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今年観た映画50音順〈さ行〉

《さ》
『サムライせんせい』
2017年の日本作品。
幕末、失脚して投獄されていた土佐勤王党盟主・武市半平太(市原隼人)。
度重なる拷問を受けて失神、覚めるとそこは平成の日本。
ちょんまげの侍はコスプレでなければアタマのおかしい人にしか思われない。
行き倒れの彼を助けたのは、地元の名士・佐伯(橋爪功)。
半平太は佐伯の厚意により居候させてもらえることになったうえに、
佐伯が経営する学習塾を侍の姿のまま手伝うことに。
当初は好奇の目にさらされていたが、誠実で温厚な人柄ゆえ人気者に。
元の時代に残してきた妻(奥菜恵)を想いつつ、帰るすべがない。
そんな折、ジャーナリスト・楢崎梅太郎(忍成修吾)が半平太を訪ねてくる。
楢崎の正体は、実は幕末の英雄・坂本竜馬で……。
ありがちなタイムトラベルものではありますが、市原隼人がすごくイイ。
最後はホロリ、泣いてしまった。
 
《し》
『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』
2017年の日本作品。
監督はTVドラマを中心に活躍する湯浅弘章で、これが長編商業映画デビュー。
高校に入学初日、吃音に悩む大島志乃(南沙良)は、
自己紹介で自分の名前も上手く言えず、同級生から笑い者にされる。
寂しく過ごしていた志乃だが、孤高の同級生・岡崎加代(蒔田彩珠)と友だちになる。
加代は音楽が好きでギターが得意なのに音痴。
歌うときだけはどもらない志乃を誘い、ふたりでバンド“しのかよ”を結成。
文化祭で披露するために猛練習を始める。
度胸をつけようと夏休みに路上で演奏していたところ、
入学式の日に志乃をからかったお調子者の男子・菊地強(萩原利久)が通りかかる。
実はいじめられっ子の強はバンドに混ぜてほしいと言い……。
これをイマイチだったというのは悪人な気がするのですが、
私の心にはあまり響かず、ちょっとしんどかった。
それにしても先生あかん。吃音の生徒に対して、「いつもそんなしゃべり方なの?」。
「緊張するのかなぁ」「打ち解ければなんとかなる」、空々しすぎる。
 
《す》
『スウィンダラーズ』(英題:The Swindlers)
2017年の韓国作品。
詐欺師だけを騙す天才詐欺師ファン・ジソンは、父親の自殺を疑う。
父親は希代の詐欺師チャン・ドゥチルの依頼でさまざまな偽造を働いていたのだが、
最後となるはずだった仕事の後に自殺したと知らされたから。
本当は自殺ではなく、ドゥチルに殺されたのではないか。
やがてドゥチルが病死したとの報道に、奴は生きているはずだと確信し、
ドゥチルの担当検事だったパク・ヒスに協力して奴を捕まえようと持ちかける。
ヒスに弱みを握られて彼の言いなりとなっているほかの詐欺師3人が加わり、
まずはドゥチルの右腕クァク・スンゴンに接近する作戦を決行するのだが……。
ジソンにヒョンビン、ヒスにユ・ジテ。どちらもカッコイイけれど、
『マッド・ドッグ』でユ・ジテにハマった私としては、両者イイ奴でいてほしかった。
ユ・ジテがこんなめちゃめちゃ悪人の役なんて。
見事に騙されました。めちゃめちゃ面白かったです。もう一度観たいぐらい。
 
《せ》
『世界で一番ゴッホを描いた男』(原題:中国梵高)
2016年の中国/オランダ作品。
広東省の大芬(ダーフェン)は世界最大の「油画村」。
この村では世界中からの注文に応じて複製画を制作。これが大ビジネスに。
趙小勇(チャオ・シャオヨン)は、20年間ゴッホの複製画を描き続けてきましたが、
いまだ本物のゴッホの絵を見たことがありません。
彼が本物を見たいという長年の夢を叶えるためにアムステルダムへ。
その旅に密着したドキュメンタリー。
何十人もの職人が工房に寝泊まりして複製画を制作する姿にまず驚愕。
しかも皆めちゃくちゃ巧い。当たり前ですね、世界の需要に応えているんだから。
ずっと複製画のみを描いてきたシャオヨンが、
自分オリジナルの絵を描きたいと思いはじめるシーンがよかった。
 
《そ》
『ソリス』(原題:Solis)
“未体験ゾーンの映画たち 2019”にて上映された2018年のイギリス作品。
近未来、宇宙で採鉱をおこなう会社に勤めるホロウェイは、
緊急避難船カペラ2号に乗船中に事故に遭い、彼を除く乗組員は全員死亡。
カペラ2号は制御不能で漂流、太陽へ向かって進んでいることが判明。
やっと連絡が取れた別の宇宙船の女性船長ロバーツが遠隔通信で支えつづける。
ロバーツ役のアリス・ロウは声のみの登場で、
全編カペラ2号内で繰り広げられる密室の一人劇。
ホロウェイ役には“ウォーキング・デッド”のサイモン役で知られるスティーヴン・オッグ。
まったく期待しなかったわりにはそれなりの面白さ。
最後は助かったか助からんかったかどっちやねん、
たぶんアカンかってんなという終わり方。そりゃそんだけ太陽に近づいたら無理!

—–

今年観た映画50音順〈か行〉

《か》
『かごの中の瞳』(原題:All I See You)
2016年のアメリカ作品。
タイ・バンコクに暮らすジーナ(ブレイク・ライヴリー)は、
子ども時代に事故に遭って視力をほぼ失った。
ジェームズ(ジェイソン・クラーク)と出会って結婚、
優しい夫に支えられ、眼は見えずとも幸せな毎日を送っていたが、
急に角膜提供者が現れて手術を受け、片眼だけ視力が回復する。
夫婦そろってさらに幸せなはずが、眼が見えるようになった途端、
美しくセクシーになってゆく妻に気が気でない夫は……。
夫は妻が自分だけを頼るようにいろいろ図った様子。
妻は夫がしたことをすべてわかっていたようで、なんとも観ているのが辛い。
やがて妻は浮気したことを隠して妊娠を夫に告げ、
夫は自分には子どもができないことを知っていながら受け入れる。
監督は私のわりとお気に入り、マーク・フォースター
切なさが好きなのですが、本作は切ないというよりは悲しかった。
ブレイク・ライヴリーが別人に見えたのはなぜかしらん。整形でしょうね。
 
《き》
『キラー・メイズ』(原題:Dave Made A Maze)
2017年のアメリカ作品。
こんなC級、絶対未公開に決まっていると思ったら、
原題の「デイブが迷路を作った」、そのまんまの作品。
冴えない芸術家デイブは同棲中の恋人アニーが外出した間に、
ダイニングに段ボールで迷路を作りはじめる。
アニーが帰るとデイブの姿は見えず、段ボールの山の中から彼の声が。
迷路から出られなくなったらしく、アニーおよび駆けつけた友人、
面白そうなネタだとやってきた取材クルーたちは迷路に入るのだが……。
迷路ではデイブが妄想した罠やモンスターが本物になって徘徊しています。
そいつらに食いちぎられたりなんかもして、結構残虐。
アホくさと思いながら観てしまった。大化けしませんかね、この監督。
 
《く》
『クレアのカメラ』(英題:Claire’s Camera)
2017年のフランス/韓国作品。
映画宣伝会社に勤める女性社員マニは、出張で映画祭開催中のカンヌへ。
女社長から突然呼び出され、突然クビを宣告させる。
女社長とデキている映画監督ソがマニに手を出したことを知ったゆえらしい。
途方に暮れるマニは、カンヌを観光中のフランス人女性クレアと出会い……。
なぜか人気のあるホン・サンス監督、私はどうしても好きになれません。
実生活で不倫関係にある女優を主役にダラダラと撮り続け、
「人生の失敗の95%は酒のせい」なんて言われても、言い訳にしか聞こえない。
酔っぱらって若い美人に手を出して、「魔が差した」とか、
その美人がショートパンツを穿いているのを見て叱ったりとか、
オッサン戯言もいい加減にしろよと言いたくなる。
人気の理由を知りたくてこれまで何本か観ましたが、もうウンザリ。
 
《け》
『けんじ君の春』
2015年の日本作品。女優・森田亜紀の長編初監督作品です。
何もかもにだらしない沢口けんじは、なぜか女にモテモテ。
愛想をつかされてフラれるときにも金を貸してくれと申し込むふてぶてしさ。
ある日、金を返してもらうべくけんじの部屋にやってきた元カノたちが鉢合わせ。
そうとも知らずにけんじは公園で見かけて一目惚れした女子大生を誘う。
元カノたちは最初こそいがみ合っていたが、けんじに復讐したい気持ちは同じ。
何かいい方法はないかと考えはじめる。
けんじ役の戸塚純貴の顔をどうしても好きになれず、
こんなろくでなしの役を田中圭ぐらいが演じてくれればよかったのにと思っていました。
しかし後日『ブラック校則』キンプリ高橋くんの兄役で出演しているのを発見。
けんじの締まらない顔が嘘のように、ちゃんとしたサラリーマン役でした(笑)。
イライラし通しの作品だったけど、けんじを追いかける闇金トリオが
最後はペットショップを開き、けんじもそこに勤めるというオチ。
こう爽やかなラストで来られるとは思いもよらず。終わりよければすべてよし。
 
《こ》
『告白小説、その結末』(原題:D’apres une Histoire Vraie)
2017年のフランス/ベルギー/ポーランド作品。
フランスの女流作家デルフィーヌ・ド・ヴィガンの『デルフィーヌの友情』を映画化。
心を病んで自殺した母親のことを綴った小説がベストセラーになり、
一躍人気作家となったデルフィーヌ。
しかしその後はスランプに陥って何も書けずにいる。
ある日、彼女の熱狂的ファンだという美女エルと親しくなる。
著名人のゴーストライターを務めるエルと、同居生活をはじめるのだが……。
原作の情報を見るとメタフィクションなるものだそうで、
モキュメンタリーみたいなものかと思ったら、違うんですね。
フィクションだということを作品中で意図的に読者に知らしめるものらしい。
エルは虚構だったのかと想像させるオチ。
彼女役のエヴァ・グリーンが綺麗なだけにめちゃくちゃ怖い。

—–

今年観た映画50音順〈あ行〉

18回目となりました。恒例におつきあいください。
 
2017年までは12月22日にこれを始めることにしていました。
ところが2018年はいつになく劇場鑑賞本数が多く、
こちらへUPするのが追いつかなくて22日スタートはやんぴ。
今年も去年並みに観たので、今日からこれを始め、
大晦日までに終われるように小刻みにUPします。
 
20日までに劇場で観た作品についてはすべてUP済み。
ここに挙げるのはそれ以外のDVDあるいはネット配信作品のみ。
あくまで書きそびれていた作品を挙げているだけなので、
好きだったとか嫌いだったとかは関係なし。
旧作は除外し、今年DVD化された作品に限っています。
ネタバレ御免。
 
《あ》
『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』(原題:I Feel Pretty)
2018年のアメリカ作品。
ぽっちゃり体型のレネーは、自分にまったく自信が持てない。
女性の憧れである高級コスメ会社の通販部門に勤めているものの、
オフィスは本社から遠く離れたチャイナタウンのビルの地下。
スリムになろうとジム通いを始めるが、転倒して頭を強打。
意識を取り戻したとき、鏡に映る自分の容姿を見てびっくり。
ものすごい美人で、ナイスバディに変身しているではないか。
途端に自信に満ち溢れるようになったレネーは……。
頭を打っておかしくなり、何も変わっちゃいないのに変わったと信じるヒロインという設定。
自意識過剰になって、男性にちょっと声をかけられればナンパだと思い込み、
自分と同類のはずの友人たちをたちまち上から目線で見るように。
どんな女性も心持ち次第で輝けるということなのでしょうが、
単なる勘違いで高飛車になる女の話なんて痛いだけ。
巷での評価が高かったようですが、私は大嫌いでした。
劇場で観たら早く帰りたくてため息ばかり吐いていたかも。
 
《い》
『移動都市/モータル・エンジン』(原題:Mortal Engines)
2018年のアメリカ作品。
2001年に刊行されたフィリップ・リーヴの同名SFを
ピーター・ジャクソン監督が脚本と製作を担当して映画化。
たった60分で文明が荒廃した「60分戦争」から数百年が経過。
人類は地を這う車輪の上に都市を創造している。
移動しながら他の都市を狩って資源や労働力を奪うという、
都市同士の弱肉強食が繰り広げられる世界。
そんな移動都市の中で圧倒的な力を見せているのがロンドン。
野望を秘めるサディアスがその長の座に就き、牛耳っている。
サディアスに母親を殺された少女ヘスターはロンドンに潜入。
あと一歩で母の仇を討てるというときに、人の善い青年トムに邪魔をされる。
サディアスのことも信じていたトムだったが、ヘスターと共にロンドンから放り出され、
反移動都市同盟と合流するのだが……。
劇場鑑賞を目論んでいたのにどうしても時間が合わずに諦めた作品でした。
金属製の都市がガガーッと地上を這う様子が圧巻。大スクリーンで観たかった。
 
《う》
『嘘はフィクサーのはじまり』(原題:Norman: The Moderate Rise and Tragic Fall of a New York Fixer)
2016年のイスラエル/アメリカ作品。
自称フィクサーのノーマンは、ユダヤ人の上流社会になんとか食い込みたい。
ある日、ニューヨークを訪問中のイスラエルの大物政治家エシェルに声をかける。
次期首相の座に就くことが確実なこの男を逃してなるものかと、
ノーマンはべらぼうに高い靴をエシェルにプレゼント。
3年後、予想どおり首相となったエシェルとパーティで再会。
エシェルはノーマンを大事な友人としてパーティ参加者に紹介。
これをきっかけに財界の大物たちから次々に仲介を頼まれるようになるのだが……。
このタイトルですからコメディだと思って観はじめたら、なんとも辛辣。
リチャード・ギア演じるノーマンは、家族も住むところもない様子。
つき通しの嘘も効いているふうはなく、どうやって稼いでいるのか不明。
首相の友人と認められた途端にちやほやされるけど、
首相の側近はあぶない匂いを感じ取り、決してノーマンの電話を取り次ぎません。
アレルギーを持つナッツを手にたたずむラストシーンが悲しい。
彼はただ誰かを幸せにしたかっただけなのか。でも皆、彼を利用しただけ。
 
《え》
『英国総督 最後の家』(原題:Viceroy’s House)
2017年のイギリス作品。
第二次世界大戦後の1947年、イギリスは植民地インドの統治権返還を決定。
主権委譲の任に当たることになったマウントバッテン卿は、
妻子とともに最後の総督として首都デリーへとやってくる。
総督官邸は使用人500人を抱える大邸宅。
関係者を招き、インド独立に向けた話し合いをおこなうが、
統一インドとして独立を望む多数派のヒンドゥー教徒と、
分離してパキスタン建国を目指す少数派のイスラム教徒が対立。
なんとかインドを分離させたくないと考えるマウントバッテン卿だったが、
各地でヒンドゥー教徒とイスラム教徒の暴動や虐殺が起こり、
沈静化するためにはインドとパキスタンを分離するしかないと覚悟を決める。
パキスタン建国の裏側にはこんな話があったのですね。
マウントバッテン卿夫人の人柄に惚れました。
 
《お》
『おかえり、ブルゴーニュへ』(原題:Ce Qui Nous Lie)
2017年のフランス作品。
フランス・ブルゴーニュワイン醸造家に生まれた三人兄妹弟。
継ぐべき長男ジャンは反発して家を出たが、
父危篤の報せを受けて10年ぶりに帰郷、妹ジュリエットと弟ジェレミーと再会。
やがて父親が死亡し、多額の相続税問題が発生する。
オーストラリアに妻子を残してきたジャン、
醸造家としてイマイチ自信を持てずにいるジュリエット。
大規模生産者の婿養子となったものの、舅との関係に悩むジェレミー。
遺言では三人の持ち分を分割することはできず、廃業の危機を迎えるのだが……。
「私には人の上に立つなんて無理」というジュリエットに、
ジャンが尋ねます、「ワインは好きか」「好きよ」「なら造れ」。
ジュリエットがニッコリ笑って「単純なことなのね」というシーンが好きでした。
セドリック・クラピッシュ監督、やっぱり私は好みです。

—–

『家族を想うとき』

『家族を想うとき』(原題:Sorry We Missed You)
監督:ケン・ローチ
出演:クリス・ヒッチェン,デビー・ハニーウッド,リス・ストーン,
   ケイティ・プロクター,ロス・ブリュースター他
 
同じくシネ・リーブル梅田にて。
 
イギリス/フランス/ベルギー作品。
監督は社会派の名匠ケン・ローチ監督。
 
イギリス・ニューカッスルに暮らす4人家族。
夫のリッキー、その妻アビー、16歳の息子セブ、12歳の娘ライザ・ジェーン。
悲願のマイホームを手に入れようと、リッキーは転職を決意。
フランチャイズ宅配ドライバーとして独立することに。
 
配達車をどうするか。借りるか自前で用意するか。
いま所有している車は1台のみで、介護福祉士のアビーが使っている。
もう1台買う余裕など当然なく、アビーを説得して車を売り、配達車を購入。
そのせいでアビーは介護先をバスで回るはめに。
 
意気揚々と新しい仕事を始めたリッキーだが、個人事業主とは名ばかり。
過酷なノルマに縛られ、思うように金は貯まらないどころか減ってゆく。
家族で過ごす時間がどんどん減り、ぎすぎすした空気が流れるのだが……。
 
ケン・ローチ監督の作品はたいていつらいものだけれど、
最後はほんの少し希望があるもの。でも、本作に希望はゼロ。
ここまでつらい物語は久しぶりに観ました。
 
昔お世話になっていたカメラ屋さんのことを思い出します。
長年勤め、円満に退社してフランチャイズの事業主へ。
開店当初は夢が叶って嬉しくてたまらないふうだったのに、
ほんと、独立なんて名ばかりだったようです。
その人についていた客を持って行ってはいけないし、
毎月払わなければいけない金額が大きすぎて、数年で畳まれました。
閉店のさいの絶望的な表情を思い出すとやるせない気持ちになります。
今も年賀状のやりとりだけはしていますが、
ひと言のコメントもないから、生きていることがわかるだけ。
どうしていらっしゃるのかなぁ。
 
自営っていったい何なのか。アビーの言葉に共感。
甘い甘いとリッキーが言うけれど、甘かったのはリッキーのほう。
自転車操業以外のなにものでもない。
何が大事なのか、考えさせられます。

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『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』

『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』(原題:L’Incroyable histoire du Facteur Cheval)
監督:ニルス・タヴェルニエ
出演:ジャック・ガンブラン,レティシア・カスタ,ベルナール・ル・コク,
   フローレンス・トマシン,ゼリー・リクソン,ルカ・プチ=タボレーリ他
 
ある郵便配達員が33年間に渡ってたったひとりで築いた奇想の宮殿。
実話だということに興味を惹かれ、シネ・リーブル梅田へ。
 
1873年、フランス南東部ドローム県の小さな村オートリーヴ。
人づきあいが苦手で口下手、真面目さだけが取り柄の郵便配達員シュヴァルは、
自分の子どもとすらどう話してよいのかわからない。
病死した妻の葬儀の席で、シュヴァルには子育ては無理との烙印を押され、
言い返すこともできないまま一人息子のシリルを取り上げられる。
 
郵便局長のオーギュストは数少ないシュヴァルの理解者。
あるときオーギュストがシュヴァルの配達地域を変更したさい、
シュヴァルは心優しき未亡人フィロメーヌと出会う。
やもめ同士めでたく再婚、授かった赤ん坊にアリスと名づける。
 
アリスをどう扱えばよいのか戸惑うシュヴァルだったが、
ふたりを見守る近所の女性フェリシエンヌの企みが功を奏し、
シュヴァルはアリスを抱き上げる。
以来、不器用ながら傍目にもわかる愛情をアリスに注ぐように。
 
ある日の郵便配達中、石につまずいて転んだシュヴァルは、
その石の奇妙な形に心を奪われる。
それがきっかけで、アリスのために宮殿を築くことを思いつき、
石を拾い集めては終業後にこつこつと積み上げるのだが……。
 
郵便配達員としての実績がまず凄い。
勤続30年を表彰しにやってきた偉いさんが、その数字を見て「何かの間違いでしょ」と言う。
毎日32キロ、徒歩で配達を続け、配達した郵便物の数は22万通以上に上る。
偉そうに振る舞うことなどない彼が、表彰のときは顔を上げて得意気です。
 
パン屋で修行したことはあるけれど、建築の知識など皆無のシュヴァル。
パンも建築物も同じだろと、独学で宮殿を築き始めます。
もともと村人からは偏屈扱いされているから、
「あの変人、また何か始めよった」てな感じ。
 
同年代の子どもたちから「お姫様」とからかわれたアリスが
「もう宮殿をつくるのは止めてほしい」とシュヴァルに懇願することも。
でも、シュヴァルは決して止めようとしないし、
アリスも「本当は大好きだ」と言ってくれます。
 
嬉しいときもそれを素直に表せずに素っ気なくしてしまうシュヴァル。
怒らせてしまったのだろうかと戸惑う客人に、
あれは喜んでいるときの態度ですとフィロメーヌが「通訳」するのも微笑ましい。
 
33年間にシュヴァルを襲った数々の不幸。でも、幸せもあった。
何もしてやれなかった息子が大人になってから訪ねてきてくれた。
あらためて父親と息子の関係を築けた。
シュヴァルのもとにシリルが帰ってきたのは、
父親に疎まれていたわけではないと、子供心にわかっていたんだなぁ。
 
のちにフランス政府により重要建造物にも指定された凄い宮殿。
実際に見てみたい。

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