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『レ・ミゼラブル』

『レ・ミゼラブル』(原題:Les Miserables)
監督:ラジ・リ
出演:ダミアン・ボナール,アレクシ・マナンティ,ジブリル・ゾンガ,イッサ・ペリカ,
   アル=ハッサン・リ,スティーヴ・ティアンチュー,アルマミ・カヌーテ他
 
ナナゲイで1本、テアトル梅田で2本観た後、シネ・リーブル梅田へ。
 
えっ!?また『レ・ミゼラブル』(2012)を上映しているの?と思われる方も多いでしょう。
ちがいます、これはそんな『レ・ミゼラブル』の舞台となった街、
モンフェルメイユを舞台にしたこれまたすんげぇ作品。
第72回カンヌ国際映画祭では『パラサイト 半地下の家族』パルムドールを競い、
それは持って行かれたものの、審査員賞を受賞。
『パラサイト』と比べても遜色ない作品だと思います。が、どっちもキツイなぁ。(^^;
 
フランス・パリ郊外のモンフェルメイユ。
そこは移民低所得者層が多く住み、犯罪が多発する危険な街。
他地区から異動してきた警官ステファンは犯罪防止班に配属され、
二大バカの異名を取る先輩警官クリスとグワダとともに地域パトロールを開始。
 
複数のギャングが対立して街は一触即発の緊張状態にあるなか、
サーカス団ライオンの子どもが盗まれる事件が発生。
犯人は黒人少年らしく、盗みを働いた後に行方をくらましている。
サーカス団長は激怒し、市長のもとへ殴り込み。
とっとと少年を捕まえなければ自分たちの手で見つけて殺すと言う。
 
騒ぎを知ったステファンたちは、その少年をイッサと特定。
居場所を探し当てたものの、イッサの友人たちが警察の横暴ぶりを非難。
揉み合ううちにグワダがゴム弾を発砲、それがイッサの顔に命中して……。
 
『シティ・オブ・ゴッド』(2002)と同様の衝撃を受けました。
俯瞰で映し出された公営住宅のたたずまいは美しい。
これはひとつのアートなのではと思えるほど。
なのに近づいてみれば、雑然として秩序に欠けた街。
 
それでも子どもたちはイキイキとして楽しそう。
ライオンの子どもを盗んだのだって、ほんのいたずら。だって可愛いし。
短絡的だから、それを写真に撮ってネットにUPしちゃって、すぐバレる。
殺される可能性が大アリなのに、無邪気すぎる。
 
だけど天真爛漫というのとはちと違うんですよね。
生まれたときから彼らを取り巻く環境は荒んでいる。
自分でつくった子どもなのに、親は無関心。
厄介事ばかり起こす自分の子どもに憤り、いなくなれと思っている。
こんななかで育つはずがない。
 
エンドロールに掲げられた『レ・ミゼラブル』の原作者ヴィクトル・ユゴーの言葉、
「友よよく覚えておけ、悪い草も悪い人間もない。育てる者が悪いだけだ」。
この日5本ハシゴの1本目だった『プリズン・サークル』とかぶります。
愛情が注がれて、ちゃんと語りかけてくれる人、話を聴いてくれる人がいたならば。
 
美しさのなかに漂う虚無感。絶望的。

—–

『イーディ、83歳 はじめての山登り』

『イーディ、83歳 はじめての山登り』(原題:Edie)
監督:サイモン・ハンター
出演:シーラ・ハンコック,ケヴィン・ガスリー,ポール・ブラニガン,
   エイミー・マンソン,ウェンディ・モーガン他
 
テアトル梅田にて、前述の『星屑の町』の次に。
 
ハウツーもののようなタイトルに、ドキュメンタリーかと思いました。
そうじゃなくてフィクションらしい。
どちらかといえば海より山派、映画は海より山が舞台の作品のほうが断然好き。
観ますよ、そりゃ。
 
ロンドンに暮らすイーディ、83歳。
結婚してからというもの、モラハラ気味の夫から家庭に縛りつけられ、
外出することなどほとんど許されず。
大の仲良しだった父親と会うこともままならぬうちに夫が倒れ、
30年間にわたって夫の介護に明け暮れる日々が続く。
 
やっと夫が亡くなって自由の身となったが、
一人娘のナンシーはイーディを老人施設に入れたがり、
渋々見学に行ってみれば、人生の終わりが近い人ばかりでげんなり。
 
ナンシーと喧嘩した日、ふと目にした亡き父親からの葉書。
スコットランドにあるへんてこな形をしたスイルベン山の写真入り。
いつか父親と登ろうと約束していたこの山へ行こう。
そう考えたイーディは、夜行列車に乗ってスコットランドに向かう。
 
駅でぶつかって危うく怪我をさせられかけた若者ジョニーが、
せめてものお詫びに宿まで送ってくれると言う。
ところが宿の予約は翌日からとなっており、
いたしかたなくイーディはジョニーの家に泊めてもらうことに。
 
事情を知ったジョニーの友人マクローリンは、金儲けのチャンスだと煽り、
登頂へ向けたイーディの訓練とガイドをジョニーが務めることになるのだが……。
 
不幸な結婚生活だったことには同情しますが、
序盤はすごく嫌味なばあちゃんなんです、このイーディ。
しかしつきあってみれば、辛辣なだけで善人。
恋人との仲に不安を感じているジョニーも、イーディといるときは楽しい。
年齢を超えた良い友人関係を築きます。
 
それでも狭い町のこと、イーディに興味津々の住民たちは、
色惚けババアのような扱い。悪意たっぷりで悲しくなる。
 
泣かせようとしているシーンではないのに泣いてしまったところがいくつか。
イーディとジョニーが焚き火を囲むシーンでなぜかジワ~ン。
こんなシーンで涙ぐんでしまうこと自体、私が歳を取ったということか。(^^;
 
何でも始めるのに遅いことはない。
こんな素晴らしいことが待っているならば、やってみなくちゃ。

—–

『星屑の町』

『星屑の町』
監督:杉山泰一
出演:大平サブロー,ラサール石井,小宮孝泰,渡辺哲,でんでん,有薗芳記,
   のん,菅原大吉,戸田恵子,小日向星一,相築あきこ,柄本明他
 
十三で前述の『プリズン・サークル』を観てから梅田へ移動。
お昼ごはんを食べたのち、テアトル梅田で2本。その1本目。
 
ムード歌謡のコーラスグループ“山田修とハローナイツ”。
集客をボーカルの天野真吾(大平サブロー)に頼り、
コーラスをリーダーの山田修(小宮孝泰)、市村敏樹(ラサール石井)、
込山晃(渡辺哲)、西一夫(でんでん)、青木五郎(有薗芳記)が務める。
 
ほぼ鳴かず飛ばずのグループで、
唯一のオリジナルヒット曲が有線で6位になったと言っても、
全国6位ではなくて、大阪市生野区限定の6位。
それを笑いのネタに地方巡業等で細々と活動を続けている。 
 
ある日、彼らは山田の生まれ故郷である東北の田舎町へ。
地元出身歌手の歌謡ショーとあって、
青年団の若衆で山田の甥に当たる啓太(小日向星一)は大張り切り。
歌手を夢見る地元の娘・久間部愛(のん)もわくわく。
 
実は愛にはほかにもわくわくする理由があった。
それは母親・浩美(相築あきこ)から死んだと聞かされている愛の父親が
本当はハローナイツのボーカル・天野ではないかと考えていたから。
 
浩美が営むスナックへショー前夜に飲みに来た市村を捕まえ、
愛は自分をグループのメンバーに加えてほしいと頼む。
酔っぱらった市村はついつい調子のいい返事をしてしまい……。
 
もともとが人気の舞台“星屑の町”シリーズ。
そのまんま、内山田洋とクールファイブ(笑)。
思いっきり昭和なんです。客層はざっとアラ古稀といったところ。
共感能力の高い年齢層だから、ウケるウケる。
ベタすぎるわと思っていた私ですが、ついついつられて笑ってしまい。
 
私よりだいぶ上の世代になるかと思うので、
出てくる曲ぜんぶ知っているわけではありません。
そんななか、嬉しくなったのは“ピンキーとキラーズ”の『恋の季節』。
幼稚園の頃、私はこの曲が大好きだったそうで(母曰く)、
就寝後のテレビ番組でこの曲が流れると、母が起こしにきてくれた思い出が。
眠い目をこすりながら起きて、にこにこしながら見たことを覚えています。
 
ハローナイツの前座を務めるベテラン歌手・キティ岩城役に戸田恵子。さすがです。
愛の父親が誰か最後にわかるのかと思ったら、
そんなこと考えずに前向いて進めというキティのひと言でどうでもよくなってしまう(笑)。
 
お決まりのドタバタに大団円。安心して観られる作品です。
上映終了後、出口で男性客が劇場スタッフに
「面白かったわ、ありがとう」と声をかけていた様子にも和みました。
楽しかった!

—–

『プリズン・サークル』

『プリズン・サークル』
監督:坂上香
 
次年度に繰り越せない有休もあと1日と2時間。
そのあと1日の休みを取った日、ハシゴ5本を敢行。
その1本目はこれ、第七藝術劇場にて。
 
アメリカの受刑者の取材を重ねてきた坂上香監督が、
日本の刑務所内の様子を長期にわたって撮影したドキュメンタリー作品。
これは日本初のことだそうです。
同様のことを考えた映画監督はいらっしゃったかもしれませんが、
これが初だということは、さまざまな手続きや障壁がきっとたくさんあって、
撮影に至るまでにクリアしなければいけないことが多いのでしょうね。
 
訪れたのは、2008(平成20)年に開所された刑務所“島根あさひ社会復帰促進センター”。
国家公務員である刑務官は約200名、
清掃や食堂等の業務に携わるのは民間会社の社員約300名。
官民協働という新しい形を取る刑務所です。
 
監督は受刑者の体に触れることも声をかけることも許されません。
直接話せるのはごく限られた時間の1対1のインタビュー時のみ。
淡々と刑務所内の様子や受刑者の日々の行動をフィルムに収めています。
 
こちらの刑務所では、1960年代以降に欧米で広まっているTCが導入されています。
TCとは“Therapeutic Community(=回復共同体)”の略で、更生プログラムのひとつ。
日本でこのプログラムが導入されているのはここだけ。
 
凄惨な事件を起こした犯人がさして反省もしていない様子をニュース等で聞くと、
更生なんて絶対に無理、生まれついての悪人は死ねばいいと私は思っていました。
でも、本作を観ると、更生はあり得るかもしれないと考え方が変わる。
 
本作で主にカメラを向けられているのは、
詐欺や強盗致傷、窃盗などの罪で服役中の4人の若者。
刑期は数年から10年未満です。
だから、罪としては一般的にそこまで重いものでもない。
ゆえに更生があり得ると思えるのかもしれないのですけれども。
 
呼ばれるときは常に「おまえ」だとか番号だったりした彼らが、
この刑務所ではきちんと名前で呼ばれる。
自分に名前があるということを生まれて初めて知ったかも。
 
罪を犯したから償えと言われても、
今までいた刑務所では罵られたりいじめられたり。
どうやって生き抜くか怯えているから、
自分がしでかしてしまった悪事の重大さについて考える時などない。
 
TCに参加して初めて、自分の話に耳を傾けてくれる人がいる。
自分に話しかけてくれる人がいる。
そのプログラムはとても興味深く、
事件の加害者と被害者のロールプレイングなどもあります。
 
揃いもそろって不幸な生い立ち。
でも、不幸だったせいで事件を起こしたとは言いたくないとも。
自分の頭で考え、話し、やっとわが身と向き合えた彼ら。
 
刑期を終えて社会に出ても、自立できるのかどうかはまだまだ問題が残ります。
再犯率はほかの刑務所の50%以下とのことですが、
彼らが真っ当な生活を送ることを願います。
 
彼らのうちのひとりが書いた「嘘しかつけない少年」の話が強烈で、
ずっと心に残りそうです。

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『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』

『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』(原題:Tumma Kristus)
監督:クラウス・ハロ
出演:ヘイッキ・ノウシアイネン,ピルヨ・ロンカ,アモス・ブロテルス,ステファン・サウク他
 
TOHOシネマズ西宮で3本観たあと、中之島のパン屋さんまで車を走らせました。
予約していたパンを受け取ったのが17時。
この日の晩ごはんは天満橋20時だったので、上手く行けば映画をもう1本観られそう。
急いでもう一度車に乗り込み、今度はシネ・リーブル梅田へ。
 
時間的に合いそうなのはこれぐらいだと事前にメモしていただけで、
観はじめるまではどこの国の作品かもわかっていませんでした。
ただ、画商名画がらみの話っていつもなんとなく惹かれるふしが私にはある。
絵心も鑑賞眼もないくせして。(^^;
 
フィンランド作品です。
監督は『こころに剣士を』(2015)のクラウス・ハロ。
 
美術商のオラヴィは長年営んできた店を畳もうかと考えている。
経営は上手く行っておらず、オークションで落札した美術品の代金を払えないこともあれば、
払えたとしても顧客に足下を見られて落札価格で引き渡すことになったりして、
これでは儲けなどいっさい出ない。
 
そんなある日、疎遠になっていた一人娘レアから連絡が入り、
彼女の息子、つまりオラヴィの孫オットーの職場体験を引き受けてほしいと言う。
オットーは学校で問題を起こし、素行不良のレッテルを貼られているため、
彼のことを受け入れてくれるところはどこにもない。
職場体験の評価シートがなければ進級できないらしく、オラヴィを頼ってきたのだ。
 
返事を待てずに押しかけてきたオットーのことを追い返したものの、
オラヴィは数日後にオークションにかかる予定の肖像画のことが気になっており、
図書館に行って調べたいのに店を空けられない。
致し方なくオットーに店番をさせたところ、意外にも彼は商才を発揮。
オラヴィの留守中に来た客に予定価格より高く絵を売ったではないか。
 
オットーを見る目が少し変わったオラヴィは、件の肖像画について一緒に調べ始める。
それはタイトルも作者も不明の絵だったが、
オラヴィは名画まちがいなしと見抜き、その証拠を得ようとして……。
 
偏屈な爺さんなんです、オラヴィって。
娘とどんな確執があったのか細かに描かれているわけではないけれど、
仕事一筋で家庭を顧みなかったことはあきらか。
娘が離婚したときも手を貸そうとはしなかった。
なのに連絡を取れるようになった娘に金の無心って、ん〜、ちょっと。
 
孫のオットーは留守番中も脚をテーブルの上に投げ出してゲームしているような奴。
でも好奇心旺盛で行動力がある。
爺ちゃんの確かな目を信じて敬意を抱き、なんとかしようと奔走します。
 
私はオラヴィのことを所詮金儲けしたいだけだと思っていました。
でもそうじゃなかった。彼の絵を愛する気持ちは本当でした。
終盤までなんとなくオラヴィのことを好きになれずにいたのに、
最後はオットーと同じような気持ちになって、お爺ちゃんにウルッ。
 
名画にもっと触れたくなる作品です。

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