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『最初で最後のキス』

『最初で最後のキス』(原題:Un Bacio)
監督:イヴァン・コトロネーオ
出演:リマウ・グリッロ・リッツベルガー,ヴァレンティーナ・ロマーニ,レオナルド・パッツァーリ,
   トマス・トラバッキ,デニス・ファゾーロ,アレッサンドロ・スペルドゥーティ他

前述のバンクシーと後述の山の映画が目的だったので、
本作を観たのは、2本の間を埋めるのにちょうど時間がよかったからにほかなりません。
しかし終わってみればノーマークだった本作がいちばんよかった。

イヴァン・コトロネーオ監督はそもそもは脚本家。
『あしたのパスタはアルデンテ』(2010)や『はじまりは5つ星ホテルから』(2013)を書いた人。
監督としてはこれが3作目だそうですが、日本で公開されるのは初めて。
甘い青春ものを想像していたら、その思いを打ち砕かれました。

イタリア北部、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州にある町ウーディネ。
トリノの施設から里親に引き取られることになったロレンツォは、
16歳でゲイレディー・ガガに憧れ、スターを夢見る高校生。
しかし初日からオカマっぽい服装だとからかわれ、早くもいじめの対象に。

そんな彼に唯一声をかけたのは同級生の女子ブルー。
彼女は、人気者の先輩を彼氏に持つせいでほかの女子たちから妬まれ、
学校の壁の下品な落書きに名前を挙げられている。
「本物のゲイなの? ふりだけ?」と率直に尋ねるブルー。
ふたりはすぐに親しくなり、一緒に過ごすように。

ロレンツォが一目惚れしたのは、やはり同級生でバスケ部員のアントニオ。
優秀だった兄と比較され、馬鹿呼ばわりされているが、
無口なアントニオは言い返さないどころかほとんど口をきかない。
そのせいで知的障害があるとまで噂されている。

クラスの目立つグループの誕生会に招待されなかったロレンツォとブルー。
ふたりはアントニオも当然招待されていないはずだと考え、彼を呼び出す。
誘いの言葉に半信半疑で出かけたアントニオは、
いじめなどに屈せず好きなように振る舞うふたりと意気投合。
以来、3人は友情を育むのだが……。

16歳のブルーが40歳になったときの自分に宛てて書いた手紙の形で。

思春期の子どもたちにもいろいろな悩みがありますが、
本作で描かれるのは子どもたちのそれだけじゃない。
3人の親にもそれぞれ事情や迷いがあって、それが丁寧に描かれています。

いろいろあったけど楽しかったあの頃。
そういういい話で終わることを想定していたら、まさかの。

あのとき、ほかの言葉を選べなかったか。ほかの態度を取れなかったか。

レディー・ガガをはじめ、音楽もとてもよかった。
『50年後のボクたちは』(2016)と並んで、耳にも心にも残る1本でした。
タイトルの意味がわかるとき、とても切ない。
—–

『バンクシーを盗んだ男』

『バンクシーを盗んだ男』(原題:The Man Who Stole Banksy)
監督:マルコ・プロセルピオ
ナレーション:イギー・ポップ

この日の朝、ダンナがタイから帰国しました。
晩は毎土曜日の習慣、帰国日といえども普通に外食の予定なので、
それまで昼寝するであろうダンナを家に残し、私は映画に行くのでした。

暑いけれども地下道を通ってシネ・リーブル梅田へ。
阪急梅田駅から梅田スカイビルまでたどり着くのって、10分じゃキツイですよね。
だいたいいつも15分と見積もっています。
寒いときはさっさと歩けても、この炎天下では足取り重くて堪えるのよ。

前日に観た『オーシャンズ8』にもバンクシーがチラリと出てきて嬉しかった。
『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』(2010)以来、虜です。

ご存じない方のためにちょこっと説明しますと、
バンクシーは正体不明のグラフィティアーティスト。
グラフィティアートというとただの落書きと見られる向きも多いですが、
彼の作品の場合は数千万円、時には1億円という価格で取引されるのですから、
落書きの域なんて遙かに超えています。

その活動地域はロンドンを中心として世界中。
誰にも見られないようにどこかにこっそり現れては作品を残す。
所詮落書きと、ただちに消されてしまうこともあります。

『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』(2014)では1カ月毎日、
ニューヨークのどこかの路上に作品を発表し、
自分がいち早くそれを見つけようとする人びとでエライ騒ぎになりました。

戦場まで出かけていくこともあり、命を張った落書きと言えます。
しかも作品の完成度はめちゃくちゃ高く、上品。
やっぱり落書きの域を超えている。

そんなバンクシーが、今回はパレスチナ・ヨルダン西岸地区ベツレヘムへ。
パレスチナとイスラエルを分断する巨大な壁に絵を描きました。
ロバと兵士が描かれたその絵を見た一部の人が、
パレスチナの住民をロバだと茶化していると非難。

壁の持ち主である地元の大金持ち、マイケル・カナワッティが、
タクシー運転手のワリド・“ザ・ビースト”をはじめとする数名に、
壁から絵を切り取ることを命じます。
海外に持ち出し、売上金は教会の改修に寄付するとかなんとか。
ワリドたちにも報酬を払うからなんてことも言って。

壁から絵を切り取れるものなんですね。
ウォータージェットカッターとかいうものでギュイーンと切り取っていました。
鼻高々に話していたワリドですが、報酬なんて一銭も貰えず。
まんまとマイケルだけが儲ける話に乗ってしまったわけで。

上映終了後に映画評論家ミルクマン斉藤氏のトークイベント。
客が20名ほどしかいなかったので静かなものでしたが、
そろそろバンクシーの正体が明らかになりつつあるという話など、
今後も活動が楽しみになるトークでした。

バンクシーがヨルダンで昨年開業したという「世界一眺めの悪いホテル」、
ものすごく気になります。
—–

『オーシャンズ8』

『オーシャンズ8』(原題:Ocean’s 8)
監督:ゲイリー・ロス
出演:サンドラ・ブロック,ケイト・ブランシェット,アン・ハサウェイ,ミンディ・カリング,
   サラ・ポールソン,アウクワフィナ,リアーナ,ヘレナ・ボナム・カーター他

封切り日だった先週金曜日、仕事帰りに観に行きました。
なにしろ翌日の土曜日朝にダンナがタイから帰国するので、
もうしばらくは終業後に映画なんてこともできませんから。

大阪北部地震でスプリンクラーが作動してしまい、
座席が水をかぶったという噂の109シネマズ箕面。
わが家からいちばん近い劇場です。
休業中はとても寂しい思いをしていましたので、嬉しい!

それはそうと、今回の再開にあたり、新サービスなるものが。
これまでシネマポイント会員には1回で1ポイント付与され、
6ポイント貯まれば1本無料というサービスがありました。
これに新たに加わったサービスは、3ポイント使って1,100円で鑑賞可能という。

算数が苦手な私は、どちらが得なのか即座に計算ができない。
1,800円で6回観て、1,800円分タダになるわけでしょ、
ほいでからどうなるねん、えーと、などと考えていたら、
算数得意な友人が、「映画1本が1,800円だとすると、1ポイントの価値は300円。
3ポイント使って700円引きということは、1ポイント当たり233円。
6ポイント貯めてからならば、1ポイント当たりが300円にアップする。
別の言い方なら、3ポイント貯めた時点で700円引きをゲットしているわけだけど、
ここからさらに3ポイント貯めたら、1,100円ゲットできるから、
すなわち、1ポイント当たり367円引きをゲットできるということ。
だから、わざわざ3ポイントで使う必要はない。
そんなサービス、全然お得じゃない」とバッサリ(笑)。

そうか、そういうふうに計算すればいいのかと、
私は新サービスよりも友人がシュシュッとそう計算できることに感動したのですが、
1年に6ポイント貯まらない人もいるでしょうから、
そういう場合はポイントを無駄にするよりも、安く観る選択肢があるほうがいいのでしょうね。

やっと本題。

『オーシャンズ11』(2001)の女性版。
ジョージ・クルーニーが演じたカリスマ窃盗犯ダニー・オーシャンの妹も
やはり窃盗の天才という設定で、サンドラ・ブロックが演じます。
予告編がものすごく楽しそうでした。

伝説の窃盗犯ダニー・オーシャンの妹デビーは、刑務所から仮出所。
出所後の彼女が連絡を取ったのは親友のルー。
服役中に練りに練った窃盗計画を聞かせると、ルーは驚愕。

デビーのターゲットは、カルティエが所有する1億5000万ドルの宝石。
まずはその宝石を盗めるところまで出してもらわねばならぬと、
デビーとルーは時代遅れと揶揄されるデザイナー、ローズにコンタクト。
まもなくメトロポリタン美術館で開催される“メットガラ”
ハリウッド女優のダフネがローズの衣装とともに身に着けることに。

しかし、メットガラの会場は隙なく防犯カメラが張り巡らされている。
計画を果たすためにデビーたちがスカウトしたのは、かつての仕事仲間タミーのほか、
宝石に詳しいアミータ、スリの得意なコンスタンス、天才ハッカーのナインボール。
世界一を誇ると言っても過言ではないセキュリティを破ることができるのか。

カッコイイ女性が揃っているのに、なぜか男ばかりのオーシャンズのほうが派手に思えたのは、
前作の監督スティーヴン・ソダーバーグと本作の監督ゲイリー・ロスとの差か。
優雅さにも欠ける気がするけれど、期待どおりには楽しかった。

キャスティングに惹かれます。
ダフネ役のアン・ハサウェイが主演した『プラダを着た悪魔』(2006)。
こんなこと書かなくても皆さんご存じでしょうが、
その上司役のモデルは、メットガラを仕切るアナ・ウィンターと言われています。
本作にもアナ・ウィンターがカメオ出演。
メトロポリタン美術館の展示場でバンクシーネタが出るのもワラける。

また、実際のメットガラでは、リアーナが出るとか出ないとか揉めて、
アナ・ウィンターが絶対に彼女には出てもらわなければと奔走した事実があります。
そのリアーナがナインボール役で出ているのですから、なんと粋。

ところで、『万引き家族』カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したさい、
安藤サクラの泣く演技を絶賛していた審査委員長が
本作でルー役を務めるケイト・ブランシェットだということ、
日頃あまり映画を観ないけれど気づいたという人、いますか。素朴な疑問。

ダニー・オーシャンがホンマに死んだのかどうかわからんことになってます。
ということは、あわよくばオールスターの続編も考えているのかしらん。
またまた儲けよう思て、と思うけど、絶対楽しそう。
—–

活弁ライブに行く。

大阪ステーションシティシネマで『スターリンの葬送狂騒曲』を観て、
第七藝術劇場で『ああ栄冠は君に輝く』を観終わったのが15時半すぎ。
ナナゲイでもう1本観るかどうか迷い、絶対寝そうだったのでパス。
信号を渡ったところにある“松のや”でひとりトンカツ。

満腹になってから、ナナゲイのすぐ近くにあるカフェへ。
おなかいっぱいだというのに、ついついケーキセットを注文。
レモンタルトを食べてコーヒーをいただき、
モリンガとかいうお茶のポットサービスを追加して読書に没頭。
『あの人が同窓会に来ない理由』という本を読了してからシアターセブンへ。

過去に2度おじゃましている坂本頼光(さかもとらいこう)さんの活弁ライブ。
さばのゆ大学で開催された折りに行ったきりなので、4年ぶり。

まずは短めの無声映画を2本。
1本目は澤田正二郎主演の『国定忠治』(1924)。
赤城山の名場面といわれても私は知らないのですが、なるほどこれですか。

2本目は『モダン怪談100,000,000円』(1929)。
国定忠治の埋蔵金の発掘がブームになった時代があったらしく、
そのパロディー映画だそうで、これがやたらめったら面白い。
日本人にこういう笑いのセンスが昔からあったのだと思うと嬉しくなります。
出演陣は小津安二郎作品の常連役者、斎藤達雄、松井潤子、坂本武、吉川満子とのこと。
いろいろ、へ~っ、なのです。

桂枝雀の息子さんで噺家の桂りょうばさんの落語『秘伝書』を挟み、
りょうばさんと頼光さんのワラけるトーク。

最後に1時間という長丁場の『沓掛時次郎』(1929)。
時次郎は信州の沓掛宿の博徒。
自分が斬った三蔵の身重の女房きぬとその息子の面倒を見ることになり、足を洗います。
その気になればすぐに稼げる時次郎がきぬたちのために堅気にこだわり、
拾った三味線で門付けをするなど、すべてのシーンに興味を惹かれます。

頼光さんの活弁ライブで、観ているのは無声映画のはずなのに、
観終わったときには役者の声を聴いていたような錯覚に陥ります。
それほど頼光さんと映像が一体化していたということなのでしょうね。

面白かった。また必ずおじゃましたいです。
—–

『ああ栄冠は君に輝く』

『ああ栄冠は君に輝く』
監督:稲塚秀孝

猛暑で誰か倒れるんじゃないかと心配されつつも絶賛開催中の高校野球
何年か前の夏にアルプススタンドで観戦したときは、
あとから思えばあれは絶対熱中症。目の前が真っ白になりました。
それ以上に思い出すのが、お手洗いでのおばちゃんたちの会話。ワロた。
確かにデロッデロよ。

そんな夏の高校野球選手権は今年が第100回。
大会歌の『栄冠は君に輝く』がどのように生まれたのか。
第七藝術劇場にて。

作詞者は石川県根上町出身の中村義雄氏。
1914(大正3)生まれの彼は、もとは野球が大好きな少年で、毎日裸足で草野球。
走塁中に負った怪我を放置して骨髄炎を発症。右膝下の切断を余儀なくされます。
切断の手術中も、早慶戦のラジオ中継を聴きつづけていたそうです。

野球の夢がついえて、文芸の道へと方向転換。
投稿生活を送って生活費を稼ぐようになり、短歌会も主宰します。
そこに参加していたのが、地元の貯金局に勤務する高橋道子さん。
太平洋戦争が終わった1945(昭和20)年頃のことでした。

1948(昭和23)年、学制が変更された記念に、高校野球の大会歌の作詞が公募されます。
ペンネームとして加賀大介を用いていた義雄氏は、
道子さんの名前を借りて、加賀道子の名前で応募。
自分の名前で応募すると、賞金目当てだと思われるのが嫌だからと。
それが5,000を超える応募作の中から選ばれたのです。

本当は道子さんではなく、義雄氏が作ったのだということは、
ふたりと義雄氏の親友ひとり、計3人だけの秘密でした。
その後、義雄氏と道子さんは結婚、娘と息子にも恵まれ、
本名も中村義雄から加賀大介へと改めると決め、役所に申請します。

墓場まで持って行くはずだったであろう秘密ですが、
数十年後に歌い継がれる大会歌についての取材が来ます。
記者に向かって思わず本当のことを打ち明けてしまった道子さん。

いつか芥川賞直木賞を取るんだと言っていた大介氏。
その夢は叶わぬまま1973(昭和48)年に癌で死去されました。
小説家としては世に作品を残せなかったけれども、
こうして今も、きっとこの先もずっと、人びとの心に残りつづける歌。
甲子園の勝者敗者関係なく勇気づける歌。

野球好きゆえ、知っておきたいと思って観に行きました。
清々しい気持ちになりました。
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