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『タリーと私の秘密の時間』

『タリーと私の秘密の時間』(原題:Tully)
監督:ジェイソン・ライトマン
出演:シャーリーズ・セロン,マッケンジー・デイヴィス,マーク・デュプラス,
   ロン・リヴィングストン,アッシャー・マイルズ・フォーリカ,リア・フランクランド他

シネマート心斎橋で3本観てから、大阪ステーションシティシネマへ移動。
その間35分。厳しいかなと思いましたけれど、楽勝。
いつもなかなか来ないエレベーターさえ早めに来れば余裕です。
あ、ステーションシティシネマへ行くときは、必ず地階から乗るようにしています。
1階から乗ろうとすると満員のことがよくありますから。

『JUNO/ジュノ』(2007)、『ヤング≒アダルト』(2011)」と同じコンビ。
脚本をディアブロ・コディが書き、ジェイソン・ライトマンがメガホンを取る。
ついでに主演は『ヤング≒アダルト』と同じ、シャーリーズ・セロン
彼女は本作のために体重を20キロ以上増量。
3人の子どもを産んでたるんたるんになった体型をつくりだしたのだから凄い。

育児と家事に追われて疲れ果てているマーロ。
小学生の長男ジョナと長女サラともにまだまだ手がかかるなか、3人目を出産予定。
夫のアンドリューは優しい言葉をかけてくれるものの、それだけ。
何かを特に手伝ってくれるわけではなく、ベッドではヘッドホンを着けてゲーム三昧。

無事に次女ミアを出産したが、マーロの神経は限界寸前。
ミアが夜泣きしてもいっさい起きない夫。
落ち着きのないジョナは学習障害を疑われ、学校から何度も呼び出しが。
まるで元気のなくなったマーロを心配し、
彼女の兄クレイグがナイトシッターなるものを紹介する。

それは、夜専門のベビーシッターだという。
生まれたばかりの赤ちゃんを他人に委ねるだなんてと抵抗するが、
ひとりで何もかもこなすことには限界を感じてついに連絡する。

やってきたのは、タリーという若くて美しい女性。
ヘソの出た服を着ているのが気になるし、
雇い主の冷蔵庫を勝手に開けて飲食するのも気になるが、
彼女のベビーシッターとしての仕事は完璧。
おかげでマーロの体にも心にも余裕が生まれ、本来の明るさを取り戻してゆくのだが……。

途中まで非常に面白い。女性の共感度は高いでしょう。

タリーはいったい何者なのか。
マーロに笑顔が戻った頃に、突然辞めると言い出すタリー。
この辺りから、ホラーかファンタジーの様相を呈してきます。

ネタバレ。

結局すべてが幻想。光り輝いていた頃のマーロこそタリーで、
若かった自分が、いっぱいいっぱいの自分を助けにやってくる。

こうなるといったいどこからが幻想だったのかと考えてしまいますが、おそらく最初からそう。
アンドリューは笑顔の戻ったマーロに喜ぶけれど、タリーに会ったことはない。
セックス指南もすべてマーロの幻想の内でしょう。

マーロの状態に気づいたアンドリューは本当に良き夫で父親になったようですが、
気づいて変わる夫ばかりではないですよね。
お母さんたち、ひとりで何もかも背負い込まないで。
—–

2018年8月に読んだ本まとめ

2018年8月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:3591ページ
ナイス数:909ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly

■廃墟に乞う (文春文庫)
お酒を飲みつつ読みはじめたら何度も寝そうになり、頭をシャンとさせてから翌日読み直す✖️3回、思いのほか読了までに日数を要しました。だからって、面白くないということではありません。休職中の刑事が助言や協力を求められ、いくつかの事件を解決へと導く。休職中も仕事しているようなものだから、頭も心も休んじゃいないのですが、関わることがリハビリになっているわけで。面白いのに何度も寝そうになってしまったのは、淡々としていて地味すぎるから。泣かせにかかるようなあざといシーンも無駄もなし。だから余計に心にぽっかり穴が空く。
読了日:08月05日 著者:佐々木 譲
https://bookmeter.com/books/4560160

■カレーなる逆襲! ポンコツ部員のスパイス戦記 (文春文庫)
大学のカレー対決。片方は「俺らがなんでカレーつくらなあかんねん」と不満いっぱいの野球部。パンチの効いた設定に終盤まで面白く読んでいたのに。身内に化学調味料アレルギーがいるものだから、最後にガックリ。カレーを美味しくするドーピングアイテムのうち、最後に明かされるのが化学調味料だなんて。そこに頼るなら、これだけ手間暇かけてつくる意味が私にはわからん。最初から「味の○」放り込んどけよっちゅう話です。著者が食事自体あまり好きでないとあとがきにあるのを見て納得。カレー対決と野球を上手く取り込んでいるだけに残念至極。
読了日:08月06日 著者:乾 ルカ
https://bookmeter.com/books/12879493

■あの人が同窓会に来ない理由 (幻冬舎文庫)
裏表紙には「大人のための青春小説」とあるけれど、イヤミスだったりしてと最後まで疑ってしまう進み方。同窓会の幹事を務めることになった3人。幹事あるある、てんこ盛り。ちょっとお節介が過ぎると思いつつも、いろいろ考える。学生当時ほとんど話したことのなかった同級生と会うと、タメというだけでめっちゃ話ができて、なんだ昔もっと話せばよかったと思うこともしょっちゅうで。いくら案内を送っても無反応の人に、もう連絡するのはやめようかなと思っていたまさに今年、こんなのを読むと、もうちょい続けて送ってみるかと思い直すのでした。
読了日:08月08日 著者:はらだ みずき
https://bookmeter.com/books/13040719

■この世でいちばん大事な「カネ」の話 (角川文庫)
世の中カネだよカネ!という投げやりに明るい話を想像していたため、暗い話にめげそうに。周囲も貧乏だから貧乏感薄。だけど貧乏は病気だと言う。著者の漫画に出てくる母ちゃんたちのパンチパーマの理由をようやく知る。アル中の父親を持ちながら、アル中を夫に選んでしまう事実。今は高須院長と仲良くお過ごしのようですが、彼女はどんな状況に幸せを感じるんだろう。以前住んでいたマンションの大家さんがとても良い人で、管理人さんにそう言ったら、「ま、お金のある人は心に余裕があるからね」とわりと冷ややかに返ってきたことを思い出します。
読了日:08月10日 著者:西原 理恵子
https://bookmeter.com/books/3199625

■完璧な家 (ハーパーBOOKS)
嫌だ嫌だ、こんな話。不幸中の幸い、肉体的な拷問を受けるわけではないので、目を覆いたくなるような描写はありません。でも、最高の相手と信じて疑わなかった男性が、女性を精神的にいたぶることを至上の喜びと感じる変態だったら。嫌だ嫌だと思いながら、主人公とその妹のことが心配で、最初から最後までひきつけられっぱなし。読み終わるまで止められない。原題は“Behind Closed Doors”。この邦題は巧いと思います。「完璧だ」が口癖の男とトイレまでついてくる男はいくらイケメンでも疑ってかかるべし。完璧、怖い(笑)。
読了日:08月13日 著者:B・A・パリス
https://bookmeter.com/books/11572291

■顔なし子
閉鎖的な田舎の村。まるで人の悲鳴のように聞こえる山鳴り。大きな柱時計。それにこのタイトル。心霊写真の話も出てはくるけれどホラーではない、辛すぎる物語。無骨な父が再婚相手として連れてきたのが超美人だったがゆえに不幸を生む。その連れ子の血の繋がらない兄となった主人公。細かな節毎に変わる目線に少し戸惑いつつも、希望を見出したくて最後まで。前向きな人など誰もいないかのような村で、いちばんあきらめているようでいて前を見ていたのは弟なのかもしれません。子どもに何かを託すな。託すなら任せて好きにさせろ。じわじわ来ます。
読了日:08月16日 著者:高田 侑
https://bookmeter.com/books/530247

■ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】ムビチケ購入特典のマスキングテープを見てニヤつきながら公開を心待ちにしていました。巨乳のお姉さんが放り投げたコーラ缶がペンギンに変わるなんて、森を抜けた草原にまんまるの海が浮いているなんて、と原作を読んで想像するのは楽しかった。こうして映像化されると、私の頭の中ではここまで想像できていなかっただろうに、できていた気にさせてくれるから不思議です。しかし、原作の最後の2行の、胸をキューッと絞られるような切なさには届かない。同じ台詞なのになぜかしら。森見さんのなせる技。
読了日:08月19日 著者:森見 登美彦
https://bookmeter.com/books/5586115

■侠飯5 嵐のペンション篇 (文春文庫)
第5作だから、読者は皆、柳刃&火野コンビの正体を知っている。知らぬは本の中のほかの登場人物のみ。今回の舞台は料理イマイチのペンション。宿泊客なのに柳刃がオーナーとバイトにアドバイス、料理どんどん旨くなる。某カレー対決小説を読んだときに、ドーピングアイテムが化学調味料というオチに怒りすらおぼえましたが、柳刃の料理は化調全開ではなく、絶妙のバランスで上手く使っていると想像します。やっぱりほしいがな、侠飯レシピ本。肝心の(?)ミステリーはもはやオマケ。料理の話があればそれで良いし、柳刃の説教なら聴けちゃうのよ。
読了日:08月21日 著者:福澤 徹三
https://bookmeter.com/books/12881763

■八月の青い蝶 (集英社文庫)
読みづらい文体だというわけではないのに、思いのほか読むのに時間を要しました。偵察機の話の部分に興味を持てなかったからということもあるけれど、とても丁寧に書かれた作品ゆえ、丁寧に読まなければならないような気がしたからです。死期迫って自宅に戻った老人の少年時代の思い出。初恋の相手は父親の愛人。特異な家庭環境にありながら、各々が各々の存在を認めていたことがわかります。あまりに瑞々しいシーンの後の被爆シーン。そのギャップに打ちのめされました。まるで合唱組曲『チコタン』だけど、心安らかに三途の川を渡れたならばいい。
読了日:08月23日 著者:周防 柳
https://bookmeter.com/books/10915590

■闘う君の唄を (朝日文庫)
理想を胸に着任した若き女性幼稚園教諭がモンペに立ち向かう、熱くて爽やかなお仕事小説。のまま最後まで行くわけがないのよ、この著者なんだから(笑)。そう疑ってかかっているのに、帯に頁まで明記されているとおり、254頁で口ぽかん、そう来たかと苦笑い。真犯人はきっと誰でも当てられるから、犯人探しのミステリーにはならないけれど、普通の町で起こり得る状況自体がスリリング。それにしても読書開始時と終了時でこんなにも印象が変わることって、そうそうない。しばらくは中島みゆきの『ファイト!」が頭の中をぐるぐる回ること、必至。
読了日:08月25日 著者:中山七里
https://bookmeter.com/books/13054087

■新装版 夏、19歳の肖像 (文春文庫)
中国で映画化されて昨日公開。心斎橋の劇場に行く電車の中で50頁まで読み、観終わってから読了。最初の出版が1980年代。全面改訂して出版されたのが2005年。そこからですら15年近く経過しているわけだから、ちょっぴり時代を感じます。映画版は今つくられただけあって、時代に合わせていろいろ改変。ミステリーの部分にはハイテクも駆使したために、原作とは異なる点もいろいろ。しかし、ひと夏の恋が描かれるのは同じ。中国映画版のふたりは超イケメンと美女なので、このビジュアルをイメージして読むと、童貞臭が消え失せます(笑)。
読了日:08月26日 著者:島田 荘司
https://bookmeter.com/books/556699

■ひゃくはち (集英社文庫)
映画版が大好きでした。原作未読のまま10年経ち、『イノセント・デイズ』を読んだときに同著者だと知ってたまげました。やっと原作を読んで再びたまげる。映画版は雅人らの高校時代のみ、原作は大人になってからの彼らと高校時代の彼らを織り交ぜながら。酒とタバコと合コン三昧の球児なのに、アホさに笑えて、切なくて、爽やか。終盤にさしかかるまでは絶品だと思ったけれど、妊娠判明後は個人的にイマイチ。映画版でいちばん好きだったシーンも原作にはないとわかってかなり残念。しかし、野球好きにはお薦めしたい。きっとますます好きになる。
読了日:08月30日 著者:早見 和真
https://bookmeter.com/books/3354606
—–

『SHOCK WAVE ショックウェイブ 爆弾処理班』

『SHOCK WAVE ショックウェイブ 爆弾処理班』(原題:拆弾専家)
監督:ハーマン・ヤウ
出演:アンディ・ラウ,チアン・ウー,ソン・ジア,フィリップ・クン,ロン・ン,
   ワン・ジーイー,フェリックス・ウォン,セク・サウ,ベイビージョン・チョイ他

シネマート心斎橋で3本目。
『アイ・アム・タレント』『夏、19歳の肖像』→これ。

中国/香港作品。
アンディ・ラウって、正統派の二枚目なのに、なんだか堅物の印象が抜けません。
それは50代後半にさしかかった今でも変わらない。
息も絶え絶えのクリント・イーストウッドに比べればマシだけど、
アンディ・ラウのベッドシーンを見ると、なんだか似合わなくて笑ってしまう。

香港警察爆弾物処理局の警官チョン・チョイサン。
爆弾を多用する強盗団への潜入捜査に成功して複数の犯人を逮捕したものの、
主犯ホン・ガイパンを取り逃がす。
ホンの弟ビウは捕らえたから、兄がチョンを恨みに思うのは確実。

それから18カ月が経過。時を狙っていたホンが再び香港に戻る。
彼は大勢の手下を引き連れて香港最大の海底トンネルを占拠。
爆弾を積んだトラックで入口2箇所を塞ぎ、
トンネル内を走行中だった一般市民を出られなくして人質に取る。

ホンは、48時間以内に海底トンネルを政府に買い戻すよう要求。
また、人質を解放して欲しければビウを釈放しろと言う。
ところが、収監されていたビウを乗せた護送車が事故に遭い、ビウは重傷を負う。
ビウの到着を待つホンは苛立ち、人質を容赦なく殺しはじめるのだが……。

なんちゅうのか、ひと、死にすぎ。(^^;
そういう映画なんだから仕方ないといえばそれまでですが、
チアン・ウー演じるホン・ガイパンの血も涙もない乱射ぶりは憎たらしいったらありゃしない。

いちばん可哀想なのはそんなホンの弟ビウで、
どんな心境の変化があったか、兄とはもう関わりたくない、真面目に生きたいと言う。
なのに兄のもとへ連れて行かれる途中に事故にあって死にかけ、
警察と犯人グループと人質たちが入り乱れてウォーッとなっているときに、
彼の乗せられたストレッチャーがゆらゆらくるくる回る回る。あんまりだ(泣)。
人質の中にいた警察官が、犯人グループに警察官だとバレて、
爆弾を体に巻き付けられたうえに爆死しちゃうのも酷い(泣泣)。

自分の命を犠牲にして市民を助けるチョンの様子は
まるで『アルマゲドン』(1998)なのでした。

悲しいけれど、迫力あります。大画面で観るべし。
—–

『夏、19歳の肖像』

『夏、19歳の肖像』(原題:夏天19歳的肖像)
監督:チャン・ロンジー
出演:ファン・ズータオ,ヤン・ツァイユー,リー・モン,カルヴィン・トゥ,
   チャン・クォチュー,スタンリー・フォン,チュウ・チーイン他

この日、シネマート心斎橋へ行ったのは本作を観たかったからでした。

島田荘司の同名小説が中国で映画化されるとは。
しかも最近の作品ではないのですから、どういう目の付けどころなのか。
原作のレビューはこちら

監督は『光にふれる』(2012)、『共犯』(2014)のチャン・ロンジー。
主演のファン・ズータオがえらく人気のあるひとらしい。
中国出身の歌手で、韓国の男性アイドルグループ“EXO”の旧メンバーでもあるそうな。
確かに美形ですけれど、入場者特典のポスターをもらっても私は困る。(^^;

大学生カン・チャオは、バイクで走っていた折りに事故に遭う。
脚を骨折してしばらく入院生活を送ることに。
同じ大学の医学部にかよう女子学生で病院長の娘ジュー・リーと、
彼女に片想い中の男子学生ジャオ・イーがしょっちゅう見舞いに来てくれるものの、
特に何もすることがない毎日がヒマでたまらない。

そんなとき、病室の窓から向かいの工事現場を見ると、
その隣の豪邸に若い女性がいるのを発見。
ジャオから借りた望遠鏡で邸の中を覗くと、想像を遙かに超える美人。
カンは一目で恋に落ちる。

それから毎日、彼女を眺めるのがカンの日課となっていたのだが、
ある日、彼女が父親らしき男にナイフを突き立てるところを目撃。
夜になると、母親らしき人物と共に彼女が黒いビニール袋を運び出し、
工事現場の土を掘り起こして埋めるところまで見てしまう。

警察にすぐに通報すべきところ、そうしなかったカン。
それどころか彼女への想いは募るばかり。
彼女と知り合いになろうと、付近のカフェなどで彼女について調べはじめ、
名前はシア・インインであることを突き止める。

退院後、彼女のあとをつけたカンは、彼女が勤める会社でアルバイトの職まで得る。
やがて彼女と話す機会が訪れるのだが……。

原作が最初に出版されたのは今から30年以上前。
全面改訂されたというものの、時代はずいぶん変化しています。
だから、現在に合わせた話にしようとすると、
さまざまな面で変更せざるを得ず、登場人物すら原作とは異なります。

原作の主人公は文面から想像するに、そんなにイケていない(笑)。
映画版では超イケメン。
イケメンだからってストーカーは許されないけれど、
ファン・ズータオが演じれば気持ち悪くも怖くもなくて許されてしまう。

それにしたって、真相はかなり茶番で苦笑い。
原作ではナイフが突き立てられる場面は見逃していて主人公の想像にすぎないところ、
映画版では全部見たけど実はこうでしたという話になっていて、
「マジで?はぁ?」と言いたくなるような展開です。

ま、これはファン・ズータオを見る作品なのでしょうね。
これが醜男とブスでやっている話なら、ちっとも嬉しくないから。(^o^;
—–

『アイ・アム・タレント』

『アイ・アム・タレント』(原題:I Am Thalente)
監督:ナタリー・ジョンズ

後述の映画目当てにシネマート心斎橋に行くことにしたら、
ちょうどシネマートデーで鑑賞料金は1,000円。
ならばあちこちへ行かずに同劇場で3本観ましょう。

1本目はアメリカのドキュメンタリー作品。

南アフリカで路上生活を送る少年タレント・ビエラ。
両親がいるにもかかわらず、10歳にも満たないときに家を飛び出しました。
虐待を受けていたものと思われます。
以降、同様の仲間たちとスケートパークで暮らし始めます。

彼のスケートボーディングの才能は並外れたもの。
その動画を見たアメリカのプロスケーター、ケニー・アンダーソンが、
もしも彼がアメリカに来るならば援助を惜しまないと申し出ます。

それまでサポートを申し出る人がいても、
人のために滑るのは嫌だ、誰かの期待に応えるために滑るなんて、
僕にはできないと拒絶していたタレントですが、
ドラッグに手を出してしまった自分をどうにかしなければならないと思っていた頃。
彼のことを親身になって考える人たちの助言もあり、アメリカに行く決意をします。

アメリカに渡って出場してみた大会では散々な結果。
南アの大会では素晴らしい成績を残していたのに。
アメリカとのレベルの差を目の当たりにしたようで愕然とします。

スケートボードファッションを主としたブランドのLRGと契約を結べたら。
自立してきちんと収入を得られるよう、プロスケートボーダーになりたい。
しかし、プロに求められるのはパークでの滑りではなく、
ストリートでいかにトリックを用いて滑ることができるか。
人の目を惹きつけ、もっと見たいと思わせるようなボーディング。

パークでずっと滑ってきたタレントは、ストリートで上手く滑ることができません。
失敗を繰り返し、弱音を吐きながらも、決して止めないタレント。

家を飛び出したときに学校も辞めている彼は、
9歳程度の識字能力しか持っていませんでした。
サポートの一環として個人教師をつけて読み書きの勉強も始めたものの、
生きるうえで勉強が必要だと思えないから進まない。
集中力を欠いた態度だった彼が、車の免許を取るという目標を見つけ、
何度か落ちながらも試験に合格したときの嬉しそうな顔といったら。

タレントの出身地はダーバン。
ダーバンといえば、2010年のワールドカップの会場のひとつにもなった高級リゾート地として有名。
その目の前にこうして路上生活を余儀なくされる子どもたちがいる。
フィクションながら『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』もそうでした。
富裕層の隣には必ず極貧層がある。

世の中は偽善者ばかりと話していたタレントだけど、
偽善的であったとしても、こうして手を貸してくれる人がいれば。
伊坂幸太郎の『砂漠』の一節をまた思い出しました。
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