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『ワンダーランド北朝鮮』

『ワンダーランド北朝鮮』(英題:My Brothers and Sisters in the North)
監督:チョ・ソンヒョン

飲み会前に、第七藝術劇場で3本ハシゴの2本目。
『ザ・ビッグハウス』の次は、ドイツ/北朝鮮作品の本作。
もちろん、こんなのを上映しているのは大阪ではナナゲイだけ。

いつまで経っても謎の国、北朝鮮。私はやっぱり怖いです。
『プルガサリ 伝説の大怪獣』(1985)を観たときには、
国家の最高権力者がゴジラファンだというだけで
日本から人を呼び放題、カネ使い放題でこんな映画を撮っちゃうのか、
そんなアホなと笑ったりもしていたものです。
しかし、『将軍様、あなたのために映画を撮ります』(2016)を観たときには
どう表せばいいのかわからない恐怖を感じました。
気に入ったものを撮るためであれば拉致も平気でやっちゃう国。

北朝鮮の人々の日常を撮りたいと考えた本作のチョ・スンヒュン監督は韓国人。
韓国人が北朝鮮へ入国するのは大変なことだから、本作を撮るために韓国籍を放棄。
ドイツのパスポートでなんとか北朝鮮へ入国したそうです。

とはいうものの、北朝鮮ですもの、自由に撮らせてくれるはずがありません。
厳しい監視下、さまざまな制約を受けつつカメラを回したのですから、
これが丸ごと北朝鮮の普通の人々の暮らしぶりかと聞かれたら、
他国の人に見せてもよいと「将軍様」が考える限界ぐらいとしか言えないでしょう。

スンヒョン監督は、いろんな職業に就く「普通の人々」に取材。
誰も仕事への不満など口にせず、品行方正。
本作の公式サイトのトップ画面やチラシに笑顔で映っているのは、縫製工場で働く少女。
服をつくる人になりたいと言うけれど、デザイナーという言葉は知りません。
自由にデザインすることなどこの国ではあり得ないから知らないのか。
縫製工場でしっかり技術を身につけて、立派な女性になるのが夢。
立派な女性って何なのか。いつの時代の女子教育だと驚いてしまいます。

この縫製工場ではノルマがあり、それをクリアできたかどうか、
さらには人を助けるなど善いことができたかどうかが成績に加算されるそう。
だからって、成績の良い人と悪い人でさほど給料に差はないと少女は言います。
給料が貰えるほか、配給券が貰えることを満面の笑みを浮かべて語る様子を見ると、
その国の人が幸せかどうかなんて、よその国の人は決められないと思ったりもする。

キム・ギドク監督の『The NET 網に囚われた男』(2016)を観たときにも思ったこと。
何を以て不幸と考えるのか。彼ら自身が幸せだと思っているなら口出しすべきじゃないのか。

本作を観ても、彼らの本心はわかりません。
映像で語っていることがそのまま本心で、不満なんてかけらもないのですか。
—–

『ザ・ビッグハウス』

『ザ・ビッグハウス』(原題:The Big House)
監督:想田和弘,マーク・ノーネス,テリー・サリス,ヴェサル・ストークリー,
   ショーン・ムーア,サリカ・チャギ,V・プラサド,ブリッティ・ボニン,
   アレックス・ブレナー,ケイティ・デウィット,ディラン・ハンクック,
   ダニエル・カーン,レイチェル・カー,オードリー・マイヤーズ,
   ハンナ・ノエル,ジェイコブ・リッチ,ケヴィン・トッコ

先週土曜日。夜は30年以上前にバイトしていた単車屋さんの人たちと宴会予定。
それまで映画を3本ぐらい観る時間がありそう。
とにもかくにも暑いから、できるだけ駅から近い劇場へ行きたくて。
土日の映画ハシゴスケジュールを練ったら、この日のTOHOシネマズは無し。
シネ・リーブルまで歩く元気はないけれど、ナナゲイまでなら歩けそう。
というわけで、十三の第七藝術劇場へ。

想田和弘監督は、いくつかの劇映画を撮っているものの、
ジャーナリストとしても活躍する、基本、ドキュメンタリー映画の人。
自身の撮るドキュメンタリー映画を「観察映画」と称しています。
台本を作らず、予断と先入観を排除して対象を観察する。
観察で発見したことを映画にする、それが想田監督のやり方。

想田監督が16人の映像作家とともに観察映画の舞台として今回選んだのは、
全米最大のアメリカンフットボール・スタジアム“ミシガン・スタジアム”。
甲子園の倍以上、10万人を超える収容人数で、通称“ザ・ビッグハウス”。
観客動員数が10万人を切ったことは数十年間ないそうです。

幕開けは、著名なスカイダイバーがスタジアムに降り立つ姿。
これでグッと心を持って行かれます。
そして、試合当日のスタッフミーティング、厨房、報道関係者ブース、
マーチングバンドチアリーダー、観客、警察犬の様子に至るまで、
スタジアムの内外さまざまな場所、さまざまな人びとを撮影。

冒頭でスタジアムに関する説明テロップが流れるほかは、ナレーションも何もなし。
どう考えても普通は寝るでしょ、私。
ちょっとうとっとした数秒間を除けば目がランラン。
ダフ屋(定価で売っていると言っていましたがホンマか!?)や
太鼓を叩いて施しを乞う貧困者、新興宗教の演説者など、
余計な説明を省いた映像に興味を引かれっぱなしでした。

撮影されたのが2016年の秋で、
ちょうどドナルド・ トランプヒラリー・クリントンの大統領選挙戦の真っ只中。
本作は「アメリカ社会の縮図だ」などとも言われていますけれど、
私にはそんなことまでわかりません。
ただ、ひとつのスタジアムとその周囲にはいろんな人がいるということが
淡々とした映像を通じてしみじみジワジワ伝わってきます。
あ、それを縮図というのか。(^^;
面白かった。
—–

『セラヴィ!』

『セラヴィ!』(原題:Le Sens de la Fete)
監督:エリック・トレダノ,オリヴィエ・ナカシュ
出演:ジャン=ピエール・バクリ,ジル・ルルーシュ,ジャン=ポール・ルーヴ,
   ヴァンサン・マケーニュ,アルバン・イヴァノフ,アイ・アイダラ他

シネ・リーブル梅田で2本ハシゴの2本目。
『ルームロンダリング』の上映終了10分後、同じスクリーンで上映だったので、
オンライン予約した時点でまったく同じ席を確保していました。

監督は『最強のふたり』(2011)や『サンバ』(2014)のコンビ。
どうでもいい話ですが、“セ・ラ・ヴィ”と聞くと、
1980年代のロビー・ネヴィルのヒット曲を思い出します。
この人、その後はディズニー作品や他の歌手に曲を提供しているようですが、
自分で作って自分で歌った曲としてはいわゆる「一発屋」!?

マックスは老年にさしかかったベテランのウェディングプランナー
長年にわたり数々の結婚式をプロデュースしてきたが、そろそろ引退を考えている。

そんなある日、17世紀の古城を式場にした結婚式の依頼が舞い込む。
絢爛豪華な演出を望まれ、マックスは新郎新婦の願いを叶えようと意気揚々。

ところが集まったスタッフたちはポンコツばかりで、開いた口がふさがらない。
マックスの代理を務めるほど腕のあるはずのアデルは、
バンドを率いて音楽の演奏を担当するジェームスと喧嘩ばかり。
そのジェームスは披露宴会場に勝手に自分の宣伝リーフレットを置く。
昔のよしみで仕事を依頼したカメラマンは料理をつまみ食いし放題。
猫の手も借りたくて呼んできた義弟は、新婦が元同僚だと気づき、
スタッフではなく招待客のふりをしはじめる。
もうひとりの助っ人は実はズブの素人で、フルートグラスがなんたるかも知らない。

新郎はといえば、どれだけ金持ちなのだか知らないが、ずいぶんスカした奴。
自分の好きなように演奏を進めたいジェームスはカチンと来ている様子。

ひとつトラブルを解消したと思えばまた別のトラブルが起き、マックスはへとへと。
しかも不倫関係にあるスタッフのジョジアーヌは、
妻になかなか離婚を切り出さないマックスに愛想を尽かしたか、
ほかのスタッフとイチャイチャするものだから、マックスのイライラは募るばかりで……。

パリ同時多発テロが勃発して、沈痛な思いを消せないフランス国民に笑顔になってほしい。
そんな気持ちから監督は本作に着手したそうです。
その願いが通じて、フランス国内で大ヒット、その波は世界に広がりました。

私が観た日もよく客が入っていました。
そこそこ楽しめて、ところどころ大笑いしましたが、不倫話は余計だったかと。
だって、マックス役のジャン=ピエール・バクリは67歳、
本国ではハンサムと思われる顔立ちなのかもしれないけれど、
ただのハゲ親父といえばハゲ親父だし。
相手のジョジアーヌ役のスザンヌ・クレマンは49歳。
なんだかんだで20近くの歳の差でしょ、やっぱりオッサンの妄想よ。

マックスの義弟役のヴァンサン・マケーニュも人気俳優のようですが、私は苦手。
ハッキリ言うと、色の白いハゲ(他は濃そう)で小デブに愛を語られるのは嫌だ。
人の容姿をこんなふうに言っちゃいけないとわかっていながらすみません。
でもきっと、欧米で人気の俳優には、私の苦手なタイプがいっぱいいそう。
あ、向こうからお断り? し、失礼しました〜。(^^;

「妄想」のせいで、世間の人よりは私は楽しめなかったと思われますが、
いくつか心に残る台詞もあります。
目の前で何かものすごく悪いことが起こった時、人生を相対的に考えれば、
その悪いこともほんの一瞬の出来事なんだよって。
そうそう、物事はトータルで見ればいいんですよね。

ラストもよかったし、みんなを幸せな気持ちにする作品です。
しかし私の「妄想嫌い」ってどうなのよ、度を超えているかも。(^^;
いや、だからといって私がまったく妄想しないわけじゃないですから。
この手の、「オッサンオバハンの妄想が、妄想として描かれていないところ」が苦手なんだってば(笑)。
—–

『ルームロンダリング』

『ルームロンダリング』
監督:片桐健滋
出演:池田エライザ,渋川清彦,健太郎,光宗薫,木下隆行,奥野瑛太,
   つみきみほ,田口トモロヲ,渡辺えり,オダギリジョー他
三連休の最終日、某試験を受けるダンナを会場へ送り届けました。
そういえば去年もそうだったなぁ。毎年受け続けているこの試験。
落ちても勉強は無駄にならないから良しとして、早く受からないかしらん。
試験の終わる夕方にまた会場まで迎えに行く予定。
それまでに梅田で映画を2本観ることにしました。
あまりに暑いから、梅田までそのまま車で行きたいところだけれど、
もしも帰りに道路が混んでいて、迎えが間に合わなくなると困る。
最寄りの駅のコインパーキングに駐車して、電車で梅田へ向かいました。
シネ・リーブル梅田で2本ハシゴの1本目に選んだのは本作。
前月の試写会に応募したのに外れたヤツです。
絶対当たると思っていたから外れたのが悔しくてスルーするつもりが、
先日読んだ『瑕疵借り』という本が面白く、それとかぶる内容にスルーできず。
八雲御子(みこ)(池田エライザ)、20歳。
幼い頃に父親を亡くし、母親(つみきみほ)も失踪、祖母(渡辺えり)に引き取られる。
しかしその祖母も御子が18歳のときに他界し、
葬儀にやってきた母親の弟、悟郎(オダギリジョー)が御子の面倒をみるという。
怪しげな不動産屋を営む悟郎が御子に紹介した仕事は、
事故物件に一定期間住んで報酬を得るというもの。
自殺等の事件があった部屋は、その旨を不動産屋が借り主に告知する義務があるのだが、
告知しなければいけない期間は特に定められていないため、
御子に一定期間住まわせておけば、その後の借り主には告知しなくて良いからだ。
実は御子には死んだ人間が見えるという特技がある。
幽霊たちから何か悪さをされるわけでもないから、別に怖くもない。
この仕事を始めてからすでに3人の幽霊と遭遇。
4人目となったのが、自殺したパンク野郎、公比古(渋川清彦)。
この世に未練ありありの公比古の愚痴を聞くはめになった御子だったが、
諸般の事情から短期間でその部屋を出ることに。
5人目として遭遇したのは、刺殺された悠希(光宗薫)。
気がつけば、公比古も悠希の部屋へ出入りするようになって御子は唖然。
さらには、ご近所さんとのおつきあいは御法度なのに、
隣の部屋に住む亜樹人(健太郎)が何かと御子に声をかけてきて……。
曰く付きの部屋というのはなんだか怖いもの。
『残穢 住んではいけない部屋』(2015)なんて怖すぎるけど、『瑕疵借り』は切なく温かかった。
そして本作はとてもユーモラスで楽しく可笑しく切なくもあり。
どこからどう見ても怪しい悟郎役のオダギリジョーがめちゃくちゃイイ。
御子たち生きている人間と幽霊が一致団結して刺殺犯逮捕に当たるシーン、痛快です。
“TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2015”の準グランプリ受賞作。
ちなみにこのときのグランプリ受賞作は『嘘を愛する女』でした。
原作が別にある映画が多いなか、オリジナル脚本はなんだか嬉しい。
これがデビュー作の片桐健滋監督、今後注目&応援します。

—–

『子どもが教えてくれたこと』

『子どもが教えてくれたこと』(原題:Et Les Mistrals Gagnants)
監督:アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン

シネ・リーブル梅田で2本ハシゴの2本目。
前述の『ゲッベルスと私』の次に。

監督はジャーナリストでもあるフランス人女性、アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン。
ご自身も幼い娘さんを病気で亡くされたという辛い過去を持つ彼女が、
重い病気と闘う5人の子どもたちの日常をフィルムに収めたドキュメンタリー。

肺高血圧症のアンブル、9歳(♀)。表皮水疱症のシャルル、8歳(♂)。
骨髄の神経芽腫を患うカミーユ(♂)、5歳。腫瘍に悩まされるテュデュアル、8歳(♂)。
腎不全のイマド、7歳(♂)。とてもとても可愛い子どもたち。

こういうドキュメンタリー作品は、子どもの話のみならず、
周囲にいる大人の話も添えられるものですが、本作はすべて子ども目線。
彼らについて、病気について、大人が語るシーンはほぼ皆無。
大人が話すのは、子どもたちと直接話しているシーンのときだけです。

ひどく重い病気を生まれたときから抱えているのに、子どもたちは明るい。
「悩み事は、脇に置いておくか、つきあっていくしかないの」とアンブル。
テュデュアルも「病気だからって幸せになれないわけじゃない」。

驚かされるのは、5人とも自分の病気についてものすごくよくわかっているということ。
自分がいつ病気に罹り、今どういう状態にあって、どんな注意が必要か、
今後どのような治療を受けてゆくのか。この歳でこんなに理解できるものなのか。
説明しても子どもには理解できないなんてことは、大人の思い込み。

通院に付き添う父親に向かってイマドが言うのは、
「腎移植を受けたら、お父さんを疲れさせなくて済む」。
父親が「子どもと一緒にいるのはお父さんの役目だから、いいんだよ」と言うと、
「お父さんの役目だけどね、でも疲れるのは疲れるでしょ」と、笑顔のイマド。

皮膚の痒みと痛みに耐えるシャルルの姿を見ると、
手湿疹で死んだほうがマシだと思うぐらい辛かったときを思い出します。
私の場合、生死に関わるような病気じゃなかったのに、
死んだほうがマシだなんて思ったことをシャルルに詫びたくなりました。
彼の「忘れないリスト」には泣いてしまう。
嬉しかったことも苦しかったことも彼は忘れたくない。

シャルルが長らく病院でつきあっている親友ジェゾンとのやりとりは可笑しい。
エンドロールで、シャルルのおばあちゃんにジェゾンがあれこれねだるシーンで、
「ぼくのおばあちゃんは君の財布じゃない」には大笑いしました。

生きていることを幸せに思い、一日一日を大事に生きている5人。
『ワンダー 君は太陽』もよかったけれど、個人的にはこっちのほうが断然お薦め。

命を、信じること。
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