『500ページの夢の束』(原題:Please Stand By)
監督:ベン・リューイン
出演:ダコタ・ファニング,トニ・コレット,アリス・イヴ,リヴァー・アレクサンダー,
マイケル・スタール=デヴィッド,ジェシカ・ロース,マーラ・ギブス他
なんばで4本ハシゴの1本目。なんばパークスシネマへ行きました。
どこへ行っちゃったんだろうと思っていたダコタ・ファニング。
長編映画初出演だった『I am Sam アイ・アム・サム』(2001)でその演技を絶賛され、
『ハイド・アンド・シーク 暗闇のかくれんぼ』(2005)では
主演のロバート・デ・ニーロを食ったとまで言われ、
『宇宙戦争』(2005)ではトム・クルーズとも共演。
その後もコンスタントに映画に出つづけてはいたものの、
いまやすっかり4つ下の妹エル・ファニングのほうが売れっ子。
姉ダコタは『オーシャンズ8』にも出ていたのに、私は気づかず。
どこに出演していたのかと思い返してみたら、
アン・ハサウェイ演じるダフネが嫉妬するセレブのペネロペ役だったのですね。
しかし本作を観て、彼女に気づかなかったのも無理はないと思いました。
ダコタと安達祐実ってなんとなく似ていると思っていたものだから、
成長してもダコタは少女のままの面立ちだと信じ込んでいたのです。
そうしたら、ちゃんと大人になっていて。
すらりとした体型にサラサラの髪、顔もその姿とバランスがいい。
そして演技力もやはりそのまま持っています。
自閉症のウェンディは、既婚の姉オードリーと離れて施設で暮らしている。
毎日規則正しい生活を送れるよう、ソーシャルワーカーのスコッティの支援を受けて奮闘。
姉夫婦には生まれたばかりの娘ルビーがいて、叔母として会う日を夢見ているが、
いつ癇癪を起こすかわからない自分にはまだまだ会わせてもらえそうにない。
そんなウェンディが唯一誇れるのは、誰よりも“スター・トレック”に詳しいということ。
スコッティと決めた日々のスケジュールの中の自由時間を用い、
“スター・トレック”脚本コンテストに応募するため、執筆にいそしんでいる。
やっと脚本を書き上げたものの、郵送していては〆切に間に合わない。
パラマウント・ピクチャーズへ自分で直接持ち込むことを決意したウェンディは、
日の出を待ってこっそり施設を抜け出す。
勝手についてきた愛犬ピートは追い返そうとしても帰らない。
仕方なくピートを抱え、ロサンゼルス目指して出発するのだが……。
ふだんシナボンを売る店で働いているウェンディにとっては、店と施設の往復がすべて。
横断歩道の渡り方はわかっていても、横断してはいけないと言い渡されている通りがあります。
その通りを渡って踏み出すことから彼女の旅が始まるのです。
決死の覚悟で出発しても、戸惑うウェンディに親切な人ばかりではない。
バスを途中で降ろされ、有り金のほとんどとiPodを盗まれ、
立ち寄ったコンビニではぼったくられそうになる。
酷い人もいれば優しい人もいるけれど、基本、自分で切り拓く。
なんとか目的地まで行く方法を考えて、たどりつけたなら。
ウェンディ役にダコタ・ファニング。
スコッティ役にはトニ・コレット。オードリー役にアリス・イヴ。
いつのまにかウェンディを応援したくなります。
シナボンの店の同僚を演じたトニー・レヴォロリと、警官役のパットン・オズワルトもよかった。
ネタバレですけれど、せっかく届けた脚本、受賞はできません。
受賞して超ハッピーエンドにはしなかったのもイイ。
世の中そんなに甘くない。でも、旅に出たことは無駄ではない。
いちばん読んでほしい人に読んでもらえたのだから。
原題は“Please Stand By”、ウェンディがパニックを起こしたときに
スコッティがウェンディに言い聞かせる言葉、「そのまま待機」です。
そのまま待機しなくても、踏み出していいよ。
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