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『ファーストラヴ』

『ファーストラヴ』
監督:堤幸彦
出演:北川景子,中村倫也,芳根京子,板尾創路,石田法嗣,
   清原翔,高岡早紀,木村佳乃,窪塚洋介他
 
TOHOシネマズ伊丹にて。
 
島本理生直木賞受賞作堤幸彦監督が映画化。
堤監督の作品で凄く好きだと思ったものは今のところないんです。
だからあまり期待はせずに鑑賞に臨みました。
 
アナウンサー志望の女子大生・聖山環菜(芳根京子)が、
大学教授で著名な画家でもある父親・那雄人(板尾創路)を殺害した容疑で逮捕される。
美人女子大生による父親刺殺ということで、事件はメディアでも大きく取り上げられる。
環菜は自分の罪を認め、「動機はそちらで見つけてください」と語ったらしい。
 
公認心理師の真壁由紀(北川景子)は、環菜に取材して本を執筆したいと考える。
環菜は取材を承諾したとのことだが、
国選弁護人として環菜の弁護を引き受けたのが庵野迦葉(中村倫也)だと知り、由紀は困惑。
迦葉は由紀の夫・我聞(窪塚洋介)の弟で、由紀の大学時代の同期生でもあったから。
 
それでも環菜を救いたい一心で由紀は迦葉に連絡。
ふたりで協力して環菜の動機を突き止め、無罪を勝ち取ろうとするのだが……。
 
芳根京子ちゃんのことが実はちょっと苦手です。
かつてオーディション荒らしの異名を取ったとのこと、
彼女がオーディションに現れれば、間違いなくその役を得るので、
ほかの人は最初からあきらめるしかないぐらい演技が上手い。
確かにめちゃくちゃ上手いんですよね、怖いぐらい。
 
本作の彼女も凄まじい演技を見せています。
幼い頃から父親が開催するデッサンクラブのモデルを務めさせられ、嫌な思いをしてきた。
かばってくれるはずの母親(木村佳乃)は娘を嘘つき呼ばわりし、
事件後の法廷にも弁護側の証人としてではなく、検察側の証人として出廷します。
世間からサイコパス扱いされ、誰にも心の裡を見せようとしない環菜。
 
上手すぎて怖いから、彼女が涙を流すシーンでは泣けなかったし、
北川景子が大泣きするシーンでも泣けなかったのですけれど、
窪塚洋介には泣かされました。
今までの彼にはエキセントリックな印象がありましたが、この夫役は実に温かい。
妻が言い出せずにいる過去について何もかも察していて、
だからと言って問い詰めないし、聞き出そうとすらしない。
本人が話す気になるまで、何も気づいていないふうに待っています。
 
堤監督のこともやっぱり好きだとは言えないままですが、
わかりにくさもなく、知的な雰囲気も漂っているので、
観た人の満足度は高いような気がします。

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『名探偵コナン 緋色の不在証明』

『名探偵コナン 緋色の不在証明』
監督:立川譲
声の出演:高山みなみ,山池田秀一,日高のり子,森川智之,田中敦子他
 
TOHOシネマズ伊丹にて前述の『すばらしき世界』とハシゴ。
時間的にほかに合う作品がなかったのでこれにしたんですけれど、
あれ〜?“名探偵コナン”の新作公開ってもっと先じゃなかったのでしたっけ。
気のせいだったのかしらんなどと思いながら入場。
 
そうしたら、客席がらんがらん。
コナンだよ?『鬼滅の刃』を一時的にでも抜くよね?
こんなガラガラって可笑しくない?
不可解に思いつつもまだ最新作だと信じていた私。
 
観はじめて、なんだかいつものコナンと違うことに気づく。
端的に言って「面白くない」のです。
そこで初めて、これは新作ではないのだということがわかりました。
 
4月に公開される劇場版第24作のキーパーソンとなる赤井一家に
焦点を当てたものらしいのですが、そもそもコナンに何の執着もなく、
TV版を一度も観たことのない私にはさっぱり意味がわかりません。
 
赤井さんはFBI捜査官で殺されたはずなのに生きていたということみたい。
特別総集編だかなんだか知らないけれど、
過去の出来事がやたら並べられ、そのたびにナレーションによる説明が。
説明されてもちぃともわからんし、退屈で案の定寝ました(笑)。
 
私がかつて観たコナン史上いちばんのつまらなさでしたが、
4月公開の劇場版第24作がこれでわかりやすくなったのでしょうから、良いことにします。
 
どのタイトルにも「緋色の」が付くから新作と勘違いするねん。

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『すばらしき世界』

『すばらしき世界』
監督:西川美和
出演:役所広司,仲野太賀,六角精児,北村有起哉,白竜,
   キムラ緑子,長澤まさみ,安田成美,梶芽衣子,橋爪功他
 
TOHOシネマズ伊丹にて。
 
西川美和監督の4年ぶりの作品は、直木賞作家・佐木隆三の小説『身分帳』が原案。
小説だけどノンフィクション。元殺人犯の出所後を描いた物語。
 
13年の刑期を終えて旭川刑務所を出所した三上正夫(役所広司)。
一匹狼のヤクザとして人生の大半を過ごしてきたが、
今度こそカタギとしてまっとうに生きると決めて上京。
身元引受人となったのは弁護士・庄司(橋爪功)とその妻・敦子(梶芽衣子)。
東京でふたりに温かく迎えられ、思わず涙を流す。
 
そんな三上は少年時代に姿を消した自分の母親を見つけようと、
TV局に自分の「身分帳」を送りつける。
身分帳とは、受刑者の経歴を詳細に記した刑務所の個人台帳で、
持ち出すことなど許されない。
しかし三上は空き時間を使ってそれをすべて書き写したというのだ。
 
面白くなりそうだと踏んだTVプロデューサー・吉澤(長澤まさみ)は、
小説家への転身を目指すTVディレクター・津乃田(仲野太賀)に取材を依頼。
三上に密着したドキュメンタリー番組を制作しようとするのだが……。
 
ヤクザではあるけれど、三上はまっすぐすぎるほどまっすぐな人物。
夜中にドンチャン騒ぎをしている若者をどやしつけ、
不良に絡まれている人を見れば止めに入らずにはいられない。
痛めつけ方が度を越したせいでかつて起こしたのが殺人事件。
 
最初は彼を色眼鏡で見ていた近所のスーパーの店長(六角精児)やケースワーカー(北村有起哉)も、
三上と接するうちになんとかしてやりたいと思うようになります。
なんでこんな善人がヤクザになったのだろうと不思議ですが、
それを津乃田に問われたとき、「こんな俺でも褒められるから」と答えていたのが印象的。
 
もうひとつ、特に印象に残っているのは、吉澤の台詞。
不良を殴りつけるときの三上の残忍さに驚いた津乃田は、
カメラを持ったままその場から逃げます。
彼に追いついた吉澤は、「撮らないなら(三上を)止めに入れよ。
撮るなら最後まで撮れよ」と怒鳴りつけます。
ディレクターとはそうあるべきものなんだろうなぁ。
 
しかし前科者には生きづらい世の中。
『ヤクザと家族 The Family』で感じたやるせなさをここでも感じます。
まっとうに生きるということは、目の前のいじめを見ないふりをするということなのでしょうか。
三上の苦悩が伝わってきました。
 
「シャバは我慢の連続だってさ。でも、空は広いってよ」。
ヤクザの世界に戻ろうとした三上に、昔なじみの組長の妻(キムラ緑子)がかけた言葉。
三上が空の広さを感じられただろうかと思うと悲しい。

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『聖なる犯罪者』

『聖なる犯罪者』(原題:Boze Cialo)
監督:ヤン・コマサ
出演:バルトシュ・ビィエレニア,エリーザ・リチェムブル,アレクサンドラ・コニェチュナ,
   トマシュ・ジェンテク,レシェク・リホタ,ルカース・シムラット他
 
京都シネマにて3本ハシゴの2本目。
 
実際にポーランドで起きた事件が基になっているそうです。
第92回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされたポーランド/フランス作品。
 
少年院を仮釈放となった20歳の青年ダニエル。
院内で出会った神父を慕い、熱心なキリスト教徒となった彼は、
神学校に入学を希望するが、前科者は聖職者になれない。
 
仮釈放されて向かったのは、少年院を出た者を多く受け入れている製材所。
きっと一生ここから出られないにちがいない。
鬱々とした思いを抱えながら町の教会に立ち寄ると、
そこにいた若い女性マルタから「どうせ製材所の人でしょ」と嘲笑われる。
 
ムキになったダニエルは、咄嗟に「僕は司祭だ」と嘘をつく。
少年院から持ち出した司祭服を見せると、マルタは狼狽。
すぐに本物の司祭に紹介され、新任の司祭だと勘違いされてしまう。
 
逃げそこねて、司祭のふりをせざるを得なくなったダニエル。
開き直ってミサに出ると、意外なことにその説教が村人の心を掴み……。
 
村では1年前に7名が死亡するという交通事故が起きていました。
事故現場に手向けられた花の中に、犠牲者6人の写真が飾られています。
なぜ1人だけ写真がないのかと疑問に思うダニエル。
それを調べると同時に、事故によって傷つけられた村人の心を癒やそうとします。
 
酒もタバコも女も好き。
こんな田舎の村におとなしくおさまっていられるはずもなさそうだったのに、
最初は真似事だった司祭の役柄が天職に見えてくるから不思議。
 
事故の真相は如何に。
加害者呼ばわりされて村八分に遭っていた運転手の妻に会う辺りから
サスペンスの要素も含まれていて見応えがあります。
 
前科者には更生の機会が与えられているように見えてそうではない。
根っからの悪人もいるとは思うのですが、こんな若者はどうすればいいのか。

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『凱歌』

『凱歌』
監督:坂口香津美
 
京都シネマで3本ハシゴの2本目。
 
ハンセン病はらい菌によって引き起こされる感染症。
かつて患者は全国に点在するハンセン病患者の収容施設に強制的に入所させられました。
そのうち、東京都東村山市にある国立療養所多磨全生園に入所していた元患者の人々を
9年間にわたって撮影したドキュメンタリーです。
 
ハンセン病患者が結婚するときは、子どもを産めなくする手術も強制されました。
男性側の断種か女性側の不妊手術を強いられる。
 
本作に登場する山内さん夫婦は、ふたりともハンセン病患者でした。
自分が手術を受けるよという妻に、
女性にそんな手術を受けさせるなんて男が廃ると断種手術を受けた夫。
病弱だった夫は結婚時に余命4年と言われていたそうで、
22歳だった妻は「4年で亡くなるなら、この人が亡くなった後でまた恋ができる」と思ったと笑います。
でも結局、夫はその後60年近く生き、いつまでも仲睦まじい夫婦でした。
 
ハンセン病でなかったらよかったのに、
指があればよかったのにと思ったことはないかと若者から問われ、
「残念ながらそう思ったことはないのよ。
私を見た誰かが、この人よりいい、五体満足でよかった、そう思ってくれたらそれでいいから」。
こんなこと普通思えますか。すごい。
隔離されて、閉じ込められて、子どもを持つことは許されず、
この世に存在しなかったかのように生きることを強いられて来た人たち。 
この事実は多くの人が知らなきゃいけないと思います。

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