたミゲルは、親友でもあったフリオとの懐かしい日々を思い返すのだが……。
どれだけ凄い監督なんだか知りませんが、169分の長尺でギブアップしそうになりました。
しかも、この直前に観た作品が《へ》に挙げる『ペット ネットで出会った美少女の秘密』で、
ミゲル役のマノロ・ソロがロリコンの変態男を演じているんです。
ド変態ぶりが思い起こされてしまってどうにもこうにもつらかった。
拷問のような3時間近くでした。(^^;
 
《ふ》
『震える家族』(英題:The Other Child)
2022年の韓国作品。TSUYAYA DISCASにてレンタル。
牧師のソクホとその妻ヒョヌには4人の子どもがいたが、長男のハンビョルを事故で失う。
その悲しみからなかなか立ち直れずにいたヒョヌをソクホが説得、
視覚障害のある少年イサクを施設から養子として引き取ることに。
イサクにはハンビョルのことを伏せていたのに、イサクには死人が見えるらしく、
そのせいで親から捨てられ、彼の服には魔除けの札が縫い付けられている。
イサクの言動を最初はまったく信用していなかった夫婦だが、
イサクがハンビョルから聞いたという言葉があまりに具体的で、ヒョヌはイサクを信じるように。
それを良しとしない長女ジュヨンは、イサクを悪魔の子とみなして抹殺しようとし……。
終始不気味ではあるけれど、驚かせるようなシーンはほとんどなし。
心理的にぞくぞくさせてくれる、私の好きなタイプのホラーです。
ただ、何もかもが中途半端な感は否めません。
謎だったハンビョルの死は、ジュヨンが仕組んだものだったと途中わかります。
車椅子に乗り、癇癪持ちで手のかかる息子だったハンビョル。
その世話に疲れている母親の姿を見て、ジュヨンが車椅子のロックを解除した。
ただ、実はヒョヌもそのことに気づいていたのに見ないふりをしたことが
教会の信者でやはり死人が見える青年ヨンジュンに知られ、ヒョヌはヨンジュンを殺します。
母親が家族を守ったようなエンディングにはなっていても、切なさが足りない。
 
《へ》
『ペット ネットで出会った美少女の秘密』(原題:La Desconocida)
2023年のスペイン作品。日本では劇場未公開。TSUYAYA DISCASにてレンタル。
パコ・ベセラ原案による舞台劇『グルーミング』は世界中で上演された問題作なのだそうです。
妻と幼い娘を持つ中年男は実は小児性愛者
レオナルドという偽名を用いてネットで少女を物色中、16歳のカロリーナと出会う。
直接会う約束を取りつけて公園に出向くとカロリーナは怯えつつも逃げ出す様子がない。
カロリーナのことをすっかり手なずけたつもりが、童顔に見える彼女の正体は捜査員で……。
ロリコンの変態男を演じるのはスペイン・アカデミー賞受賞俳優のマノロ・ソロ。
最初の15分ほどはその変態ぶりが気持ち悪くて観るのをやめたくなるほど。ところが話は急展開。
捜査員だと打ち明けた彼女が男に復讐するのかと思ったら、彼女も人には言えない性癖がある。
狭いところに閉じ込められると興奮するらしくて、男に取引を持ちかけます。
男の言うことも聞いてやる代わりに、彼女を生き埋めにしてほしいと。
もしも断ればどうなるかわかっている?という彼女がものすごく怖い。
どうやらこれまでにも捜査対象者に取引を持ちかけて、断られた場合は殺しているのかもしれません。
生き埋めにされることで至上の性的興奮を感じられるのだという彼女ですが、
エンディングは彼女が森を抜けてただ向こうに歩いて行くシーンが映し出され、この世にあの男はもういないように思えます。
本編開始前にパブロ・マケーダ監督本人が「ネタバレ厳禁」と強く言うわりには、
それぞれがどうなったかは最後まで観ても明かされることなく、観た人に解釈が委ねられる。
なんだか嫌なものを見せられただけでまったくスッキリせず。ああ、嫌だ。

《ほ》
『ほかげ』
2023年の日本作品。TSUYAYA DISCASにてレンタル。
塚本晋也監督の作品と聞けば観ずにはいられません。
終戦直後の闇市。夫と息子を亡くした女(趣里)は、半焼した小さな居酒屋でひとり暮らしている。
世話焼きの男(利重剛)の紹介によって店に来る客に体を売って日々をしのぐ毎日。
食べ物を狙って覗きにくる少年(塚尾桜雅)を最初は追い払っていたが、
ある日やってきた若い復員兵(河野宏紀)と共に少年も招き入れたところ、
家族を取り戻したような気持ちになり、心が穏やかになる。
しかしトラウマを抱える復員兵が正気を失って暴力をふるったため、彼を叩き出す。
残った少年に泥棒などせずにまともに働けと諭し、まるで親子のように暮らしはじめるのだが……。
女はやがて病に罹り、少年にうつしてはならぬという思いから、「嫌いになった」と嘘をついて追い出します。
少年を拾ったのはやはり戦争で心身に傷を負った男(森山未來)。
静かな反戦ドラマで、つらいけれど目を背けることはできませんでした。

—–

今年観た映画50音順〈な行〉

《な》
『何がなんでも!遺産でリッチ』(原題:Ricchi a Tutti i Costi)
2024年のイタリア作品。Netflixにて配信。
高校時代の同窓会に出席したアンナは、40年前の当時に恋人だったヌンツィオと再会。
劇場を所有するヌンツィオは、アンナの母親で女優のジュリアナを紹介してほしいと言う。
高齢のジュリアナにはとんと仕事の話などなかったから喜ぶに違いない。
ヌンツィオに感謝するアンナだったが、ある日、ジュリアナから家族に召集がかかり、赴いてビックリ。
アンナと夫カルロ、息子エミリオ、娘アレッサンドラの4人共、てっきり遺産相続の話だと思っていたのに、
ジュリアナは恋人ができたので結婚すると言う。しかもその相手は30歳以上も下のヌンツィオ。
遺産が狙われていると考えたアンナたちは、挙式のために訪れるスペインでヌンツィオを殺す計画を立てて……。
600万ユーロ(約9億5千万円)もの金を持っている婆ちゃんが死ぬのをみんな待っているのに、
その婆ちゃんがうんと年下のいかにも遊び人の男を連れてきたらどうしますか。
家族が今までにないくらい一致団結して殺害の計画を練る様子はあんまり笑えない。
結局、婆ちゃんは何もかもわかっていて、アンナにだけは打ち明ける。
ヌンツィオとの生活を始める前に600万ユーロはすべてアンナの口座に移すこと。
それをヌンツィオには言わずにおけば、彼は金目当てにジュリアナのそばに居続ける。
余生を楽しみたいからこうするのよと。
アンナは夫や子どもたちにもこの事実を伏せたままエンドロールへ。
さて、この先どうなるでしょうね。
お金を持ちすぎるのも考えものだなぁ。ちょうどいいのはいくらぐらい?
 
《に》
『日本で一番恐くない間取り』
2023年の日本作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
自殺や他殺、孤独死により、国内の物件のほとんどが事故物件になった近未来。
日本で唯一の「無事故物件」となった部屋の住人・山田(大坂健太)のもとへ、
さまざまなメディアがインタビューに訪れて山田は大迷惑。
職場にもひっきりなしに人が押しかけるせいで山田はクビになり、フリーターに。
そんな山田の部屋で金を儲けようとする不動産屋・根津(ヤマダユウスケ)は、
亡き夫の幽霊に怯える大富豪・富良野(広山詞葉)に売りつけることを思いつく。
家賃10万円で入居中の山田に退去費用として2,100万円を提示し、この部屋をオークションに出せば20億円で売れる。
しかし根津の思惑に気づいた山田は頑として退去しようとしない。
根津は社員の桧山(エアコンぶんぶんお姉さん)を使うなどして山田に嫌がらせを繰り返すのだが……。
唯一の無事故物件というのがいわゆる文化住宅の一室。
豪邸に住む富良野がこんな部屋に住めるのかどうかは疑問だけど、
世間はとにかく「誰も死んだことのない部屋」に住みたいと願うのですね。
バカバカしいと思いつつも、唯一の無事故物件の価値が高騰するという設定は面白い。
オチには意外な切なさもあり、ホントに意外。
鳴瀬聖人監督って知らなかったけど、『温泉しかばね芸者』(2018)も気になります。
 
《ぬ》
『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』
2022年の日本作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
これが長編商業デビュー作となる金子由里奈監督。脚本は実兄の金子鈴幸と共同で執筆。
父親の金子修介も映画監督という映画一家なんですね。
原作は大前粟生の同名小説で、立命館大学出身の金子監督が京都の大学を舞台に撮る。
七森剛志(細田佳央太)は入学した大学で麦戸美海子(駒井蓮)と出会って意気投合。
一緒に“ぬいぐるみサークル”なるものを見学に行く。
ぬいぐるみを作るサークルだとばかり思っていたが、実はぬいぐるみとしゃべるサークル。
誰かに聞いてほしい悩みや思いをぬいぐるみに向かってしゃべるのだ。
見学に来たものの、気味悪がってドン引きする新入生も多いらしいが、麦戸は肯定的。
かつて拾ったぬいぐるみを大切にしている七森も当然のごとく入部する。
ひとりでやってきた同じく新入生の白城ゆい(新谷ゆづみ)も入部を決めて……。
“ぬいサー”のルールは、それぞれがぬいぐるみに話している内容に聞き耳を立てないこと。
「男らしい」とか「女らしい」とか、恋愛感情についてもよくわからずにいた七森は、
高校時代に親しかった女性からコクられて振ってしまったことがトラウマ。
そんなことをつぶやいても咎められず、変だとも言われず、“ぬいサー”にいれば安心。
一方の白木はぬいぐるみにしゃべらない。自分がぬいぐるみになると思っています。
ゆるゆると進む「いい話」ではあるけれど、社会に出たときの彼らは心配。
 
《ね》
『ネルマ・コダマ:闇マネーの女王』(原題:Nelma Kodama: The Queen of Dirty Money)
2024年のブラジル作品。Netflixにて配信。
ブラジル人女性のネルマ・コダマと聞いたって私は初耳ですが、
南米史上最大の汚職事件と言われる“オペレーション・カー・ウォッシュ(洗車場作戦)”に関与したとされる闇ドル業者らしい。
闇ドル業者と聞いたところでまたまた私には何のことやらさっぱりわからないけれど、つまりは資金洗浄を請け負う人のようです。
歯科医の資格を持つネルマは経済的自由がほしい。
精肉業者の両親の会社で財務関係の仕事を受け持つうち、ドルを売れば儲かると知る。
社会的地位の高い人と知り合う機会に恵まれ、他人のお金を預かっては自分も儲けるように。
無類の靴好きで、1年間毎日ちがう靴を履けるほどの数を持っている。
また、車も7台所持していて日替わりで乗れるとドヤ顔。
宝石を身に着けない女性は裸でいるのも同然だと笑います。はい、そーですか。(^^;
驚くべきはこの事件で、議員やら判事やら、信じられない数の「偉い人」が関わっていて、金まみれ。
お金があるに越したことはないけれど、この人たち、じゅうぶんにお金持ちでしょうに。
ネルマが悪者にされたって全然同情はしませんが、男どもに上手く利用された感は否めません。
 
《の》
『NOCEBO/ノセボ』(原題:Nosebo)
2022年のアイルランド/イギリス/フィリピン/アメリカ作品。TSUYAYA DISCASにてレンタル。
子供服のデザイナーとして活躍するクリスティーン(エヴァ・グリーン)は、
ある日、ダニだらけの不潔で不気味きわまりない犬に襲いかかられる幻影を見る。
以降、手に震えが出るなど体調不良に見舞われ、キャリアは一旦ストップ。
そんなとき、フィリピン人の女性ダイアナ(チャイ・フォナシエ)が住み込みの家政婦としてやってくる。
雇った覚えはなかったが、物忘れの傾向もあるクリスティーンは、自分がいつのまにか約束したのだろうと納得。
夫のフェリックス(マーク・ストロング)は露骨に嫌な顔をし、一人娘のボブス(ビリー・ガズドン)もダイアナを無視。
しかし、超自然的な能力を持っているというダイアナから民間療法を施されると、クリスティーンの体調が明らかによくなる。
クリスティーンがダイアナに信頼を寄せる一方でフェリックスは不信感を募らせ、
学校では嫌われ者、両親にも不満を持つボブスはダイアナに心を開きはじめて……。
ダイアナの復讐劇であろうことは中盤に予測できますが、これがまた凄絶。
クリスティーンはかつてフィリピンの工場に子供服の縫製を注文していました。
安い給料で大量に頼むせいで、従業員たちは激務を強いられたうえに、
現地の人を信用していないクリスティーンは工場に鍵をかけて物を持ち出せないようにする。
ダイアナにはボブスと同じ年頃の娘がいたけれど、預ける場所も金もないから工場に連れてきていて、火事に遭ったという。
炎に包まれた娘を助けることができず、クリスティーンを激しく恨みます。
恨まれている当人は自分のせいで異国の縫製工場に災難が起きたことを覚えてもいない。
監督は『ビバリウム』(2019)のロルカン・フィネガン。不穏な空気を描くのが上手い。
虫が首にめり込むなど、相当不快なシーンがありますのでご注意を。

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